平成22年度 市川自然博物館だより 2・3月号 通巻132号

市立市川自然博物館 2011年2月発行

     

 いきもの写真館  長田谷津 いきもの暦
 拡大花図鑑  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  自然博物館 スポットライト
 わたしの観察ノート  

 


いきもの写真館
ムラサキツバメ 冬のあいだ、アオキの葉の陰でかたまって冬越しをしていました。立春の日、春の陽ざしに1頭が羽を広げました。  撮影者 土居幸雄さん

 

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長田谷津いきもの暦 2月・3月の暦から

 

 
  市立市川自然博物館では、長田谷津(大町公園自然観察園)で、20年にわたり、学芸員が自然観察の結果を記録してきました。この自然観察記録を元に企画展「長田谷津いきもの暦」を平成22年2月20日から平成23年1月30日まで 開催しました。
  企画展の終了後も毎月展示を替えて、その月の見所をパネルや標本、実物飼育などで紹介しています。また、企画展にあわせて20年分の自然観察記録を暦形式で掲載した ガイドブック「長田谷津いきもの暦」を発行しました。
 
 この記事内容は、ガイドブック「長田谷津いきもの暦」の一部を参考にご紹介していきます。
 

● 2月9日 アカガエルの卵がいっぱい

 
  アカガエル(ニホンアカガエル)の卵塊は、長田谷津に春を告げる目安です。1月中旬以降、ひと雨ごとに産卵が行われ、水辺では丸い卵の塊があちこちで見られます。
 
  カエルの卵としてよくイメージされる「ひものような卵」はヒキガエル(アズマヒキガエル)のもので、こちらは長田谷津では3月に入ってから見られるようになります。そのころアカガエルはおたまじゃくしになっていて、水辺で泳ぐすがたが見られます。
 
  今年は年が明けてから雨が降らず、1月24日の雨ではじめて産卵が行われ、18卵塊が確認されました。
 

水中にあるアカガエルの卵塊
 

 

2月14日 スギのつぼみがほころんだ

 
  春の訪れは、花粉の訪れでもあります。長田谷津では1月下旬からハンノキが咲いて花粉を飛ばしはじめ、2月後半からスギの開花がはじまります。
 
  長田谷津はいまでこそ「自然観察園」という位置づけになっていますが、もともとは山林として林業がおこなわれていた場所です。炭焼きが行われ植林も行われましたが、「将来、材木として利用される」という暗黙の了解がくずれ、スギやサワラは用材としてではなく「みどりの一員」になりました。その結果、切られることがなくなった代わりに、花を咲かせ花粉を飛ばすようになりました。
 

花粉がいっぱいのスギの雄花
 

 

3月4日 越冬したルリタテハが飛んだ

 
  色あざやかなチョウの姿には、だれもが春を実感します。長田谷津では、成虫で冬を越した種類が暖かい日にまっさきに飛び始め、その後、蛹で冬を越したチョウが姿を見せ始めます。
 
  成虫越冬したチョウの代表というと、ルリタテハとキタテハです。春の日中、枯れ草の上で羽を広げてひなたぼっこする姿が目に付きます。キチョウも、成虫で冬を越します。また最近ではクロコノマチョウやムラサキツバメといった種類も見られるようになりました。長田谷津では近年になってから急に増加した種類です。
 

ひなたぼっこ中のルリタテハ
 

 

3月23日 コブシの花が見ごろ

 
   コブシやモクレン、ハクモクレンは、桜に先立って豪華な花を咲かせる樹木です。モクレン、ハクモクレンは庭や公園に植えられる花木ですが、コブシは市内の雑木林でふつうに見られる野生の樹木です。長田谷津に限らず、身近な緑地でも花が見られるはずです。
 
   長田谷津では、コブシの花がひときわ鮮やかにうつります。それは、斜面林に生える常緑樹の緑が背景になって純白の花が引き立つからです。公園に植えられたコブシでは空を背景にするので花があまり目立ちません。そういう場所では、花が大きくクリーム色を帯びたハクモクレンがいいようです。
 

コブシの花
 

 

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拡大花図鑑 その11 ハンノキ(そっけない風媒花)

  スギ花粉に代表されるように、春は植物の花粉が大量に舞う季節です。実際は夏・秋もさまざまな花粉が飛んでいますが、春は樹木に起因する花粉が特に多いのが特徴です。
 
  スギに先立って開花するハンノキも風で花粉を飛ばす「風媒花」です。虫を呼ぶ必要がないので花のデザインはそっけなく、効率的に花粉を飛ばし受け取るという機能重視の形をしています。
 

ハンノキの花がついた枝先 葉芽、雌花序、雄花序がみられる


枝先に下がる雄花序
 ハンノキは、早春(1月中旬から2月)、葉が芽吹くのに先立って花を咲かせます。雄花が集まった雄花序は細長く垂れ下り、花粉が出る時期は黄色く目立ちます。雌花序は小さく、枝を間近で見なければ存在に気づきません。

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街かど自然たんぽう

東国分(ひがしこくぶん)・広々とした風景

   かつて田んぼが広がっていた東国分中学校の周辺には、国分川調節池が造成中です。訪れた時には、草が刈り取られた湿地と浅い水辺がある広々とした風景の中で、いろいろな鳥が見られました。水辺では、コサギが歩きまわり、ユリカモメの群れは岸辺で休んでいます。湿地ではのんびりと餌を探すツグミやキジバト、草の陰を出入りするホオジロの仲間が見られ、シギの仲間が急に飛び出して驚かされます。

