平成25年度 市川自然博物館だより 8・9月号 通巻147号

市立市川自然博物館 2013年8月発行

     

 いきもの写真館  同じ場所を何度か訪れる
 花屋の花を観察する  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  むかしの写真で見る昭和の風景
 わたしの観察ノート  

 


 

いきもの写真館
アオスジアゲハ 動きの速いアオスジハゲハは、蜜や水を吸っている一瞬が観察のチャンスです。ヤブガラシの花に来ていました。  撮影者 土居幸雄さん

 

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同じ場所を何度か訪れる 堀之内・小塚山公園 7月27日

 

【樹木に依存する昆虫 セミ】

  猛暑の日に訪れた堀之内貝塚は、セミの声に包まれていました。訪れた日はほとんどがニイニイゼミの声でしたが、やがてアブラゼミ、ミンミンゼミ、ツクツクボウシと移り変わるでしょう。林内は無数の声が重なって、全体で一つの音と化していました。木の幹を見ると、ニイニイゼミの抜け殻がびっしりとありました。
 
  セミは、樹木に深く依存する昆虫です。産卵は幹の皮に行い、生まれた幼虫は地中にもぐって根につかまって暮らします。根から樹液を吸って成長し、地上に出て羽化したあとも、幹にとまって鳴き、樹液を吸い、雌雄が出会い一生を終えます。堀之内貝塚に林立する樹木がどれほどの数のセミを支えているのか、想像を超える数に違いありません。
 
  無数のセミは、餌となって生態系を支えています。この日はちょうど、シオヤアブがニイニイゼミを捕えた場面に遭遇しました。クモの巣にひっかかったヒグラシもありました。鳥にもずいぶん食べられるはずです。「餌資源」という点では、セミは、水辺のおたまじゃくしや草むらのバッタと同じ存在です。

ニイニイゼミの抜け殻 シオヤアブがニイニイゼミを捕らえた

 

【キノコの存在意義】
 林の地面にはキノコの菌糸がびっしりと広がっています。菌糸は、落ち葉を溶かして栄養を得ています。光合成でもなく、他の生物を食べるのでもなく、すでに生きていないものを分解して栄養を得る「分解者」です。中には樹木の根にまとわりついて、樹木との間で栄養交換をする種類もあります。
 
  堀之内貝塚で、マヤラン(あるいは白花品種のサガミラン)の若い実を見つけました。このランは葉緑素を失っているため光合成はせず、地中の菌糸から栄養を奪っています。いわゆる「腐生植物」です。マヤランが得る栄養分がどこから来るのか、キノコの菌糸の存在を交えて考えると、林の「目に見えない生態系」がイメージできそうです。

小塚山公園で見つけたキノコ マヤランの若い実

【ヤブラン、タンキリマメ】     

 花は堀之内貝塚・小塚山公園とも多くはありませんでした。夏の堀之内貝塚を代表するキツネノカミソリは花茎がまだ数本で、小塚山に群生するササクサも花穂が伸びていませんでした。淡いピンク色の花を咲かせるヤブランは堀之内貝塚に多く、小塚山公園でも少し見られました。
 
  タンキリマメというのは黄色い小さな花を咲かせるマメ科のツル草です。堀之内貝塚の外周フェンスにあって、ちょうど花と若い実が見られました。花はそれほど見栄えしませんが、豆が2個ずつ入った実はデザイン的にユニークで目を引きました。

小塚山公園で見つけたキノコ ギャップに群生するハルジオン

 

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花屋の花を観察する フヨウ フヨウのの花

   フヨウは、ムクゲやハイビスカスと同じ仲間の植物です。夏のお花屋さんに並ぶのはハイビスカスですが、公園ではフヨウやムクゲの花が目につきます。フヨウは「アオイ科」に属します。アオイ科の花は、「しべ」の作りに特徴があります。「おしべ」が互いにくっついて中空の筒を作り、その中を通って「めしべ」が伸びているのです。花粉ができる「葯」は、おしべの筒のまわりにたくさんついています。一見すると、めしべから花粉が出ているようにも見えますが、めしべは筒の中を通っているのです。

   フヨウのおしべの筒は、花びらとくっついています。ですから花が落ちるときは、花びら、おしべの筒、めしべが一体になって落ちます。落ちている花殻をていねいに開いて、中のめしべを先端から引っ張ると、すっと抜き出すことができます。  

フヨウの花の様子. 1:「しべ」の全体,2:おしべの筒からめしべを引き出した,3:おしべの筒を取り除いた,4めしべだけ抜けた 

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街かど自然たんぽう

下妙典(しもみょうでん)・堤防の草原

堤防の草原 ヘラオオバコの小さな白い花々は、輪になって茎を囲み、冠のように見えます。  7月下旬、妙典少年野球場を抜けて、江戸川放水路の土手を訪れました。街中の道端では5月頃に見られるヘラオオバコの花が、ちょうど花盛りでした。堤防の土手は、年に数回草刈りをして、常に草原の状態を維持しています。そのたび草々は伸びなおすので、常に瑞々しい草原です。他所では、葉も茎も固くなっているヨモギが、春先のような若芽でした。柔らかでおいしい草を狙ってか、大きなトノサマバッタが、草の間から飛び出してきました。

