平成24年度 市川自然博物館だより 2・3月号 通巻144号

市立市川自然博物館 2013年2月発行

     

 いきもの写真館  同じ場所を何度か訪れる
 花屋の花を観察する  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  むかしの写真で見る昭和の風景
 わたしの観察ノート  

 


 

いきもの写真館
アズマヒキガエルのたまご(卵塊) アズマヒキガエルは、ガマガエルのことです。ヒモのような卵塊から浮き出るようにおたまじゃくしが出てきます。  撮影者 土居幸雄さん

 

最初へ戻る


同じ場所を何度か訪れる 江戸川放水路 1月29日

 

【再生の気配を感じました】

  冬の海では、日中よりも夜間に潮がよく引きます。そのため、昼間に干潟を歩こうと思うと、大潮にあたる満月や新月にちょうどあわせて行く必要があります。今回は満月の2日後、冬らしい快晴の日に江戸川放水路を訪れました。
 
  今回、特に目についたのはアオサ類でした。アオサ類は透明感のある緑色をした海藻で、東京湾では珍しいわけではありません。しかし今回は、多数の小さな株があちこちから伸び出していて、一見すると萌え出す若草のようでした。よく見ると、どの株も二枚貝の殻から伸びています。砂から生えているように見える株も、砂の中に貝殻が埋まっているようでした。これらの貝殻の多くは、秋の大規模な青潮で死んでしまった貝の殻です。その殻が、海藻の新たな生育場所になったわけです。
 
  海藻が茂ると、今度はその海藻を食べる生き物が増えます。あるいは海藻に卵を産み、小さな生き物は海藻に身を隠して生きていきます。死骸に埋め尽くされた青潮の日から4カ月。あくまでも見た目の印象に過ぎませんが、再生の気配が感じられました。

細長いアオサ類が水の動きにあわせて揺らめく

 

【足元を見ながら……】

浅い水辺  冬はプランクトンの活動が低下する関係もあって、水の透明度が増しています。水中がしっかり見えるので、だいたいの深さを確かめながら長靴で歩いてみました。少し深くなると、もうアオサ類は目立たなくなりました。やはり水中まで光が十分に届く「浅さ」が重要なようです。
 
  魚やカニには出会えませんでしたが、同じように水に入っていたコサギは時々何かを捕えていました。餌になる生物はいるようでした。
 
  干潟で見られたのはイソシギが数羽だけで、河川敷のアシ原ではスズメの群れと、セッカらしい小型の鳥が見られました。エノキにモズがとまり、空を見上げると早くもユリカモメが数羽、旋回していました。
 
  野鳥、特に渡り鳥は、干潟のカニやトビハゼなどと違い、大陸規模、地球規模で生活しています。わたしたちが見ることができるのは、暮らしのわずかな断片にすぎません。カニのように干潟とその周辺だけで一生を送る生き物と、とてつもなく広い範囲で過ごす渡り鳥。その出会いの場が江戸川放水路というわけです。

【掃除屋さん:アラムシロは元気】     

群がるアラムシロ  水中をていねいに見ると、ところどころでアラムシロが山になっていました。アラムシロは死んだ貝やカニなどに群がり、その肉を食べてしまう掃除屋さんの巻き貝です。群がる周りを見ると、まだ次々にアラムシロが集まってきています。どれくらい遠くから這ってくるのか測ってみると、歩幅で23歩分のところまで確認できました。距離にして10メートル以上です。折からの北風で波立っていましたが、それでも匂いの方向がわかるのでしょう。100匹を越すアラムシロが一目散に死骸へ向かっていきました。

【早くもカニの砂団子】

干潟上の砂団子  干潟のカニは穴の中で冬眠していることになっていますが、いつも、少しばかりの砂団子が見られます。寒さに強い個体がいるのでしょうか。コメツキガニのようです。
 
  カニの砂団子がない干潟は、サラサラとした砂浜の印象です。春の訪れとともに砂団子が増え、ヤマトオサガニのような大きめのカニも姿を見せます。そうして干潟の1年が巡ります。

 

最初へ戻る


 

花屋の花を観察する スイセン スイセンの花

   お花屋さんの店先でスイセンの切り花や鉢植えを見かけると、春の足音を聞いた気分になります。特に日本スイセンは、春らしい花色と甘い香りで日本の早春を代表する植物のひとつです(外来植物ですが)。

   スイセンの花はふつう正面から見て楽しみますが、横からながめるとずいぶん違った印象を受けます。正面から見ると、6枚の花びらと中央の輪になった黄色い花びらが目立ちます。6枚の花びらは萼(がく)3枚と花弁3枚が交互に並んでいて、外見に違いがないので、合わせて「花被片(かひへん)」と呼びます。花被片は元の部分でくっついて筒状になり、後方へ長く伸びています。そのため、横から見るとラッパ形に見えます。ラッパの根元のふくらんでいる部分が子房で、実になる部分です(ただしスイセンは結実しません)。ラッパの内部には雌しべ1本と雄しべが長短3本ずつあり、雄しべの柄は筒の部分にくっついているので、柄がないように見えます。

  中央にある丸い黄色い花びらは「副花冠」と呼びます。従来の「花弁」「萼」の定義ではあてはまらないので、6枚の花被片の付属物として位置づけられています。
 

左:正面。円形の花に見える。右:側面。ラッパ形の花に見える。
カッターで半分に切って内部を見えるようにした(雄しべ2本は切り除いた)。黄色い副花冠を目印に飛来した虫は、筒の奥まで蜜を取りに行く。その出入りの時に雄しべや雌しべに触れるので、結果的に花粉の運び役をになうことになる。 

