平成27年度 市川自然博物館だより 12・1月号 通巻161号

市立市川自然博物館 2015年12月発行

     

 いきもの写真館  同じ場所を何度か訪れる
 花屋の花を観察する  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  展示室 飼育生物の話題
 わたしの観察ノート  

 


 

いきもの写真館

海上を飛ぶスズガモの群れ

 スズガモ 冬は市川市域のあちこちが野鳥の姿でにぎわいます。東京湾に近い地域ではスズガモは冬の風物詩のひとつです。  自然博物館所蔵写真

 

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同じ場所を何度か訪れる 大柏川 11月28日

 

【秋というよりは春】

 暖かい日が続くなか、訪れた大柏川には秋というよりも春の景観が広がっていました。前回訪れた時に行なわれていた草刈りのおかげで枯れ草がきれいに払われた土手は、瑞々しい緑で覆われていました。よく見るとヨモギやヒメオドリコソウ、ホトケノザ、ギシギシなど「春の野草」と位置づけられている植物ばかりでした。日当たりが良く風も当たらないので、成長もいいのでしょう。ホトケノザはきれいなピンク色の花を咲かせていました。野草には、季節に関わらず環境が整えば花を咲かせる、そういうたくましさを持つ種類もあるようです。

ホトケノザの花

    川の水は夏にくらべると澄んでいました。群生するカナダモが流れにあわせて揺れているさまを眺めていると、淡水魚のモツゴ(クチボソ)が飛び跳ねました。護岸の片隅に隠れた姿を見ると、わりと大きなモツゴでした。水草の中には、たくさんの小魚が隠れているのかもしれません。
 
  ひと冬を過ごすために北国から飛来するコガモは数が増えていました。ハクセキレイやコサギ、カルガモもいました。枯れ草が払われたので、茂みに隠れる小鳥の声はほとんど聞こえませんでした。

草に覆われた大柏川の土手 夏より澄んだ水が流れている大柏川
 

【人馴れしたユリカモメ】
 武蔵野線の上流側ではほとんど見かけなかったユリカモメは、下流側に行くと急に数多く見られるようになりました。橋の欄干に一列に並んでいたユリカモメは、近づいても逃げません。至近距離での撮影もできるくらい人馴れしていました。多分そうだろうと思っていたら、やはり餌をやっている人がいました。
 
 自分が投げた餌を野鳥が食べてくれるとうれしいものです。ですが、その結果たくさんのユリカモメが集結することになります。何本もの電柱の上で、ユリカモメが数羽ずつ休んでいました。それらが落とすフンは、歩道を汚すことになります。餌をやった人が立ち去った後に不都合が生じて別の人が迷惑します。
 
 武蔵野線の下流側では、川の中にヒメガマが茂った場所が何ヶ所もあります。一部にはヒメガマを刈り取って島のようになった場所もあり、そこにはコガモが何羽も上陸していました。身を隠すのにも餌を探すのにも適しているようでした。大きなヒメガマの茂みからは、スズメのにぎやかな声も聞こえてきました。上流側の瑞々しい草が生えた土手では見かけなかった鳥たちが、枯れ草が茂った下流側で多く見られたことは、いろいろと考えさせられます。人間にとって気持ちのいい川の姿と、野鳥にとって気持ちのいい川の姿が一致していないのです。鳥に餌をやっても問題があり、土手をきれいにしても問題がある。人が多く暮らす市街地における自然のあり方は、いつも何かしらの不都合を抱えています。
 
 数人の若者が川の両側に集まっていました。しばらくすると、人目を避けるようにしながら川にむけて「パチンコ」をはなっていました。幸いこの時は鳥に命中しなかったようですが、いわゆる「矢ガモ」騒動にも通じる行為です。かつては石つぶてを投げる相手として野鳥があった時代もありましたが、若者たちの行為は「捕まえて食べる」ためではない、単なる虐待です。
 
 町に野鳥が戻ってきて人間と至近距離で暮らすようになり、いろいろな問題が生まれています。秋の大柏川を歩いて、さまざまなことを目撃しました

大柏川の欄干に並んだユリカモメ 電柱で休むユリカモメ

 

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花屋の花を観察する マーガレット

 マーガレット

   キク科の花は、小さな花が集まって、ひとつの大きな花の形を構成するという特徴があります。マーガレットの花は、そういうキク科の花の特徴をよく備えています。真ん中の黄色い部分を拡大すると、小さな単位がはっきり見えます。下の写真では、中央部分が「つぼみ」で、その周囲が「咲いている花」になります。この小さな単位に花の部品がそろっているので、部品ごとに実になりタネができます。タンポポの綿毛を思い浮かべるとわかりやすいです。

   花の断面の写真(右下の小さな写真)には、筒状のひとつひとつの花と、その根元の実になる部分が写っています。小さな花は、半球状の土台の表面にきれいにならんでいます。
 
   周囲の「花びら」も一枚一枚がひとつの花です。花びらの根元が筒状になっていて、そこに花の部品が入っています。

マーガレットの花の写真

 マーガレットの花の断面写真

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街かど自然たんぽう

中国分(なかこくぶん)・中国分スポーツ広場のムクロジ

 ムクロジは林の中よりは、人里近くで見られる高木です。市内ではあまり見られません。スポーツ広場の駐車場にムクロジを見にゆくと、ちょうどアスファルトの上に落ちた実を拾うことができました。半透明の飴色の外皮が美しいので、見つけるとうれしくなります。手芸の材料に、わざわざ拾いに来る人もいるそうです。垣根の間から、黄葉した葉が見えたのでよく見ると、何本も若木が生えていました。わずかな土の上にうまく落ちた実のいくつかは、こうして芽生えることができたのでしょう。

