平成22年度 市川自然博物館だより 6・7月号 128号

市立市川自然博物館 2010年6月発行

     

 いきもの写真館  長田谷津 いきもの暦
 拡大花図鑑  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  自然博物館 スポットライト
 わたしの観察ノート  

 


いきもの写真館
オオアヤシャク いわゆる尺取虫は、シャクガ科の蛾の幼虫です。枝に化けるのも得意で、オオアヤシャクはコブシの新芽にそっくりです。  撮影者 土居幸雄さん

 

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長田谷津いきもの暦 6月・7月の暦から

 

 
  市立市川自然博物館では、長田谷津(大町公園自然観察園)で、20年にわたり、学芸員が自然観察の結果を記録してきました。この自然観察記録を元に企画展「長田谷津いきもの暦」を平成22年2月20日から平成23年1月30日まで開催 中です。毎月展示を替えて、その月の見所をパネルや標本、実物飼育などで紹介します。また、企画展にあわせて20年分の自然観察記録を暦形式で掲載した ガイドブック「長田谷津いきもの暦」を発行しました。
 
 この記事内容は、ガイドブック「長田谷津いきもの暦」の一部を参考にご紹介していきます。
 

● 6月13日 かなりの数のミドリシジミ

 
  美しいミドリシジミは、長田谷津の真ん中付近、ハンノキ林に生息します。幼虫の餌がハンノキの葉であるため、一生の大半はハンノキ林で送ります。しかし6月に姿を現す成虫は、ハンノキ林では餌の蜜が得られないので(ハンノキの花は2月。風媒花なので蜜がない)、より広い範囲で行動します。
 
  ミドリシジミが活発に飛び回るのは夕方6時ごろになります。閉園後の時間帯なのでその姿をご覧いただけませんが、日中、蜜を求めてハンノキ林を出た成虫に出会えることもあります。辛抱強く待てば、翅を開いて美しい緑色が見られることもあります。
 

ミドリシジミ
 

 

6月21日 ハンゲショウが咲いていた

 
  梅雨に入った6月下旬は、春のころの風景がウソのように花が見られなくなります。もちろんカヤツリグサ科などの地味な野草は花を咲かせていますが、人目を引くものは多くありません。そんな中、見ごたえのあるのはハンゲショウです。6月中旬、花の時期を迎えると花に近い葉の半分から全体が白くなり(半化粧)、花びらの代わりになって虫たちを呼び寄せます。本当の花は小さくて花びらがありません。ドクダミの白い花びら(本当は特殊な葉っぱ)とおなじ理屈です。
 
  花が終わると「化粧」する理由もなくなり、白かった葉は緑色に戻ります。
 

ハンゲショウ
 

 

7月12日 メジロがイヌザクラの実に……

 
  7月は、5月に咲いたイヌザクラが熟しはじめ、「食べごろ」の実が目につきだします。秋にはムクノキに大小の鳥が集まって実をつつきますが、梅雨明けに熟すイヌザクラの「さくらんぼ」は、ひと足早いご馳走です。長田谷津で暮らす野鳥は甘い実が大好物で、子育ての終わったメジロが見つけて品定めをしていました。
 
 果実酒で有名なウワミズザクラの収穫は鳥と人の競い合いになります。長田谷津のイヌザクラは、すべて鳥たちの餌になります。
 

実のついたイヌザクラ
 

 

7月19日 アマチャヅルが咲いていた

 
  梅雨が過ぎ、中・大型の草が伸びてくると、それらに巻きつくツル植物も旺盛になってきます。長田谷津ではカナムグラやカラスウリ、スズメウリ、ヤブガラシ、ツルマメなどが目立ち、その中にアマチャヅルを見つけることもできます。
 
  アマチャヅルはモミジのように分かれた5枚の葉を持つ柔らかなツル草です。7月ごろから咲き出し、長く伸びた枝に小さな花をいくつも咲かせます。一見、ぱっとしない花ですが、拡大すると星を思わせる素敵な形をしていて感激です。
 

