平成23年度 市川自然博物館だより 12・1月号 通巻137号

市立市川自然博物館 2011年12月発行

     

 いきもの写真館  同じ場所を何度か訪れる
 ひとつの花 をじっくり見る  街かど自然探訪
 むかしの写真で見る昭和の風景  わたしの観察ノート

 


 

いきもの写真館
ホソミオツネントンボ 卵やヤゴではなく、成虫で越冬する珍しい習性のトンボです。長田谷津では、トクサの先で冬越しする姿が定番です。  撮影者 土居幸雄さん

 

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同じ場所を何度か訪れる ふれあい農園から市営霊園 11月12日

 

【来年の収穫に向けて】

 
  今年の収穫が終わった梨畑では、シーズン最後の作業が進んでいました。天を突くように伸びる枝の剪定がはじまり、堆肥もつぎつぎに運び込まれていました。梨畑の脇に積まれた堆肥からはホクホクと湯気が立ち上っていて、よく発酵していることがわかります。町なかから来る小学生を見ていると、堆肥のにおいにとまどう場面も見受けられますが、長くこの地域にいれば、ある種、季節感を持って受け止めることができます。田んぼもそうですけど、梨畑も1年で1回きりの収穫ですから、長いサイクルで着実に作業が進んでいきます。

 

積みあがった堆肥

梨畑の間の農道

 

【よく目立つ赤い木の実】

 
  農道のまわりの垣根はきれいに手入れがされ、斜面林の伸びすぎた枝も払われてすっきりしていました。木々の葉が少しずつ黄色を帯びてきた中、鮮やかな赤い実が目につきました。カマツカでした。少し離れて2本あって、そのうちの1本は道沿いで間近に実が見られました。透明感のある赤い実に、秋の陽が斜めにあたってきれいでした。
 
 
ふれあい農園の近くでは、ピラカンサがびっしりと実をつけていました。遠くからでも目につく「赤い実の山」に30羽ほどのオナガが入れ替わり飛びこんでは離れ、という動作を繰り返していました。写真を撮ろうと近くで待ち構えていると近づいてこないのは、どうも見張りのオナガがいるからのようでした。ジョウビタキや、高所であたりをうかがうモズの姿もありました
 

カマツカの実
 

ピラカンサをむさぼるオナガ

【秋の田んぼの野草】

 
  稲刈りが終わった田んぼではイネが伸び直していて、陽が透けてきれいでした。地面にはいろいろな野草が伸びていて、セリやタネツケバナも多くありましたが、楽しみにしていたスズメノトウガラシがあちこちで咲いていました。それほど見栄えがする野草ではありませんが、田んぼがほとんどなくなった市川市内では出会うチャンスがない野草です。今年もまた無事を確認できてよかったです。
 
  この日は、もうひとつうれしい発見がありました。それはミズワラビで、田んぼなどに生える水生のシダ植物です。以前、ふれあい農園にあったものが、田んぼが休耕されて姿を消し、同じ場所が再び田んぼに戻されて数年経ったら出てきました。もしかしたら、と思っていつものぞいていたら、やっと出会えました。
 

伸び直したイネ

スズメノトウガラシ
 

ミズワラビ
 

【市営霊園の秋の風情】

 
  市営霊園の秋を彩るのは、イチョウやサクラ、ケヤキの並木です。まだ少し早かったこともありますが、今年は9月の台風の塩害で葉が傷んだことがあって色づきはいまいちでした。野草が多い一角では、前回満開だったツリガネニンジンがほとんどが実になっていて、かわりにノコンギクが咲いていました。別の場所ではシラヤマギクとヤクシソウもあり、秋らしく野菊が楽しめました。
 
 
明るい斜面では変わった形のホコリタケというキノコがありました。ケヤキ並木では実をつけた小枝が路上に落ちていました。小枝がひと単位になって、風に舞って飛ぶ仕組みです。北風が吹く日など、クルクル回って落ちてきます
 

ノコンギク

ホコリタケ
 

ケヤキの小枝と実
 

 

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ひとつの花をじっくり見る コブシ


コブシ(右上:花、右下:実、左:花の内部) 早春、市内の林や公園、庭で咲く。花びらが大きく花の内部は見えにくい。

 

  コブシの花は、少し変わった構造になっています。外見は、わたしたちがよく知っている「花」の形ですが、その内部をのぞいてみると、一般的な(模式的な?)花の造りとはやや勝手がちがいます。

  おしべは多数あってヘラ形で、糸のようなものの先に花粉の袋があるおなじみの形ではありません。めしべも多数で、おしべがそのまま形を変えたかのように、同じように並んでいます。

