平成23年度 市川自然博物館だより 6・7月号 通巻134号

市立市川自然博物館 2011年6月発行

     

 いきもの写真館  同じ場所を何度か訪れる
 ひとつの花 をじっくり見る  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  むかしの写真で見る昭和の風景
 わたしの観察ノート  

 


 

いきもの写真館
アリグモ アリに似たクモです。4対の脚のうち、いちばん前の脚を触角に見せかけます。メス(円内)は、アリそのものです。  撮影者 土居幸雄さん

 

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同じ場所を何度か訪れる ふれあい農園から市営霊園 5月21日

 

【梨畑の間の農道】

 
  自然博物館から「ふれあい農園」へは、いつも梨畑の間の農道を通ります。ひと月前に花盛りだった梨畑は、みずみずしい葉が茂り、その大きな葉の陰に小さくふくらんだ梨がいくつもありました。昨年が記録的な不作でしたので、今年は順調に育ってほしいものです。
 
  4月にアケビやサルトリイバラが咲いていたやぶでは、スイカズラが咲いていました。ナズナやヒメオドリコソウが群生していた道は、きれいに草刈りがされていました。枝が払われて明るくなった斜面林の木の根元をのぞくと、「ありじごくの巣」がいくつもありました。
 

小さな梨の実

小さな梨の実

ありじごくの巣

ありじごくの巣

【生き物を育む水】

 
  ふれあい農園の田んぼでは田植えが終わっていました。鏡のような水面に小さなイネがきれいに列をなしていました(米っ人クラブの田んぼは、曲線的な列でしたが……)。浅く澄んだ水面を透かして見ると、小さなカイミジンコが無数に泳ぎ回っていました。シオカラトンボやギンヤンマが水面を低空飛行し、近くに巣を構えたツバメたちも、泥取りや餌探しに来ていました。田んぼの、広々とした浅い水面は、独特な環境です。池でも川でも置き換えられない生態系が、そこに形作られています。
 

田植えが済んだ田んぼ

田植えが済んだ田んぼ

 

【野道や草むらの野草】

 
  野草で目についたのは、レンゲ、ニワゼキショウ、ハルジオンです。このうち、レンゲとハルジオンは遠くからでもすぐわかりましたが、ニワゼキショウは小道に足を踏み入れて、はじめて花の存在に気づきました。曇っていると閉じてしまうので、なお気づかないかもしれません。
 
  田んぼのまわりには、休耕田のように、放っておかれている場所があります。思わぬ野草が生えていることがあるので探してみると、この日はアゼナルコが見つかりました。カヤツリグサ科の野草で花は地味な緑色です。「鳴子」の名の通り、花の集まりが穂になって、ぶらさがります。
 

ニワゼキショウ

ニワゼキショウ

アゼナルコ

アゼナルコ
 

【ニガナやブタナの群生】

 ブタナの群生
  きれいに刈り込まれた市営霊園の土手や道沿いでは、草原性の野草が群生していました。特に目立ったのはブタナです。「茎の長いタンポポ」のような花で、刈り込まれた草地や芝地を好む帰化植物です。一方、土手ではニガナが一面に咲いていました。こちらは日本在来の野草で、ひとつひとつの花は控えめですが、群落になると野趣に富んだ趣があります。そのほか、マツヨイグサやニワゼキショウ、チガヤの穂などが土手のあちこちを飾っていました。
 
  霊園から大町公園へ向かう途中に古びたトイレがあります。2本のシャクナゲが植えられていて、ちょうど満開でした。さびれた感じの場所には不釣り合いな、豪華な濃いピンク色の花でした。トイレの裏側の斜面林は、知る人ぞ知る野草の観察ポイントです。タチツボスミレやキンラン、ホウチャクソウは終わっていて、この日は元気に葉っぱを広げたカシワバハグマと、のびだしてきたオオバノトンボソウが目につきました。残念ながら、花はまだ先です。季節が梅雨に進むと、イチヤクソウとシャクジョウソウも見られます。5月のこの時期は派手なシャクナゲで我慢しておくのがいいようです。    写真:
ブタナの群生
 
 

 

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ひとつの花をじっくり見る エゴノキ


エゴノキの花を拡大
エゴノキの花  手前の花弁を切って中が 見えるようにしてある

 

 エゴノキは、市内の雑木林に多い落葉広葉樹です。水平方向にのびた枝に多数の白花を鈴なりに咲かせ、見ごたえがあります。その豪華さは桜に匹敵するほどです。

  花は5枚の花びらで構成され、やや数が多い雄しべと1本の雌しべ……こう書くと、まさにサクラ類の花と違いがありませんが、じっさいに見た印象はちょっと異なります。特に雄しべは雌しべを取り囲むようにあり、雄しべが広がるサクラ類とは印象が異なります。葯(花粉が入っている袋)は細長いヘラ状で、花びらも5枚とは言っても実際には根元でくっついていて、サクラ類よりしっかりした印象です。ばらばらに散らず、ツバキのようにボトボトと落っこちます。筒形の萼もサクラ類のような繊細さはありません。
 
 

