平成26年度 市川自然博物館だより 10・11月号 通巻154号

市立市川自然博物館 2014年10月発行

     

 いきもの写真館  同じ場所を何度か訪れる
 花屋の花を観察する  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  むかしの写真で見る昭和の風景
 わたしの観察ノート  

 


 

いきもの写真館
ミゾソバ 10月ごろ湿地や休耕田で群生し、花を咲かせます。開花した花もきれいですが、つぼみも可愛らしい存在です。  自然博物館所蔵写真

 

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同じ場所を何度か訪れる 坂川旧河口 9月18日

 

【秋の野草】

坂川旧河口の9月は、秋の野草とバッタが楽しめる季節です。訪れた日は堤防の草刈りが終わった直後で、堤防斜面は枯草色になっていました。そのかわり、そこから追い出されたトノサマバッタが堤防下の通路沿いに集まっていて、歩くそばから飛び出していきました。
 
  野草は、フジバカマの保護地から江戸川河川敷一帯のあちこちで咲いていました。ヨシやオギなどの大型の植物やクズなどのツル草が繁茂しているので一見すると花は見当たりません。歩みを進めるうちに、そこここで咲いていることがわかります。
 
  小型の風露草のゲンノショウコは背が低く、草刈りされたフジバカマ保護地で咲いていました。キンミズヒキの黄花は、赤や紫色が多い秋の花のなかでは目を引きます。メドハギは枝を細かく分けるマメ科の野草で、キハギのような花がびっしりと咲いていました。
 
  坂川旧河口一帯は、もともとは湿った河川敷の環境です。現在では盛り土や堤防の関係で乾いた場所になりましたが、それでも時々出会う湿地の野草には、なつかしさを覚えます。この日はハッカがよく咲いていました。段々に咲く花が特徴的で、葉を指でつまむと爽やかなハッカの香りが漂いました。ミントとは一味違う香りですが、野生のハッカが見られる場所は市内では少なくなりました。
 

ゲンノショウコ キンミズヒキ

メドハギ ハッカ

【フジバカマ保護の経緯】
 坂川旧河口の自然環境を代表するフジバカマは、ちょうど見ごろでした。開花した花に、色の濃いつぼみが混じり、秋の陽を受けて鮮やかでした。
 
 坂川旧河口は、県内でも唯一と言っていいフジバカマの自生地です。そのことを知る人の努力によって、現在の保護地があります。その経緯は、つぎのとおりです。

○2001年12月
 
新堤防(現在の堤防)造成を前に堤防予定地のフジバカマを保護しました。新堤防は市民の要望を受け、坂川の河口部分を歴史的な意味で保全するため「S字」の形状となり、結果的に一部の湿生植物群落やフジバカマが堤防の下になることになりました。そのため、湿生植物群落(タコノアシやサクラタデ)やフジバカマ自生地の表土を掘り取って別の場所へ移植するとともにフジバカマを掘り上げてプランターに植え、里親さんを募って管理をお願いしました。

○2002年4月
 
新堤防の斜面裾に、もともと自生していたフジバカマがうまく残っていたので、堤防や、その下の通路を作るにあたって保全策を講じることになりました。フジバカマ群落を傷めることなく堤防工事を進め、通路についても低い柵(現在のもの)を設けてフジバカマが踏まれないようにしました。

○2002年9月
 
自生のフジバカマ開花。

○2004年3月
 
新堤防が概ね完成。里親さんが育てたフジバカマを現地に移植。
フジバカマは、そのままではツル草に引き倒され、茎がまっすぐ立って開花することがありません。現在に至るまで有志の方がボランティアで草刈りを行い、秋に楽しめるようにフジバカマの世話を続けてくれています。

見ごろになったフジバカマ

 

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花屋の花を観察する リューカデンドロン リューカデンドロンの花

   なじみにくい名前は、学名をそのまま英語風に読んでいる(日本語になっていない)からです。ヤマモガシ科というおもに南半球に分布する植物のグループに属します。近年、切り花として国内でも流通するようになりました。同じヤマモガシ科では、プロテアやバンクシアのほうが知られているかもしれません。ギンヨウジュ(銀葉樹)が、リューカデンドロンのなかまです。

   このコーナーでも取り上げてきたように、花には、花そのものが目立つタイプと、花を囲む特別な葉(苞葉)が目立って「花びら」のようにふるまうタイプがあります。リューカデンドロンは後者のタイプです。
 
   リューカデンドロンの茎には多数の葉があります。さらに枝先には葉が密に集まっています。それが「花」のような形を作っています。茎の葉も苞葉も、あまり形に差はありません。本当の花は苞葉に囲まれた中心にあり、小さな花が集合して細長い球形の塊りになっています。若いモミの実のようです。

   拡大すると鱗のように見えるものがあり、その1枚ずつから、1本の雌しべと4-5つに分かれた雄しべが顔をのぞかせています。雌しべの先はふくらんでいて「柱頭」になっています。

