平成21年度 市川自然博物館だより 10・11月号 124号

市立市川自然博物館 2009年10月発行

     

 いきもの写真館  観察地ガイド
 街かど自然探訪  くすのきのあるバス通りから
 拡大花図鑑  自然博物館の活動紹介
 スポットライト  わたしの観察ノート

 


 

いきもの写真館
アオダイショウ ごく身近に見られるヘビです。性格は穏やかですが獲物を襲う時は素早く動きます。写真はモグラを捕まえたシーンで、モグラの大きな前足が哀れです。  撮影者 土居幸雄さん

 

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観察地ガイド 江戸川放水路の干潟

 

夏の顔、冬の顔

   江戸川放水路には、小さいながらも様々な生き物が暮らす干潟があります。誰でも自由に入ることができ、生き物を観察することができます。堤防のサイクリングコースを気持ちよく走る楽しみもありますが、堤防から降りて水辺で生き物とじっくり向き合う楽しみもある場所です。
  生き物の面で言うと、干潟は夏と冬、大きく2つの顔があります。夏の顔は干潟の泥の上がカニで埋め尽くされる光景が代表的です。カニやヤドカリ、エビ、貝、マハゼやトビハゼなどのハゼ類、さまざまな魚の幼魚が現れます。6月から10月ごろが夏の顔に出会える時期で、ちょうど昼間に潮が引く季節でもあります。
  冬の顔は、水面のあちこちでカモが見られる光景が代表です。夏の間にぎわった干潟には生き物の姿はなく、逆に夏の間静かだった水面にオナガガモやマガモ、スズガモなどのカモの姿が見られます。ユリカモメやセグロカモメ、カワウ、アオサギ、ハマシギなども目につきます。11月から5月ごろまで、冬の顔が見られます。
 

夏と冬の入れ替わりを告げる渡り鳥

  地球規模で移動する渡り鳥のシギやチドリは、ちょうど干潟の夏と冬が入れ替わる季節に姿を現します。4月、5月ごろは北への旅の途中に立ち寄り、9月、10月ごろは南へ向う途中に、やはり立ち寄ります。キアシシギやキョウジョシギ、チュウシャクシギ、メダイチドリなどが江戸川放水路ではよく見られます。
  小さなカニやトビハゼがいる干潟にシギやチドリが降り立つ光景は、暮らしぶりがまったく異なる生き物どうしが出会う貴重な瞬間です。つまり、干潟というごく狭い場所で一生を送る生き物と、赤道地帯と北極圏を行き来する生き物との出会いです。もちろん鳥とカニの関係は「食う食われる」の関係に過ぎませんが、小さな干潟のひとつひとつが地球規模の生態系にもかかわっていることを改めて教えてくれます。  
 

杭の上で休むキアシシギ、キョウジョシギ

杭の上で休むキアシシギ、キョウジョシギ

 

[江戸川放水路の干潟]交通案内

  • 電車最寄駅
     地下鉄東西線 妙典駅、原木中山駅

     

  • バス最寄停留所
     京成グループバス 行徳橋北詰、南詰
     

  • 無料駐車場
     行徳橋南詰と妙典小学校前にあります。

現地は、ただの河川敷なので、訪問者向けの施設などはありません。

 

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街かど自然たんぽう

 ちどりちょう
 千鳥町  周辺の海と水路

  千鳥町は、三方を海に囲まれた埋立地です。市川水路は湾岸線の千鳥大橋で仕切られているように見えますが、実は東京湾と直接つながった入り江のような構造です。曲がった細い水路は、東京湾で広範囲に青潮が起こっても侵入しづらく、そのため魚などの逃げ場になっています。また千鳥橋から千鳥水門を経た海水は、行徳近郊緑地(野鳥の楽園)の干潟を潤します。文字通り、チドリ(千鳥)などの生き物のくらしを支えています。

千鳥町周辺図

 

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くすのきのあるバス通りから 第69 トンボが産卵

 

