平成22年度 市川自然博物館だより 12・1月号 通巻131号

市立市川自然博物館 2010年12月発行

     

 いきもの写真館  長田谷津 いきもの暦
 拡大花図鑑  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  自然博物館 スポットライト
 わたしの観察ノート  

 


いきもの写真館
トラツグミ 冬はツグミ類の姿が目につきます。虎縞模様のトラツグミは、案外保護色です。珍しくて人気もあります。  撮影者 土居幸雄さん

 

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長田谷津いきもの暦 12月・1月の暦から

 

 
  市立市川自然博物館では、長田谷津(大町公園自然観察園)で、20年にわたり、学芸員が自然観察の結果を記録してきました。この自然観察記録を元に企画展「長田谷津いきもの暦」を平成22年2月20日から平成23年1月30日まで開催 中です。毎月展示を替えて、その月の見所をパネルや標本、実物飼育などで紹介します。また、企画展にあわせて20年分の自然観察記録を暦形式で掲載した ガイドブック「長田谷津いきもの暦」を発行しました。
 
 この記事内容は、ガイドブック「長田谷津いきもの暦」の一部を参考にご紹介していきます。
 

● 12月3日 アカバナの実

 
  アカバナは、秋の長田谷津のところどころで見られる湿地の花です。花はピンク色で可憐な姿ですが、熟した実が割れてタネが現われる冬の様子にも人気があります。
 
  アカバナのなかまは、花の下側に長い子房があります。一見すると、長い柄の先に花が咲いているようです。冬になるとこの子房が熟して裂け、中から銀色の綿毛のついたタネが顔をのぞかせるのです。
 
  秋の花盛りが過ぎて湿地が枯れ草に覆われ始めると、つい草刈りをしたくなります。そこをこらえて待っていると、茶色く枯れたアカバナの株で素晴らしい出会いがあるのです。
 

アカバナの実
 

 

12月11日 越冬するウラギンシジミ

 
  ウラギンシジミは、成虫の姿で冬越しをする蝶です。長田谷津では、シラカシやネズミモチなどの常緑樹の葉に止まっていることが多く、緑色の葉に白い翅なので、案外、目立ちます。キタテハやルリタテハが枯れ葉模様の翅(裏側)で風景にまぎれて越冬するのとはずいぶん違っています。
 
  ただ、春まで同じ葉で越冬するわけでもなさそうです。木の葉からはやがて見えなくなりますし、以前、斜面林を真冬に歩いた時は、林床の落ち葉にまぎれて「ころがっている」成虫を見つけたこともあります。いずれにしても試練の冬越しなのは間違いないようです。
 

ウラギンシジミ
 

 

1月12日 オオハナワラビの花

 
  シダのなかまは、葉の裏に胞子をつけることがよく知られていますが、中には特別な葉を別に伸ばして、そこに胞子をつける種類もあります。山菜で有名なゼンマイもそうですし、ツクシもそうです(ちなみに、ワラビは葉の裏につけるタイプ)。
 
  オオハナワラビは長田谷津の斜面林で時々見られるシダの一種です。冬になると普通の葉とは別に、まるで花が咲く茎のように胞子をつける葉を伸ばします。シダなので厳密には花は咲きませんが、その姿から「花蕨(はなわらび)」の名がついたようです。
 

胞子葉を伸ばしたオオハナワラビ
 

 

1月23日 ホソミオツネントンボ

 
   成虫で冬越しするチョウがいれば、成虫で冬を越すトンボもいます。ホソミオツネントンボは「細身越年とんぼ」で、トンボの姿のままで冬を越すことにちなみます。こちらはウラギンシジミと違い、一度越冬に入ったら、春までだいたい同じ場所にいるようです。普通は落葉樹の枝にとまって小枝に化けて冬越ししますが、長田谷津ではトクサの先端にとまって越冬する姿が見られます。
 