苞葉が集まって「花」を形作る 球形に集まった本当の花。雌しべと雄しべが伸びている

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街かど自然たんぽう

高石神(たかいしがみ)・高石神社のタブノキ、ケヤキなど

 暑さ高石神社には、幹回りが1mを超えるような樹がたくさん生えています。地面はサラサラの市川砂州の砂です。市川では「砂州の上にはクロマツ」が定番ですが、ここで目立つのはタブノキ、ケヤキ、ムクノキやイチョウなどのいろいろな大木です。新田の春日神社や胡録神社の立派なクロマツを見慣れてしまうと、砂地から生える2本のタブノキは妙な感じもしますが、常緑樹らしく樹形の頭が丸くてこんもりするこちらの方が、いわゆる鎮守の森のイメージにはぴったりします。

高石神社のタブノキの大木。幹回りは大人でも抱えきれないぐらい太い。  

 

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くすのきのあるバス通りから 第96 扱った夏


 今年の夏も暑く、7月から8月中旬まで35℃以上の日が続きました。庭に温度計を出しては「今日も体温以上だ〜。縄文時代並みに貫頭衣で過ごすようになるのかな?」と思っていました。その後急に気温が下がった日があり、「残暑があるでしょう」と天気予報士が言っていましたが、秋になってしまいました。8月15日ツクツクボウシが鳴き出しました。その夕方、八幡6丁目の道路にギンヤンマが落ちていました。どこも傷んでいません。生きているのですが、元気がないので近くの草の上に置きました。2001年に市川でトンボサミットが開催された時、千葉街道のすぐそばの新田の事務局にギンヤンマが飛び込んできたことがありました。「ヤンマは大柏川調節地から飛んで行けますよ」とのことでした。夕方、八幡の中央通りやコルトンプラザの前の道の上をムクドリの群れが北から南へと飛んでいくのを見ます。相当な数集まっているようです。どこで夜を過ごしているのでしょう。

 

  (M.M.)

 

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むかしの写真で見る 昭和の風景

 
昭和44(1969)年 撮影

国分高校奥の谷津田

谷地田の様子

写真提供 岩瀬徹 氏

 
 市川市の北部には「谷津」と呼ばれる細長い谷が何本もあり、かつては谷底に田んぼが広がっていたことから「谷津田」と呼ばれていました。写真は現在の国分高校の北、稲越町にあった谷津田です。谷の斜面にできた林(斜面林)と谷底の田んぼ・湿地の様子がよくわかります。湧水(ゆうすい)が豊富にあり、他所では見られないササクサ、コモウセンゴケ、カワモヅクなどが自生していました。

 捕虫網を持っているのは国分高校の生徒さんです。生物を学ぶ上で、環境まで含めて体験できる谷津田は貴重な空間でした。今では大町公園に残るだけですが、そこが自然を学ぶ空間であることは、時代がめぐっても変わりはありません。
 

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わたしの観察ノート 


◆長田谷津より

  •  長田谷津を散策中、ニイニイゼミが鳴いていました(6月21日)。
K.Y.さん
  •  背丈よりも伸びたアシ原の中で、淡いピンク色のチダケサシの花が咲いていました(7月1日)。草刈りの予定があるのでそうすれば園路からも見えそうです。
  •  夜間に歩いていたら、イヌの糞のような強い臭いを感じました(7月8日)。直後に頭上の枝が不自然に音をたてたので見上げると、枝を歩いている動物が見えました。もちろんシルエットでしたが、体型と長い尾からハクビシンであることは間違いありませんでした。
  •  湿地の草むらをあるくと、ツチイナゴの幼虫(若虫)が次々に飛び出しました(8月6日)。この時期の小さいバッタは、カマキリやカエル、カナヘビなどには手ごろな餌となります。時期をずらして小さなバッタが誕生するのですから、自然はうまくできています。
  •  アカガエルが毎年産卵する場所で、6月頃は2センチメートル程度の子ガエルが目につきましたが、この日は5センチメートルくらいまで育ったカエルを見つけました(8月23日)。

以上 金子謙一(自然博物館)
 

◆大野町より

  •  18時過ぎに市川大野駅のホームから西側の樹林地上を帆翔するオオタカを見ました(7月6日)。まとわりつくカラスもおらず、晴れた空を気持ちよさそうに飛んでいました。
須藤 治(自然博物館)
 

◆真間山より

  •  南側斜面林で、梅雨明けを待つかのように、ミンミンゼミが鳴き始めました(7月17日)。いよいよ夏の到来です。
  •  真間の手児奈堂で、ツクツクボウシの鳴き声をききました(8月4日)。真間山南側斜面林でもミンミンゼミにまじって、ツクツクボウシが鳴いています。猛暑の続く毎日ですが秋の気配を感じます。
以上 M.T.さん
 

◆堀之内貝塚より

  •  キツネノカミソリを見に行きました(8月4日)。
       
    1. 花の時期は過ぎたようでした。
    2.  
    3. 花の数は激減していました。
    4.  
    5. 白い花はありませんでした。
谷口浩之さん(北国分在住)
 

◆坂川旧河口より

  •  最近増えた大型で棘が痛い、アメリカオニアザミを見ました(7/24)。ちょうど実の時期で、白い綿毛の大きなタネが飛んでいました。昔流行ったケサランパサランのイメージです。

◆江戸川放水路より

  •  晴れて暑い日、干潟は生き物でにぎやかでした(7月15日)。トビハゼも元気で、巣穴や這った跡、トビハゼそのものも多く見られました。
以上 金子謙一  

気象のようす

梅雨明けは7月21日頃でした。その後は関東だけが猛暑とカラカラ天気が続きましたが、8月末になると急に涼しくなりました。

 

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