平成26年度 市川自然博物館だより 12・1月号 通巻155号

市立市川自然博物館 2014年12月発行

     

 いきもの写真館  同じ場所を何度か訪れる
 花屋の花を観察する  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  むかしの写真で見る昭和の風景
 わたしの観察ノート  

 


 

いきもの写真館
マアナゴ 食材に使うアナゴです。体の規則正しい点々を「棒はかり」の目盛りに見立てて「はかりめ」とも呼ばれます。  自然博物館所蔵写真

 

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同じ場所を何度か訪れる 坂川旧河口 11月28日

 

【珍しい実】

 今回訪れたのは、市内の紅葉がちょうど見ごろを迎えた11月下旬です。坂川旧河口は全体に黄色っぽい風景になっていました。オギなどの草が枯れ、クズやエノキの葉が黄色く色づいていたためです。視線を上げると、里見公園の斜面は常用樹の深い緑の中に落葉樹の黄色や橙色が点々とあり、モミジの紅葉とは違う趣がありました。そんな中、秋に草刈りされた堤防だけは春の野草が早くも育ち、青々としていました。
 
  フジバカマは枯れて、綿毛のタネがたっぷりついていました。播いた人の話では、発芽率は悪いということです。横に伸びる地下茎に新しい芽がつくので、そうやって増えていきます。
 
  この日は、出会う機会の少ない2種類の実が印象的でした。ツルウメモドキとサネカズラです。どちらも決して珍しい植物ではないのですが、ツルウメモドキは伐られてしまうことが多くなり、最近は少なくなりました。サネカズラは、植物自体は林内や林縁に今でも多くあります。ただ、花を咲かせることでは稀で実をつけることはさらに少ないようです。どちらもたわわに実っていて見事でした。切られたり採られたりしなければいいのですが。

ツルウメモドキ サネカズラ(ビナンカズラ)

【野鳥でにぎわう季節】
 坂川旧河口一帯は野鳥が多い場所です。この日も木の実を目当てに集まった鳥や、秋が深まって各地からわたってきた鳥がずいぶん目につきました。
 
 駐車場のエノキにはヒヨドリが群れていました。にぎやかな声が響き、双眼鏡で見ると実をついばんでいました。
 
 近くの藪からは、ウグイスの笹鳴きが聞こえました。
 
 トウネズミモチにも実がたわわで、ヒヨドリが出入りを繰り返していました。
 
 坂川の古い河道沿いはアカメヤナギを中心にいろいろな木が生えています。姿勢を低くして待っていたら、想定外のアカゲラが目の前の枝に止まりました。川にアカゲラは不似合いですが、ここは近くに里見公園や国府台緑地があるので、そこに暮らす鳥たちの生活圏にもなっているようです。
 
 せっかく見つけたツルウメモドキに赤い実が少ないので見ていたら、ヒヨドリがついばんでいました。割れて実が出るとすぐに食べられてしまうのでしょう。
 
 水辺の枝からアオサギが飛び立ち、ぼちゃんと水音がしたので目を向けるとカワセミが止まっていました。サクラの枝先ではシメが鳴いていました。
 
 江戸川の本流近くには丸く掘った場所があり、いまではヤナギが茂っています。一見すると鳥の姿はありませんが、待っていたらいろいろと出てきました。ヒヨドリばかりと思っていたヤナギの枝には、ツグミが止まっていました。やがて次々に茂みから飛び立って里見公園の斜面林の方へ集団で飛んでいきました。
 
 茂みの中からはアオジとカワラヒワの声がよく聞こえました。時々、飛び出していきました。離れた場所にあるヤナギの枝先には色鮮やかなモズがいました。
 
 変化に富んだ景色のあちこちで鳥たちが暮らしていました。

アカゲラが来たヤナギ。下に水面が見える。

 

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花屋の花を観察する ピンクッション ピンクッションの花

   花の全体的な姿を「針さし」に見立ててピンクッションの名前があります。南半球に分布するヤマモガシ科に属し、学名のままで「レウコスペルムム」と呼ぶこともあるようです。

   花のつくりは難解です。まず、ピン(針)に相当するものは「雌しべ」です。花びらと雄しべは小さく、雌しべの根元にあります。雌しべ1本で花ひとつなので、たくさんの花が集まってひとつの「花」になっています。ネムノキに似ていますが、ネムノキは1本の雌しべと多数の雄しべが長く突き出します。
 
   この仲間は、雌しべが花粉を虫や鳥につける役目を担います。つまり、最初、雌しべは根元の花の中に「頭を突っ込んだ」状態にあり、この時、中で雄しべの花粉が雌しべにくっつきます。その後、雌しべはすっと伸び、ピンクションの名の通り、刺さった針のように広がります。ここに、蜜を求めておもに鳥が飛来し、花粉を体につけるのです。

   これまでにも「花びら」以外のものが花の主役となる例を紹介してきましたが、ピンクッションでは雌しべが花の主役として全体を目立たせる役目をしているのです。

「針さし」のような花。外側からピンが開いていく 花の外周に広がった雌しべ。先端は湿っていて花粉がついている
開く前の雌しべ。花の中に頭を突っ込み、ここで花粉をつける 個別の花のようす。左が雌しべが伸びる前、右が突き出した状態

