平成26年度 市川自然博物館だより 4・5月号 通巻151号

市立市川自然博物館 2014年4月発行

     

 いきもの写真館  同じ場所を何度か訪れる
 花屋の花を観察する  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  むかしの写真で見る昭和の風景
 わたしの観察ノート  

 


 

いきもの写真館
タガラシ 田起こしの頃、田んぼではタガラシの黄花とタネツケバナの白花が目につきます。いまでは懐かしい風景です。  撮影者 土居幸雄さん

 

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同じ場所を何度か訪れる 坂川旧河口 3月28日

 

【坂川旧河口とは】

  坂川は、松戸市から流れて来て市川市に入るとすぐに江戸川に合流する小河川です。市川市側から見ると、江戸川が里見公園のところで国府台の崖に接する、その上流側の広い河川敷のところを流れています。流路は江戸川と平行で、すり合うようにして合流していましたが、現在は途中で直角に曲げられ、新しい河口で江戸川に合流します。そこにはよく目立つ近代的な「柳原水門」がそびえています。
 
  流路を変更したことで残された下流側の「旧流路」は、その後に造成された新しい堤防によって二分されました。堤防より下流側が「旧河口」にあたりますが、そこは江戸川の入り江のようになりました。そして上流側は細長い池のようになりました。博物館では、この一帯を「坂川のかつての河口一帯」という意味で「坂川旧河口」と呼んでいます。
 
  ここは、ヨシやオギが茂る河原の湿地帯だったと考えられます。その後、いろいろに人手が加わり、農家の畑もありますが、「明るく開けた湿った草原」という環境は本質的に損なわれることなく現在に至りました。市内でも有数の動植物の生育・生息地です。
 

江戸川と坂川のいまの流路の状態 新しい堤防上からかつての河口をのぞむ

 

【春の野草】
 現地を訪れた日は、よく晴れた汗ばむ陽気の日でした。明るい日差しを受けて、春の野草がよく咲いていました。カントウタンポポは、この一帯の限られた場所に昔からあります。この日も健在を確認することができました。そこは決して「自然豊か」な感じの場所ではありませんが、土地の改変を受けなかったことがカントウタンポポを結果的に守ってきました。
 
 日当たりがいい堤防の南向き斜面は、植物の成長が進んでいました。ヨモギやアカツメクサ、ギシギシなどの葉が目立ち、アカツメクサが幼虫の食草となるモンキチョウが何匹も飛んでいました。柳原水門に近い場所は、むかしからツクシが多い場所です。この日は訪れたタイミングも良かったようで、一面のツクシと出会いました。
 

カントウタンポポ ツクシ

 

【貴重なノウルシの自生地】     

 ノウルシは、絶滅が心配される野草のひとつです。河川敷のような湿った草原に生え、坂川旧河口には古くから群落で自生しています。といってもこれまで安泰であったわけではなく、家庭菜園(いまは無い)ができた時や、大量の埋め立て土が置かれた時などは群落が消えてしまったかと思われました。しかし分散力が強いのか、その度に別の場所に群落が現れました。数年前までの主力の群落も投棄物の関係でいまは消滅していますが、やはり離れた場所に群落が広がり現在に至っています。
 
  訪れた時は株が伸び、先端が黄味を帯びていました。1週間後にはきれいな花に出会えそうな感じでした。坂川旧河口には何種類かの絶滅危惧種の植物があります。それらは河川管理に際して配慮がなされてきましたが、ここは「自然保護区」ではないので100パーセントの保全は難しいのが現実です。

ノウルシの群落

 

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花屋の花を観察する キンギョソウ キンギョソウの花

   キンギョソウは金魚草で、花の姿が金魚を連想させます。たしかに花ひとつを取って「がく」の方から眺めると、「がく」が顔、花びらが尾びれで、ちょうど流金のように見えます(右上の円形写真)。花の形は筒状で花びらは上下に分かれます。このような形の花を「唇形花」と呼びます。上下に分かれた花びらを「くちびる」に見立てた名前です。

   唇形花の花は、ハチなどの虫を呼び寄せ、筒形の花の奥底にある蜜を与えるかわりに、筒に出入りするときに花粉をつけて運ばせます。キンギョソウの花びらも普段は上の花びら(上唇)と下(下唇)が接した状態ですが(写真1)、ハチが下唇に止まると重みで下唇が下がり、花の奥への通路が開けます(写真2)。通路部分を横から見ると、筒型の花の天井に沿って雄しべ・雌しべがのびていて、ハチの背中に花粉をつける仕組みになっています(写真3)。雌しべは1本、雄しべは長短あって2本ずつです(写真4)。
 

写真1 上唇と下唇が接した、普段の状態 写真2 下唇が下がると花の奥まで見える

写真3 花の内部の断面(下唇を下げた状態) 写真4 しべ(中央に雌しべ、左右に雄しべ)

