平成21年度 市川自然博物館だより 8・9月号 123号

市立市川自然博物館 2009年8月1日発行

     

 いきもの写真館  観察地ガイド
 街かど自然探訪  くすのきのあるバス通りから
 拡大花図鑑  自然博物館の活動紹介
 スポットライト  わたしの観察ノート

 


 

いきもの写真館
ヤブマメ 夏の終わりの頃、白くて先端が青い花を咲かせます。秋には莢(さや)ができ、中には立派な豆が入っています。地中にも実をつけ、そちらの豆は食用になるそうです。  撮影者 土居幸雄さん

 

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観察地ガイド 北西部の緑地群

 

市北西部に点在する林

   市川市の北西部、国府台・中国分・北国分・堀之内地域には、小規模な林が近い距離の場所に点在して残っています。これらの林はもともとは谷津の斜面林として連続していたものが開発などによって分断され、残ったものが緑地として保全されました。ですから、それぞれが独立した林のように見えますが、じつは一連の林に由来しているのです。
   市で管理している林のいくつかは園路が整備されているので、北西部の緑地群のうち、たとえば里見公園−国府台緑地−じゅん菜池緑地−小塚山公園−堀之内貝塚公園−北国分第4緑地といったコースで林めぐりをしても、おもしろいでしょう。
 

野草や野鳥との出会い

   北西部の緑地群を訪れるには、真夏はあまりふさわしくありません。林内の木陰でも暑く、蚊も多いからです。ですが、真夏にしか出会えないものもあります。たとえば堀之内貝塚公園にはキツネノカミソリの見事な群落があります。キツネノカミソリは花時には葉がなく地中から茎だけをニョキニョキ伸ばすので、ある日突然お花畑が出現する感じになります。7月の終わりから8月上旬が見ごろになるため、真夏に訪れなければなりません。  
 
一般的には、春と秋がお勧めです。野草の花、木々の花、さまざまな野鳥、昆虫など、季節に応じた見どころがあります。新緑や紅葉など、景観の移り変わりを眺めるのも楽しいものです。また、地図を片手に、谷と斜面林という観点で歩くと、台地に細く谷が切れ込んで谷津を形成している様子を見てとることもできます。それは宅地化が進む中、点在する林を鍵にもともとの自然を思い起こす試みにつながります。北東部の大町公園のように谷津本来の地形と景観が残されているわけではありませんが、逆に、都市化が進む市川という地域の自然のありかたについて考えるにはちょうどいい場所かもしれません。
 

キツネノカミソリ

キツネノカミソリ

 

[市北西部の緑地群]交通案内

  • 電車最寄駅
    京成線国府台駅、北総線北国分駅、北総線矢切駅に囲まれた地区になります。
     

  • キツネノカミソリを見るには
     堀之内貝塚公園内
      北国分駅より徒歩10分
      隣接する歴史博物館の駐車場をご利用いただけます(無料、月曜日および休日休館)

 

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街角自然たんぽう

 たじり  
 田尻  昔の市川、いまの市川
新行徳橋の上から見た田尻の町並み
↑ 新行徳橋の上から見た田尻の町並み

  江戸川の下流域、京葉道路の南側に広がる田尻の町を新行徳橋の上から眺めると、工場やマンションに囲まれた様子がうかがえます。それは、市川市南部の代表的な景観のひとつです。しかし実際に町を歩くと、違った印象があります。
 マンションが立ち並ぶ片隅には稲田が残っていました。取材で訪れた時は稲の葉が青々としていました。大きなお屋敷には立派なタブノキが生え、曲がりくねった路地は昔の水路の跡のようでした。なつかしい市川が、そこにありました。

 

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くすのきのあるバス通りから 第68 移り変わる川のようす

 

  大柏川にかかる大柏橋のすぐ下流の場所は、土砂がたまるらしく草が生い茂ったり、時にはオオベニタデらしきものが咲いていたこともあります。最近見た時は泥さらいをしたらしくあちこち中州がなくなっていました。木株橋の上流部をのぞき込むと、この前までなかった、カナダモらしきものがワサーと生えていました。鬼越に30年前に越してきた頃、真間川の大和橋付近の曲がる内側で花見の宴があったり、川岸は草が生えていました。でも水質は悪く、ドブ臭がしていました。河川改修で桜が伐られ、護岸がコンクリートになり、また桜は大きく手を広げたように育ちました。ユリカモメやウやサギがきます。捨てられたカメもいます。汚い川でも生き続けられるものが増えました。外来種で残念ですが、水の中で育ち暮らすものたちの身を寄せる場所になるかも知れません。    (M.M .)

