平成21年度 市川自然博物館だより 12・1月号 125号

市立市川自然博物館 2009年12月発行

     

 いきもの写真館  観察地ガイド
 街かど自然探訪  くすのきのあるバス通りから
 拡大花図鑑  自然博物館の活動紹介
 スポットライト  わたしの観察ノート

 


 

いきもの写真館
アオジ 秋から春まで市川で過ごします。木や草の種が大好物です。春にはスズメノカタビラの種子を、くちばしで上手にしごいて食べていました。  撮影者 土居幸雄さん

 

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観察地ガイド 長田谷津(大町公園・自然観察園)

 

市川市の自然財産

   動植物園や自然博物館がある大町公園には、「自然観察園」と呼ばれる区画があります。ここは、かつて「長田谷津(ながたやつ)」と呼ばれた細長い谷(谷津)を一部保全して残した場所で、昭和48年に「大町自然公園」として開設され現在に至っています。観光施設としての色合いが強い動物園や観賞植物園とは異なり、本来ある自然環境を活かす形で整備され、多くの方に利用していただいています。
  湧き水、湿地、斜面林がセットで保全されている場所は市内ではここにしかありません。市川市の「自然財産」と呼ぶにふさわしい場所で、自然博物館でも長田谷津をフィールドにしてさまざまな活動を実施しています。
 

湿地・斜面林そして梨畑

   長田谷津のすばらしさは、四季を通じて体験することができます。たとえば春は、新緑や青葉の風景、さまざまな野草の花が見どころです。夏は昆虫たちの力強さに谷津全体が包まれ、飛び交うトンボ、セミの声、木の枝や湿地の草むらのそこここに虫たちの営みを見出すことができます。秋は色づいた木々と咲き誇る野草が見どころとなり、冬には野鳥観察を楽しむことができます。また、年間を通じて散策することで、季節の移り変わり、日々の変化を体験することができます。
  長田谷津の自然にとって、水は生命線です。斜面裾から滲み出した水が細い流れを作って湿地を潤し、開けた水面や池に流れ込んで多様な水辺を作り出しています。そして、この水を供給しているのは、じつは大町公園周辺の台地に広がる梨畑なのです。梨畑は、当然のことですが土がむき出しです。雨水の排水が完備された住宅地と違い、雨水はほとんどそのまま地面に滲み込みます。その水が地下に貯えられ、長田谷津に滲み出してくるわけです。長田谷津の自然は、梨畑まで含めた中で支えられているのです。

 

長田谷津の夏の風景

長田谷津の夏の風景

 

[長田谷津(大町公園・自然観察園)]交通案内

  • 電車最寄駅
     北総鉄道 大町駅

     

  • バス最寄停留所
     京成バス 動植物園、大町
     

  • 有料駐車場
     動物園入口にあります。

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街かど自然たんぽう

  とうかぎ
 稲荷木  かつてのランドマーク、一本松

  行徳街道を行徳橋から八幡方面に向かって進むと、京葉道路の手前左側に小さな祠と松の緑が見えます。道路沿いのバス停名は「一本松」です。お地蔵様の奥には、胸の高さぐらいで切られた切り株が残っていました。直径は60センチメートルを超え太さは大人でも抱えられないくらいあります。博物館にあるクロマツの切り株は直径約48センチメートルで年輪が約90年ですから、少なくとも100年は超えた松と思われます。いまの街の風景で突き抜けて見えるのは高層ビルや清掃工場の煙突ばかりですが、この切り株からだけでも、かつて周辺が 見渡す限り水田だった頃の堂々とした姿が思い描けます。

かつて一本松が生えていた場所
かつて一本松が生えていた場所。
 松と石造物の後ろに隠れていて、切り株は通りからは見えない。
 左下が残された切り株。上に蓋がされている。

 

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くすのきのあるバス通りから 第70 エチゼンクラゲを見ました

 

  10月29日、静岡県西伊豆町字久須の堤防で釣りをしていました。連れが「クラゲだよ」と呼ぶので近づくと、直径1メートルのエチゼンクラゲでした。カメラを取りに車に戻ろうとしたら、「あっ、行っちゃうみたい」と言うので見ると、ふわん、ふわんと消波ブロックから離れていくところでした。1匹だけ、湾のなかの堤防の突端まで来て沖へ行ってしまいました。案外早く動きました。オレンジがかった肌色でした。その日の朝、地元新聞の2紙に「駿河湾で数百匹確認」とあったので、迷子だったのでしょうか。漁業関係者は大変被害を受けているそうです。銚子では網にたくさん入り転覆したそうです。海で2〜3種類のクラゲを見たり、触ってしまったことがあります。水族館では「きれいだなー、優雅におよぐなー」と感激しますが、エチゼンクラゲのあの大きさは迷惑なだけです。   (M.M .)

