平成27年度 市川自然博物館だより 4・5月号 通巻163号

市立市川自然博物館 2016年4月発行

     

 いきもの写真館  同じ場所を何度か訪れる
 花屋の花を観察する  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  展示室 飼育生物の話題
 わたしの観察ノート  

 


 

いきもの写真館

フクロウ 古いスピーカー巣箱をかけました。顔の前面に大きな目がふたつ。擬人化しやすい顔は感情移入しやすいです。 自然博物館所蔵写真

 

 

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同じ場所を何度か訪れる 田んぼの1年 3月18日

 

【花いちめんの田んぼ】

  今年度は、「親子ふれあい農園」(大野町4丁目)の田んぼを観察します。田んぼに行くと四季の変化を実感するとともに、稲作の作業過程に合わせた生き物の暮らしぶりの変化もよくわかります。それを環境という視点でとらえると、自然をより深く知ることができます。
 
  今回訪れたのは3月18日、まだ田起こしされる前の田んぼでした。前年の秋に刈り取られた稲の株が茶色く枯れて規則正しく並び、その間にタネツケバナが白い小さな花を一面に咲かせていました。稲を育てている期間はさまざまに人の手が入る田んぼも、稲刈り以降、翌春の田起こしまでは半ば放置された状態になります。耕すことも草を刈ることも、水が一面に張られることもありません。10月から3月までの6か月間、田んぼは安定した状態になります。そして、春の訪れとともにタネツケバナが成長を加速して花を咲かせ、ちょうど満開になっていたのです。
【環境が激変する田起こし】

  田起こしは、秋冬の期間に硬く締まった田の土を耕す作業です。機械を使えば短時間です。手作業では、まず田の土をブロック状に掘り起し、つぎにそのブロックを砕いて細かくしていきます。この時、田んぼに生えている野草も根こそぎ掘り起こすことになります。タネツケバナなど春に咲く野草は、掘り起こされる前にタネを散布しなければ絶えてしまいます。田起こし前に満開であることには意味があるのです。
 
  逆に言うと、田植え以降に芽生える野草は田起こしをタネの姿でしのいでいるのです。それらは除草の隙に開花しタネを散布します。また、多年草は田起こしで根を切られるため大きく育つことができません。小さいままで、雑草として引き抜かれます。田んぼには稲より大きくなる植物が育つチャンスはほとんどないのです。

満開のタネツケバナ あぜに生えるギシギシのなかま

【あぜの植物】

  田を仕切る堤防の役割をする「あぜ」は、管理の仕方が異なるため植物の様子も違います。訪れた時も、オオイヌノフグリの花に混じってギシギシのなかまやオオジシバリ、ヨメナなどの葉が目につきました。これらは多年草なので、あぜにしっかり根を張って生育しています。
 
  あぜは、田に水を入れる前には泥を塗りますが、その後は草刈りを繰り返すだけで掘り起こすことはありません。そのため、多年草が小さな姿で密生します。田んぼとあぜとで見られる植物が異なるのは、水を張るかどうかの違いだけではなく、管理方法の違いが大きく影響しています。
【田の泥のなか】

  手作業で田起こしをすると、泥の中に隠れていた生き物によく出会います。別の場所の田んぼの例ですが、ブロック状に掘り起こした土の塊りからは、ケラ(おけら)が這い出してきました。半日の作業で、何匹も出てきます。田起こしで土がひっくり返されたので、あわてて這い出してきました。土が砕かれる過程でも、うまく鍬の歯から逃げて生き延びます。
 
  田んぼの泥には、いろいろな卵も混じっています。田に水を引き入れてしばらくすると卵から生まれたミジンコ類が泳ぎ出し、アキアカネなどのアカネ類のヤゴも現れます。タネの場合と同様、小さな卵なら田起こしされても平気です。
 
  田の泥のほか、周囲の水路や田んぼの小さな水たまりにも生き物が潜みます。鉄バクテリアの生成物で赤さび色になった水路にも、魚やヤゴが潜んでいます。

枯れた稲株が並ぶ田んぼの泥 水が少ない春の水路

 

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  このたび、「市川市史自然編−都市化と生きもの」が刊行されることになりました。市川市史は昭和40年代に全7巻が刊行されていますが、その後、急速な都市化により本市をとりまく状況は大きく変化し、また特に歴史分野では新しい学術的知見も得られてきました。それらのことを受け、新しい市川市史の編さん事業が進められています。新しい市川市史は、市民のみなさまに愛され活用される市史を目指しています。前回の市史では自然分野は扱われませんでしたので、自然に関する内容は今回はじめて「市史」という形でまとめられました。
  「市川市史自然編」は、サブタイトルを「都市化と生きもの」としたように、急速に都市化が進んだ市川市域の自然のありさまにスポットを当てています。全5章構成で、市川市域の地形のなりたちや土地利用の変遷などを整理した上で、都市化した市域で暮らす動植物のありさまを詳しく解説しています。また、都市化が進むなかでさまざまに取り組まれた自然を残す取り組みについても幅広く記録し、後世に残せる内容にしました。
  この「市川市史自然編」と対を成す出版物として「自然環境実態調査報告書」があります。これは2001年度から2003年度にかけて市川市の委託を受けて市川市自然環境調査会が行った本

