平成28年度 市川自然博物館だより 6・7月号 通巻164号

市立市川自然博物館 2016年6月発行

     

 いきもの写真館  同じ場所を何度か訪れる
 花屋の花を観察する  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  展示室 飼育生物の話題
 わたしの観察ノート  

 


 

いきもの写真館

ヤママユ 大型の蛾で雑木林に生息します。飼育ケースで羽化したメスを逃がしたら、数日後にオスが下に止まっていました。止った蛾の写真

 

 

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同じ場所を何度か訪れる 田んぼの1年5月21日

 

【水が張られた田んぼ】

  前回、3月に訪れた田んぼは田起こし前で、一面に白いタネツケバナが咲いていました。今回は、田植えが終わっていました。2か月の間に田起こし、代掻きが済み、水が張られました。景観は一変し、自然のようすは大きく姿を変えました。
 
  田んぼは、水辺としては独特な環境です。水深は10から20センチ程度で、一面ほぼ同じ水深です。太陽の光が水底まで届くので水中は明るく、水も暖かくなります。そのため広い田んぼの全面で植物や植物プランクトンが育ちます。田起こしと代掻きによりそれまでの植物は一度姿を消しますが、田植え以降、ちがう種類の植物が成長します。

【あぜは、絶妙な存在】

  田植えの前に泥が塗られたあぜには、すでに多くの植物が茂っていました。あぜに根を張った多年草は、草刈りされてもすぐに生えてきます。あぜの上で茂るだけでなく、田んぼの水面の方へも伸びていきます。
 
  明るく開放的な田んぼの水面は、逆に言うと隠れる場所がありません。そこを、あぜの植物がおぎなっています。あぜの植物は水中に陰を作ります。水と陸の橋渡しもしてくれます。伸びすぎると刈られてしまいますが、またすぐに生えてきます。田んぼは浅い水深の水辺だけでなく、あぜが一定間隔に存在することで、水と陸が入り組んだ複雑な環境になっているのです

田植えが終わった「親子ふれあい農園」 あぜと田んぼ

【カイミジンコ】

  田植えが終わった田んぼで水の中をのぞくと、まず目に付くのがカイミジンコです。二枚貝のような形なので「貝みじんこ」です。1ミリに満たない大きさですが、田んぼの底一面におびただしい数が見られ、忙しく泳ぐ姿も目に付きます。
 
  発生のパターンから想像すると、泥の表面に発生した植物プランクトンや藻類をカイミジンコが食べ、そのカイミジンコをより大型の水生生物が食べると思われます。田んぼの食物連鎖(食う食われるのつながり)をイメージするのに、カイミジンコはいいきっかけです。

【いろいろな生きもの】

  イネを育てるための場所ですから、当然、田んぼに網は入れられません。そのため今回見られた生き物は、自分自身が田んぼに入って作業する時に見つけるよりも、ずっと限られていました。
 
  カイミジンコのつぎに目立ったのはサカマキガイという小さな巻貝でした。大きさは1センチほどで、泥の表面をはいます。殻の色が黒っぽいので目立ちませんが、慣れるとかなりの数がいることがわかります。やはり植物を食べ、他の動物に食べられる存在です。今回観察している「親子ふれあい農園」にはいませんが、サカマキガイはヘイケボタルの幼虫やコオイムシの餌になります。
 
  水中では、小型のゲンゴロウ類と思われる幼虫が素早く泳いでいました。しばらく見ていると、水面に浮かんでいた赤虫(ユスリカ類の幼虫)を捕えて食べました。別の日には、小型のゲンゴロウであるハイイロゲンゴロウの成虫も目撃しました。ゲンゴロウ類は、田植え以降に成長するコナギなどの水草に卵を産み、あぜの泥の中で蛹になります。そういった生活史を考えると、田んぼの自然の指標となる生き物と言えるかもしれません。
         
  ゲンゴロウ類の幼虫と思われるものは撮影できませんでしたが、アメンボは写すことができました。アメンボも、他の生き物やその死骸を食べる存在です。ゲンゴロウとよく似た位置づけです。

水中のカイミジンコ アメンボ ユスリカ幼虫 サカマキガイ

 

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花屋の花を観察する カラー

 カラー

  一般的に、花は「花弁(かべん)、萼片(がくへん)、雄しべ、雌しべ」という部品で作られていると言われます。ですが、実際にいろいろな花を観察していると「苞(ほう)、総苞(そうほう)」という部品が出てくることがよくあります。「苞」は花の下につく特別な葉、「総苞」は花の集まり(花序:かじょ)の下につく特別な葉です(前者を小苞、後者を苞と呼び、タンポポなどの苞を特別に総苞と呼ぶ場合もある)。この苞や総苞は小さく目立たない場合が多い一方、大きくなったり色づいたりして花の主役となる場合があります。その場合は、花弁や萼片に準ずる花の部品というわけです。

  カラーの花の主体は総苞です。総苞が大きくなって色がつき、それが巻いて花の形を作っています。「ほんとうの花」は総苞の中にあって小さく、集まって棒状になっています。

  カラーが属するサトイモ科には似た構造の花が多くあります。この場合、総苞を特別に「仏炎苞(ぶつえんほう)」と呼びます。仏炎苞が目立つことで花らしくなります。  

     
     