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街かど自然たんぽう

須和田(すわだ)・細長い地形

 第二中学校は、周囲より一段高い場所にあります。この高い面は里見公園まで続き、上から見ると台地の先端が細長く伸びたような地形です。これは、川の流れで細長い谷ができたり、海面の上昇によって周辺が海だった時代に波がぶつかって急な崖がつくられたためです。特に先端は大小の谷の出口にもあたるので、崖の直下には川が運んできた土砂も溜まりました。この結果、細長い半島のような地形ができたと考えられます。

海の波が崖を削っていた時代の市川の地形推定図  

 

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くすのきのあるバス通りから 第93 大雪が降りました


 2月4日は、薄っすらと積もる雪が降りました。8日は大雪となり八幡あたりは23センチメートルでした。風もあり、吹き寄せられた所はもっと深く、表通りから脇道に車で入る時、除けられた雪を乗り越えるのが大変。でもサラサラだったため始末はよかったです。京成八幡の踏切でバスが故障し、道路も電車も動かず大変な騒ぎでした。14日は天気予報では「たいして積もらない」と言っていましたが、27センチメートル以上でした。湿った雪だったため、近所の家の雨どいが曲がってしまったり、甘夏の木が雪の重みで裂けたり、サルスベリが倒れていました。我が家の車のワイパーがジワッーとずり落ちた雪の重みで曲がってしまいました。あちこちの道路が通行止めや乗り捨てられた車で混乱が長引きました。雪が雨に変わったためか、道路は雪がなく前回の除けられた雪が残りました。17日、道端でタンポポとオオイヌノフグリの花がまるで雪を溶かしたかのように咲いていました。

 

  (M.M.)

 

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むかしの写真で見る 昭和の風景

 
昭和49(1974)年 撮影

大町自然公園の木道づくり

木杭を打って木道を作っている様子

写真提供 岩瀬徹 氏

 
 動植物園に隣接する自然観察園は歴史が古く、昭和48年に大町自然公園の名で開設されました。もともと谷津田だったところが休耕された時に、地元の方々や、自然の豊かさに魅せられた人たちの声を受ける形で市川市が整備したものです。

 写真は、お客さんが歩くための木道を作っている様子です。開園当初は水田時代の畔(あぜ)を観察路として利用していましたが、自然を守りながら観察にも便利なように木道を設けました。泥深い湿地なので、足場をつくって杭を打ち込んでいます。木は耐久性に欠けるので現在はコンクリート製の「木道」ですが、湿地にはこのころの杭がいまも残されています。
 

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わたしの観察ノート 


◆長田谷津より

  •  2日前に雨が降りました(2月1日)。案の定、ニホンアカガエルの卵が多く見つかりました。100卵塊以上ありました。
  •  朝から細かい雪が降っていました(2月8日)。トクサに止まっているホソミオツネントンボの体に雪が乗っていて寒そうでした。

金子謙一(自然博物館)
 

◆真間周辺より

  •  春を告げる花々。二週続きの大雪がようやくとけた真間山下南側の斜面林下の日だまりにオオイヌノフグリがたくさん咲いてきれいです(2月24日)。ヒメオドリコソウ(2月27日)、ホトケノザ(3月3日)の開花も発見。3月に入っても真冬並みの寒波がやって来て、本格的な春まではもう一息です。

◆じゅんさい池より

  •  ミコアイサが来ていました(1月31日)。たくさんのカメラマンの注目をあびていました。

以上 T.Mさん
 

  •  じゅんさい池ではめずらしいミコアイサを写真に写す人のフィーバーが少しおさまって静けさを取り戻していました(2月12日)。いつもの、オナガガモ、ヒドリガモ、キンクロハジロ、カルガモ、ホシハジロに混じって、コガモも見る事ができました。自分はじゅんさい池で警戒心の強いコガモを初めて見ました。ミコアイサはとてもエキゾチックな姿で何度も潜水していました。20年前には主役だったハシビロガモは姿が見えず、さびしい限りです。

道下誠さん(中国分在住)
 
 

◆里見公園周辺より

  •  里見公園から隣接する寺のエノキにとまっているシメ2羽とイカル1羽の姿を見ました(1月1日)。イカルは、はじめキョッ、キョッという大型キツツキ類のような声しか出していませんでしたが、口笛で鳴き真似したところ、本来の美しい声でさえずってくれました。

◆坂川旧河口一帯より

  •  少なくとも10羽前後のオオジュリンの群れが、ビオトープ内のオギの枯れた茎を盛んに食い破っているのを見ました(1月2日)。また、わたしの耳にもその音が聞こえてきました。
  •  記録的雪の降る中、5羽ほどのシジュウカラの群れがビオトープ池の江戸川べりの木から木へと移動していくのを見ました(2月8日)。とくに小鳥たちは、一生懸命エサを食べつづける必要があるため大変です。
  •  坂川旧河道(下流側)が江戸川に接するあたりの岸辺に生えるスダジイの根元から、いきなりアリスイ1羽が飛び立ちました(2月23日)。いったい、今の季節にエサのアリがとれるのでしょうか。

以上 根本貴久さん(菅野在住)
   

 

気象のようす

1月はカラカラ天気、2月には大雪が2度も降りました。2度目の湿った大雪の後には強風が吹いて、たくさんの樹木が倒れ、枝が落ちました。

 

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