最初へ戻る

   


街かど自然たんぽう

島尻(しまじり)・新しい町の新しい公園

わくわくバス(コミュニティーバス南部ルート「島尻」バス停前  島尻第3公園はマンション街の中にあり、植栽がちょっとおしゃれです。公園のフェンス際はふつうサツキ等ですが、ここはローズマリーの茂みにぐるり囲まれていて、真冬でも青々とした葉と可愛らしいブルーの花を楽しめ、夏には芳香も楽しめるでしょう。入口には背丈ほどのこんもりとしたミモザが、蕾をいっぱいにつけてしていました。中央には秋の紅葉がきれいなモミジバフウがあって、枝先にはリース飾りに使えるとげとげの実が、いくつかぶら下がっていました。

 

 最初へ戻る


くすのきのあるバス通りから 第86 真間川の野鳥


 「何か、春の兆しはないかな?」と双眼鏡とカメラを持って散歩にでて、冨貴島小の北側の、道路建設中で殺風景な真間川をのぞいてみました。ハクセキレイが水面の上に何度も飛んでは、岸に戻っていました。自然博の方によると「ユスリカをフライングキャッチしているのでは?」とのことです。「ヒヨヒヨ」とカモのような鳴き声が聞こえたので、八方橋の方へゆくと、9羽のカモがいました。羽の色や特徴を頭に入れ、家で図鑑をみると、ヨシガモ?に似ていました。オスは眼の辺りがきれいな緑色で、お腹側に細かい茶色の模様でした。メスは全体に茶色の細かい模様で、翼の一部に緑があるようでした。川沿いに植えてあるサクラには、数羽のキビタキがいました。ユリカモメは今年あまり見かけません。近所の家で、軒の壊れた所にムクドリが止まるぐらいに近づいて、また行ってしまいました。新居の下見でしょうか。

  (M.M.)

 

 最初へ戻る

 


むかしの写真で見る 昭和の風景

 
昭和49(1974)年 撮影

ウラギク湿地

昭和49年、行徳均衡緑地保全地区造成当時のウラギク群落

写真提供 岩瀬徹 氏

 
 写真は、行徳野鳥観察舎の前面に広がる保護区(行徳近郊緑地特別保全地区)の造成当初の様子です。この場所は、行徳沿岸部の埋め立てに際して「野鳥の楽園」として残された区画で、新浜鴨場の前に広がっていた干潟と浅瀬を造成して作られました。

 写真に写っている植物は、ウラギクという塩性湿地に生育する野菊の一種です。埋め立て地などに種子が飛来して一時的に大群落をつくることが知られていますが、まさにその状態が撮影されました。やがて植生の移り変わりに伴って群落は衰退しましたが、保護区内の地名として「ウラギク湿地」の名が残されました。写真上端には鴨場の木々が写っています。
 

最初へ戻る

 


 

わたしの観察ノート 


◆長田谷津より

  • 湿地の草刈りをしていたら、草を刈ってどけた下にヒキガエルがいました(11月25日)。背中が丸出しなので、まだ完全に冬眠していたわけではないようです。
  • コブシに、とてもたくさんつぼみがついています(12月1日)。この春はほとんどコブシが咲かなかったので、その分も含め例年の5割増しくらいはありそうです。3月が楽しみですね。
  • 斜面林の枯れ枝などをボランティアの方たちと片付けました(12月23日)。重なった枝をどかすと、ヤブコウジの真っ赤な実が見えました。

◆大野町より

  • 台地の縁を取り巻く斜面林に、羽状複葉の目立つ木がありました(11月13日)。ムクロジ?ハゼ?などとあれこれ考えましたが、赤い実や葉の様子からカラスザンショウのようでした。市内では珍しい樹木です。

以上 金子謙一(自然博物館)
 
 

◆真間山より

  • 南側の斜面林下のシャッターの戸袋にコウモリがぶらさがっていて、びっくりしました(12月21日)。気づかずシャッターを動かしたら、一ぴき下におちてしまいました。シャッターを閉めることができず、そのままにして出かけ、戻ってみると、もういなくなっていました。

M.T.さん
 

◆国府台より

  • 里見公園奥の林で見たカラ類の混群には、シジュウカラとメジロの外、少なくとも1羽のヒガラ、少なくとも3羽のキクイタダキ、ヤマガラ、コゲラがいて、とても賑やかでした(11月18日)。

◆坂川旧河口一帯より

  • ビオトープ池の周りの草地からベニマシコの鳴き声が聞こえてきました(11月25日)。また、オギ原からはアリスイの声が、坂川旧堤防では複数のウソの鳴き声が聞こえましたが、いずれも姿を見ることはできませんでした。
  • カイツブリ2羽がビオトープ池先江戸川の岸近くに仲良く浮かんでいるのを見ました(12月15日)。しばらくすると1羽が可愛い声で鳴きましたが、もう1羽に呼びかけているように見えました。
  • 新堤防の上から上流部を見ていたところ、左岸の木から奥の木の中へと飛ぶコチョウゲンボウ雄1羽が目に入りました(12月22日)。上面が明るい青灰色のため、雨が降る中でもよく目立ちました。わたし自身、初観察の鳥でした。

◆菅野より

  • 自宅の庭のアカマツの木に、ヒガラ2羽がやって来ました(11月11日)。盛んに、幹を叩いていましたが、近くには同行するシジュウカラ2羽もいました。

以上 根本貴久さん(菅野在住)
   

 

気象のようす

11月は雨が降ると大雨、12月に入ると晴れの日が多く、寒さが急に厳しくなって真冬の身支度が必要になりました。

 

 最初へ戻る

博物館たよりIndexへ戻る