 

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くすのきのあるバス通りから 第89 ハスとセミ


法華経寺、龍王池のハス  今年は、ハスの種を手に入れ育てています。種の先を紙ヤスリで削り、芽を出させました。かなり固かったです。「そろそろ、ハスの花が咲いているはず」と法華経寺の裏の龍王池に行ってみました。たくさん蕾がありました。咲いているものは少なく緑色の花のあとの物も少しありました。ハスの葉の上を胴が太くて赤いトンボがたくさん飛んでいました。ショウジョウトンボだそうです。ニイニイゼミが鳴いていました。次の日八幡付近でニイニイゼミが鳴き、その次の日八幡付近と農協本店付近でミンミンゼミが鳴いていました。「死んだアブラゼミが道路にあった」と娘がいうので「鳴き声を聞いていないのに。」と私。どうしたのでしょう。自然博周辺ではヒグラシも含め既に鳴いているそうです。

  (M.M.)

 

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むかしの写真で見る 昭和の風景

 
昭和46(1971)年 撮影

真間山 石段からの景観

石段の上から「見下ろす」

写真提供 岩瀬徹 氏

 
 真間山の南側には、長い石段があります。斜面を斜めに通る坂も別にありますが、この石段を通ってこそ、真間山に来たという実感が得られる、そんな象徴的な石段です。

 写真は、石段の上から「見下ろす」アングルで撮影されました。この石段を下りると、「真間の入江」があったであろう低地に至り、「継はし」を経て大門通りに続きます。石段の両側は急な崖になっていて、そこに真間山を縁取る木々が生育しています。写真では、石段の左右にマツがあることがわかります。現在はうっそうとした森ですが、かつてはマツが多い林であったことが偲ばれます。この数十年で、木々の種類はずいぶん入れ替わりました。
 

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わたしの観察ノート 


◆真間山周辺より

  • 南側斜面の下の小さな庭で、ツマグロヒョウモンの幼虫(4センチメートル)を見つけました(4月4日)。ビオラの葉を盛んに食べていました。まだ寒い風が吹く中、冬越しはどんなふうにしたのでしょう。
  • 南側斜面林にチョウの姿を見つけました。アゲハチョウ(4月9日)、クロアゲハ(4月28日)、アオスジアゲハ(4月28日)、ツマグロヒョウモン(5月1日)、ムラサキシジミ(5月3日)、など。陽差しをあびてとんでいました。
  • 弘法寺に登る坂道のセンダンの花が満開でした(5月22日)。ひとつひとつは小さな花ですがまとまると紫色のかたまりになってみごとです。

◆里見公園より

  • 昨年の夏、里見公園で分けてもらった鈴虫の成虫からうまれ、冬越しした卵からたくさんの幼虫が孵化し始めました(6月3日)。大きくなってきれいな鳴き声をきかせてくれるのを楽しみにしています。

以上 M.T.さん
 
 

◆堀之内緑地より

  • アブラゼミが鳴いていました(6月30日)。6月にアブラゼミの鳴き声を確認できたのは初めてです。

K.H.さん
 
 

◆市内某所より

  • 木漏れ日の雑木林にキンランが60数株点在して咲いていました(5月1日)。別の所では、ギンラン3株、ササバギンラン2株が咲いていました。

谷口浩之さん(北国分在住)
 
 

◆柏井雑木林より

  • キビタキのペアを観察しました(6月10日)。雄は囀りも聞くことが出来ました。

鈴木弘行さん(船橋市在住)
 
 

◆坂川旧河口一帯より

  • 新堤防を横切ったオオタカの成鳥1羽が江戸川までも越えて、対岸の河川敷から飛び立ったカワラバトの群れに襲い掛かろうとしましたが、ハシブトガラスに騒がれて目的を果たせず、国府台台地へとUターンしてきました(5月26日)。どうやら日常的に川を渡っているものと思われますが、オオタカにとっては至近距離なのでしょうね。
  • 強い南風に頭を向け、オギ原に面した新堤防法面から飛び上がったヒバリ1羽が、強風に流されるようにバックして新堤防を越えて飛びつづけました(6月19日)。まさに自由自在です。

◆菅野より

  • 雨の朝、我が家の2階の窓から、前面道路の電線と、その先の住宅のアンテナにとまるエナガ2羽の姿が見えました(6月12日)。ところが、2羽が飛び去ると、その後を追って、次々と5羽前後のエナガが飛んでいきました。近隣で繁殖した子連れだったようです。2年前ほどから、菅野2丁目界隈でもエナガの子連れを見るようになりました。

以上 根本貴久さん(菅野在住)
   

 

気象のようす

大型連休頃から、乾いた晴天が続きました。例年より早い梅雨入り宣言後も雨は少なかったですが、6月25日に時間雨量39.5ミリメートル記録の激しい雨が降りました。

 

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