 

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拡大花図鑑 その3 雄花・雌花 ウリ科の花

 
 植物の花には、おしべの機能だけの花(雄花)、めしべの機能だけの花(雌花)が別々に咲くものがあります。

 身近なウリ科植物には雄花・雌花が分かれているものが多く、キュウリやツルレイシ(ゴーヤー)のように同じ株に雄花・雌花が咲く場合も、カラスウリのように雄株と雌株に分かれる場合もあります。
 

カラスウリ雌花カラスウリ雌花 花の中央には大きな柱頭が露出する
カラスウリ雌花 花の中央には大きな柱頭が露出する
 

カラスウリ雄花カラスウリ雌花 中央の穴の隙間から花粉が出てくる
カラスウリ雌花 中央の穴の隙間から花粉が出てくる
 

スズメウリ

(上):雌花
(下):雄花

 雌花の根本はふくらんでいる(実になる部分)が、雄花の根本は細くなっている。
 

スズメウリ 雌花
スズメウリ 雄花

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自然博物館の活動紹介 季節を感じる散策会

 

6月21日(日曜日) 《梅雨の遊水池》  大柏川第一調節池緑地
    雨天のため中止
 

すり鉢状に掘られた地形

当日は大雨でした。

  夏、ヨシやマコモなどの水辺の植物はぐんぐんと成長して、人の背丈よりも大きくなってしまいます。水辺の小道を歩くと、両側が壁のようで視界が狭く、迷路の中にいるようです。ここの遊水池は、すり鉢状の階段構造になっているので、一番外側が一番高く、中央に広がる湿地を見下ろすことができます。水辺で暮らす生き物や水生植物など見どころはたくさんありますが、さえぎる物の無い広々とした湿地と空の風景が、ここの最大の魅力です。

 洪水対策のためにつくられた遊水池です。大雨の時に近づくのは危険なため、中止にしました。

 

7月19日(日曜日) 《夏の干潟》  行徳橋周辺
    参加者 14人(大人12人、小学生1人、幼児1人)
 

江戸川放水路

真夏の陽射しが照りつけました

   行徳橋は水門と一体に造られた橋です。水門は上流の真水と下流の海水が混じらないように隔てていて、下流側の江戸川放水路には東京湾からの海水が出入りしています。堤防の外はマンションや住宅が立ち並んでいますが、ひとたび土手を越えると自然豊かな海辺の環境です。満ち干で変わる生き物の暮らしや風景を楽しんだり、干潮時には干潟に下りてカニの仲間を間近で見たり、捕まえたりすることもできます。都市に暮らす人々が身近に干潟の自然と触れ合うことができる、貴重な場所です。

  当日は、開始時間までは曇っていたのですが、しだいに夏の厳しい日差しが射し始めました。そのため、土手に咲くアカツメクサの花の色が鮮やかで花畑のように見えました。カニやトビハゼなど干潟の生き物も活発に活動していました。新行徳橋の下の日陰は風もあって涼しく、真夏でもゆっくりと観察できるポイントでした。大人の方は、望遠鏡を使って眺めると、干潟の上が生き物だらけなのに驚かれていました。子どもたちは足元の、カニ捕りを楽しんでいました。その後新行徳橋の歩道に上がり、普段は立ち止まることのない橋の上から、放水路と干潟を眺めました。
 

夏の干潟

夏の干潟
 時には腰をかがめて、低い位置から干潟のいきものを探します。

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 自然博物館 スポットライト ホタルの紹介展示

  毎年7月の下旬から8月の上旬にかけて、「ホタル観賞会」が大町自然観察園で行なわれています。通常、園内には夜間立ち入れませんが、ヘイケボタルの発生にあわせて開園時間を延長し、夜の自然観察園を楽しんでいただくものです。

