平成24年度 市川自然博物館だより 10・11月号 通巻142号

市立市川自然博物館 2012年10月発行

     

 いきもの写真館  同じ場所を何度か訪れる
 花屋の花を観察する  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  むかしの写真で見る昭和の風景
 わたしの観察ノート  

 


 

いきもの写真館
ツマグロヒョウモン 満開のミゾソバにツマグロヒョウモンのペアが集う光景です。花はピンク、チョウはオレンジ。秋らしい彩りです。  撮影者 土居幸雄さん

 

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同じ場所を何度か訪れる 江戸川放水路 9月21日そして27日

 

【ハゼ釣りでにぎわう9月21日】

  最高気温が連日30℃を越す厳しい残暑の中、いまにも泣きだしそうな雲行きの江戸川放水路を訪ねました。岸辺では秋の江戸川放水路らしくハゼ釣りを楽しむ人の姿が目立ち、満ち潮まぎわの小さな干潟には今年生まれの小さなトビハゼが、ピョコピョコと飛び跳ねていました。水の中にはボラの群れが目立ち、特に行徳可動堰脇の小さな水門のところには、多数の小さなボラの群れがいて、それをぼんやり眺めるアオサギの姿が印象的でした。
 
  アシ原の縁には海岸性のホソバハマアカザが白っぽい葉を広げ、小さなつぼみをつけていました。ハマミチヤナギの花はちょうど見ごろでしたが、小さな花は写真映えしないので、白黒の紙面に掲載することができませんでした。 ハゼ釣りを楽しむ人たち

今年生まれの小さなトビハゼ(矢印先) ホソバハマアカザ

 

【息をひそめる9月27日】

 北風が吹き最高気温が21.4℃に急降下した9月23日を境に江戸川放水路の様子は一変しました(気象データは船橋アメダス)。東京湾奥沿岸域で「青潮」が発生し、それが江戸川放水路にまで入り込んだからです。
 
  夏のあいだ海底の深みにたまっていた「無酸素水」が湧きあがる青潮は、海の生物にとっては「死の水」です。青潮の知らせを聞いて再訪した9月27日は、水際に横たわるおびただしい数の生き物の死骸に息を飲みました。
 
  まず目についたのは、無数のマハゼの死骸です。前日やその前に打ち上げられたものは砂浜に並んですでに乾燥し、水際には少しでも酸素を求めて集まり、息絶えたばかりのマハゼの姿が延々と続いていました。二枚貝のシオフキも、酸素を求めてか砂から出て、でも結局死んで水際に無数に浮かんでいました。マゴチやワタリガニ類も目立ちました。青潮自体は毎年の現象ですが、今年は被害が大きいようです。科学的な言い方ではありませんが、青潮が「濃い」ように感じました。
 
  1週間前には大勢の人が楽しんでいたハゼ釣りは、これで今シーズンはおしまいです。行徳の秋の風物であるハゼ釣りが、いかにあやうい環境条件の下で成り立っているのか、あらためて思い知らされた1日でした

大量に浮き上がったマハゼ 波が引くとマハゼの死骸が散乱する

シラタエビの死骸 二枚貝(シオフキ)もすべて死んでいる

 

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花屋の花を観察する グロリオサ グロリオサの花

   濃い赤と黄色の豪華な花のグロリオサは、熱帯地方原産のユリ科の植物で、お花屋さんのケースにはほぼ1年中品ぞろえがあり、花束や切り花に用いられます。露地でも栽培可能で、露地なら夏が花時になります。

   ユリ科の植物は、3数性と言って、花の各部が3の倍数の数で構成されます。グロリオサの花びらは6枚あり、確かに3の倍数になっています。細かく見ると(わかりにくいのですが)、花びらは外3枚と内3枚の2重になっています。外側の3枚が普通の花の「がく」にあたり、内側の3枚が「花びら」にあたりますが、外見的に違いがない場合は内外あわせて「花被(かひ)」と呼び、外側を「外花被」、内側を「内花被」、その1枚ずつを「外花被片」「内花被片」と呼ぶルールになっています。この構造は単子葉植物には多く見られ、ユリやランなども「がく」と「花びら」に外見的な違いがありません。

 さらに見ると、雄しべの本数や、実になる部分(子房)の内部も、3の倍数で構成されています。
 

花びらや雄しべなどが3の倍数の数で順番に重なっている
直角に曲がる雌しべ  雌しべの根元が子房
子房の断面  子房がふくらんだ
子房(果実)がはじけた  はじけても花の部品が残る

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街かど自然たんぽう

(さいわい)・公園で採集

公園を一周して集めた収穫物  ビニル袋を持って、行徳南部公園を一周しました。マテバシイとシラカシのどんぐり、シイの実、まつぼっくり、ユリノキの実をたくさん拾いました。クスノキやツバキは、枝にまだ青い実もたくさんついていました。地面にはセミの幼虫が出てきたと思われる穴が開いていて、抜けがらもあちらこちらで見つけました。公園で遊んでいた子どもたちが、ぼうし付きや大きな実のどんぐりを見つけてきて、袋に入れてくれました。

