平成24年度 市川自然博物館だより 6・7月号 通巻140号

市立市川自然博物館 2012年6月発行

     

 いきもの写真館  同じ場所を何度か訪れる
 花屋の花を観察する  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  むかしの写真で見る昭和の風景
 わたしの観察ノート  

 


 

いきもの写真館
ヒメクロオトシブミ オトシブミ類の「ゆりかご」づくりは、匠の技です。中央の主脈を残して切れ込みを入れ、それから巻き始めます。  撮影者 土居幸雄さん

 

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同じ場所を何度か訪れる 江戸川放水路 6月1日

 

【不気味な6月の青潮】

  最初に、本号の発行予定日である6月1日が取材日になったことを、お詫び申し上げます。
 
  曇り空から、やがて青空が広がった好天の日、江戸川放水路は堤防から見る限りは平穏で、青々としたアシ原が生き物の季節の到来を告げていました。ところが、干潟に降りて水ぎわに近づくと様子がヘンです。さざ波を立てる小さな動きが、目に飛び込んできました。それは、予想通りマハゼの群れでした。マハゼと言っても、この春に生まれた子どもたちです。背びれが露出するくらいの浅さにまで入り込んで、水ぎわのラインにそって延々と、おびただしい数がいました。それらが、近づく人影に驚いては右往左往していたのです。
 
  青潮が発生したようでした。酸素の無い水の塊りが沖に出現し、魚たちが少しでも空気の溶ける浅瀬に集まってきたのです。かつて6月に青潮を見たのは1992年で、その時は出産を控えて浅瀬に集まっていたアカエイが大量に打ち上げられました。2トン積みトラック2台分です。それにくらべればこの日はまだ初期の段階だったので、死んだ魚介類はほとんど見られませんでした。ただ、青潮が進行すると中型・大型の魚が打ち寄せられるようになります。そうなる前に解消されることを願いました。
 
  一方で、青潮の初期は生き物採集に適したタイミングです。展示用にマハゼやボラの子、イシガレイの子、抱卵中のシラタエビなどを採集しました。博物館の飼育展示や小学校の授業で活用します。

水ぎわに逃げてきた子どものマハゼ

 

【満開のハマヒルガオ】

カニの砂団子  江戸川放水路の河口付近、京葉線や湾岸道路の下あたりには、小さな砂浜の環境が見られます。ちょうどこの日は、ハマヒルガオが満開でした。ハマヒルガオは、海岸の砂浜にふつうに群生する海浜植物です。九十九里などではいたるところにありますが、江戸川放水路での生育場所は限られています。以前は水ぎわの砂浜にも多く見られましたが、この日は堤防のコンクリートの隙間から伸び出した大きな株が満開でした。街なかに多いコヒルガオにくらべると花が大きく、濃いピンクと白いラインの取り合わせが見事です。色合い的に地味な干潟の風景の中では、際立っていました。
 
  潮が引いたばかりの干潟では、コメツキガニやチゴガニがせっせと巣穴を掘っていました。同じ干潟の生き物でも干潟上で活動する種類には青潮の影響は軽微です。干潟という環境の複雑さを目の当たりにした日になりました。

ハマヒルガオと東京湾

 

 

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花屋の花を観察する ガーベラ ガーベラの花

   お花屋さんのガラスケースに年中飾られているガーベラは、キク科の花の特徴がよくわかる素材です。キク科の花は、何百もの小さな花があつまって、ひとつの花の形を作っています。ガーベラの花をじっくり見たり、分解することで、ひとつひとつの花の存在に触れることができます。

   ガーベラの花の周囲を飾る「花びら」は、1枚1枚が独立した花です。その内側の「雄しべ」に見える部分も別の花で、雄しべ1本に見えるものが、それぞれ独立しています。そして、さらに中央部には、小さなたくさんの花がつぼみの状態で開花を待っています。

 何百もの小さな花をまとめている「がく」は、実際は「総苞」と呼ぶ特別な葉の集まりです。本当の「がく」は小さな花ひとつずつにあり、冠毛と呼ばれる毛になっています。花が終わると冠毛が伸びてきます。タンポポの綿毛に相当するところです。
 

何百もの小さな花が、ひとつの花のようにふるまう  総苞と呼ばれる特別な葉が、小さな花をひとつに束ねる
筒のようなひとつずつの花。おしべがつきだしている  「がく」に相当する冠毛が花の根元に密生する

