平成27年度 市川自然博物館だより 2・3月号 通巻162号

市立市川自然博物館 2016年2月発行

     

 いきもの写真館  同じ場所を何度か訪れる
 花屋の花を観察する  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  展示室 飼育生物の話題
 わたしの観察ノート  

 


 

いきもの写真館

イシガレイ カレイの仲間は、海底の砂に体を隠して獲物を狙います。水槽でも同様で、砂から眼だけがギラリと出ています。  自然博物館所蔵写真

 

 

最初へ戻る


同じ場所を何度か訪れる 大柏川 1月29日

 

【田んぼの中を流れていた】

  都市化が進むまでの市川は、低地一面に田んぼが広がっていました。大柏川は田んぼのなかを流れるのどかな小川で、田を潤した水を集めてかつては江戸川へ、その後は東京湾へと流しました。都市化によって川のまわりの景観は変貌しましたが、低地という地形であるので、自然環境の基本は変わりません。田んぼのような水辺環境が大柏川流域の自然を見る上では重要なポイントになります。
 
  大柏川流域には、かつての環境を引き継いだり再生した場所があります。それぞれに魅力のある場所ですが、大柏川という川の流れに位置付けることで、源流・上流の特徴や中下流の特徴を見いだすことができます。
 
  源流部としては「長田谷津(大町自然観察園)」があります。大柏川の支流のひとつにあたり、源流部が保全されています。上流部としては、長田谷津からの流れが大柏川本流と合流する一帯にある「親子ふれあい農園」があります。
 
  大柏川本流では、南大野に「こざと公園」があります。雨水調整池を利用した公園です。そこから下流へ下ると「大柏川第一調節池緑地」があります。大柏川流域では最大の水辺空間です。隣接する「北方ミニ自然園」は民有地を借りて市民グループが水田耕作を行っている場所です。
 
  そこより下流になると、自然環境を残す水辺空間はありません。

大柏川流域の水辺の図 長田谷津
【源流・上流の水辺】

  源流部という位置づけで「長田谷津(大町自然観察園)」を見る時、大切なのは谷の幅です。視野の中に谷底と両側の斜面が一度に入る狭さです。台地を刻んで形成された谷の奥部であることがよくわかります。両斜面と谷底が一体となって、ひとつの自然環境を作っています。
 
  長田谷津からの流れが大柏川に合流する場所、つまり谷の出口部分にあるのが「親子ふれあい農園」です。ここは長田谷津とは異なり、空が広く見え、斜面林も遠く感じます。農家の方が稲作を続けられているほか、「米っとくらぶ」による稲作体験も行われていて、かつて谷底で稲作がおこなわれていた時代の景観をほうふつとさせます。途切れることなく耕作が続けられている田んぼもあり、そこには「水田雑草」と呼ばれる小型の野草が多くあります。その中には、市内でもここだけにしか残っていない貴重な種類も含まれています。

親子ふれあい農園 こざと公園
【中流の水辺】

  「こざと公園」はマンションや戸建住宅に囲まれた池です。雨水調節池を利用した公園ですが、ここにはかつての「ため池」の景観を見いだすことができます。広い水面と空間、適度に生える植物。川とは異なる水辺環境がさまざまな生物にとっても貴重な空間になっています。
 
  「大柏川第一調節池緑地」は流域最大の水辺空間です。面積およそ16ヘクタール。域内には構造物がほとんどなく、広い空に驚かされます。大柏川が流れる谷(大柏谷)の谷底に位置しますが、両岸の斜面林は遠く、あまり谷という印象がありません。源流部の長田谷津とは大きく異なる景観です。大きな野鳥がゆったりと飛ぶ様子が、この場所の特徴を表しています。
 
  隣接する「北方ミニ自然園」は調節池緑地が造成される前からある水辺です。規模は小さいですが、稲田があります。調節池緑地が作られる前は一帯に水田があり、そのころの環境を引き継いでいます。市内の田んぼを代表するニホンアカガエルの個体群もここで保全されています。

大柏川第一調節池緑地 北方ミニ自然園

 

最初へ戻る


花屋の花を観察する デンファレ

 デンファレ

  デンドロビウムの一種デンファレは、お花屋さんの切り花ケースに常備されている洋ランです。カトレアや胡蝶蘭にくらべて安価なので、安心して分解して観察できます。

  ランのなかまは、雄しべと雌しべが合体して1本になっています。「ずい柱」と呼びます。デンファレの花びらを半分取り、ずい柱を花柄と合わせて切断すると、内部構造が見えます。ずい柱の先端に黄色い花粉塊が、花柄には子房が見えます。

  花粉塊があるずい柱先端は少し面白い構造です。キャップのようになっていて、その中に花粉塊が入っているのです。花の正面から見ると、キャップの部分がよくわかります。

  このキャップは指で外せます。少し力を入れるとポロリと取れます。この時、黄色いコメ粒のような花粉塊が2つ出てきます。花粉塊はなかに微小な花粉を大量に含んでいる粒です。花粉塊を虫の背中にくっつけて、別の花へ運ばせます。

  ずい柱を裏返すと、ねばねばした部分があります。そこに花粉が付きます。

ずい柱と花柄の切断面の写真

 花粉塊の入っているキャップの写真

ずい柱先端正面の写真

 花粉塊の写真

最初へ戻る

   


街かど自然たんぽう

中山(なかやま)・龍王池のカメたち

  中山法華経寺境内の龍王池は、一角が仕切られて、「亀・鯉池」の札がついていました。暖かい季節になると、石の上に重なるぐらいたくさんのカメがいるそうですが、この日は陽の当たる場所に数匹がじっとしているだけでした。冬の間カメは、水底の泥や落ち葉の中に潜りっぱなしで過ごすことができます。体の代謝を極端に落し、肺呼吸の他に皮膚呼吸もおこなうので、わざわざ水面まで上がってこなくてもいいのです。