 

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拡大花図鑑 その5 ヤツデ(小さな花を大きく)

 
 何気なく見過ごしている花でも、拡大して見るとまったく別の姿に驚くことがあります。
 晩秋から冬にかけて咲くヤツデも、ふつうは花が脚光を浴びることはありませんが、拡大して見ると、きちんとした形の花に驚きます。
 また、花盤(かばん)と呼ばれる盛り上がった部分に蜜の固まりが見え、実際、ひとつつまんで舌先で触れてみると、甘みを感じます。
 

ヤツデの花序(かじょ)

 ヤツデの花序(かじょ)
  大きな葉が茂る中から茎を伸ばし、 枝分かれした先に花の集まりをつける。
 

小さな花の集まり

小さな花の集まり
 花序の球状の部分には、小さな花が行儀よく並んでいる。

花ひとつの拡大

花ひとつの拡大
 中央に短い雌しべがあり、周囲に雄しべと花びらが5個づつ、交互に並んでいる。
 中央の丸い部分は花盤と呼び、盛り上がっていて蜜を分泌する。
(写真では、蜜が固まっていてガラス状に見える)

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自然博物館の活動紹介 季節を感じる散策会

 

10月18日(日曜日) 《秋の田んぼ》  親子ふれあい農園〜市営霊園
    
参加者 17人(大人16人、 小学生1人)
 

秋の野歩き

お花畑を楽しみました

  今年4月の散策会で歩いたコースを、秋の風景を楽しみながら再度歩きました。田んぼのあぜなど土の道をたっぷり通ります。 タイトルは秋の田んぼですが、ふれあい農園の稲刈りの終わった田んぼ以外に、ナシ畑の間の農道や市営霊園の草原などの植物もじっくり見て歩きました。

  天気に恵まれて、歩くだけで気持ちの良い日でした。田んぼや畦の野草の他にも、たくさんのイナゴや優雅に歩くダイサギも見られました。参加者の方の案内で途中少し寄り道して、青い実の美しいイシミカワの群生も見ました。少々行程が長く、お疲れになった方もいらっしゃいましたが、頑張って歩いて12時には集合場所へ戻りました。4月に参加してくださった方も多くいらして、秋を楽しんでいただけました。

野の草花を楽しむ

 

11月15日(日曜日) 《紅葉の季節》  大町公園
    参加者 大人20人
 

木の葉の移り変わり

見ごたえのある紅葉でした

   まだ走りの紅葉を、ゆっくり歩いて楽しみました。紅葉の仕組みや、太陽に向かって歩いた場合と背にして歩いた場合の見え方の違いなども説明しました。また、新緑から青葉、盛夏を経て紅葉、落葉へと至る時間の流れの中での、葉の機能や色素の状態についても説明しました。

  開催の前週は、嵐のような雨風の荒れた天気が多かったのですが、当日は青空が広がり数日ぶりの気持ちのよい日でした。数日の間に、一気に紅葉も進みました。  モミジの紅葉のほかにも、梨畑のナシの黄葉や、真っ赤なツタの葉柄だけが残っている様子も見られました。ニシキギやカマツカの紅葉、ヤマコウバシの橙色の葉などを、参加者の方々は盛んに写真に収めていらっしゃいました。

紅葉を楽しむ

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 自然博物館 スポットライト 赤ちゃんかたつむりが、たくさんかえりました

  春から直径が3センチメートルほどのミスジマイマイを3匹飼っています。9月にそのうちのどれかが、水槽の底や側面に直径3ミリメートルぐらいの白い卵をバラバラと産みました。同じ水槽に入れておくと卵がつぶされてしまうので、コケを取ってきてその上に移し、別の小さな水槽で様子を見ました。

