平成24年度 市川自然博物館だより 12・1月号 通巻143号

市立市川自然博物館 2012年12月発行

     

 いきもの写真館  同じ場所を何度か訪れる
 花屋の花を観察する  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  むかしの写真で見る昭和の風景
 わたしの観察ノート  

 


 

いきもの写真館
ツミ 冬は市内でもタカのなかまがよく見られます。ツミは、ハトくらいの大きさですが、鷹らしい精悍な顔つきです。  撮影者 土居幸雄さん

 

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同じ場所を何度か訪れる 江戸川放水路 11月15日

 

【干潟の季節が大きく移りました】

  日本の気候は、標準的には「四季」で語られます。雨期として「梅雨」と「秋霖」を入れれば「六季」になります。ところが江戸川放水路の干潟で生き物を見ていると、あまり四季という印象はありません。同じ市川市内でも長田谷津では思う存分四季が感じられますが、干潟は少し違います。「春夏」でひとつ、「秋冬」でひとつの季節という印象です。この理由は、ひとつには季節を演出する植物(特に樹木)が少ないこと、そしてもうひとつはカニに代表される干潟の生き物の動向によっています。
 
  干潟の生き物の多くは、春夏に活発に活動します。餌を食べ、巣穴を掘り、繁殖にたずさわります。いわゆる「繁殖期」です。それに対し秋冬は「越冬期」となり、多くの生き物が干潟の泥にもぐって冬眠し、水中に移動して姿を見せなくなります。大きく「繁殖期」「越冬期」という「二季」があるわけです。潮の関係で、秋冬は日中に干潟が干出すること自体、そもそも少なくなります。
 
  今回訪れた11月15日の干潟には、カニの姿も巣穴もほとんどありませんでした。河川敷に群生するオギの穂が銀色に輝いていて、季節が移ったことを告げていました。

すぐに潮が満ちて干潟は隠れてしまった 銀色に輝くオギの穂

 

【野鳥がひと冬を過ごします】

 江戸川放水路の冬の主役は野鳥です。夏の前後にわたってくるシギやチドリも季節感がありますが、秋の深まりとともに渡ってくるカモたちは、特に象徴的な存在です。
 
  この日は数十羽のスズガモの群れに出会いました。群れの本体は江戸川放水路の沖合に位置する東京湾の浅瀬(三番瀬)にいることが多く、風向きなどによって一部の群れが江戸川放水路に入ってきます。季節が進むとオナガガモやヒドリガモ、マガモなども見られるようになります。スズガモの群れを撮影した写真を博物館に戻って見てみたら、アイサのなかまが1羽混じっていました。アイサ類や大型のカイツブリ類は、数こそ少ないですがほぼ毎年見られます。
 
  干潟で見られたのはイソシギが数羽だけで、河川敷のアシ原ではスズメの群れと、セッカらしい小型の鳥が見られました。エノキにモズがとまり、空を見上げると早くもユリカモメが数羽、旋回していました。
 
  野鳥、特に渡り鳥は、干潟のカニやトビハゼなどと違い、大陸規模、地球規模で生活しています。わたしたちが見ることができるのは、暮らしのわずかな断片にすぎません。カニのように干潟とその周辺だけで一生を送る生き物と、とてつもなく広い範囲で過ごす渡り鳥。その出会いの場が江戸川放水路というわけです。

江戸川放水路を飛ぶスズガモの群れ

 

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花屋の花を観察する ポインセチア ポインセチアの花

   ポインセチアは、少し「へそ曲がり」な花です。冬に目を引く派手な色合いながら、花びらを無くして(退化させて)、ほかの部品で彩りを演出しているからです。

   全体の色は赤・黄・緑の3色です。一番目立つ赤い葉は、花に近いところにつく「苞葉」という特別な葉です。中心部の赤と緑は、花の集合体の「袋」にあたる特殊な葉(総苞)の色です。黄色は2つの部品があって、ひとつは花から突き出した雄しべの先の花粉の色。もうひとつは「唇」のように見える部品の色です。これは腺体という、いわば花の集合体の付属品です。中には、蜜がたっぷりと入っています。
 

花の集合体を丸で囲った
ひとつの花に見えるものが、花の集合体 

花の集合体のひとつ。複数の雄花があり、「しべ」が突き出る。

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街かど自然たんぽう

塩浜(しおはま)・海とつながる猫実川

鉄橋は京葉線。猫実川の河口の先には東京湾が広がり、対岸に幕張のビル群が見えた。  猫実川は、市川市と浦安市の境界を流れている川です。現在の丸浜川の流路がほぼ埋め立て前の海岸線なので、そこより東京湾側の塩浜と、対岸の浦安市海楽、美浜、そしてその境の猫実川は、かつては海だった所です。現在の河口は、京葉線の先で東京湾と直接つながり、上流の水門までは、海水が自由に行き来できます。スケートパーク脇から水の中をのぞいてみたら、護岸にフジツボがついていました。

