平成23年度 市川自然博物館だより 2・3月号 通巻138号

市立市川自然博物館 2012年2月発行

     

 いきもの写真館  同じ場所を何度か訪れる
 ひとつの花 をじっくり見る  街かど自然探訪
 むかしの写真で見る昭和の風景  わたしの観察ノート

 


 

いきもの写真館
ジロボウエンゴサク スミレを太郎坊、エンゴサクを次郎坊と呼ぶ地方があるそうです。春を告げる野草に対する思いが伝わってきます卵やヤゴではなく、成虫で越冬する珍しい習性のトンボです。長田谷津では、トクサの先で冬越しする姿が定番です。  撮影者 土居幸雄さん

 

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同じ場所を何度か訪れる ふれあい農園から市営霊園 1月17日

 

【新春を飾る農家の花々】

ニホンズイセン  梨農家さんが多いこの地区を歩くと、年間を通じていろいろな花が楽しめます。農家の方々は本当に植物を丹精されているので、歩くだけで道越しにあざやかな色に出会えたり甘い香りを感じることができます。この日は、早くも咲き始めたニホンズイセンと、どこからともなく漂ってくるロウバイの香りが印象的でした。ウメのつぼみもふくらみ、心なしかサクラの芽も大きくなっているようでした。日だまりではホトケノザやオオイヌノフグリの苗が青々としていました。パンジーやチューリップなどの園芸植物が咲くそばで、こういう春の野草が咲くというのが、本当の意味での里の春の風景かもしれません。

 

【冬だから見える樹形・枝ぶり】

骨太のクヌギ  冬は、住宅地でも野鳥の姿がよく見られます。梨畑の間の農道を歩くと、メジロのにぎやかな声が聞こえてきました。垣根や庭先の常緑樹に身を潜めていて姿は見えませんでしたが、楽しそうな声がひとしきり聞こえていました。斜面林はやぶになっていて、奥から「チャッ、チャッ」という力強いウグイスの笹鳴きが聞こえました。最近は里山の手入ればかりがクローズアップされますが、ウグイスが潜むやぶや、メジロのための常緑樹も残してほしいと思います。
 
 
 落葉樹が葉を落とした林は、どうしても寒々しい印象があります。そういう風景の中で、骨太の枝をゴツゴツと伸ばすクヌギの姿は堂々としていました。葉を落とした季節にしか気がつかない姿です。
 

【春を待つ動植物】

稲株のあいだから春の野草が伸び出す  刈りのあとに伸び直したイネが茶色く枯れ、田んぼは冬枯れの景色でした。となりのレンゲ畑では小さな苗が伸びていましたが、ちょうど冷たい冬の空気に包まれた日で、緑の葉がむしろ寒々しい感じでした。ピンクの花に彩られるのは3か月ほど先のことです。
 
   ヨシやジュズダマ、セイタカアワダチソウなどの大型の草はすっかり枯れ、ヨシやアワダチソウには風で飛ぶタネがたっぷりついていました。茎にはオオカマキリの卵がありました。でっかいカマキリがうろうろしていたのは、つい3か月ほど前のことでした。田んぼの稲株の間では、春早い植物が伸び始めていました。タネツケバナも目立ちました。訪れた日が今年の旧暦「七草」まであと2週間ほどという頃だったので、若草が伸びるのは、ある意味、暦どおりなのかもしれません。し、同じ場所が再び田んぼに戻されて数年経ったら出てきました。もしかしたら、と思っていつものぞいていたら、やっと出会えました。
 

【市営霊園で目についた常緑樹】

 
   市営霊園は春のサクラ、秋のイチョウが有名です。冬の時期は、大きな常緑樹が目につきます。大きくてテカテカしたアカガシは市内ではあまり見られませんが、市営霊園には何本もあります。スダジイの大木もあって、周囲に気兼ねする必要がないせいか、こんもりとした丸い樹形が遠くからも目につきました。モミの存在に気がついたのも冬だからでしょうか。まわりの木々の葉が落ち、とがった樹形がよく見えました。
 
 
 市営霊園は市域の北東部の台地に作られています。大柏川が流れる谷を見下ろす位置になりますが、最近はいろいろな建物ができて、本来の地形が見づらくなりました。斜面の木が伸びたことも眺望を阻害しています。一方で冬は遠望が利きます。この日は都心方面が見え、東京スカイツリーの姿も見ることができました。
 

左:スダジイ、右:モミ
 

都内遠望
 

 

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ひとつの花をじっくり見る アケビ


アケビ(左上:実、右:雌花)

 

   アケビは実が食用になることで知られています。市内の雑木林でもふつうに自生していますが、果実はツルが這い上がって棚状にならなければ生らず、そこまで育つ前に切られてしまうので、あまり見ることがありません。花は春早く、市内では4月早々に咲いてしまいます。