アマチャヅルの花(拡大)
 

 

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拡大花図鑑 その8 ネムノキ 雄しべで虫をよぶ花

 うっとうしい梅雨空の下で咲くネムノキは、鮮やかなピンク色が印象的な植物です。一般的にはマメ科に入れられていますが、ネムノキ科に分ける考え方もあります。
 
 特に花の形は、いわゆる蝶形花となる多くのマメ科と異なっており、多数の長い雄しべが花の外まで伸び出す独特な形をしています。フサアカシア(いわゆるミモザ)もネムノキ科に入り、花のつくりが似ています。
 

たくさんの花が集まって咲くたくさんの花が集まって咲く

 一つずつの花は、ブラシのような感じ
一つずつの花は、ブラシのような感じ
 

ネムノキの花の構造(拡大)

ふつう、おしべは花の中にその大半が収まっているが、ネムノキでは逆に「がく」と「筒になった花びら」が「おしべ」を束ねて支える役目に徹している。
 

ネムノキの花
  ネムノキの花は、筒状のがく、筒状で先が分かれた鐘状の花びら、そこから長く伸びだす多数のおしべと1本のめしべから成っています。花として目立つのは長く伸びたおしべで、ピンク色の花色もこのおしべの色によっています。

 一般に花を花らしく見せる「部品」は花びらということになっていますが、これは必ずしも鉄則というわけではありません。花の根本から先端に向けて並ぶ、がく・花びら・おしべ・めしべ、さらに、がくの下に位置する苞(ほう)。虫を呼ぶために、これらのうちのどれかを大きくして色をつけ、目立たせればいいのです。

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街かど自然たんぽう

中山・スダジイに生えるノキシノブ

   法華経寺の荒行堂前に、大きなスダジイがあります。太い幹とこんもりとした樹形がとてもきれいです。幹の真下から見上げると、葉のほとんどは枝先についていて、まるで丸天井の下にいるようです。薄暗いむき出しの幹や枝には、たくさんのノキシノブがついていました。シダの一種のノキシノブは、日当たりの悪い北側の軒下によく生えています。陽が遮られたスダジイの空間はいごこちが良いようで、あちらこちらの枝から、細長い葉がもじゃもじゃとたくさん生えていて、びっくりです。

スダジイの幹にはえるノキシノブ
 

 

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くすのきのあるバス通りから 第73 アオスジアゲハをさがす

 
   今年になって、アオスジアゲハは一度しか見かけていません。街路樹の剪定の時期が影響しているのかもしれません。冬の間、どこでサナギになっているのかも気になっていて通りがかるたびに見ていました。今は新芽がしげり、花をつけています。八幡5丁目あたりから冨貴島小学校までの道の両側のクスノキを丹念に見て歩きました。「幼虫がいるかも」期待していたところ、なんと、抜け殻のサナギを見つけました。幼虫が休んでいる時と同じように、葉の裏側の中心の葉脈の上にありました。

抜け殻のサナギ
  (M.M .)

 

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自然博物館 スポットライト 5月の企画展より

 
ナナフシ

    ナナフシは、以前から飼育展示によく使っている昆虫です。比較的大きくて子どもたちの目にもわかりやすく、また、動作がゆっくりで変わっているため関心を引きやすいからです。怖くないことも重要ですし、博物館の側からすると植物食で飼いやすく、ナナフシそのものも餌になるコナラの葉も簡単に入手できることが好都合です。
 
 
  今回の企画展では、生まれたばかりの幼虫から展示をはじめました。こういう成長を見せる展示は人気です。着実に大きくなるナナフシの姿を、夏まで継続してお見せしていきます。
 

