平成26年度 市川自然博物館だより 6・7月号 通巻152号

市立市川自然博物館 2014年6月発行

     

 いきもの写真館  同じ場所を何度か訪れる
 花屋の花を観察する  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  むかしの写真で見る昭和の風景
 わたしの観察ノート  

 


 

いきもの写真館
ノコギリガザミ 行徳沖で獲れたものを漁業者の人からいただきました。右のハサミが取れてしまい、顔がよく見えます。  自然博物館所蔵写真

 

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同じ場所を何度か訪れる 坂川旧河口 5月23日

 

【変化に富んだ自然】

  坂川旧河口は、よく観察してみるといろいろな場所が入り組んでいることがわかります。訪れた5月23日は堤防の草刈りが終わったばかりで、そのことが一層わかりやすい状態でした。挙げてみると
  ・小石が散らばる地面
  ・よく刈り込まれた草地(堤防)
  ・アカツメクサやチガヤなどの低い草地
  ・オギが茂る高い草地
  ・ヨシが生える湿地
  ・坂川の旧河道ぞいの低木群
  ・旧河道の水面
  ・里見公園の大きな林
といった具合です。この日は「背の低い草地」でバッタの幼虫を見つけ、「背の高い草地」ではホオジロがさえずっていました。  
  「河道ぞいの低木」でスイカズラが咲き、「ヨシが茂る湿地」からはオオヨシキリの声が聞こえてきました。「小石が散らばる地面」を歩くとカナヘビが草むらに逃げていきました。それぞれに好みの場所を見つけて暮らしているようでした。
 

坂川旧河口の景観 画面左の斜面が堤防、画面右にオギ原が広がっている。オギ原の奥に河道があり、画面いちばん奥が里見公園の斜面林になっている。

 

【5月のようす】
 5月下旬は、春の花がひと段落して「落ち着いた」感じがする風景でした。前回見たカントウタンポポやツクシの姿はなく、ノウルシの群落も別の草にすっかりおおわれていました。江戸川の堤防に一般的なヘラオオバコやニワゼキショウが咲いていたほか、ツル植物のスイカズラも一部でよく咲いていました。絶滅危惧種のフジバカマとノカラマツは元気に伸びていて、秋・夏の開花が楽しみです。水がたまった一角では湿地を好むカワヂシャとミコシガヤが咲いていました。湿地が減った市川市内ではなかなか見られなくなった野草です。
 
 野鳥ではホオジロとオオヨシキリの声がずっと耳に届いていました。川べりの低木の茂みに来ていたスズメの若鳥はまだ飛ぶのがうまくありませんでした。餌になるイモムシは多そうで、親鳥の声もよく聞こえてきました。堤防の斜面をツバメが高速で行きかい、植えられた桜にはムクドリが来ていました。さくらんぼを探していたのでしょう。
 
 川べりの木をよく見ると実のなる木(野鳥が運んできた)と風でタネが運ばれるヤナギ類が目立ちました。実のなる木の多くは落葉樹ですが、常緑樹のシロダモも見られました。
 
 里見公園斜面林の濃い緑がいつも視界に入り、風景上の重要なアクセントになっていました。
 

バッタの小さな幼虫 ヘラオオバコの花
ニワゼキショウの花 スイカズラの花
カワヂシャの花 ミコシガヤの

 

 

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花屋の花を観察する ベニバナ ベニバナの花

   ベニバナは、アザミに似た花をつけるキク科の植物です。キク科の花は、雄しべ・雌しべ・花びら・タネなどを備えた小さな花が、たくさん集まってひとつの大きな形を作っています。ヒマワリやタンポポも基本のつくりは同じです。

   小さな花を束ねるために「総苞(そうほう)」という特別なしくみがあります。これは、花を束ねるための特別な葉が集まったもので、この葉が小さな花の集まりを包み込んで全体の形を作っています。ヒマワリやタンポポの「がく」に見える部分が総苞で、総苞を構成する1枚ずつの葉を「総苞片」と呼びます。ベニバナでは総苞が丸く「たまねぎ」のような形をしています。
 
  下の写真は、総苞片をすこしずつ取り除いていった様子です。写真3で将来タネになる部分(白色)が詰まっている様子が見えます。写真4では、小さな花がならぶ半球形の土台が見えています。写真6がひとつずつの花です。タネになる部分が大きく、筒状の花びらの中に「しべ」が入っています。

写真1 総苞が大きく目立つ 写真2 総苞片をむいた 写真3 中の花が見えた 写真4 半分に切ってみた 写真5 花をむしってみた 写真6 この一つずつが花

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街かど自然たんぽう

関ヶ島(せきがしま)・イヌドクサ

 道端でちょっと変わった植物を見つけました。図鑑で確認したら、トクサの仲間「イヌドクサ」でした。細い茎からさらに細い枝を出していて、大ぶりなスギナのようにも見えます。茎の先端に、つくしんぼの頭(胞子嚢穂)だけがまばらに乗っていました。この部分は、しいて言えばシダの仲間では花にあたるので、今が花ざかり、といえるでしょうか。不思議でかわいい、オブジェが連なっているようにも見えました。