   越冬態勢に入ったホソミオツネントンボを見つけるのは簡単ではありません。わずか1メートルの距離からでも、指差さないとわからないくらいです。
 

枝先にとまるホソミオツネントンボ
 

 

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拡大花図鑑 その10 ヤブガラシ(蜜を満たした皿)

 花は「花弁(花びら)」「がく」「おしべ」「めしべ」で作られているのが基本です。しかし、それ以外の部品が見られる場合もあります。
 
 ヤブガラシの花にある「花盤(かばん)」もそうです。めしべの根元にある「お皿」のような部品で、蜜が分泌されてたまっています。花の蜜は奥底に隠されている場合が多いのですが、花盤の発想は逆で、お皿に蜜をためて虫を呼び寄せます。
 

ヤブガラシの花の構造

 

ヤブガラシの花に来たキゴシジガバチ
 

ヤブガラシの花に来たキゴシジガバチ
 蜜がむき出しでたまっているヤブガラ シの花は、チョウのような長い口を持 たない昆虫にとって、簡単に蜜が手に 入るありがたい存在です。
 

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街かど自然たんぽう

東大和田(ひがしおおわだ)・駐車場のスズメ

   住宅に囲まれた駐車場の草むらから、スズメのにぎやかな鳴き声が聞こえてきました。フェンス越しに近づいてゆくと、ぱっと9羽のスズメが飛び出してきましたが、草むらからは1メートルも離れません。少し離れると、すぐに草むらに戻ってゆきました。また近づくとぱっと飛び出し、3回目には電線に飛んでいってしまいましたが、やはり駐車場が見える場所からは離れません。草むらは、実のついたエノコログサとメヒシバでどちらもイネ科ですから、スズメにとってはおいしいご飯なのでしょう。庭木のミカンやカキを狙う、ヒヨドリやムクドリなど、街中の鳥たちにとっても秋は実りの季節です。

電線上で様子をうかがうスズメと駐車場のイネ科植物群落

 

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くすのきのあるバス通りから 第76 キヅタの花

 
   八幡6丁目と東菅野1丁目の境の道路を歩いていると、ブンブンとハチの羽音が聞こえてきました。「や、や、何だ、何だ」と見回すと、広いお庭のフェンスの周りにたくさんのハチやら、アブやら飛び回っていました。キヅタの花が咲いていて、その蜜が目当てのようです。

  ヤツデの花に似ています。花弁が付いているものは蜜のツブが見えます。花弁が落ちたものは蜜が白く乾燥しています。実かなと思ったものは蕾でした。「ハチが集まるのだから、甘いかも」と舐めてみましたが、期待はずれでした。

  春はフキノトウ、サクラ、池があるらしく、カエルが道で轢かれたり、夏はサクラにセミが集まり、夕方カラスウリの花が見られ虫の音が聞こえ、カシワの木もある「あまり手入れされていないのがいいなあ」と思うお庭です。


  (M.M .)

 

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自然博物館 スポットライト 10、11月の企画展より

 
カブトムシやクワガタの幼虫
 

    今年は、博物館でもカブトムシやコクワガタの幼虫を飼育しています。来年の展示用やさまざまな普及活動で利用するためです。せっかく飼育しているので、なんとか展示しようと思い、工夫してみました。
 
 
  土の中に潜らせたままコンテナで展示し、都度、掘り起こして見せたりもしましたが、手間が大変です。そこで、薄いプラスチック容器に入れ込んでそのまま展示してみました。最初の頃はなかなか透明な面に体が出てきませんでしたが、やがて成長して体が大きくなると、少なくとも体のどこか一部は見えるようになりました。
 