ナナフシの飼育展示


幅120センチの水槽にコナラの枝を入れ(水挿し)、そこに20匹以上のナナフシの幼虫を入れました。コナラは2セット用意し、交互に新鮮なものを与えています。

コオイムシ

    昆虫少年(もちろん少女も)にとって、水生昆虫は特別な存在です。水中生活を送るという生態や、他の生き物を捕まえるという行動が魅力的なのでしょう。普段なかなか出会えないことも、理由の一つかもしれません。
 
 
  長田谷津にはコオイムシ(あるいはオオコオイムシ)が生息しています。園路を歩いていても見られないので、水槽に入れて飼育展示をしています。名前の由来である卵を背負ったオスを捕まえてきて水槽にいれたのですが、まもなく幼虫が生まれてしまいました。生き餌なので飼育は大変ですが、小さなコオイムシで水槽はにぎやかになりました。
 

飼育展示と卵を背負ったコオイムシ(右上)


ガラス製の丸水槽で飼っています。水深は浅くし、止まれるように草を入れてあります。餌は水草の栽培水槽(屋外)に発生するミズムシやイトミミズ類、ミジンコなどで、数日置きに入れています。

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わたしの観察ノート 


◆市川東高校周辺より

  • 北側の桜並木の1本から、桜の花が2輪咲いていました(3月21日)。

◆大柏川より

  • 柏井町3丁目周辺の大柏川上空をツバメが3羽とんでいました(3月21日)。

 以上 K.M.さん

  • 朝6時30分頃、浜道付近でツバメとカワセミを確認しました(3月27日)。

◆柏井緑地より

  • スズランの若葉にナナフシの幼虫を見つけました(4月19日)。

 以上 佐久間直次さん(柏井町在住)
 

◆八幡より

  • 冨貴島小学校前の八方橋でツバメ2羽を見ました(3月22日)。

 M.M.さん
 

◆真間山より

  • 斜面林から、まだちょっとぎこちないウグイスの鳴き声が聞こえてきました(3月3日)。
  • 弘法寺境内にあるシナミザクラの花が咲き始めていました(3月3日)。

 M.T.さん
 

◆市内某所より

  • 雑木林でシュンランが咲き出しました(3月5日)。別の林でも咲きました(3月12日)。

◆堀之内貝塚公園より

  • 昨夜の暴風雨にも負けず、アマナが咲いていました(3月21日)。

 以上 谷口浩之さん(北国分在住)

  • アマナが満開で、今年もイヌノフグリ、カントウタンポポが可憐に咲いていました(3月28日)

◆中国分周辺より

  • 国分遊水池にオカヨシガモの群れがちょうど30羽いました(3月14日)。
    じゅん菜池にはオナガガモはもういませんでしたが、ヒドリガモ・キンクロハジロ・ハシビロガモ・カルガモに混じってマガモともアヒルとも思えるカモが今日100メートル以上飛んでいて、やはりマガモと思いました。

 以上 道下誠さん(中国分在住)
 

◆坂川旧河口周辺より

  • 里見公園先江戸川の水面すれすれを飛ぶツバメ1羽とイワツバメ2羽を見ました(3月28日)。いずれも今年の初認です。とくにイワツバメは2006年6月以来、久しぶりの観察です。
  • 東京都側から江戸川の流れの水面近くを飛んできたヒヨドリ70羽前後の群れが、市川市側の河川敷に到達するや否や高度を上げて、国府台台地を越えて姿を消しました(4月18日)。

◆菅野より

  • 上空低く、カラスに追われたチョウゲンボウ1羽が飛び過ぎました(3月13日)
  • クロマツが多い住宅地付近の路上でビンズイ少なくとも2羽見ました(3月14日)。
  • 外環道用地上空を3羽のコチドリが鳴き声を出しながら旋回飛行しました(4月3日)。

 以上 根本貴久さん(菅野在住)

気象のようす

3月、4月は多雨で寒暖の差が大きかったです。桜がなかなか咲かず、4月17日には梨の花に雪が薄く積もりました。

 

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