平成25年度 市川自然博物館だより 6・7月号 通巻146号

市立市川自然博物館 2013年6月発行

     

 いきもの写真館  同じ場所を何度か訪れる
 花屋の花を観察する  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  むかしの写真で見る昭和の風景
 わたしの観察ノート  

 


 

いきもの写真館
マルタンヤンマ 梅雨はトンボの季節。ヤンマのなかまは黄昏時に活動することが多く、出会うことがむずかしいかもしれません。  撮影者 土居幸雄さん

 

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同じ場所を何度か訪れる 堀之内・小塚山公園 5月10日

 

【木々が光をコントロールする】

  5月に訪れた堀之内貝塚は、前回(3月28日)とは様子が大きく変わっていました。前回は落葉樹の芽吹き前だったので林内にも光がふんだんに差し込み、林は中も外も明るい状態でした。今回は落葉樹の葉が芽吹き、「新緑」の段階を過ぎて「青葉」の段階になっていたため、林内はずいぶん暗くなっていました。「青葉」の段階になると、木々の葉はしっかりして新緑のころのように光を透さなくなります。写真に写すと林内は薄暗く、林外は明るく真っ白に写りました。それほど、林内と林外で明るさ(光の量)に差があるわけです。
 
  木々の葉が芽吹いて林が暗くなることは、あたりまえと言えばそれまでですが、林で暮らす生き物にとってはたいへん重要な意味があります。初夏から夏にかけての陽光は強く、じかに照らされれば高温になり生物にとってはストレスになります(わたしたち人間もそう感じます)。それが木々の葉にさえぎられることで、林内の明るさはほどほどに抑えられ、気温の上昇も乾燥も防がれます。
 
  カンカン照りの場所では暮らすことができない生物は、穏やかな林内に生活の場を得ています。林内で暮らす動植物には、チラチラした木漏れ日の光で十分です。落葉樹が芽吹き、茂り、葉を落とす。そのことが、林の光をコントロールし林外とは異なる環境を作り出しています。こういう仕組みは「生態系」という言葉で表現されます。「食う食われる」だけが「生態系」ではないのです。

林の中から外を見た

 

木の上部は明るく根元は暗い 【光はすこしずつ減っていく】
 堀之内貝塚や小塚山公園に多いイヌシデ、コナラ、クヌギ、ムクノキなどの落葉樹は、枝葉の茂り方に隙間があります。スダジイやシラカシなどの常緑樹が木の上部の枝に葉を密生させて「傘」のようになるのに対し、幹の途中からのびた枝にも葉をつけ、葉っぱが層のようになっています。
 
  この隙間のある枝ぶりのおかげで、落葉樹の林では林内にも光が届きます。スダジイやシラカシの多い林は林内が真っ暗な印象ですが、落葉樹の林では少しずつ光が減っていくので、林内は常緑樹の林にくらべると明るい印象です。常緑樹の林が分厚いシートで覆われているのに対し、落葉樹の林では薄いシートを何層にも重ねて光を減らしているイメージです。この仕組みのおかげで林内のいろいろな高さの場所に、生き物が暮らす空間が作り出されています。

【ギャップと呼ばれる場所】     

ギャップに群生するハルジオン  堀之内貝塚の中央部に、林にぽっかり穴が開いた場所があります。ここにはニセアカシアが何本も生えていましたが、それらが風で倒れたのを伐採してできた空間です。こういう場所を「ギャップ」と呼びます。
 
  ギャップには陽光をさえぎる枝葉がないので、太陽の光がそのまま地面に届きます。林の外の環境と同じです。そのため、そこに暮らす生き物も林内とは異なります。堀之内貝塚ではハルジオンが群生していました。ハルジオンは開けた草原を好む野草です。
 
  木はいつか枯れるので、ギャップは林の生態系の一部とも言えます。ですが小さな林では、そこから林が崩壊していく可能性もあります。

 

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花屋の花を観察する カーネーション カーネーションの花

   カーネーションは、いわゆる撫子(カワラナデシコなど)と同じグループ(ナデシコ科ナデシコ属)に属する植物です。品種改良によって花びらが増え、撫子とは異なる豪華な花になりました(写真1)。

   今回は、カーネーションの花を分解してみました。萼(がく)が互いに合わさってひとつの筒になっているので(写真2)、その筒の一部を縦に切り取ると花を順番に分解することができます。萼を切り取ると、そこから花びらがつぎつぎにこぼれてきました(写真3)。カーネーションの花びらの根元は細く、萼の筒の中に整然と収まっていました。数えると、40枚ありました。花びらを取り除くと、筒形の萼の中に雄しべ・雌しべが残りました(写真4)。萼の筒はしっかりしていて、くしゃっとつぶれることはありませんでした。

