平成22年度 市川自然博物館だより 8・9月号 129号

市立市川自然博物館 2010年8月発行

     

 いきもの写真館  長田谷津 いきもの暦
 拡大花図鑑  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  自然博物館 スポットライト
 わたしの観察ノート  

 


いきもの写真館
ナガサキアゲハ 市内では2002年に記録されて以降、急増した南方系のチョウです。クロアゲハに似ますが、翅に尾状突起がありません。  撮影者 土居幸雄さん

 

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長田谷津いきもの暦 8月・9月の暦から

 

 
  市立市川自然博物館では、長田谷津(大町公園自然観察園)で、20年にわたり、学芸員が自然観察の結果を記録してきました。この自然観察記録を元に企画展「長田谷津いきもの暦」を平成22年2月20日から平成23年1月30日まで開催 中です。毎月展示を替えて、その月の見所をパネルや標本、実物飼育などで紹介します。また、企画展にあわせて20年分の自然観察記録を暦形式で掲載した ガイドブック「長田谷津いきもの暦」を発行しました。
 
 この記事内容は、ガイドブック「長田谷津いきもの暦」の一部を参考にご紹介していきます。
 

● 8月5日 オニヤンマの産卵

 
  オニヤンマは、夏の長田谷津を代表する昆虫です。7月に続々と羽化した成虫が、まもなく谷津の空を埋め尽くすように飛び、やがて低く下りてきて流れに沿って行き来するようになります。産卵に適した場所に縄張りを張るオスのオニヤンマです。
 
  8月になるとメスも登場し、豪快なオニヤンマの「おつながり」が見られるようになり、やがて湧水の流れにしっぽ(腹端)をチョンチョン挿して産卵する姿が見られるようになります。成虫は、遅いもので10月ぐらいまで観察することができます。
 

オニヤンマの産卵
 

 

8月17日 サシバ13羽が帆翔

 
  サシバは、タカのなかまで渡り鳥です。春、南から渡ってきて国内の里山で子育てをし、秋、南へ帰っていきます。長田谷津では子育てはしていませんが、南へ帰る群れが立ち寄ることがあり、多いときには10羽を越すサシバが、谷津の上空をぐるぐると旋回して帆翔します。
 
  田植えの頃に里山を訪れ、田んぼのヘビやトカゲを捕らえ、谷津の斜面林に巣を構えるサシバは、里山を代表する存在です。長田谷津が公園になる前は稲作がされていましたから、また、訪れる人もなく静かだったので、そのころはサシバが繁殖していたかもしれません。
 

サシバの帆翔
 

 

9月7日 見事なツユクサの群生

 
  9月の声を聞くと、長田谷津の湿地はいろどりをぐんぐん増してきます。夏の間はミソハギのピンク色だけが目立ちましたが、秋の訪れとともにさまざまな野草が咲き出し、逆にミソハギが色あせて見えるようになります。
 
  ツユクサとツリフネソウは群生して咲くのでひときわ映え、特にツユクサの青は目を引きます。自然界では、意外に青は少ないからです。カワセミが人気なのも、あの青色が他に代えがたい美しさだからでしょう。ツユクサも同様です。
 

ツユクサの花
 

 

9月29日 ナガコガネグモの巣

 
  秋が深まるにつれて、長田谷津ではクモの巣が目につくようになります。目立つのはジョロウグモで、斜面林の木の枝などを結んで大きなテント型の巣を張ります。下を見て歩くと気づきませんが、上を見上げるとでっかい巣がいくつもあります。雨上がりだと糸に水滴がついているので、なお目立ちます。
 
  ナガコガネグモは、湿地の草の間に巣を張ります。ジョロウグモのような立体のテント型ではなく、平面のきれいな円い巣です。巣の中心には「隠れ帯」と呼ばれる白く目立つ糸の模様があります。
 

ナガコガネグモの巣
 

 

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拡大花図鑑 その9 ジュズダマ(つぼのなかで咲く花)

  自然を活かした細工物に必ず登場するジュズダマ。なぜ糸を通す穴が都合よく開いているのか、その理由は、8月に咲く花を見ないと判明しません。あの穴は、「つぼ」の中で咲く雌花が雌しべを出す穴であり、雄花が伸びていく穴でもあります。
 
 硬くなった「つぼ」を割ってみると、中には丸い実があって意外と柔らかです。これなら蒔けばちゃんと発芽しそうです。
 

ジュズダマの花の構造(拡大)

 

雄花の集まり

雄花の集まり(雄花序)

 イネ科の花なので、花は地味で雄しべがぶら下がり、風で花粉を飛ばす。

熟した実の中身

熟した実の中身

いわゆる「芯」が2本見える。これを抜いて糸が通る空間を作る。

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街かど自然たんぽう

新浜・かつて堤だった道

  市川の海岸線は、昭和30年代にはじまった埋立てによって、ずっと沖の方に移動していて、かつての位置はわからなくなってしまいました。下左の図でわかるように宮内庁の「新浜鴨場」は、もともとは海に面していました。下右図と見比べると「野鳥の楽園」との境が堤で、そこからは広大な干潟が沖まで見渡せたことでしょう。今でも、その名残りの道が残っていますが、すっかり海から離れた場所になってしまいました。

昭和30年代までと現在の地形

 

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くすのきのあるバス通りから 第74 初夏のいろいろな話題

