平成24年度 市川自然博物館だより 4・5月号 通巻139号

市立市川自然博物館 2012年4月発行

     

 いきもの写真館  同じ場所を何度か訪れる
 花屋の花を観察する  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  むかしの写真で見る昭和の風景
 わたしの観察ノート  

 


 

いきもの写真館
ルリタテハ 春先はルリタテハやキタテハなど、成虫越冬したチョウが、真っ先に飛びはじめます。春を告げるチョウですね。  撮影者 土居幸雄さん

 

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同じ場所を何度か訪れる 江戸川放水路 3月30日

 

【訪れる場所の紹介】

  江戸川放水路は、「江戸川」のうちの、おおむね行徳橋から湾岸道路・JR京葉線の鉄橋に至る範囲のことです。この部分は、増水した江戸川の水を東京湾に流すショートカットの流路として、大正時代に造られました。洪水対策の「放水路」です。その後、名称だけが「江戸川放水路→江戸川」「江戸川下流部→旧江戸川」とされましたが機能面の変更はなく、江戸川の水はいまなお「旧江戸川」を通って浦安の先で東京湾へ注ぎます。江戸川放水路へ江戸川の水を流すのは、台風などの増水時だけです(行徳橋が併設されている「行徳可動堰」の水門を、ふだんは閉じています。堰の両端の小さな口から、ごくわずかな量だけ江戸川放水路へ流しています)。
 
  結果として、「江戸川放水路」へは東京湾側から潮の満ち干にあわせて海水だけが出入する、海の環境(東京湾の入り江)になっています。

江戸川と江戸川放水路

 

【いろいろな自然環境・生物・工事】

  長さ3キロほどの江戸川放水路の両岸をひと回りすると、いろいろな景観に出会います。自然環境をおおざっぱに区分すると2つに分かれます。行徳橋〜東西線鉄橋付近までが「泥干潟」、東西線鉄橋から湾岸道路・JR京葉線の鉄橋までが「砂干潟」「砂浜」です。そして、それぞれの場所において「アシ原」をはじめとする植物群落が、あったり無かったりします。
 
  生物面では、5月から10月は干潟の動植物が多く見られます。トビハゼをはじめとする魚類、カニ類、貝類や、ハマヒルガオなどの海浜性の植物も見られます。11月から4月は野鳥が多く、渡り鳥のシギ・チドリ類、越冬するカモ類、サギ類などが見られます。夏にもコアジサシなどが目につきます。取材をした日は、干潟ではコメツキガニの砂団子が少し見られ、ハジロコチドリという可愛らしい渡り鳥に出会えました。
 
  冬期は洪水が起きにくい季節ということで、取材の日も工事がさまざまに行われていました。今シーズン行われているのは、大きく3つの工事です。行徳可動堰の改修工事(新設の予定が紆余曲折を経て改修になりました)、高潮対策の堤防かさ上げ工事(東日本大震災前に着工したので津波ではなく高潮対策です)、妙典橋の橋脚造成工事です。そのほか湾岸道路橋脚の耐震補強工事も行われていました。治水・交通の要所ということもあり、むかしからさまざまな工事がおこなわれてきました。自然環境との折り合いのつけ方にも歴史があります。
 

干潟と桟橋  広がる泥干潟

砂干潟に立つ木杭  トビハゼ護岸

砂浜に残された波の模様  橋の下から東京湾を望む

 

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花屋の花を観察する スイートピー スイートピーの花

   スイートピーはマメ科の植物です。名前の「sweet pea」は直訳すれば「甘いマメ」ということになるのでしょう。花屋さんでアレンジに使われるスイートピーは大きなフリフリの花びらが本来の形を隠してしまっていますが、よく見るとフリフリの中央に舟形の花びら(竜骨弁:竜骨とは船底の中心を船首から船尾までを貫く材)があり、マメ科であることが納得できます。エンドウやレンゲ、フジ、シロツメクサの花と同じ形で「蝶形花」と呼ばれています。

   竜骨弁の中には、雄しべと雌しべが入っています。雄しべは根元がくっついて筒状になり、雌しべを包み込んでいます。雌しべは舟形の花びらに沿うように先が曲がり、普段は雄しべ・雌しべとも、花びらの中に格納されています。虫が止まると竜骨弁が下がり、花の奥にある蜜への道が開けます。そして、その道上に雄しべ・雌しべが待ち構えているという仕掛けです。野外でレンゲやフジの花を観察すると、この仕掛けが発動するようすがよくわかります。

 花が終わったスイートピーをそのままにしておくと、うまく受粉していればマメができます。あたりまえの話ですが、実際にマメができると、ちょっと感動です。
 


花の中央部分。竜骨弁が見える  花の背後。大きながくがある
竜骨弁を押し下げた。「しべ」が出てきた。  竜骨弁以外の花びらを取り除いた状態。
竜骨弁を前から見た。舟形をしている。  竜骨弁を取り除いた状態。筒状の雄しべ。
花びらが縮んでくるとマメが現れる、  すっかり「豆」らしくなった。