東国分中学校の北側から稲越小学校方面を望む
東国分中学校の北側から、稲越小学校方面を望む→
  画面中央の黒く見えるのは浅い水辺。
  この風景の中に、いろいろな鳥たちが隠れている。

 

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くすのきのあるバス通りから 第77 うす紫の巨大なダリア

 
   昨年10月から11月にかけて、旅行先で目を引く花を見つけました。全体の高さは3メートルぐらいで、きれいなうす紫色の直径15センチメートルぐらいのキク科の花です。その後、市川市内で千葉街道や行徳街道を車で走ったとき、3か所で見かけました。塀より1メートル以上、2階の窓あたりの高さに花が咲いていました。

  ぱっとした花が少ないこの時期ですから「見事だなー」と思いました。手持ちの帰化植物図鑑や園芸植物図鑑を調べても出ていませんでした。「よし写真を撮って誰かに聞こう」と自転車でカメラを持ち、咲いているお宅へ行きました。運よくその家の方が塀の外の花壇の手入れの最中でした。名前も 「コウテイダリア」と判りました。

  自然博の方に聞くと、「市内では1、2年前から広まっている」との事。こんな巨大なダ リアがあちこちで増えたら異様な雰囲気になるかもしれません。せめて個人の庭どまりであってほしいものです。


  (M.M .)

高くのびたコウテイダリア

 

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自然博物館 スポットライト 12、1月の企画展より

 
ホトケドジョウ
 

   1年間にわたる今回の企画展では、季節に応じた展示替えが大変でした。展示パネルもそうですが、生き物のでは日々の世話とテーマの更新が期間中、いつもついて回りました。そういったなかで、ホトケドジョウのように飼いやすく、お客さんに人気の生き物は大助かりです。
 
 
  ホトケドジョウは、長田谷津の湧水に暮らす絶滅危惧種という切り口が館の意図でした。しかし実際には、「初めて見るドジョウのなかま」というような見られかたが多かったようです。
 

ホトケドジョウの飼育展示


浅い飼育容器に入れて、上からでも横からでも見られるようにしました。隠れる場所がないと落ち着かないので、陶器のつぼと水草を入れました。

クレソン
 

    長田谷津に多いクレソンは、かつてタネがまかれたものが増殖し、自生するようになったものです。12月ごろから新しい苗が育ちはじめ、2月には水路いっぱいに広がります。
 
 
  展示では、そういうみずみずしいクレソン(食べごろ)を抜いてきて水栽培します。根をよく洗ってから水に挿すと、水が腐らずに長持ちします。やや暗い展示室では「もやし」になってしまうので、2つ用意し、交代で窓際に置いて日光浴させています。
 

クレソンの展示


理科で使う水栽培用のプラスティック容器に挿しました。下の方の葉っぱは黄色くなって枯れるので、腐る前に取り除きました。

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わたしの観察ノート 


◆長田谷津より

  • 長田谷津では珍しく、ツリバナの実が熟してきれいに開き、オレンジ色が鮮やかなタネが顔を出しました(11月6日)。
  • 暖かかった日、あちこちで成虫越冬のチョウが飛んでいました(12/4)。ムラサキツバメ、ウラギンシジミ、キタテハ、ルリタテハが飛んでいました。

 金子謙一(自然博物館)
 

◆大柏川より

  • 宿之下橋周辺に今年もコガモが戻ってきていました(11月6日)。

 K.H.さん
 

◆柏井より

  • イヌシデの多い雑木林でこの冬はじめてシメを見ました(11月24日)。これから冬を過ごしに渡ってくる数も次第に増えるでしょう。

 須藤治(自然博物館)
 

◆中山より

  • 大きなツルウメモドキがある斜面林を歩きました(11月2日)。黄色い実がたくさんなっていましたがまだ割れていなくて、中の赤いタネは見えませんでした。

 金子謙一
 

◆堀之内より

  • いざなぎ神社のハリギリがきれいに黄葉していました(11月29日)。常緑樹に囲まれているので夏よりも目立ちます。

 宮橋美弥子(自然博物館)
 

◆じゅん菜池公園より

  • 芝地の岸に上がり、首を背中に回して休んでいるアメリカヒドリの雄1羽を見ました(11月21日)。完全な雄の個体を見るのは、久しぶりのことです。
  • 奥の池際のカエデ類の木に、エナガの群れがいました(12月26日)。大変な至近距離で観察でき、かわいい顔がよく見えました。

◆坂川旧河口一帯より

  • 200羽ほどのカワウの群れが坂川旧河口先江戸川の中央部を下流に向かい、潜水を繰り返しながら移動していきました(11月14日)。団体となって餌をとっているものと思われますが、冬期ならではの壮観な光景です。
  • ベニマシコ雌1羽がオギ原のへりでさえずる姿を見ました(12月18日)。姿の見えないもう1羽と、しきりに鳴き交わしていました。
  • ハヤブサ1羽が柳原水門近くのヤナギの木にとまっていたヒヨドリの群れをねらって、突っ込んでいきました(12月26日)。ヒヨドリたちは大変な騒ぎに陥りましたが、狩りは失敗したようです。

◆真間より

  • 真間小学校前の真間川からカワセミの声が聞こえてきました(11月7日)。川沿いを東へ飛び去ったようです。
  • アオサギ1羽が真間小学校付近の真間川にかかる橋の下をくぐり、江戸川方向へ飛び去りました(12月26日)。橋の上ではなかったのでちょっと驚きました。

 以上 根本貴久さん(菅野在住)
 

 

 

気象のようす

秋らしく周期的に天気が移り変わり、紅葉・黄葉がきれいな秋でした。サクラの葉の色づきが例年になく鮮やかでした。

 

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