   萼を取り除くと、雄しべ・雌しべの形がよく分かります(写真5)。雌しべは白くて長く、目立ちます。雄しべは、雌しべの根元(子房)のまわりに見られました。  

カーネーションの花を分解した. 1:花の全体,2:花の側面,3:萼の筒を縦に切った,4萼の筒,5:雌しべ・雄しべ 

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街かど自然たんぽう

下新宿(しもしんしゅく)・江戸川水門の全貌

右側の5門あるのが江戸川水門。左側の大きなゲートは船を通すための「閘門(こうもん)」  「江戸川水門」は現在機能している水門としては江戸川唯一のもので、河原地区に位置しています。ですが、その全貌は少し離れた下新宿からのほうがよく分かります。下新宿の江戸川(旧江戸川)沿いから見ると、右の写真のような角度で見ることができます。訪れたのがちょうど大潮の日だったので、水門はすべて閉まっているように見えました。この水門は、海水の遡上を防ぐことと、上流側の水位を調整する機能があります。水門が閉まると、ダムのような状態になります

 

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くすのきのあるバス通りから 第88 八幡のニセアカシア


 5月6日に葛飾八幡の境内を歩いていると、白いものがたくさん落ちていました。よく見るとフジの花のようです。あたりを見回すと中央公民館の横の植え込みに大きなニセアカシアがありました。花の時期に出会わなかったので、気付かずにいたようです。根元は外周 130センチメートルでした。結構太いのではないでしょうか。コンクリートで囲まれ、他の木と寄せ植え状態になっています。河川敷では倒れやすいうえに、本来の植生に侵入する外来種ということで伐採されているようです。蜜源にしている養蜂家は伐採は困ると、問題になった事がありました。今年は色々な木の花の数が多い様に思います。花芽が出来る頃にいい条件が揃ったのでしょうか。でも咲く順番が例年と違うものもあります。今はエゴノキとセンダン、スダジイ、クスノキが咲いています。

  (M.M.)

 

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むかしの写真で見る 昭和の風景

 
昭和47(1972)年 撮影

奉免町 大六天の森

大六天の森を南側から臨む

写真提供 岩瀬徹 氏

 
 「大六天神明社(第六天とも書く)」は、大柏川が流れる「大柏谷」に面する台地の縁にあります。入口は斜面の下、本殿は上に位置するので、長い階段を上ります。入口にはスダジイの巨木があり、歴史を感じさせてくれます。

 写真は、大六天の森を横から撮影したものです。画面中央が本殿のある場所で、そこから画面左側へ、斜面に沿って森が下がっている様子がわかります。画面左奥には大柏谷(この当時は田んぼが広がっていた)と、その谷の向こう側に位置する大野町の斜面林も写っています。いまでは周囲に住宅が増えましたが、大六天の森は健在です。木々の葉がうっそうと茂る、市内でも見事な樹林のひとつです。
 

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わたしの観察ノート 


◆長田谷津より

  • 今年はフジのつぼみが、過去、経験がないほどたくさんついています。開花が楽しみです(4月7日)。

金子謙一(自然博物館)
 
 

◆大柏川周辺より

  • 宿ノ下橋の上空をツバメが4羽飛んでいました(3月23日)。昨年より、数日早く確認しました。

K.H.さん
 
 

◆真間山周辺より

  • 弘法寺境内のシナミザクラ(サクランボ)の花がこのところの暖かさでほころび始めていました(3月7日)。厳しい寒さが続いていたので例年よりはおそいようです。
  • 斜面林下で体長10センチメートル弱くらいのアズマヒキガエルを見ました(3月20日)。このところの暖かさに誘われたのでしょうか。
  • 真間山幼稚園うしろの大コブシが去年の分もと言うかのようにたくさんの花を見せてくれています(3月21日)。しかし、広がった枝にはたくさん咲いているものの高く伸びた木のてっぺんには残念ながら花がつきませんでした。枯れてしまったのでしょうか。心配です。
  • 斜面林でウグイスが鳴き始めました(3月24日)。まだちょっとぎこちない感じですが、とてもいい声で鳴きます。

◆里見公園より

  • カワヅザクラが咲き始めていました(3月9日)。梅に続いていよいよ桜の季節が始まります。

以上 M.T.さん
 
 

◆堀之内貝塚公園より

  • アマナが満開でした(3月19日)。/li>

◆市内某所より

  • いつもの場所にシュンランが蕾をつけていました(3月6日)。
  • 木漏れ日の雑木林にキンランが60数株、点在して咲いていました。別の場所ではギンラン3株とササバギンラン2株が咲いていました(5月1日)。

以上 谷口浩之さん(北国分在住)
 
 

◆坂川旧河口一帯より

  • カワセミ2羽が前後に連なり、坂川旧河道の方へ猛スピードで姿を消しました(3月9日)。その際、どちらかが切なさそうな声を出していました。カワセミにも、恋の季節が訪れたようです。
  • 雨が降りつづく中、30羽前後のツバメが江戸川の岸近く、水面すれすれを飛び回っていました(4月21日)。小さな虫をとっているのでしょうが、これだけの数のツバメを町中で見ることはありません。

◆江戸川より

  • 和洋女子大学の高いビルの屋根の上、ハヤブサ1羽が夜間赤く光る照明灯の1つの上にとまっていました(4月20日)。

以上 根本貴久さん(菅野在住)
   

 

気象のようす

厳しい寒さから一転、3月後半から急に暖かくなりました。梅やコブシなど春早い花は遅く咲き、桜や藤などは早く咲きました。色々な花が同時に咲いた印象です。総じて花数も多く豪華な春でした。

 

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