  車のボディが光って水面と見間違えたのか、トンボが産卵しているのを見ました。フロントガラスにも何ヶ所か点々と卵らしき物が線状にあるのが、車内から見えました。そのうち乾いてしまう水たまりに産み付けているのを見ますが、金属やガラスは違い過ぎるでしょう。車のそばにメダカの親とハスの鉢と稚魚の鉢、おせち料理に使わずに植えたクワイの容器の3つを置いてあります。クワイの容器はボウフラがいると水をこぼして水を換えます。メダカの親の鉢は藻が多すぎて泳ぎにくそうなので、稚魚の鉢に親を移しました。メダカの稚魚は100匹以上生まれましたが今は10匹です。ある日クワイの容器の水をこぼすと、泥の表面で動くものがいました。1センチメートル位のヤゴでした。その後もと親の鉢の水を換えると、ここにもヤゴがいました。博物館の方に聞くと「ボウフラではなく、ユスリカの幼虫を食べていると思います」とのことでした。いつトンボになるのか、何トンボなのか楽しみです。   (M.M .)

 

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拡大花図鑑 その4 アカバナ(長い果実)

 
 植物の花のうち、実になる部分を子房(しぼう)と言います。一般的なイメージでは子房は花に包まれている感じですが、花の外にある場合もあります。

  アカバナは、花の柄に見える長い子房を持ちます。花が終わり実が熟すと、長い子房(果実)が裂けて綿毛のタネがふわふわと飛びます。同じアカバナ科のマツヨイグサ類も、やや長い子房が花の外にあります。
 

アカバナ

 アカバナ
  湿地や若い休耕田に生育する
  長い子房の先端にピンク色の花をつける
 

花の拡大(正面)

花の拡大(正面)
 花びらには桜のような切れ込みがある
 めしべの先(柱頭)は大きい

花の拡大(側面)

花の拡大(側面)
 花の柄に見えるのは子房
 がくの外(下)に子房がある(子房下位と呼ぶ)

実がはじけてタネが出てきた
 長い子房は晩秋にはじける
 実の中からは綿毛のあるタネが現われる

実がはじけてタネが出てきた

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自然博物館の活動紹介 季節を感じる散策会

 

8月9日(日曜日) 《キツネノカミソリを求めて》  堀之内貝塚公園
    
参加者 29人(大人28人、中学生1人)
 

真夏の雑木林に咲く花

お花畑を楽しみました

  夏の雑木林の中は、蒸し暑くやぶ蚊も多いため、目的がなければなかなか立ち入ることはありません。キツネノカミソリは8月上旬の真夏に、突如林の中に群落が現われ、花を咲かせます。ヒガンバナの仲間ですが、春先に芽吹いた葉が一度枯れてしまった後に、ニョキニョキと花の茎が伸びてくるので、気づかれることなく、花が咲き終わってしまうのです。

  当日は満開は少し過ぎたようでしたが、多数の花が咲き、薄暗い林内にオレンジの花がとても鮮やかでした。キツネノカミソリの花のつくりをみたり写真に収めたりとたっぷりと楽しめました。その後、公園の中をひと回りしながら、林の構造と植物の関係や、林内で見られる植物の名前と特徴などについて、解説しました。

林内のキツネノカミソリ群落

 

9月13日(日曜日) 《フジバカマ探訪》  坂川旧河口周辺
    参加者 大人29人
 

坂川旧河口

秋晴れの散策日和でした

   坂川旧河口周辺は、フジバカマを代表とする千葉県内でも貴重な植物が生える場所でした。数年前の大規模な堤防の改修工事の時には、それらの植物に様々な配慮がなされました。特にフジバカマは、工事の間中ボランティアの方々に大切に育てられた株が、現在の場所に移植されました。毎年ボランティアの方々による季節ごとの手入れがされていて、今ではかつてよりも見ごたえのある群落になっています。

  今年はフジバカマがまばらな感じでしたが、花の時期は丁度よくきれいな花を見ることができました。前日の雨で道がぬかるんでいたので、ゆっくりと花を楽しみながら進みました。その後、土手に上がって、河口の歴史や周辺の地形などについて解説をしました。晴れた空にうっすらと富士山の姿も見え、気持ちの良い秋の日でした。