 飼育の本には1ヶ月ほどで孵(かえ)ると書いてありましたが1ヶ月半ほどしてあきらめた頃に次々と孵りはじめ、11月までに半分以上の卵が孵りました。一般的に多くの貝は、産まれた時は親とは似ても似つかない姿をしていますが、ミスジマイマイなどのカタツムリ類は、体が小さいだけで親とそっくりです。二本の「つの」を出し、一回半ぐらい巻いた殻を背負ってよく動き回ります。
 

かえって約1ヶ月のカタツムリ
 孵って約1ヶ月のカタツムリ。
   いっしょに写っているのはつまようじの頭。

ちょっと学芸員のうらばなし カタツムリのうた

  「幼稚園でカタツムリの歌を教えてもらってきました。生きているカタツムリを見たことがなかったので、パパと家のまわりを探したのですが、見つからなくて・・・。」というお母さんのお話がきっかけで、博物館でカタツムリ(ミスジマイマイ)を飼いだしました。来館者の方からも「大きなカタツムリ!」「久しぶりに見たね!」という声が聞こえてきます。
  カタツムリは、わざわざ探さなくても雨上がりには目にする、そんな生き物です。博物館の周りでも、以前は園内にある木のベンチの下をのぞけばたいてい数匹は見つかりました。ところが、いつの間にか木のベンチがプラスチック製に変わっていて、もちろんそこではカタツムリは見つかりません。身近ないきものが、気が付いたら見あたらない、歌の中にしか登場しなくなれば、とても寂しいことです。

 

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わたしの観察ノート 


◆大町公園より

  • ツリフネソウが見ごろになりました(9月6日)。日向の株は葉が少し縮れた感じでしたが、日陰の株はきれいでした。
  • 生まれたばかりのイオウイロハシリグモの子グモたちの巣「まどい」があちこちで見られました(9月17日)。つっつくといっせいに散らばって行きました。

◆大野町より

  • 市営霊園の草原的な環境の場所に、ツリガネニンジンが咲いていました(10月17日)。一度草刈されているので背は低かったですが、花はきれいでした。
  • ふれあい農園の稲刈りの終わった田んぼに、水田雑草がいろいろ咲いていました(10月17日)。スズメノトウガラシやヤナギタデ、イヌタデ、ヨメナ、ミゾソバ、イチョウウキゴケなどが目に付きました。

 以上 金子謙一(自然博物館)
 

◆大町より

  • 秋分の日、梨畑の柵の先端や隣接するシラカシの梢などで、モズが「高鳴き」をして縄張り宣言をしきりにしていました(9月23日)。前日までは耳にすることができませんでした。

 須藤治(自然博物館)
 

◆南大野より

  • 大柏川に数羽のユリカモメが上手に旋回しながら下りて行きました(10月30日)。真っ白な体がとてもきれいでした。

 宮橋美弥子(自然博物館)
 

堀之内周辺より

  • キツネノカミソリが咲き終わった斜面に、ツルボが咲き始めました(9月1日)。

 谷口浩之さん(北国分在住)
 

◆里見公園より

  • くちばしに虫をくわえて、サクラの木にとまる赤色型カッコウ科1羽を見ました(9月5日)。胸の横斑と体の大きさから、おそらくホトトギスと思われます。
  • イカル2、3羽がキョッ、キョッと鳴きながら飛び回り、時折、良い声でさえずっていました(10月31日)。

◆坂川旧河口周辺より

  • 江戸川沿いのヤナギ類の木とその隣のオニグルミにアリスイが1羽ずつとまっていました(9月22日)。これまで、アリスイが鳴き交わす声を聞いたことがあり、2羽いると思ったことはありました。しかし、2羽同時に姿を見たのは今日が初めてです。
  • タゲリ2羽がふわふわとした飛び方で江戸川を下って行きました(10月31日)。4年ぶりの観察です。

 以上 根本貴久さん(菅野在住)

  • フジバカマの群落がちょうど見ごろでした(9月12日)。今年は群落がまばらで、例年の豪華さはありませんでした。

 金子謙一(自然博物館)

気象のようす

10月8日に台風18号が通過しました。雨はほとんどなく猛烈な風が吹き荒れました。
海から塩風が吹き付けました。
少雨の9月と気温変動の大きい10月でした。

 

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