 
   一年前、真間川の木株橋の付近に「カナダモ」らしきものがありました。その後、台風か、大雨で流されてしまいました。しばらくのぞかなかった間に「あれ、何もなかったはずなのに」とびっくりするほど、昨年よりもっとワサーと茂っています。護岸の矢板で段になって浅くなった部分にも生えています。その付近は3・4・18号線の工事で通り道が変更になったり、植栽がごっそりなくなったりします。その植栽に6月17日、お腹が水色の白いセキセイインコがいました。「市川で野生化しては困る」と思い保護しました。娘と捕まえようとしていたら、通りがかりの男の方があっという間に捕まえてくれました。

  ツマグロヒョウモンは一頃より数多くは見かけないのですが、相変わらずスミレに卵を生みつけ軸だけになり、幼虫は行方不明になりました。行徳駅前付近の行徳バイパス沿いの歩道に赤いカミキリがいました。道端のヨモギに避難させました。7月13日葛飾八幡でニイニイゼミが鳴き始めました。


  (M.M .)

 

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自然博物館 スポットライト 7月の企画展より

 
でっかいヤゴ

    「でっかいヤゴ」としてオニヤンマの終齢幼虫を飼育展示しました。タイトルは、隣で飼育したシオカラトンボ類やアカトンボ類のヤゴを「小さなヤゴ」として、両者の比較を意図してつけました。水中の生きたヤゴを見ていただくことが展示の趣旨だったのですが、実際にはレンガにくっついた迫力満点の抜け殻の方が人気がありました。見やすかったからかもしれません。
 
 
  羽化そのものは開館時刻前にほぼ終わってしまうため、羽化した成虫は飼育ケースに入れて、その日の閉館まではあわせて展示するようにしました。
 

レンガを置いて羽化場所に


浅い飼育ケースに陸と水場(ごく浅い)を半分ずつ作り、陸にはレンガを縦に置いて羽化場所としました。飼育したヤゴは、ぜんぶ無事に羽化しました。

クワガタムシのくらし

    クワガタムシの暮らしは、朽木に大きく依存しています。産卵場所・幼虫の餌・生活空間、そして蛹化の場所として朽木は不可欠な存在です。博物館がある大町公園には落葉広葉樹が多く生え、不必要な(過度な)管理もされていないため、適当に荒れていてクワガタムシ、特にノコギリクワガタが多く生息しています。
 
 
  せっかくのクワガタの展示ですが、他の飼育展示、たとえばシロヘビやウシガエル、ナナフシ、オニヤンマのやご、バッタ類にくらべて特別人気があるというわけではありませんでした。子どもたちの関心は、いまや外国産のクワガタに向いているようです。
 

クワガタムシの飼育展示


すこしお洒落なガラス水槽で飼育しました。ノコギリクワガタのオスを数匹入れ、日中でもよく動いてくれました。ガラス面が排泄物で白く汚れるので、毎朝のガラス磨きが大変でした。

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わたしの観察ノート 


◆大町より

  • 大町公園入口のシラカシの幹に、シラホシコヤガの幼虫と蛹を見つけました(5月1日)。また近くの石垣の上にアカシマサシガメがいました。

◆大柏川より

  • 宿之下橋周辺にまだコガモがいました(5月1日。午前中に確認した時には、オス1羽メス2羽いましたが、午後にはいませんでした。

 以上 K.H.さん
 

◆市川霊園より

  • ユズの木でナガサキアゲハの弱齢幼虫を見つけました(5月29日)。採取して帰り、飼育しています。6月6日に終齢幼虫に脱皮しました。

 A.F.さん
 

◆柏井町より

  • 数年前から飼育しているスズムシが卵からかえりました(6月14日)。昨年より10日遅れです。

 佐久間直次さん(柏井町在住)
 

◆里見公園より

  • アオバズクの声が今年初めて聞こえました(5月3日)。20分程鳴きながら飛び廻っていました。ちなみに2008年の記録を見たら5月4日初鳴きとなっています。同じような日に渡ってくることが不思議です。2007年は5月9日でした。

◆国府台周辺より

  • ホトトギスの声を聞きました(6月1日)。朝7時頃、家の東側の木立の上から突然甲高い声でケタタマシク鳴きながら里見公園の方へ飛び去りました。

 以上 秋元久枝さん(国府台在住)

  • 暗い林の中、サイハイランがひっそりと一本咲いていました(5月22日)。別の場所では二本咲いていました(5月25日)。残念ながら一本は折れていました。

◆北国分周辺より

  • オカトラノオが昨年よりも1週間近く遅く咲きました(6月20日)。花穂はやや小ぶりですが、本数は増えました。

◆市内某所より

  • 10株ほどのキンランが小群落で2ヶ所もありました(5月9日)。他に数株ずつあちこちに咲きました。こんなにたくさん見たのははじめてです。
    ギンランは他の場所で2株しか見られませんでした(5月8日)。

 以上 谷口浩之さん(北国分在住)
 

◆じゅん菜池緑地より

  • 斜面林を移動しながらさえずっているサンショウクイのせわしない声が聞こえていました(5月3日)。堀之内貝塚公園で姿を見て以来、3年ぶり2度目の記録です。

 根本貴久さん(菅野在住)
 

◆東浜より

  • アメリカネナシカズラが何ヶ所かでハマヒルガオに絡んで咲いていました(6月26日)。ハマヒルガオ、ハマダイコン、ヤマアワ、ツルナも咲き競っていました。海ではホンビノスという大きなアサリのような貝を沢山採っていました。

 道下誠さん(中国分在住)

気象のようす

日差しは強くても、空気の冷たい日がありました。6月14日頃の梅雨入り後は少雨で、湿度が高い日が続きました。

 

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