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街かど自然たんぽう

二俣(ふたまた)・浜堤と街道

 かつての二俣の中心は、今の原木インター北側にあり、行徳から、田尻、原木と続く成田街道(現在の県道179号線)が通ります。これらの昔からの集落は、「浜堤(ひんてい)」と呼ばれる地形の上にあります。川が作る自然堤防と同様に、おもに海が運んできた砂が堆積してできました。周辺よりも微高地で土地がしっかりした場所なので、街道もそれらの場所を首飾りのように連ねて通っていきました。

地図から集落の範囲を線で囲った。浜堤の範囲とほぼ重なる。昭和28年国土地理院発行の地図より。

 

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くすのきのあるバス通りから 第81ヒキガエルの行動

 
 今年の冬は気温が低い日が多く、カンザクラもまだの様です。3月11日夜8時頃八幡4丁目側の葛飾八幡の鳥居から十二社神社へ向かう間に2匹カエルが轢かれていました。例年より遅いような気がします。二三軒分離れていましたが二匹とも同じ向きでした。行きたい方向が同じなのかもしれません。

   我が家の庭にヒキガエルが1匹います。カエル自身は好きな時間に好きなように過ごしていて、私と出会う場所が色々です。暇があったら行動を監視してみたいものです。ある夏、庭の草取りをしていて、小動物の骨が出てきたときはワクワクしました。手の形を崩してしまって「ああ残念、ネズミかな?」と思いましたが、「夏前に、道路で轢かれたカエルを自分で埋めた蛙だ」と思い出しました。

  (M.M.)

ヒキガエルをみかけた場所  

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むかしの写真で見る 昭和の風景

 
昭和36年(1961年) 撮影

京 成 電 鉄 江 戸 川 鉄 橋

京成電車 江戸川鉄橋

写真提供 岩瀬徹 氏

 
 写真は、江戸川にかかる京成電車の鉄橋を小岩側(東京側)から撮影したものです。鉄橋の向こう側に国府台の斜面林が延びるようすがわかります。この場所は、都心が立地する「東京低地」が、下総地域に広がる「下総台地」とはじめて接するところです。低地と台地の接線が斜面になり、そこに林が残されました。都内から電車で千葉方面に帰る時、国府台の緑を見て多くの人が帰宅を実感したそうです。
 
 
   江戸川の河川敷に目を移すと、意外に「荒れて」います。生活上あるいは治水上の必要性に迫られなければ、わざわざ草刈りに労力をまわす余裕のない時代だったのでしょう。ですが、こういう草むらが、多様な動植物の生活場所になっていました。
 

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わたしの観察ノート 


◆大町公園より

  • 暦の雨水のイメージ通り「ぬるい雨」が降り、その翌々日にニホンアカガエルの卵塊を数えたら、自然観察園全体で503個見つかりました(2月9日)。絶好の雨にオスもメスもいっせいに出てきて、特にメスはもれなく産卵できたようです。
  • コブシの花芽がほとんど見当たりません(2月28日)。この冬は1月頃の雨が少なかったので、そのせいで花芽が落ちてしまったのでしょうか? 自然観察園自体は湧き水が豊富で、いつも潤っているのですが。

以上 金子謙一(自然博物館)

 

◆国府台周辺より

  • 里見公園の梅園で白梅が2つ開いていました(1月13日)。寒さ厳しい中にも、春が近づいていることが、感じられました。
  • 里見公園分園から江戸川へ出る道沿いや、真間山幼稚園裏にあるコブシに花芽がほとんど見られません(2月10日)。さびしいです。自然観察園と同じ原因でしょうか。
  • 国府台天満宮の鳥居に、ジョウビタキのオスがとまっていました(2月20日)。

◆じゅん菜池緑地より

  • 前の日に降った雪が残る明るい日射しの中、コゲラ2羽、エナガ、シジュウカラの群れが木の枝に見られました(1月25日)。

以上 M.T.さん
 

  • 紅梅1輪、白梅1輪、咲いていました(2月2日)。

谷口浩之さん(北国分在住)
 

  • 昨夜降った雪が残る“じゅんさい池”その最南部の水面に浮かぶコガモの群れ(オス12羽、雌7羽)の大きさに驚きました(2月18日)。外のカモ類がいつもと違って少ない中、中洲には、さらにオス12羽、雌10羽が休んでいました。合計41羽は、これまでの最多観察記録です。また、一番奥の池の背の高い枯草の中に、アオサギ1羽がじっと佇んでいました。

◆坂川旧河口一帯より

  • 気温は低いものの風のない日和のせいか、江戸川べりの木にとまっていたツグミが口笛のような鳴き声を出していました(1月1日)。
  • 江戸川べりのピラカンサの木にとまって、ツグミ、アカハラ、ヒヨドリが競って赤い実を食べていました(1月15日)。大量に最後まで残った(美味しくない?)実に手を付け始めたようです。

以上 根本貴久さん(菅野在住)
 

◆中国分より

  • 自宅のキンモクセイの木で、メジロの巣を見つけました(2月11日)。

道下 誠さん(中国分在住)
 

 

気象のようす

年明けから、厳しい寒さが続きました。そのうえ一月は雨が降らず、カラカラでしたが、下旬になってやっと雨が降り、何度か雪も積もりました。

 

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