 ホタル観賞会の期間には、観察園の中にある観賞植物園を会場にして、ホタルについて紹介する展示をおこなっています。ホタルの生活、他のホタルとの見分け方の紹介、幼虫や成虫の姿の写真、よくある質問で「ホタルはなぜ光るのか」「どうやって光るのか」などを解説しています。また、自然観察園のヘイケボタルは、人間が管理することなく、自然の状態で生息していることなども取り上げます。

 この展示をご覧になることで、ホタルの神秘的な光景とともに、ホタルについて少しでも詳しくなって帰宅していただければと思います。
  

昨年の会場のようす

昨年の会場の様子

 

ちょっと学芸員のうらばなし ホタルの卵

土・日曜日の夕方からは、学芸員が交代でホタル展示の会場に詰めています。その時には、パネル展示のほかに、生きているホタルの卵・幼虫・さなぎ・成虫、つまり成長過程の全ての姿を実物でご覧いただいています。じつは、ホタルは卵から成虫には1年間でなるので、成虫が見られる時期にほかの姿は見られないはず……なのです。しかし幼虫は前年から1年がかりで飼育しておけば、成長の遅いものを見ていただけます。さなぎも、飼育している幼虫が蛹化したものを使えます。意外と大変なのが、卵です。展示に間に合うような早い時期に卵を産める雌は、飼育では用意できないので、野外で捕まえて産卵させます。雌は、じめじめの湿地の草の根元にじっとしているので、フワフワと飛ぶ雄のように簡単には捕まりません。やっと数匹捕まえた後は,足は泥だらけ、頭はほこりだらけです。

ヘイケボタルの卵

ヘイケボタルの卵
大きさは1oもありません。
コケの間に産みます。

 

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わたしの観察ノート 


◆大町公園より

  • 曇った日、午前中のわずかな日差しを受けてミドリシジミが翅を開いていました(6月3日)。
  • ニワトコの赤い実が、とてもたくさん実っていました(6月7日)。濃くなった緑の風景にとても映える赤でした。
 以上 金子謙一(自然博物館)
  • マムシグサの写真を撮りました(5月4日)。

◆北国分周辺より

  • 斜面の草むらにオカトラノオがさいていました(6月13日)。群れて咲いていたので、もともとそこにあったのだと思います。

◆江戸川河口より

  • ハマヒルガオに会ってきました(6月20日)。

◆市内某所より

  • キンラン2株、ギンラン5株、めっきり少なくなってしまいました(5月1日)。別の場所では、キンランがあちこちに見られました。うれしいことに今迄なかった所にも。いずれも見事でした。

 以上 谷口浩之さん(北国分在住))
 

◆堀之内周辺より

  • イチヤクソウが蕾をつけてました(5月5日)。4月のキンランに続いてギンランが今年は豊作です。
  • 外環用地は帰化植物の天国です。今まで殆ど見なかったオッタチカタバミ、ノヂシャ(カワヂシャ?)、ヤセウツボが大量に出現(5月5日)。キツネアザミも初見参です。

 以上 道下誠さん(中国分在住)
 

真間山周辺より

  • 斜面林をとぶアオスジアゲハを見ました(4月26日)。
  • 真間山下の斜面林でウグイスがはっきり鳴くのをききました(3月16日)。明るくなった早朝の日差しとともに春を感じます。

 以上 M.T.さん

  • 手児奈霊堂の池にかかるサルスベリの木の枝に、ゴイサギ成鳥1羽が雨に打たれながらじっとしていました(6月21日)

坂川旧河口周辺より

  • 左側土手でモズ親子の姿を観察しました(5月5日)。虫をくわえた親鳥のそばへ行きたい巣立ち雛は、頭と胴体はすでにりっぱなのですが、まだ尾羽が短く、とても愛らしい姿でした。
  • キジの成鳥ペアが、ビオトープ池入口近くのオギ原のへりでエサを採っていました(5月6日)。しばらく観察した後、近づいていきましたが、雄がおとりとなって雌のいる場所から離れたところへ導くようにゆっくりと歩き出しました。もちろん、私は雄の後に従いました。
  • 新堤防上からビオトープ池と坂川旧河口の間の草原の真ん中に、かなり大きなネムノキがあり、今を盛りと幻想的な花をつけているのを見ました(6月28日)。
 以上 根本貴久さん(菅野在住)
気象のようす

日照時間が短く、すっきりとしない天気が続きました。梅雨入りはほぼ平年並みで、雨がしっかり降りました。

 

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