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街かど自然たんぽう

高谷新町(こうやしんまち)・工場の緑化樹

工場街の中をまっすぐにのびる、タブノキの並木道  高谷新町は、工場街なので気軽に訪れるという場所ではありません。町全部が埋立地なので(「むかしの写真で見る昭和の風景」参照)、緑が何もない場所に工場緑化の目的で植えられたものです。大きなドングリがなるマテバシイや、花が真夏に咲いてきれいなキョウチクトウが多く植えられていました。ハマヒサカキ、トベラなど海辺の街らしい種類もありました。街路樹ではあまり使われないタブノキの並木道では、ちょうど新芽が出ていました。

 

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くすのきのあるバス通りから 第82花のかおり


スイカズラの花  住宅街を歩くと、垣根にからませてあるバラやジャスミンの香りにホッとします。でも、私はナツミカンやスイカズラの香りの方が好きです。スイカズラが垣根にあるお宅は、あまり園芸品種の花を育てていないような気がします。元の市川学園の道路沿いにマテバシイがあり、花をたくさんつけています。風の向きによって、ほのかにいい香りがします。黄緑色の新しい葉と花でモコモコしている様子で、遠目でもスダジイがあるのが分かります。スダジイの花の香りはあまり好きではないので、「あ、近くにある」と街中でも気がつきます。草も木も今年は花の数が多いようです。

  (M.M.)

 

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むかしの写真で見る 昭和の風景

 
昭和38年(1963年) 撮影

高谷新町 埋め立て予定地

高谷新町造成前、写真提供 岩瀬徹 氏

 
 江戸川放水路の河口・左岸側の「高谷新町」造成前の写真です。「出島」のように海に張り出した埋め立て地にはいくつもの工場が立ち並び、写真にある淀川製鋼所はその中央に位置する工場です。

 埋め立て前は、干潟から浅瀬へとゆるやかに続く海岸でした。写真は、ちょうど引き潮のときに撮影されたようです。砂地の場所には、ウラジロアカザやウシオハナツメクサなどが生えはじめていました。看板の先にも、まとまった陸地が見えます。水たまりにはハゼやカニ、ヤドカリが生息し、砂の中には貝も多かったことでしょう。東京湾では絶滅したハマグリがよく獲れたのも、この一帯だったそうです。
 

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わたしの観察ノート 


◆国府台緑地より

  • 春の花がたくさん見られるようになりました(3月21日)。ムラサキハナナ、ヒメオドリコソウ、オオイヌノフグリ、タチツボスミレなど、日射しをあびてきれいでした。
  • シロバナタンポポが咲いていました(4月3日)。

◆真間より

  • 真間山南側斜面林でウグイスが鳴きました(4月4日)。台風並みの大風が去って、明るい朝でした。去年に比べだいぶ遅いようです。
  • 商店街でツバメが飛んでいるのを見かけました(4月27日)。
  • 真間山下の斜面林で、アゲハチョウが飛んでいました(4月28日)。少し動くと汗ばむほどの陽気でした。

◆市川南より

  • 江戸川べりに植えられたカワヅザクラがようやく開き始めました(3月12日)。

以上 M.T.さん
 
 

◆国分より

  • ツバメが2羽飛んでいるのを確認しました(3月30日)。

藤田柳子さん(大和田在住)
 

◆市川東高校周辺より

  • 市川東高校の上空をツバメ2羽が飛んでいました(3月29日)。

K.H.さん
 

◆坂川旧河口一帯より

  • 新堤防上を歩いていたところ、青空を背景に、1羽のツバメが江戸川を横断して一直線に東方向へ飛び去りました(3月25日)。ツバメ初認です。
  • ビオトープ池の周りの道でエサをとるキジのペアを見ました(4月14日)。近づくと、メスはさっさと池の茂みの中へ姿を隠しましたが、オスだけが道に立ちこちらをじっとうかがっていました。もちろん、わたしは回れ右をしました。

◆菅野より

  • 鳴きながら飛び回るコチドリがいました(4月1日)。ただ、昨年繁殖に成功した空き地には土がうず高く積まれているので、今年は、一帯どこが安住の地になるのでしょうか。

以上 根本貴久さん(菅野在住)
   

◆市内某所より

  • シュンランが1株蕾をつけました(3月12日)。他の雑木林でも9株あちこちで春を待っています。いまだ野生のまま生きていることはすごいことです。
  • 咲きはじめました(3月25日)。
  • たった1株だったものが見あたりません(3月25日)。
  • 木漏れ日の雑木林にキンランが50数株点在して咲いていました(4月29日)。別の所では4株ほどが、さらに離れてギンランが1株咲いていました。ジュウニヒトエも咲いていました。

谷口浩之さん(北国分在住)
 

 

気象のようす

いつまでも暖かくならず、ウメ、コブシ、桜の花が同時に見られました。梨の頃になって、ようやく春が追いつきました。

 

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