市史表紙  

  格的な調査報告書で、全5冊にわたる膨大なものです。市川市域の現況についてはこの報告書にくわ
  しくまとめられています(図書館で閲覧できます)。その分、「市川市史自然編」は都市化に焦点を当て
  た内容とすることができました。なお、付属する光学ディスクには実態調査報告書を基にした動植物目
  録が収められています。

 

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街かど自然たんぽう

新浜(にいはま)・1から3丁目の異なった風景

  現在の新浜は、1丁目が学校や住宅地、2丁目が宮内庁の新浜鴨場(しんはまかもば)、3丁目が行徳特別保全地区(野鳥の楽園)になっています。水の利用別に見てみると、住宅地では上水道から下水道へと流れ、水が屋外に留まれる場所はありません。鴨場には水を貯めて、鴨を飼ったり鴨猟をするための池があります。野鳥の楽園には、淡水の湿地から干潟へ、海へと続く水の流れがあります。それぞれの場所で、それぞれの風景が見られます。

空から見た新浜  

 

 

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くすのきのあるバス通りから 第105 自然観察のスタイル

  「今日は自然観察をします」というときは一眼レフカメラ、望遠レンズ、双眼鏡を持ち歩きます。日常生活やちょっとした外出先で「何だろう?記録しておきたい」と思うことがあります。メモ、スケッチ、携帯電話のカメラを使ってもあと一歩満足できませんでした。特に鳥の名前や見慣れない草です。初めてコンパクトデジカメを買いました。色々な機能満載の新製品です。家に帰り調べる、人に聞くとき、記録に手軽で便利でよかったと思います。

( M.M.) 

キンクロハジロ  

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展示室 飼育生物の話題

ヤドカリとおたまじゃくしの水槽の写真

 
  飼育展示で生きているものを見れば、当然、つぎは触ってみたくなります。小さな子どもたちが多い当館のお客さん層ではなおさらです。そのため、展示室とは別にロビーの大きな机に丸水槽を置いて触れるようにしてあります。当初は「見るだけ」のつもりで置いた水槽ですが、触ることが半ば既成事実化してしまったので、「さわってもいいよ」の表示を出すことにしたのです。

  通年で置いてあるのはヤドカリの水槽です。カニでははさみが怖い子どもも、ヤドカリなら「宿」を持てば怖くありません。生き物の側も、「宿」は体ではないのでつかまれても体への負担にはなりません。木製のしっかりした長椅子でくつろいでながめられるので、脱皮した抜け殻に気づいたり、時には「引っ越し」の場面に遭遇することもあります。そういう発見や驚きが自然を見る目を育むことにつながります。

  春は、特別バージョンでおたまじゃくしも出しました。手を入れるとおたまじゃくしが動く、という単純な体験すら子どもたちの日常では希薄です。ただヤドカリとは違うので、触り方について学芸員がなるべく気配りするようにしています。
 

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わたしの観察ノート 


     

◆長田谷津より

  •  枝先でタネを割って食べている野鳥がいました(1月9日)。双眼鏡がなくて種類がわからなかったのですが、あとで聞いたらアトリだったそうです。
  •  暖かいからでしょうか、枝先にキボシカミキリの成虫がいました(1月9日)。博物館で飼育しているものも年を越しています。
  •  みぞれ混じりの雨が降ったので、あわててアカガエル好みの水辺を作りました(1月12日)。結局、この雨では産卵しませんでしたが、作業中、お腹がふくらんだアカガエルが枯草の下から出てきました。
  •  1月に産んだアカガエルの卵塊は、オタマジャクシになっていました(2月19日)。2月に入って雨がよく降り、ずいぶん産んだみたいです。卵塊が増えていました。
  •  三角池に、ヒキガエルの卵塊がありました(2月28日)。姿を見た23日の翌日には、産んだという連絡をもらっていたので、2月24日が産卵日と思われます。かなり早いです。この日も、何匹かうろうろしていました。

   以上 金子謙一(自然博物館)
 

◆里見公園より

  •  ルリビタキを見ました(2月11日)。おだやかな晴天で羽の色が一層美しかったです。カワヅザクラが咲き始めていました(1月31日)。

◆じゅん菜池公園より

  •  たくさんのカメラマンがいたので「もしや」と思ったらやはりミコアイサでした(2月11日)。もぐったり顔を出したりをくり返していました。ジョウビタキも見ました。

◆市川南より

  •  江戸川でカワヅザクラが開花しはじめていました(2月5日)。桜の季節のスタートです。

   以上 M.T さん
 

◆八幡より

  •  八幡小学校には池があって、最初、石をひっくり返すと、2匹のヒキガエルがいました(2月19日)。まい年、この池ではカエルが子孫を残すために、集まってきています。でも、こんなに早いことは珍しいです。

   以上 T.I さん
 

◆中山より

  •  小学校の中で自然観察をしていたら、ギーと鳴いてコゲラがハゼの木に止まりました(1月19日)。見ていたら幹をつつくのではなく、ハゼの実をついばんでいました。キツツキが枝先の実をついばむとは思いませんでした。

   以上 金子謙一(自然博物館)
 

気象のようす

 都内で積雪があっても、市内ではうっすら積るぐらいでした。厳しい寒さの日もありましたが、今冬は暖かく、生物の面では春の進みは早い感じです。

 

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