イヌドクサ さわるとザラザラしています  

 

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くすのきのあるバス通りから 第94 いろいろな木の花が咲いていました


 京成八幡駅のすぐそばにある、サクラの実は黒色ではなく、食べられそうないい色です。いつも花を絶やさない絵画教室の庭先では、ベニバナトチノキが咲いています。あちこちのウメやモモ、カキ、ビワに小さな緑色の実がついています。「いい匂いがする」とあたりを見回すと、ナツミカンや、スイカズラだったりします。千葉興業銀行のそばのセンダンは強く剪定され、花は無理かなと思いましたが少し咲いていました。エゴノキ、ニシキウツギ、ザクロもキレイに咲いています。「キリも咲いているかも」といつもの通り道を行くと…ないのです。お隣だったかなと見ると、カシワがある家で、あるはずの場所に無いのです。用事があって、北方の京葉銀行の方へ行ったら、いち月のタイサンボクの上の方で花が咲いていました。冨貴島小の近くのお宅の大きなクスノキの花は終わっていましたが、タイサンボクは咲いていました。木の花は、興味のない人には気付かれないうちに散ってしまったり、剪定で花をつけられずにいたり、木そのものも事情があって切られてしまう事もあるのですね。

 

  (M.M.)

 

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むかしの写真で見る 昭和の風景

 
昭和48(1973)年 撮影

江戸川の河川敷

木杭を打って木道を作っている様子

写真提供 岩瀬徹 氏

 
 江戸川の河川敷6月頃の様子です。背後に京葉道路が写っているので、いまの稲荷木あたりで撮影されたものと思われます。画面全体に写っている白い穂はチガヤです。チガヤは、やや湿った明るい草原を好むので、江戸川河川敷はぴったりの生育環境です。

 現在の江戸川河川敷はグラウンドや広場に整備されているので、こういう光景は見られなくなりました。市川のように都市化が進んだ地域では、河川敷は貴重な空間です。さまざまに利用されることは当然と言えます。そんななかでも、わずかな場所を見いだしたり、タネとして土の中で眠ったりしながら、多くの生き物がいまでも河川敷を利用しています。
 

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わたしの観察ノート 


◆長田谷津より

  •  ニホンアカガエルは、二度の大雪の後にもずいぶん産卵したようです(3月1日)。大雪前の卵塊はすでにおたまじゃくしになっていましたが、一方で、しっかりした塊りの新しい卵塊もありました。
  •  エコアップ池の水底を耕していたら、泥といっしょにドジョウが掘り出されました(4月26日)。越冬していたようです。
  •  シオヤトンボがたくさん飛んでいました(4月26日)。来園者の方が「シオカラトンボがこんなに早く?」と驚いていました。

金子謙一(自然博物館)
 

◆大野町周辺より

  •  市営霊園を散策しました(4月27日)。キンラン、ブタナが見事に咲いていました。残念ながらフデリンドウは一株もありませんでした。
  •  竹やぶのふちにキケマンが5株咲いていました(4/30)。

吉田 毅さん(柏井町在住))
 

◆堀之内貝塚公園より

  •  公園の林には、軽く10羽以上のシメが見られました(3月9日)。渡去前に集結したかのようでした。

◆坂川旧河口一帯より

  •  ビオトープ池から柳原水門へ向かう途中のオギ原の縁、1本のセイタカアワダチソウの枯穂にとまり、盛んに実をついばんでいるベニマシコの雄と雌のペアをじっくりと見ました(3月8日)。とくに雄は完全な夏羽といって良いほど赤くきれいで、見とれてしまいました。
  •  江戸川を渡り、そのまま一目散に東へ飛び去ったツバメ1羽を見ました(3月21日)。大雪が2度もあり寒い冬と思われがちの中、初認は昨年(3月20日に同じく1羽)同様でした。
  •  下流側では2羽のカワセミが切なそうな声を出しながら、水路を行ったり来たりしていました(3月29日)。うまくペア誕生といくのでしょうか。

◆里見公園より

  •  イチョウの大木の下方の細い横枝に寄り添うようにとまっているモズのペアを見ました(3月8日)。モズたちも恋の季節を迎えているようです。

以上 根本貴久さん(菅野在住)
   

◆市内某所より

  •  姿を消していた近くでシュンランが咲きました(3月15日)。アマナも咲きはじめました(3月21日)。他の雑木林でも以前からの場所にシュンランが咲いていました(3月22日)。
  •  近くの2か所の雑木林で、今年もキンラン、ギンラン、ササバギンランの開花を確認しました(4月27日)。別の雑木林と池でもキンランが咲いていました(4月29日)。さらに別の緑地では、キンランと小さなキランソウが咲いていました(5月3日)。

以上 谷口浩之さん(北国分在住)
   

 

気象のようす

3月下旬までは寒い日も多く、コブシ、ソメイヨシノが同時に見られる北国型の春になりました。

 

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