   写真は、アケビの雌花です。アケビの花は雄花と雌花が別々で、雄花は小さくてたくさん咲き、雌花は大きくて少数咲きます。花には花びらがなく、雌花では萼が花びらのように大きくなって花を目立たせています。雌花には太い雌しべが数本あり、先端はベトベトしていて花粉が付きやすくなっています。雌しべをよく見ると、縦に縫合されたような線があります。ここがパックリ割れて、アケビの実が開いた、おなじみの形になります。
 

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街かど自然たんぽう

福栄(ふくえい)・野鳥を間近に観察

    行徳野鳥観察舎には、2つの役割があります。1つは野鳥観察のための博物館、もう1つは傷病鳥の保護、いわゆる野鳥の病院です。病院ですから入院施設が併設されていますが、そこでは野鳥を間近でじっくり観察することができるので、ふだんの双眼鏡ごしの観察を補い、野鳥についての知識を深めることができます。例えば、大部屋にはいろいろな種類が一緒にいるので、大きさやスタイルの違いなどを比べることができます。また目に注目すると、人の白目の部分が赤、茶、赤茶、黄色といろいろあることまで見れます。ここには野外観察や図鑑では味わえない面白さがあります。

タカの仲間のトビをこんなに間近で見られます。その他にも、フクロウやチョウゲンボウ、シギの仲間、ホオジロなどの小型の鳥などが入院していました。

 

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むかしの写真で見る 昭和の風景

 
昭和44年(1969年) 撮影

市営霊園から長田谷津を望む


市営霊園から長田谷津を望む

 
    大野町4丁目の市営霊園から、すぐ下の谷を撮影した写真です。この谷は現在の「大町自然観察園」の下流に位置する部分で、ここから自然観察園までの長い谷を本来「長田谷津」と呼んでいました。一面に稲田が広がっていた谷底には、現在では斎場や霊園が作られ石材店が立ち並び、大きな倉庫も建てられました。そのため、全体の地形はわかりにくくなりました。
 
 
   昭和の時代、市川市域は急速に都市化が進みました。しかし、もともとの地形を大幅に改変することはほとんどなく、台地は台地のままに、谷は谷のままに市街化が進みました。台地を大規模に削ったり谷を大量の土砂で埋め立てるような造成は、平成の時代になってから目立つようになりました。
 

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わたしの観察ノート 


◆大町公園より

  • やわらかな日差しの、風のない暖かな日(11月1日)。ツユクサなどが茶色く枯れ始めた湿地で、パチン、パチンとあちこちから音が聞こえてきました。よく観察すると、ツルマメのマメのさやがはじける音のようでした。決定的瞬間を見ていないのですが、はじけたさやがあちこちにあったので、間違いないと思います。乾いた日に勢いよくはじけることで、中のマメを遠くに飛ばします。

 金子謙一(自然博物館)

 

◆堀之内より

  • とても暖かい晩秋でしたが、歴史博物館の森で、オオスズメバチが約20匹程群れをなして飛びまわっていました(11月13日)。

◆中国分より

  • ジョウビタキのオスが2匹で庭のハナミズキの実を食べては1日中いったりきたりしていました(11月13日)。

以上 道下 誠さん(中国分在住)
 

◆小塚山より

  • カラ類の混群の中に、ムシクイ類1羽が混じっていました(11月3日)。ずいぶん遅い渡りです。

◆里見公園より

  • オジロビタキを見ました(12月25日)。ところが、スダジイの木の中で鳴きながら動き回っていて、なかなか下に下りてきませんでした。かわいいルリビタキのメスタイプ1羽は、わたしの直ぐ近くに来てくれるのですが・・・。

◆坂川旧河口一帯より

  • ビオトープ池先江戸川の岸辺のオニグルミの木にとまって鳴き声をたてるツグミ1羽は、一帯ではこの冬の初認です(11月23日)。かなり、飛来が遅かった模様です。
  • 里見公園下江戸川の岸近くにオオバンが数羽の群れで見られるようになりました(12月17日)。人間にも馴れてきたようです。
  • シメ1羽が柿の木にとまって鳴き声を出しました(12月25日)。一帯では待ちかねた初認です。

◆江戸川より

  • おそらく千に近い単位(?)のカワウの大群が見事な編隊をくみ、川を遡って次々と上流方向へ飛んでいきました(11月20日)。羽音が聞こえるほどの低空を飛ぶなど、あまりに壮観な眺めだったため、写真をとるのも忘れて見入ってしまいました。またその後、オオタカ1羽が川を斜めに横切って、国府台の林へ姿を消しました。

 以上 根本貴久さん(菅野在住)
 

◆中山より

  • 大きなツルウメモドキのつるがあります(11月18日)。子どもがブランコできるほどで、樹齢もそれなりの感じです。ちょうど実がなっていて、黄色い皮と朱色のタネの対比がきれいでした。

 金子謙一
 

 

気象のようす

暖かい日が続いて、なかなか紅葉が進みませんでした。葉もなかなか落ちず、冬至になっても紅葉がきれいでした。

 

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