平成22年度 市川自然博物館だより 4・5月号 127号

市立市川自然博物館 2010年4月発行

     

 いきもの写真館  長田谷津 いきもの暦
 拡大花図鑑  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  自然博物館 スポットライト
 わたしの観察ノート  

 


いきもの写真館
キンラン 春早い花がひと段落して、雑木林が新緑から青葉になった頃、林の中で花を咲かせます。鮮やかな黄色が印象的です。  撮影者 土居幸雄さん

 

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長田谷津いきもの暦 4月・5月の暦から

 

 
  市立市川自然博物館では、長田谷津(大町公園自然観察園)で、20年にわたり、学芸員が自然観察の結果を記録してきました。この自然観察記録を元に企画展「長田谷津いきもの暦」を平成22年2月20日から平成23年1月30日まで開催します。毎月展示を替えて、その月の見所をパネルや標本、実物飼育などで紹介します。また、企画展にあわせて20年分の自然観察記録を暦形式で掲載した ガイドブック「長田谷津いきもの暦」を発行しました。
 
 この記事内容は、ガイドブック「長田谷津いきもの暦」の一部を参考にご紹介していきます。
 

● 4月6日 ふらふら飛ぶシオヤトンボ

 
  シオヤトンボは、春の谷津を代表するトンボです。かつては至る所の谷津田で見られたのでしょうが、最近は水の管理が行き届いた乾いた田んぼが多くなり、シオヤトンボの幼虫には住みにくくなりました。群れ飛ぶ場所もずいぶん減ったようです。
 
 長田谷津では湿地の管理スタイルがシオヤトンボに合うようで、ここ数年、特に多く見られるようになりました。まだ肌寒い日もある4月にトンボが見られることに、来園者の方々も驚かれています。ちなみに「ふらふら飛ぶ」のは羽化間もない成虫だからで、2007年4月6日に観察しました。
 

シオヤトンボ
 

 

4月19日 動物園のジロボウエンゴザク

 
  ジロボウエンゴサクは、ムラサキケマンによく似た形の花を咲かせる野草です。ムラサキケマンよりも花色がずっと淡く、葉っぱも小さくて清楚な印象です。市川市内では生育場所はあまりありませんが、動物園の親水ゾーン(人工の滝がある一帯)に群生していて、年々、数も増えているようです。
 
  木々の葉がある程度芽吹いてから花を咲かせる野草は、淡い陽光を好みます。強すぎず弱すぎずの光が差し込む親水ゾーンの環境が、ちょうどジロボウエンゴサクに適していたようです。動物園のフェンス沿いに多く見られ、2008年4月19日に観察しました。
 

ジロボウエンゴザク
 

 

5月4日 おとしぶみのゆりかご

 
  葉っぱに切り込みを入れて巻いて中に卵を産みつけるのが、オトシブミ類のゆりかごです。種類によっては最後にゆりかごを切り落とすので、落ちているゆりかごを「巻き文」に見立てて、オトシブミと呼びます。
 
 長田谷津ではエゴツルクビオトシブミという種類がよく見られます。エゴノキの葉を巻いたゆりかごがいくつもぶら下がった様子は不思議な光景ですが(この種類は切り落とさない)、そのゆりかごを作った虫の姿も一風変わっています。「ツルクビ」の名の通り、特にオスは長い首があるように見えます。2008年5月4日に観察しました。
 

エゴノツルクビオトシブミ
 

 

5月22日 ハナイカダの実

 
  葉っぱの上で小さな花を咲かせるハナイカダは、自然観察会などで人気の低木です。最近は手入れのいい里山が増え、ハナイカダのような低木は真っ先に切り払われてしまうので、出会う機会が減ってしまいました。
 
 長田谷津では東側(左岸側)斜面林に沿った園路などに何株かあり、花や実を見ることができます。雄株と雌株があり、長田谷津の観察場所ではちょうどそろって生えています。もちろん雄株の方は花が終わればそれまでですが、雌株では花があった場所にかわいらしい実がついていることがあります。2008年5月22日に観察しました。
 

ハナイカダの実
 

 

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拡大花図鑑 その7 アブラナ科 十字花と呼ばれた形

  春の野を飾る菜の花をはじめ、アブラナ科の植物は野草や有用植物として、わたしたちの身近な場所に多くあります。花のつくりは特徴的で、特に4枚の花びらが十字の形に並ぶ様子は、ひと目でアブラナ科の花だと判別することができます
 
 かつて、このグループに対して「じゅうじばな」の呼称が充てられましたが、花の形を知れば納得です。
 

クレソンの花
 

クレソンの花
  アブラナ科の花の基本形は、4枚の花びら、6本の雄しべ、1本の雌しべです。このうち雄しべは、大きい雄しべ4本と小さい雄しべ2本に分かれています。普通、花びらが4枚なら雄しべは4本、8本……と4の倍数になります。6本という半端? な数については、もともとは4本の雄しべがあって、そのうちの2本が2つに分かれたので6本になった、と説明されています。確かに、花びらと互い違いの位置にあった4本のうち、大きい2本が分かれて4本になったと考えると、本来、雄しべは花びらと互い違いの位置にあるのに、大きい4本が花びらと同じ位置にあることも納得できます。

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街かど自然たんぽう

中国分・じゅん菜池緑地のある谷津

   谷津の地形を活かした公園は、いくつかあります。大町自然観察園や弁天池公園、鎌ケ谷市の貝柄山公園は、谷津の最上流部ですが、じゅん菜池緑地は大きな谷津の途中を切り取って公園にしています。公園の池から流れ出した水はすぐに暗渠に入ってしまいますが、たどると市川西高校付近で国分川に流れ込み、谷が国分川とつながっているのがわかります。公園の北側で地形はふた手に別れ、上流はさらに北へ向かっています。西側は市境を越えて、松戸市の下矢切付近まで伸びています。松戸街道が北総線矢切駅の側で坂を下って上るのは、実はこの谷津の延長になります。