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街かど自然たんぽう

東浜(ひがしはま)・昔のようすを知る

   3月11日の震災では、市川市内でも液状化現象や地盤沈下がおこりました。東浜でも被害があり、船橋海浜公園から続く砂浜は、現在安全のため立ち入り禁止になっています。戦後すぐに撮られた航空写真を見てみると、遠浅の干潟や浅瀬の中に東浜は位置し、埋め立てられた土地であることがわかります。災害はその時々のいろいろな要素が複雑に関連しておこりますが、震災後、土地の成り立ちについても関心が高まっているようです。

米軍撮影の航空写真

戦後すぐの市川の海辺。東浜は海の中。→
(米軍撮影の航空写真)

 

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くすのきのあるバス通りから 第79 カエルの声が聞こえました

 
   5月になると、雨が降りそうな日や夜に、アマガエルが鳴き始めるようです。農家の都合でゴールデンウィークなのか、水を引き入れる順番なのか、田んぼに水が張られ田植えが行われるのがばらばらです。水が入った田んぼでは、カエルの声が大きくなっているような気がします。

  よんどころない事があり、市川病院に2泊3日入院しました。昼間の病室はたまに来る救急車のサイレン以外そとの音は聞こえませんでした。ところが、夜になるとカエルの声が何となく聞こえるのです。気にしなければ聞き逃すぐらいですが、同室の方に聞くと、「そう、夜になるとカエルが鳴くのよ」との事でした。

  朝になり、廊下のはずれから下を見ると、病院の敷地の隣に3枚の田んぼがありました。そのうちの1枚は田植えがすんでいました。その向こうには外環予定地とユニディが見える場所です。市川市は水田が少ないそうです。菅野という市川市の中央に高速道路が通るすぐ際に、田んぼとアマガエルがこれからも残るのか見守りたいと思います。

  (M.M .)

 

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むかしの写真で見る 昭和の風景

 
昭和41年(1966年) 撮影

じゅんさい池付近の稲田


昭和41年じゅんさい池付近の稲田

 
   現在の「じゅん菜池緑地」がある谷の写真と思われます。正確な撮影位置は不明で、いまのじゅん菜池より、もう少し下流側かも知れません。
 
 
  写真には、市の北部に多い「谷津」の当時の代表的な景観が写し込まれています。まず、谷底には稲田が広がっています。イネがよく育ち稲穂が垂れています(撮影日は9月1日)。
 
 
  谷を囲むように斜面があり、そこは「斜面林」と呼ばれる林になっています。斜面林にはマツが目立っています。現在は林が遷移したことやマツ枯れの影響で、ほとんど見られません。
 
 
  斜面林と稲田の境は土手になっていて、おそらく農道があり坂の下は湧水を受け流す水路があったと思われます。この頃はゲンジボタルがいたかも知れません。
 

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わたしの観察ノート 


◆堀之内貝塚より

  • アマナが咲きはじめました(3月26日)。

◆市内某所より

  • 今年は冬が寒かったせいか遅れてシュンランが二つの雑木林で咲きそろいました(3月26日)。
  • ようやくキンランが近くの雑木林で10株ほど咲きはじめました(4月28日)。固まってではなくバラバラでまだ蕾のものが大半です。近くの池でも1株咲いていました(4月29日)。

 以上 谷口浩之さん(北国分在住)
 

◆真間山より

  • 真間山幼稚園のうしろにある早咲きの桜が開花しはじめていました(3月4日)。そのとなりのコブシの巨木にはつぼみがたくさんつき、冷たい北風の中、てっぺん近く2つほど開花していました。

◆菅野より

  • 真間川でツバメが飛んでいました(4月8日)。川沿いの桜がきれいに開いていて美しかったです。

 以上 M.T.さん
 

◆東菅野周辺より

  • 夕方、市川学園付近でツバメを今年初めて見ました(4月9日)。暗くなったら八幡6丁目でコウモリが飛んでいるのを見ました。
  • 道路わきのケヤキの木にカラスが巣作りをしているのを見つけました(4月9日)。人を攻撃しないかちょっと心配です。
  • シロバナタンポポが7株20輪くらい咲いていてきれいでした(4月10日)。

 以上 M.M.さん
 

◆東大和田より

  • 庭に飛んで来たルリタテハを見ました(4月13日)。越冬した個体なのか、羽が傷んで、やや色あせていました。

 A.H.さん

◆坂川旧河口一帯より

  • 江戸川に複数のカイツブリが浮かび、互いにかわいい声で鳴き合っていました(3月19日)。春を感じさせる声です。
  • 里見公園先江戸川の水面近くをツバメ4羽の群れが上流に向って飛びました(4月3日)。その後、2,3羽の小群を見ました。ようやく、初認です。

◆じゅん菜池より

  • 上空を旋回するトビ1羽を見ました(3月19日)。しばらく旋回した後、すべるように北へ向いました。また、トモエガモの雌は水面から岸に上がって通り過ぎる私に向ってエサを求める動きを見せました。珍しく、カイツブリ1羽の姿も見ました。

◆国府台より

  • 「ふれあいのみち」でさえずるキビタキ雄の姿を見ました(4月30日)。また、エナガ10羽近くの群れが木から木へと移動していましたが、その中の親と見られる1羽が、心持ち尾の短い幼鳥にエサを与える様子が確認されました。辺りで繁殖した親子連れと思われます。

 以上 根本貴久さん(菅野在住)
 

 

気象のようす

いつまでも寒く、春の訪れは足踏み状態でした。4月にようやく暖かくなりましたが、空気がひどく乾燥していました。

 

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