平成25年度 市川自然博物館だより 4・5月号 通巻145号

市立市川自然博物館 2013年4月発行

     

 いきもの写真館  同じ場所を何度か訪れる
 花屋の花を観察する  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  むかしの写真で見る昭和の風景
 わたしの観察ノート  

 


 

いきもの写真館
ウツギ 草花に彩られた春が終わり、木々の緑が濃くなる5月下旬、ウツギが咲き出します。梅雨の気配が漂いはじめます。  撮影者 土居幸雄さん

 

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同じ場所を何度か訪れる 堀之内・小塚山公園 3月28日

 

【兄弟の林】

  市川市の北西部には小規模な林が点在し、緑地群を形成しています。そのなかでも「堀之内貝塚」と「小塚山公園」は古くから自然観察の場として知られている公園です。堀之内貝塚は国の史跡に指定されている貝塚で、隣接して考古博物館・歴史博物館があります。小塚山公園は、以前は「小塚山市民の森」と称されていました。現在は東京外郭環状道路のトンネル工事が進められていて、一部分だけが開放されています。
 
  この2つの林は、「道免き谷津」と呼ぶ谷をはさんで向かい合った位置関係にあります。もともとは道免き谷津を囲む一連の斜面林でしたが、その後の開発で斜面林が分断されて姿を消し、現在に至りました。独立した林のように見えますが、じつは「兄弟の林」なのです。
 
  市内の林は、総じて過去にさまざまな人手が加えられてきました。林によって管理の歴史(履歴)は異なり、そのことが現在の林の姿の違いにつながっています。堀之内貝塚は林内に空間が多く、小塚山公園は逆に低木が多いことが特徴です。それがそれぞれの林の、つまり兄弟の個性というわけです

昭和22年および平成24年撮影の航空写真

 

【いろいろな野草】

左からカキドオシ、カントウタンポポ、クサボケ

 今年は寒い冬から一変して暖かい春になったため、訪れた日は、まとめてたくさんの花を見ることができました。堀之内貝塚では、カキドオシの紫の花が目立ちました。林内ではシロバナタンポポとカントウタンポポがそろって咲き、ほかにもムラサキケマン、クサボケ、ヤブニンジンなどが見られました。堀之内貝塚の林は低木(特に常緑樹の低木)が少ないので、高木の葉が芽吹くまでは林内が明るく、花もよく咲いていました。
 
  小塚山公園は低木が多いので、堀之内貝塚にくらべると林内も少し暗い感じです。花も少なめでしたが、タチツボスミレの群落が満開できれいでした。ほかにも、モミジイチゴやウグイスカグラといった低木が花を咲かせていました。
左からタチツボスミレ、モミジイチゴ、ウグイスカグラ

【絶滅危惧種 イヌノフグリ】     

イヌノフグリ  イヌノフグリという野草があります。春の道端を青く彩るオオイヌノフグリに近いなかまで、オオイヌノフグリが外来種であるのに対し、イヌノフグリは昔からの在来種です。各地で数を減らし絶滅が心配される植物のひとつにも挙げられますが、堀之内貝塚の一角には昔からの自生地があり、この日も花を見ることができました。
 
  一般に、外来種が増え在来種が姿を消すメカニズムとして、人による土地の撹乱(造成や盛り土)が挙げられます。もともとあった植物群落が土木工事などで失われ、新たな地面に外来種が入り込んで繁茂し、増える速度の遅い在来種が負けてしまうのです。その点、堀之内貝塚は国の史跡に指定されている関係で土地の撹乱が起こることはなく、在来種のイヌノフグリが生育する環境が残されました。

 

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花屋の花を観察する オンシジウム オンシジウムの花

   お花屋さんで作ってもらう花束の引き立て役がオンシジウムです。鮮やかな黄花がたくさんある花で、メインの花に組み合わせる材料として使われます。熱帯アメリカ原産の着生ランを改良した園芸植物です。

   ランの花は、種類によって形がさまざまですが基本形は共通です。オンシジウムの花も複雑な形をしていますが、基本の形を読み取ることができます。ランの花は、「がく」に相当する3枚の「外花被片(がいかひへん)」と「花びら」に相当する3枚の「内花被片(ないかひへん)」を、角度をずらして重ねてできています。「花被片」とは、「がく」や「花びら」の部品としての呼び名です。さらに「内花被片」のうちの下側の1枚が大きく発達しています。特別に「唇弁(しんべん)」と呼びます。唇弁は花のチャームポイントであり、虫の着陸場所でもある重要な部品です。  

花の構造模式図

花の正面(左)と背面(右)。「外」は外花被片、「内」は内花被片を表しています。 

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街かど自然たんぽう

下貝塚(しもかいづか)・大きなケヤキ

けやきらしいほうき形の枝ぶり  通称「市川松戸道路」の切り通し付近に、遠くからでもよく見える大きなケヤキが生えています。長い間気になっていましたが、今回、近くまで行って見てきました。遠景では1本の大ケヤキに見えましたが、近づくと何本かのケヤキが寄りあうように生えていて、全体でケヤキらしい枝ぶりになっていました。