ムクロジ
白丸の中はムクロジの丸い実、大きさは2センチメートルぐらい。
 飴色の外皮はかつて石けんの代用とした。
 中に1個入っている真っ黒の硬い種は羽根つきの玉に利用。
矢印は垣根の間に生えているムクロジの若木。  

 

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くすのきのあるバス通りから 第103 秋の風景


 今年は八幡周辺でキチョウをよく見かけました。秋になっても気温が高く、紅葉が遅れている気がします。12月に入って葛飾八幡のイチョウは少し緑が残った黄色になりました。近くのお宅の庭では二階の窓に届く高さの皇帝ダリアの花が咲いています。大きなエノキに数羽のシジュウカラがいました。葉は黄色く、小さな実がたくさんついていました。我が家の庭にスズメが2羽おりてきました。ネコジャラシの実を食べに来たと思いそっと見ると、枯れたシソの茎につかまり実を食べていました。ジョウビタキのオスもやって来て、尾羽を上下に振る姿を間近で見ることができました。ゴーヤ、オシロイバナ、アサガオがまだ小さい花を咲かせています。霜が降りるまでは頑張るのかな。

 (M.M.)

 

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展示室 飼育生物の話題

ヌカエビ 小さな透明なエビの抱卵

 
 ヌカエビは、小型のエビで淡水に生息します。博物館では、別に海水に生息するユビナガスジエビも飼育していますが、いずれも体が透き通っていてきれいな生き物です。展示室のヌカエビは、長田谷津(自然観察園)から網ですくってきて飼育ケースで飼っています。すくった中に卵を抱えたエビがいて、そのままにしておいたらいつのまにか卵がなくなり、いつのまにか小さな子エビが飼育ケースの壁にはりついていました。いつの間にかミジンコも泳いでいました。

 抱卵していたのでケースを丸洗いすることをせず、水だけ少しずつ取り替えるようにしたのがよかったようです。水族館のような専門の施設ではないので、抱卵したエビを人為的にコントロールして卵を育てることまではできません。ケースを「放っておく」ことで自然のなりゆきにまかせました。

 子エビ(写真矢印)は順調に大きくなり、親エビは再び抱卵しました(写真矢印)。すごい繁殖力ですが、こうやって数を増やして、自然界では餌となって生態系を支えています。強い繁殖力を持ちながら「強い捕食者」ではないことがアメリカザリガニとの大きな相違点と言えるでしょう。
 

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わたしの観察ノート 


  

◆長田谷津より

  •  ハグロトンボが今年は多く見られます(9月5日)。ふだんはユラリと飛んでいますが、縄張争い?の時は2匹がかなりのスピードで追い合いをしていました。
  •  ツリバナの実が見事に割れて赤い種子が顔を出していました(9月27日)。例年青い実はつくものの、その後黒くなって枯れてしまうのに、今年は1本だけですが、木全体で実が熟しました。
  •  ジムグリは目撃されにくいヘビで、ずいぶん見かけませんでした。この日は斜面林をのんびりと進んでいる場面に出会うことができました(10月4日)。
  •  小学生との自然観察の時に小さなクサガメが見つかりました(10月21日)。毎年ある程度の数が長田谷津で誕生しているようです。
  •  今年はエゴノキの実がよくできています(10月21日)。ヤマガラのエゴノキ集めは最盛期のようでした。

◆大町より

  •  博物館の屋根にフクロウが止まっていました(9月11日)。音もなく飛び立って、隣の建物のアンテナに移りました。暗い中でも、大きな体のシルエットはよく見えました。

   以上 金子謙一
 

  •  少年自然の家プラネタドームのすぐ上をサシバが通り抜けました(9月30日)。帆翔を始めてゆっくりと上昇しました。その後もう一羽加わりました。青空の下、ゆったりとした風景でした。

   宮橋美弥子
 

◆中国分より

  •  外環道路工事で行き止まりになった道の斜面にヨメナとタイアザミが、そして中国分小下の斜面に赤いゲンノショウコが咲いていました(10月10日)。

   谷口敏子さん
 

◆市営霊園より

  •  秋に黄色い花を群生するヤクシソウを見ました(10月16日)。秋の野道を歩けば必ず見られたものですが、野道すらない近年は、すっかり見なくなりました。

◆坂川旧河口より

  •  フジバカマがちょうど見ごろでした(9月20日)。花とつぼみが混じっていてきれいでした。株は少し減りましたが、新しい場所への移動もみられました。

◆江戸川放水路より

  •  低水敷と高水敷の境界のところに、何本もエノキが生えています。それぞれに実がたくさんついていて、ムクドリの群れがむさぼりながら移動していきました(9月4日)。きっと糞でタネを落とすので、加速度的にエノキが増えてゆくでしょう。
  •  トビハゼ稚魚調査をしました(10月23日)。雲が厚くて陽射しが少なくひんやりとした干潟には少ししかいませんでした。

   以上 金子謙一
 

気象のようす

 9月10日は2つの台風の影響で、大雨になりました。市内では避難勧告(河川、土砂災害)・避難指示(土砂災害)が発令され、行徳可動堰が全開しました。連休からは秋らしい好天が続きました。

 

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