  めしべ1本につき、基本は2個のタネができます。めしべがたくさんありますから、それぞれのめしべのついていた根元が実になってふくらみ(タネ2つ入り)、結果として果実はコブコブした形になります。秋、果実が割れると、2つのタネが現れます。
 

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街かど自然たんぽう

広尾(ひろお)・ 広尾防災公園

   工場地域だった広尾の町は、ここ数年で大きく様変わりしました。たより59号で紹介した緑地や、工場跡地には、マンションが建てられ人々が生活する町になりました。

  防災公園も工場の跡地にできました。平成22年4月に開園した行徳地域で一番新しく一番広い公園です。芝生広場の周りには、様々な樹種の木がびっしりと植えられています。植えられたばかりで、まだまだ頼りない木々ですが、10年後、20年後には災害時に雨風の防げる、立派な緑陰となるはずです。今はまだ広々とした景色が、住宅が密集する中で、ホッとできる空間です。

もともと公園などの緑が少なかった地域なので、広々とした公園は貴重な和みスペースです。

 

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むかしの写真で見る 昭和の風景

 
昭和49年(1974年) 撮影

松枯れのようす


立ち枯れしたアカマツ

 
   市内・大町で撮影された写真です。戦後、各地で造成が進められたマツの植林地は、やがて「松枯れ」の被害に見舞われ次々と枯れていきました。市川市内でも斜面林の多くはマツを主体とする雑木林でしたが、昭和の時代の後半から平成にかけて松枯れが進み、いまではほとんどマツが見られなくなりました。それに対して、林ではない、国道沿いのクロマツ群がいまも健在なのは皮肉な話です。
 
 
  松枯れが起きた林は一面ササに覆われる場合もありますが、落葉樹の実生が育ち、スムーズに落葉樹林(雑木林)に移行する場所も多くあります。いまでも林内を歩くと、枯れたマツの倒木が朽ちかけている姿に出会えることがあります。
 

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わたしの観察ノート 


◆大町公園より

  • ツユクサがちょうど見ごろになりました(9月4日)。いつも同じ時期に咲くツリフネソウが遅れていて鮮やかなピンク色はありませんが、ツユクサの青と草の緑の取り合わせが粋な風景でした。

 金子謙一(自然博物館)

  • 湧水の水路で、サワガニを見つけました(9月13日)。卵を抱えた雌と、孵ったばかりの子ガニがいて、観察に来ていた小学生が驚いていました。

 宮橋美弥子(自然博物館)
 

◆里見公園より

  • 公園奥、シラカシの大木の横枝に腹部ごと押し当ててじっととまったままのカッコウの幼鳥1羽(褐色みが強く、後頭部に白斑がありました。)を見ました(9月25日)。辺りで泣き叫ぶカラスの声に怖気づいたのか、しばらく動きませんでした。
  • ミズキの実を求めて、エゾビタキ7から8羽とサメビタキ3から4羽の群れがあたりを飛び回っていました(10月2日)。中には、ホバリングして木の周りを飛んでいるらしい虫を捕らえている個体もありました。さらに近くの木にとまったマミチャジナイ1羽を観察しました。2004年10月以来の久しぶりの記録でした。

◆坂川旧河口一帯より

  • フジバカマが一番密に開花している辺りの坂川旧堤防左岸土手上を歩くキジの雄幼鳥2羽、雌幼鳥(?)1羽の首から上が見えていました(9月18日)。
  • オギ原で少なくとも3羽のノビタキを見ました(9月28日)。微妙に色合いが違っていて、面白かったです。
  • ヒヨドリ30羽前後の群れが江戸川を渡って飛びました(10月8日)。渡りがはじまったようです。

 以上 根本貴久さん(菅野在住)
 

◆国分より

  • 大きなイチョウの南側半分の葉が茶色くなっていました(10月11日)。ここにきて台風の南風が運んだ塩分被害が、あちこちで目に付くようになりました。

◆江戸川より

  • 台風で増水した痕跡が色濃い江戸川では、水際に枯れたヨシの茎や流木が寄せられていました(10月20日)。その中にクルミの種がいくつも浮かんでいました。こうやって上流から流れてきたオニグルミから生えた若木が水際に沿って何本も生えています。

◆江戸川放水路より

  • 幼稚園の子どもたちと虫取りをしました(9月9日)。草むらに入っていくと、あちこちから大きなトノサマバッタが飛び出しました。

 以上 金子謙一(自然博物館)
 

 

気象のようす

9月は2度の台風に襲われました。21日に通過した台風15号は風が強く、船橋アメダスで最大瞬間風速23.4m/sを記録し、市内各所で木が倒れるなどの被害がありました。大町公園内でも、サワラなど大きな木が倒れて園路をふさぎ、タチヤナギの幹が裂けて倒れました。台風通過後は、猛暑も幾分やわらぎました。

 

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