厚みの薄いプラスチックケースで飼育展示する幼虫


容器がひとつだとうまく見えないことがあるので、複数用意して、どれかひとつでも幼虫の体が見えるようにしました。

ガマの穂
 

    博物館に隣接する自然観察園には、ガマが多数生育しています。秋になると大きな「ガマの穂」が目立つようになり、やがてはじけて綿毛のタネがふわふわと舞い始めます。
 
 
  ガマの穂の展示だけなら、切ってきて飾ればいいので簡単です。綿毛のタネのフワフワ感を知っていただくために、透明樹脂性の容器にタネを半分ほど入れて展示しました。容器には「さかさまにしてみてください」と表示し、容器をひっくり返すと、その中で綿毛のタネがゆっくり落ちる仕掛けです。
 
 
  最初のうちはなかなか手に取ってもらえませんでしたが、あらかじめ容器をさかさまに置いておくと意図がうまく伝わり、体験してもらえるようになりました。
 

ガマの穂の展示


展示台には、切ってきたガマの穂(背が高い)、透明樹脂容器(手前左)、「ガマの花の写真」と「綿毛が舞い散る写真」を展示しました。

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わたしの観察ノート 


◆長田谷津より

  • ヨシが枯れてしまうほどの暑く強い日差しの中、湿地のツユクサは少しづつ咲き始めました(9月4日)。

 金子謙一(自然博物館)
 

◆大町より

  • ヒガンバナがようやく咲き始めました(9月24日)。秋分の日を過ぎていますが、咲いていたのは2輪です。ヒガンバナの開花は遅れているようです。

 宮田明吉(自然博物館)
 

◆大野町より

  • 梨畑からアブラゼミの鳴き声が聞こえました(10月23日)。

◆市川東高校周辺より

  • 桜並木からツクツクボウシの鳴き声が聞こえていました(10月23日)。夏ほどの元気な鳴き声ではありませんでした。

◆江戸川河川敷より

  • 河川敷の草むらにシロヘリクチブトカメムシの5齢幼虫がいました(9月12日)。

 以上 K.H.さん
 

◆じゅん菜池公園より

  • 一番奥の湿地の草原から、ツミ雌1羽がいきなり池沿いのニガキ(?)の枝の低いところに飛び上がるのを見ました(10月17日)。ウォーキングの人たちが真下を通り過ぎても意外なことにまったく動ぜず、また、カラスに追い立てられても、ほんの少し移動するものの遠くに逃げる気配はありません。どうや ら、仕留めた獲物が草地にある可能性が大です。こんなに近くでじっくりとツミの美しい羽根の模様を見られたのは、初めてです。

◆小塚山公園より

  • 混群にシジュウカラ、コゲラ、メジロの外、ヤマガラとムシクイ類が少なくとも1羽、そしてサンコウチョウの雌タイプ1羽が混じっていました(9月11日)。とくに、サンコウチョウは一声だけでしたが、ホイホイホイと鳴きました。秋でも鳴く時はあるのですね。

◆坂川旧河口一帯より

  • セイタカシギ1羽が、里見公園先江戸川の水面に近いところを下流に向かって飛びました(10月10日)。江戸川を蛇行しながら飛んでいて、東京都側から市川市側へと移動していきました。一帯では、はじめての記録です(とにかく、驚きました)。
  • ビオトープ池先江戸川べりの木にとまり、アオサギ1羽が昨日の雨で濡れた翼を陽に向けて乾かしていました(10月11日)。

 以上 根本貴久さん(菅野在住)
 

◆東浜より

  • 海浜植物も「あつい」と言って殆ど咲いていませんでした(9月4日)。ハチジョウナが、数株咲き残っていました。アサリ、オオアサリ、バカガイ、マテ貝を潮干狩りの人が採っていました。ミヤコドリ、ハマシギ、ミユビシギ、ダイゼン、オバシギ、オオソリハシシギキョウジョシギ、ウミネコがいました。

 道下誠さん(中国分在住)

 

 

気象のようす

長く暑く厳しい夏でしたが、台風の通過で一気に秋になり、からから天気も一転して、曇りの日が多くなりました。

 

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