 

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くすのきのあるバス通りから 第85 カマキリが卵を産みました


 11月10日自転車を使おうとした時、きれいな緑色の虫が目に入りました。7から8センチメートルのカマキリでした。数日前庭の草取りをして、木にからみついたヤブガラシを取り払いました。「棲みかを追われて、どんな虫が出てくるかな」と思っていましたが何も出てきませんでした。他所から飛んできたのかもしれません。カマキリを木に移し、用事を済まして、またもとの位置に戻しました。お腹が大きかったカマキリでしたが、翌日見るとほっそりとしていました。自転車のかごの下に産みつけていました。地面から80センチメートルぐらいです。大町の自然観察園では、2メートルぐらいの所にもあるそうです。カマキリの卵の位置は、冬の寒さや雪の深さと関係があるとか・・・。2例ではあてになりませんが、気象庁の「暖冬予想を修正、平年並みか低め」との発表もあてにしていいのか・・・。

  (M.M.)

 

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むかしの写真で見る 昭和の風景

 
昭和51(1976)年 撮影

堀之内貝塚の斜面林

昭和51年、堀之内貝塚の南側斜面林

写真提供 岩瀬徹 氏

 
 いまから36年前に撮影された堀之内貝塚の南(南西)側斜面林です。落葉広葉樹主体の林であることは現在と変わりありませんが、高さは今よりずっと低く見えます。また、シラカシなどの常緑樹はほとんど見当たらず、斜面の上端にはマツ(おそらくクロマツ)が何本も生えています。

 現在の様子を踏まえてこの写真を見ると、30年ほどの間に起きた林の変化が読み取れます。落葉樹が育ち、マツは枯れ、新たに常緑樹が育ってきたのです。その結果、林内は暗くなり、動植物のメンバーも入れ替わりがあったことでしょう。

斜面林の前面には稲田が見られます。「道免き谷津(どうめきやつ)」の谷津田です。
 

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わたしの観察ノート 


◆長田谷津より

  • 去年数株まで減少し、花もわずかしか咲かなかったイヌショウマが、冬にタケを全面的に伐採して明るくしたところ、今年は少し株が増えて勢いも増し、たくさんの花が咲きました(10月6日)。

金子謙一(自然博物館)
 
 

◆柏井より

  • 京成バス柏井車庫付近で、シナガワハギが群生して咲いていました(10月10日)。大柏川沿いの株数も数年前より10倍以上増えています。

吉田 毅さん(柏井町在住)
 

◆真間山より

  • 斜面林下の庭のプランターを動かしたら、3センチメートルくらいのアズマヒキガエルがかくれていました(9月18日)。7月はじめに見かけた子ガエルが8月14日にひとまわり大きくなって出てきて、この猛暑を心配していましたが、またひとまわり大きくなっての登場のようです。すっかりアズマヒキガエルらしくなっていました。

M.T.さん
 

◆国府台より

  • フクロウが来ました(9月24日)。メスの声だけです。姿は見られません。家の周りと里見公園に、9月に2回、10月に3回来ました。「ギエーギエー」と鋭い声で鳴きながら移動し、10分ぐらいとびまわって聞こえなくなります。今年は早く来たように思いますが、よそではどうでしょうか。

秋元久枝さん(国府台在住)
 

◆坂川旧河口一帯より

  • オギ原先江戸川上空に現れたゴイサギ幼鳥3羽が、国府台の台地方向から姿を見せたほぼ同数のハシブトガラスに執拗に追い回されていました(9月1日)。ゴイサギたちは仲間意識が強いようで、決して転々ばらばらに逃げることはありませんでした。追われる同胞1羽を追うハシブトガラス1羽の後ろから、別の1羽がついていくのが良く分かりました。幸いなことに、しばらくすると、カラスたちは追跡に飽きてしまったようです。
  • ケリ1羽がビオトープ地先江戸川上空の割と低いところを下流に向かって飛びました(9月9日)。わたし自身、市川市での初記録でした。見慣れぬ鳥が災いしたのか、台地から緊急発進したハシブトガラス1羽にちょっかいを出されましたが、池先で一度旋回した後、さらに下流に飛びました。
  • オギ原からアリスイの鳴き声が響いていました(10月6日)。モズのものとは似て非なる声です。

◆江戸川より

  • 初認となるオナガガモ2羽、ハシビロガモ2羽、コガモ2羽、カルガモ数羽が集結、輪になって、互いの無事の渡来を祝しているかのようでした(10月6日)。

以上 根本貴久さん(菅野在住)
   

 

気象のようす

カラカラ天気で渇水が心配された猛暑は、結局9月下旬まで続き、10月になると、台風が次々襲来しました。

 

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