じゅんさい池周辺の地形概念図
 

 

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くすのきのあるバス通りから 第72 冬から春へ

 
   この冬は、平均気温は例年より高いので、暖冬だそうです。暖かい日の翌日がものすごい寒さになったり、雪が何度も降ったりしたので実感がわきません。庭の雑草は例年より活動が早いようです。1月中に細かいハコベの芽で、土の上が一面黄緑色になりました。2月になると立ち上がって、厚みを増して、天気の日には花を咲かせていました。砂利のところは、ハコベ、ウシハコベ、ゲンノショウコ、ホトケノザ、ヒメオドリコソウの一株一株がこんもりとしています。3月になると、小さい虫(ショウジョウバエではない)が部屋の中に入ってきました。娘の情報によると、「八幡5丁目の道でカエルが車にひかれていた。門柱でカナヘビがひなたぼっこをしていた」そうです。今は一面のハコベの中に細いノビルが沢山突き出ています。ハナニラも咲きだしました。
 
  3月9日には、静岡県下田市で「つばめ」を見ました。  (M.M .)

 

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自然博物館 スポットライト 3月の特別展示室より

 
春の七草

   企画展「長田谷津いきもの暦」の実物展示として、春の七草を展示しました。実際には「スズナ」「スズシロ」を除いた5種類です。このうち、セリ・ナズナ・ゴギョウ(ハハコグサ)・ハコベラ(ハコベ)は長田谷津や大町地域で調達しましたが、ホトケノザ(タビラコ)だけは近隣市の田んぼに生えているものを利用しました。
 
 
 いずれも数鉢用意し、事務室の窓辺で陽光に当てながら交代で展示室に飾りました。タビラコは順調で、展示中に次々花を咲かせてくれて楽しめました。意外にむずかしかったのがナズナで、花茎は元気でしたが根生葉がすぐしおれて困りました。
 

春の七草の展示


春の七草の展示。手前左から、ハコベ、タビラコ、ハハコグサ。奥左からナズナ、セリ。

どんぐりの芽生え

   企画展開催当初の実物展示で人気があったのは「どんぐりの芽生え」の展示でした。これは根が生えたコナラのどんぐりを鉢植えにしたもので、どんぐりから根が生えているようすや、殻が割れて子葉(どんぐりの中身)が顔を出しているようす、子葉の柄の中心から新しい本葉が伸びて開いたようすを時系列で観察することができました。
 
 
 コナラのどんぐりから伸びた苗(実生)は、もともと青葉に包まれた雑木林の柔らかい光の下で成長します。展示室の照明では光量不足かなと思っていたら、かえって少なめの光が合うようで、元気に成長しています。
 

コナラのどんぐりの芽生え


コナラのどんぐりの芽生え。すでに本葉が数枚開いている。平鉢に5〜6個のどんぐりを植えた。

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わたしの観察ノート 


◆大町公園より

  • ニホンアカガエルの卵塊数がエコアップ池だけで100個を越しました(1月23日)。1月12日の雨と、その後の雨の2回の産卵機会でこの数ですから本格的な産卵行動が始まったと思われます。例年よりほぼひと月早いです。

 金子謙一(自然博物館)

  • 湧き水の流れでは、セリとクレソンが早くも繁茂していて、緑色の葉が鮮やかです(1月29日)。新芽は柔らかでとてもおいしそうです。

 宮橋美弥子(自然博物館)

◆柏井緑地より

  • 福寿草が咲きました(2月7日)。

 佐久間直次さん(柏井町在住)
 

◆真間山より

  • 南側の斜面林でジョウビタキを見ました(2月23日)。低い木や杭を渡って飛んでいきました。

 M.T.さん
 

◆坂川旧河口周辺より

  • オオタカ亜成鳥1羽が、ビオトープ池先江戸川べりのヤナギ類の木に静かにとまっていました(1月1日)。元旦だからではないと思いますが、とくにカラスの群れに取り囲まれるということもありませんでした。
  • 水路側に張り出した落葉低木の枝にアリスイ1羽が何処からともなく飛んで来てとまりました(2月6日)。しばらく、あちらこちらと頭を動かした後、再び、何処へともなく飛び去りました。
  • その直後、今度は、同じ木の上方の枝から枝へと極めて小さな鳥が動き回っているのに気が付きました。はじめは逆光だったため、メジロかと思いましたが、体型が少々違います。次に思い浮かんだのはキクイタダキでした(それでも、一帯では初認です)。動くにつれて、その小鳥が順光の領域に入った途端、紛う方なく、ムシクイであることに驚かされました。翼には目立つ黄白色の筋がはっきり見えることから、キマユムシクイと確信しました。一帯どころか、生涯ではじめての観察。わたしのフィールド内での162種目となりました。
     

◆国府台より

  • 江戸川上空で鳴き騒ぐカラスの声に空を仰ぐと、茶褐色で翼の長細い鳥と、それを取り囲むようにして追うカラス4、5羽が見えました(2月6日)。慌てて双眼鏡を目に当てると、カラスをあしらいながら下流方向へ移動するコミミズク1羽の姿が見えました。

 以上 根本貴久さん(菅野在住)
 

  • オオハナワラビが何株か、見られました(2月16日)。胞子葉はもう大半が枯れてしまったようで、栄養葉が目立ちました。

 金子謙一(自然博物館)
 

気象のようす

1月に4月並の気温の日があったりと温度変化が激しかったです。2月は雨や曇りの日が多く、雪もよく降りました。

 

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