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街かど自然たんぽう

高浜町(たかはままち)・工場の町

 高浜町に住民はいません(平成26年9月30日現在)。大きなトラックが工場の敷地を出入りしますが、歩道を歩く人影は見られませんでした。市内では工場と住宅が近接している地域もありますが、ここは工場のために整えられた町です。それでも、植込みのトベラとトウネズミモチに実がたわわについているのを目ざとく見つけた2羽のヒヨドリは、どこにいてもにぎやかです。緑化のための常緑樹の濃い緑と、灰色の建物やタンクを背景に、サクラの紅葉が鮮やかでした。

道路の行き止まりからは、海には近づけませんでした。トウネズミモチの小さな黒い実は、ブドウの房のようです。  

 

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くすのきのあるバス通りから 第97 いろいろな秋の実


 西船橋にあるファミリーレストランの駐車場に、紅葉した葉と白く花のように見える物がついた大きな木が日差しを浴びてきれいでした。マンションの4から5階の高さです。近づくと3個の白い実が、木全体についているのだとわかりました。後日また見に行くと、ハトが3羽木の上で実を食べていました。ナンキンハゼだそうです。

 9月にいつもの通り道のお宅に植木屋さんが入っていて、アラカシの木を剪定していました。緑色の10ミリメートル位のドングリの根元に3ミリメートル位の小さな葉芽らしきものがくっつく様に枝の先についていました。

 10月は台風がたびたび来ました。風が強かった日の後、シイノミがゴロゴロ道に落ち、車に轢かれ道の一部が白くなっていました。葛飾八幡宮の境内を通った時、2歳ぐらいの女の子が手にいっぱい銀杏を持っていたので「素手で触るとかぶれるかもしれないですよ。手を洗ったほうがいい」とお母さんに言いました。うちの子もハゼや銀杏で手以外の触ったところが酷くカブレて可哀想なことをしたことがあり、思い出してしまいました。

 

  (M.M.)

 

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むかしの写真で見る 昭和の風景

 
昭和48(1973)年 撮影

真間山の南斜面

真間山の南斜面

写真提供 岩瀬徹 氏

 
 写真は、真間山の南斜面の様子です。境内へ上がる石段の西側(左側)の坂道(女坂)が、画面下側、林と住宅の屋根の境のところに写っています。後方の建物は千葉商科大学です。

 いまから40年ほど前に撮影された写真を見ると、マツが多いことがわかります。大きなマツがまばらに生えて、その下に細いマツや落葉広葉樹が茂っています。マツはクロマツが主で、アカマツが混じっていた可能性もあります。画面左側のこんもりした木はスダジイかタブノキのようです。

 この当時の林は、高木としてマツがあり、その下に落葉広葉樹や常緑広葉樹が育っている段階にありました。高く聳えるマツは、昭和の時代の風景の一つなのです。
 

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わたしの観察ノート 


◆長田谷津より

  •  ハシリグモ類の「まどい」がめだちました(9月6日)。生まれたばかりの子グモがひとまとまりになってドーム状の網に守られています。
  •  博物館の観察会で、エコアップ池の生き物捕りをしました(9月14日)。参加者の人が大きなドジョウをすくって盛り上がりました。
  •  台風18号が通過し、エコアップ池は冠水したようです(10月7日)。流されてきたのか、いつもはいないヒキガエルが跳ねていました。

以上 金子謙一(自然博物館)
 

◆北方より

  •  大柏川沿いの道路を通りかかったところ、モズの高鳴きが調節池緑地から聞こえてきました(9月19日)。
須藤 治(自然博物館)
 

◆大野町より

  •  梨風東緑地を見に行きました(10/25)。少し離れた所から見ると、スダジイの丸い樹幹が青空に映えてきれいでした。

◆坂川旧河口より

  •  キンミズヒキの茎が伸び、黄色い花が何本もの穂になって咲いていました(9月21日)。秋に黄色の花は少ないので目を引きました。
  •  ゴマダラチョウの姿はなく、アカボシゴマダラを何匹も見ました(9月21日。飛んでいる姿だけでなく、エノキの葉に産卵している個体や、別の場所ではサナギから羽化したばかりの個体も見ました。

◆市川南ビオトープより

  •  繁茂したヨシとヒメガマを刈り払いました(9月30日)。明るくなった水たまりにアキアカネが飛来して、そこここで忙しく産卵を始めました。とてもたくさんいました。

◆行徳橋より

  •  セイタカアワダチソウが満開の時期になりましたが、あの黄色い花はすっかり少なくなりました(10月15日)。行徳橋南詰も、以前は河川敷の草むらが一面の黄色に染まりましたが、いまでは端の方で咲いているだけで、ヨシやオギ、クズなどの群落に姿を変えていました。

◆江戸川放水路より

  •  今年生まれのトビハゼが、たくさんいました(10月3日)。この日は潮が高かったので、アシ原の水際に集まっていました。
  •  左岸側(田尻・高谷)は、堤防のすその部分に、アシ原に面した通路があります。歩く先々でトノサマバッタが飛び出しました(10月3日)。
以上 金子謙一  

気象のようす

 9月になると残暑がほとんどなく、過ごしやすい日が続きました。10月6日に台風18号が市川市近くを通過し、風雨が強く市内でも避難勧告が出されました。14日には台風19号が関東地方北部を通過しました。
 9月27日に御嶽山が噴火しました。火山灰は市内では見られませんでした。

 

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