龍王池の写真の中にカメの写真  

      △ 雑食性のカメは水草を食べてしまったり、水底をかきまぜてしまいます。睡蓮の
       生えるエリアとカメなどが暮らすエリアが分けられていれば、お互い居心地がよい
       ということでしょう。

 

 最初へ戻る


くすのきのあるバス通りから 第104 冬に見つけたサナギ


  各地に大雪、奄美にミゾレが降った日も千葉県は暖かく雨でした。1月25日朝7ミリの氷がはりました。紅梅が咲き、コブシのつぼみが少し大きくなり、近所のカンザクラはと見に行くと根元から伐られていました。市川病院正面の木の高いところに鳥の巣があり、双眼鏡で見ると白と青の針金ハンガーがたくさん使われていました。カラスの巣だそうです。我が家の庭にニューサマーオレンジの木があります。昨年駐車スペースのコンクリートの上をアゲハの幼虫が歩いていたので、木に戻してやりました。暮れに壁に立てかけた物にサナギがついていて、あの時の幼虫だったら余計なお世話だったのかもしれません。10メートル離れた裏庭でサナギになったこともありました。クスノキのあるバス通り沿いのお宅の門柱の目立つところにアオスジアゲハのサナギを見つけました。車道寄りのクスノキから歩道を通り登ったようです。家のサナギは付いていた糸だけ残し、いなくなってしまいました。

 ( M.M.)

 

 最初へ戻る

 


展示室 飼育生物の話題

どんぐり どんぐりから芽が?の写真

 
  展示室の飼育展示の中でも異色の存在が「どんぐりの成長」です。もともと、昆虫やカエルにくらべ植物の飼育展示(栽培展示)はあまり人気がありません。イネの栽培展示など、見向きもされませんでした。ところが「どんぐりの成長」だけは異例のロングランになっています。

  見ている人の反応は3タイプぐらいに分かれます。ひとつは、どんぐりが植物の実(タネ)であることを改めて認識して驚くパターンです。日常の盲点を展示で指摘された感じでしょうか? もうひとつは、頭では理解していてもどんぐりから茎が伸びて葉をつけているところを初めて見て驚くパターンです。じつは野外でも5月ごろ、普通に見つかるのですが……。 そしてもうひとつは、丸いプラ水槽で簡単に発芽させられることに驚くパターンです。

  飼育展示の多くでは子どもたちの歓声が聞こえてきますが、どんぐりの芽生えの展示では圧倒的に大人の小声での歓声が聞こえます。もともと展示する側にとっては、手持ちの「小ネタ」のひとつといった認識でした。展示を見てくださる方々の意外な反応が、博物館が展示を工夫するうえでの貴重な財産になりました。
 

最初へ戻る

 


 

わたしの観察ノート 


     

◆長田谷津より

  •  湿地にそびえるハンノキの上部にアオサギが止まっていました(11月11日)。自然観察をしている子どもたちに教えると、大きいことに驚いていました。
  •  夏の間、小さな枝豆のようだったツルマメの実は茶色く熟していました(11月17日)。はじけてねじれた莢も多くありました。雨が降った翌日の晴れて乾燥した日など、パチパチとはじける音が楽しめます。

◆柏井町より

  •  梨畑の垣根にキカラスウリの実が、たくさんぶら下がっていました(11月1日)。普通のカラスウリにくらべると、目にする機会が少ないです。
  •  大柏川の階段護岸から水中でよく茂ったオオカナダモを眺めていたら、大きなモツゴが跳ねて飛び出しました(11月28日)。水草の中にはいろいろな生物が隠れていそうです。

◆じゅん菜池公園より

  •  暖かい秋の影響でモミジの紅葉はまだでしたが、池のほとりに植えられたアカシデがきれいに色づいていました(11月21日)。アカメガシワの黄色い葉も目を引きました。

   以上 金子謙一(自然博物館)
 

  •  白梅が1輪咲いていました(12月27日)。

◆北国分より

  •  近所の梅林沿いにロウバイが良い香を漂わせ数本咲いていました(12月27日)。なかにはもう満開状態のもありました。

   以上 谷口敏子さん(北国分在住)
 

◆行徳野鳥観察舎より

  •  珍しいヘラサギを観察舎の望遠鏡でじっくり観察しました(12月9日)。潮が引き始めた水中でくちばしを左右に弧を描くように動かしながら餌を漁っていました。時々飲み込むため?にくちばしを上げると、ヘラ形をしていることがよくわかりました。
      水中で忙しそうにするヘラサギを横目に、ダイサギは泥の上をゆっくり歩いていました。時々首を伸ばして、大きなハゼのような魚を捕まえていました。ヘラサギにくらべて効率的な動きに見えました。

◆江戸川より

  •  市川南の河川敷でチョウゲンボウを見かけました(11月16日)。カラス1羽に付きまとわれていましたが、やがて離れて、低空を市街地の方へと向かいました。
  •  市川橋のたもとにヒドリガモの群れがいました(11月16日)。河川敷で草を食べているところに散歩の人や犬が来ると水に降り、そこにモーターボートが来ると一斉に飛び立って、上空をひと回りしてまた戻ってきました。市街地の川でもしたたかに行動していました。

   以上 金子謙一(自然博物館)
 

気象のようす

 期間を通して、暖かい日が続き、雨もよく降りました。なかなかモミジが赤くならず、赤くなっても散らずにいたので、いつまでも紅葉が楽しめました。年末になって、やっと寒くなりました。

 

 最初へ戻る

博物館たよりIndexへ戻る