 

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くすのきのあるバス通りから 第84 家の中にカネタタキがいました


見つけたカネタタキ  8月の終わりの夜、コオロギやカネタタキの音が聞こえていました。夜も暑い日が続いていましたが、虫の声を聞くと秋が近い気がしました。「今夜はカネタタキの音が大きいね。家の近くの木にいるのかな。」と話していると、「あ、虫がいる。逃がさなきゃ。」と娘が容器を取り出し、私がそれをかぶせ、容器ごと外にだしました。小さい虫でした。「ひょっとして、あれがカネタタキ?家の中で鳴いていたんだ。」鳴く虫はなかなか見つからず、近づくと鳴きやみ居場所がわからなくなってしまいます。図鑑で見ていた虫の実物をみると柔らかく、かよわそうな感じでした。次の朝ちょろちょろと動くものを見つけました。またカネタタキです。昨日は慌てて写真も撮らずに逃がしてしまい、残念に思っていました。手近にある携帯のカメラでとると、足に登って来て逃げる様子がありませんでした。2匹とも洗濯物と一緒に取り込んでしまったようです。別の日の昼間、庭に停めてある車の上を歩いているカネタタキを見ました。

  (M.M.)

 

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むかしの写真で見る 昭和の風景

 
昭和43(1968)年 撮影

かつての里見公園

昭和43年11月の里見公園

写真提供 岩瀬徹 氏

 
 いまから40年以上前の11月の里見公園です。写真手前の「ふじ棚」はいまも現存しているので、ずいぶん古いものであることがわかります。芝生や園路の形も、いまの里見公園と変わりがありません。

 注目は、背景の林のようすです。背の高いマツが目立ちます。クロマツのようです。いまの里見公園はスダジイやタブノキといった常緑樹、ケヤキやムクノキなどの落葉樹が大きく育ってうっそうとしていますが、当時はマツの高木が目立ち、その下に、現在主力となっている木々が育ち始めています。やがてマツが枯れ、当時背の低かった木々が育って、現在の濃い緑に包まれた里見公園に移り変わりました。
 

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わたしの観察ノート 


◆長田谷津より

  • コブシの葉を食べるオオアヤシャクの幼虫を見ました(7月7日)。「尺取り虫」の一種で、コブシの芽そっくりに化ける姿が感動的ですが、なかなか見つかりません。この日、2006年以来6年ぶりに発見することができました。相変わらずの化けっぷりが見事でした。

金子謙一(自然博物館)
 
 

◆柏井より

  • 大柏川の浜路橋周辺で、クマゼミが鳴いていました(8月12日)。市川市立第五中学校周辺でも、鳴いていました。

K.H.さん
 

◆国分より

  • オオヨシキリがわずかに残った外環用地のアシ原で、ずっとさえずってましたが、7月1日にいくと、すでにアシ原が刈られていませんでした(7月1日)。
  • 雨のあとの湿った道に、50センチメートル程のコウガイビルが、3匹ゆっくり移動していました(7月3日)。きもち悪いけど、頑張れと言いました。

道下 誠さん(中国分在住)
 

◆真間山より

  • 斜面林下で、体長1.5センチメートルほどのカエルの子を発見しました (アズマヒキガエルでしょうか) (7月2日)。大きなアズマヒキガエルは何度か見たことがあるのですが、子ガエルは初めてです。4日後の7月6日には2匹いました。どこからやってきたのでしょう。
  • 斜面林で、ツクツクホウシが鳴き始めました(8月9日)。暑さが厳しい夏でしたが、立秋を迎え、秋の気配が出てきたようです。夕方にはヒグラシの「カナカナカナ」という鳴き声もきかれます。

M.T.さん
 

◆堀之内より

  • イヌザクラがきれいなオレンジ色の実でいっぱいでしたが、それを目当てに数十羽のムクドリが集まっていました(7月7日)。

◆坂川旧河口一帯より

  • 土手上から水面方向へ枝を伸ばしたヤナギ類の木の中に、丸い目をしたハシブトガラスの巣立ちヒナ1羽がとまっていました(7月1日)。近くに親鳥の姿は見えず、私が通り過ぎる際には、心細さからか、可愛らしい声で鳴き出しました。
  • チョウゲンボウの雌1羽が柳原水門辺りをゆったりと飛び回った後、あっという間に江戸川を横断しました(8月25日)。

以上 根本貴久さん(菅野在住)
   

◆江戸川放水路より

  • 新行徳橋の干潟には、トビハゼがたくさんいました(7月18日)。近年にない多さです。巣穴もたくさんありました。一方で、トビハゼ護岸は巣穴が数個でした。ちょっとしたことで、数は変動します。

金子謙一
   

 

気象のようす

梅雨らしくない激しい雨の日の後には、猛暑が続き、地面はカラカラでした。

 

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