フジバカマ群落を前にして

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 自然博物館 スポットライト カマキリ水槽

  最近は長方形の箱型水槽でも、縦に細長い形や片面が傾いたものなど、いろいろな形があります。今年は縦長水槽で、カマキリを飼ってみました。

  バッタ類は地面にいて、草によじのぼる程度なので高さはそれほど必要ありません。カブトムシなどはほとんど底から動かないので、逆に平たい水槽が向いています。カマキリは、比較的上下の移動をよくするので、丈長の草を入れたレイアウトにすると、カマキリがよく動いて、見ごたえある水槽になります。プラスチックの水槽ならば、横倒しにして、代用することもできます。

カマキリを展示した水槽

ちょっと学芸員のうらばなし 水槽の選び方

 「この生き物にはこの水槽」という決まりはありませんが、「この水槽にはこの生き物を入れたい!」というこだわりはあります。形にこだわったカマキリ水槽は後者です。水槽の大きさもその生き物の行動を考えて選びます。
 よく動き回る魚やカニなどは、少し大きめの方が見ていて楽しい水槽になります。ヘビは細長くグルグル折れ曲がるので、体の長さよりも水槽の幅が狭くても窮屈には見えず、逆に動きが面白くなります。水場と陸地を利用するイモリやカメの仲間などでは、見た目は水槽の中が手狭です。展示場所は限られているので、大きな水槽ばかりでは、展示する種類が減ってしまい、またどこに何がいるのかわからずつまらなくなってしまうこともあります。
 できるだけ、生き物にとっては居心地よく、皆さんからはよく見えるように、工夫しながら展示をしています。

 

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わたしの観察ノート 


◆大町公園より

  • セミの鳴き始め
     ニイニイゼミ、ヒグラシ(7月5日)
     ミンミンゼミ(7月19日)
     アブラゼミ(7月22日) 

 宮橋美弥子(自然博物館)

  • 散策路側からの観賞植物園入り口に植えてあるアジサイの葉の上にフタオビミドリトラカミキリがいました(7月12日)。

◆宮久保より

  • 県道沿いの樹々の生い茂っている住宅街から、ニイニイゼミの鳴き声を確認しました(7月4日)。交通量の多い所でしたが、高木が生い茂っている所には、まだニイニイゼミがいるんだなと実感しました。

◆江戸川放水路より

  • 堤防に生えている草むらの中に、シロヘリクチブトカメムシがいました(7月19日)。

 以上 K.H.さん(船橋市在住))
 

◆柏井キャンプ場より

  • 広場や畑でたくさんのウスバキトンボが見られました(7月25日)。南風が強く雲が流れる中で、ずっと飛びつづけているトンボを、一緒にいた皆さんがナツアカネとは違って「とまらないね。」と話していました。

 須藤治(自然博物館)
 

真間山周辺より

  • 真間山下の斜面林でミンミンゼミに混じってツクツクホウシが鳴いていました(7月30日)。去年より早く気づきました。

 M.T.さん
 

◆中国分より

  • 玄関の灯りにビロードカミキリがいました(7月5日)。
  • 梨園わきの道路と畑を2羽コチドリがいったりきたりしてました(7月17日)。近くでヒナの声がしていて親が警戒していたようでした。

◆堀之内周辺より

  • 歴史博物館の森にマヤランとサガミランモドキの妖精のような姿がありました(7月12日)。夕刻でしたので不思議な美しさでした。

 以上 道下誠さん(中国分在住)
 

坂川旧河口周辺より

  • 本日、いきなりセッカのさえずりがオギ原によみがえりました(7月19日)。6月はまったく声が聞けませんでしたが、繁殖期にはおとなしくなるだけのことなのでしょうか。
  • オギ原の江戸川沿いを上流方向から低く飛んできたハチクマ1羽が、ビオトープ池近くのツル植物にすっぽり覆われた立木にとまりました(8月23日)。しばらく休んでから、国府台台地の斜面林の一番上付近の木に移動し、ここでもじっと休んでいるようでした。2006年8月27日、道免き谷津で見て以来の観察です。
 以上 根本貴久さん(菅野在住)
気象のようす

7月14日に梅雨明けしましたが、その後は曇天が続きました。猛暑日の無い夏で、8月は秋を思わせる天候でした。

 

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