 ここは地域の共同墓地です。外部の人がむやみに訪れる場所ではありません。でも、この日は青空に梨の白花が映えてとても素晴らしい景観でした。

 

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くすのきのあるバス通りから 第87 2013年、春のようす


 「昨年同様、3月になっても気温が低い日が続きました。近所のカンザクラは、昨年より開花が遅かったようです。7日と8日は気温があがりました。10日は強風で、「黄砂ではなく、煙霧」と気象庁は発表しました。19日は二階の日当たりのいい部屋は日中27度になり、八幡六丁目のバス停横の広い庭で、「ウウッ、ウウッ」とカエルのくぐもった声が聞こえました。その夜は冬越しをした蚊が寝ている耳元にやってきました。次の朝、庭に出ようとサンダルを履くとき、慌てて逃げ出すヤモリを踏みそうになり、農協本店付近でツバメが飛んでいました。急に暖かい日が続いたせいかジンチョウゲ、ウメ、ボケ、コブシ、モクレン、サクラ、カイドウ、梨がいっせいに咲き、梅はアッという間に散った気がします。真間川のサクラは25日に八分咲きです。

  (M.M.)

 

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むかしの写真で見る 昭和の風景

 
昭和30年前後 撮影

羊毛の選別作業

日本毛織工場での作業風景

写真提供 岩瀬徹 氏

 
 写真は、かつて市内鬼高にあった日本毛織の工場での作業風景です(現・ニッケコルトンプラザ)。オーストラリアなどの原産地から直接運ばれてきた羊毛(原毛)を選別しています。見ると、羊毛はあまりきれいではありません。牧場で刈り取ったそのままの毛なので、さまざまなものが混じっているのです。

 その中には、異国の地の牧場に生えていた植物のタネもありました。それがこぼれて発芽するので、日本毛織の工場内には、見知らぬ外国の植物が多く生えていました。この写真は、過去の記録というだけでなく、植物研究の面でも重要な内容を含んでいます。

(市川市史編さん調査編集委員会発行 「調査記録2」参照)
 

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わたしの観察ノート 


◆長田谷津より

  • 雪が勢いよく降る中で、カルガモは背中に真っ白い雪を乗せたまま池を泳いでいました(1月14日)。背中に雪という姿は初めて見ました。
  • 夜中から朝にかけて雨が降りました。その後、南風が吹いて生暖かい午前中に観察園をひと回りしたら、例年よく産む場所に総じてアカガエルの卵塊がいくつもありました(2月2日)。絶好の産卵日和だったようです。

以上 金子謙一(自然博物館)
 
 

◆真間山周辺より

  • 真間山幼稚園のうしろにあるこぶしの大木に今年はたくさんのつぼみがついています(1月10日)。去年はほとんど見られなかったので、満開の花を今から楽しみにしています。

M.T.さん
 

  • 日の出前の寒さの中、手児奈霊堂の池に張った薄氷の上に1羽のアオサギがうずくまるようにじっとしていました(1月27日)。大きなサギなのですが、薄氷は破れないのですね。

◆坂川旧河口一帯より

  • 畑に残る野菜(何だか?)の葉に群がる、100羽前後のヒヨドリの群れを見ました(1月19日)。周りは雪で覆われているため、餌の確保に必死なのがよくわかりました。
  • 強い北寄りの風の中、坂川旧堤防の下流側と上流側を隔てる新堤防すれすれに姿を見せたヒバリ2羽が、風に向かってホバリングするように飛びながら、一瞬、さえずり声を出しました(2月16日)。帽子が飛ばされるほど、風当たりの強い場所なのですが、ほんの少し、近づく春を感じさせてくれました。

◆江戸川より

  • 里見公園下の水面に、軽く1,000羽を超えるユリカモメがひしめき合って浮かんでいました(1月12日)。夜をここで過ごしたものと思われますが、一帯におけるこれまでで最多は間違いなく、顔見知りの釣り人たちも、ただ驚くばかりの数でした。
  • 江戸川の中央部には、おそらく1,000羽を超える数のユリカモメの群れが浮かんでいました(2月 3日)。何が“きっかけ”だったのかわかりませんが、一部がフワッと浮かび上がったかと思うと、龍のように空をうねりながら西の方向へ飛んでいきました。

以上 根本貴久さん(菅野在住)
   

◆小塚山より

  • アカゲラのドラミングを聴きました(2月28日)。今年は居ついているようで、3回目です。今年はエナガが多く、いつもエナガ、シジュウカラ、コゲラの混群に会います。尾っ穂が長くてとても可愛いいです。

道下誠さん(中国分在住)
   

 

気象のようす

成人の日に降った大雪は、なかなか解けずにいつまでも残っていました。その後、間隔を置いて低気圧が通過しましたが、大雪にはなりませんでした。

 

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