カラーのぶつえんほう    カラーの花序

ミズバショウ

アンスリウム

ぶつえんほうの無いショウブ

ウラシマソウのぶつえんほう         ウラシマソウの花序

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街かど自然たんぽう

原木(ばらき)・ハスをみつけました

  小学校の近くで、ハスがまとまって植わっているのを見つけました。ハスは、水中からスッスッとまっすぐに伸びた葉柄の上に、丸い葉が乗っている姿が良い感じです。まだ花は咲いていませんでした。かつては、このあたりから行徳地域にかけて、水田や蓮田が広がっていました。今では埋め立てられて、畑や住宅になっていますが、ハスを見つけて、かつての風景が思い起こされました。

ハスの花の時期はもう少し先です  

 

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くすのきのあるバス通りから 第106 ちぎられたサクラ

  ソメイヨシノの花は天気の激変のため、一週間で終わってしまいました。その後、違う種類のサクラを見て歩きました。花びらが散るのではなく、きれいな花ごと道にたくさん落ちていました。「品種による特徴かな?」と真面目にサクラの図鑑をみました。外国のテレビ番組で、鳥が蜜を吸うために花をちぎるのを見て、ひょっとして…と再び見に行くとやはりちぎられた跡がありました。この木の花の蜜は格別においしいのでしょうか。京成八幡駅近くのサクラは大きなサクランボがなるのですが、気が付いたときは全て食べられていました。我が家のサクラは5月に入ってもサクランボがついたままです。黒く熟していそうなものを取り食べてみましたが固くて、木をかじっているようでした。まだ早かったようです。

( M.M.) 

道に落ちたサクラの花  

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展示室 飼育生物の話題

ミジンコの展示 ミジンコの展示のアップ

 
  当初ミジンコは、展示している飼育生物の餌、という位置づけでした。博物館の屋外に設けた「餌農場」のアサザ栽培槽で自然発生するので、それを生き餌として用いていました。たとえばウーパールーパーの幼生の飼育では、初期の段階で欠かせない餌です。ミジンコの発生時期を見据えてウーパールーパーのオスとメスを合わせて産卵させているほどです。

  他の自然教育施設においてミジンコを積極的に取り上げている事例があることから、ふと思い立ってミジンコそのものを飼育展示の素材にしてみました。理科教材で観察用のうすっぺらいプラケースを売っていたので、それを使ってみました。肉眼でも見えますが、ルーペも置きました。子どもたちはルーペ(虫めがね)が大好きです。ルーペを置くと、かならずのぞいてくれるので、関心を引くためには便利な小道具です。大人のお客さんも、肉眼で見たりルーペで見たりと、思った以上にミジンコを楽しんでくれています。「ミジンコって肉眼で見えるんだ」と思わず叫んでいた大人のお客さんがいましたが、名前を聞いたことがあっても実物は初めて見る、という人が思った以上に多いようです。
 

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わたしの観察ノート 


     

◆長田谷津より

  •  バラ園下の池では、植えたミツガシワが増えて水面に地下茎が伸びて広がっています。その上に立ったダイサギが、地下茎の下に潜んでいたドジョウを捕まえて飲み込みました(3月5日)。
  •  自然観察園には木イチゴ類はあまりありません。大町門に近い場所の植え込みで、モミジイチゴが咲いていました(4月1日)。植えた覚えはないので、鳥が運んできたのでしょうか。
  •  小雨まじりで人影もまばらな自然観察園でタヌキを観ました(4月3日)。観賞植物園前の斜面林を何かが下りる音がし、しばらくすると、毛並みが整った大人のタヌキが現われ、そのまま湿地に降りていきました。体色が濃くつややかできれいな個体でした。
  •  いよいよシオヤトンボが姿を現しました(4月6日)。弱弱しく飛ぶ1頭だけの確認でした。
  •  エナガの可愛らしい声が樹上に響いていました(4月20日)。写真を撮っていた人の話だと、10羽を超す大家族がいたそうです。

◆大野町より

  •  大柏川に沿った開けた場所で、チョウゲンボウが飛んでいるのを見かけました(3月16日)。尾羽の部分が長く目立ちました。

◆国府台より

  •  キンポウゲ科の小さな野草、ヒメウズが里見公園の一角で群れて咲いていました(4月13日)。
          以上 金子謙一(自然博物館)      
  •  里見公園で一株だけ花をつけているカントウタンポポを見ました(4月17日)。まわりに、セイヨウタンポポと雑種タンポポがたくさん咲いていました。。
          宮橋美弥子(自然博物館)         

◆真間山より

  •  南側斜面林からウグイスの鳴き声が聞こえてきました(3月3日)。真冬並みの寒気がようやく抜けて、日差しが春らしくなってきました。。
  •  南側の斜面林で、スジグロシロチョウ、キチョウ、モンシロチョウ、シジミチョウなどと一緒にアゲハチョウ(4月14日)クロアゲハ(4月16日)がとびまわる姿が見られました。タンポポ、ハルジオンがきれいです。
  •  南側斜面林でアオスジアゲハが飛び始めました(4月29日)。にぎやかになります。

◆江戸川より

  •  土手でツバメが気持ちよさそうにとびまわっていました(4月12日)
         以上 M.T さん 

◆江戸川放水路より

  •  きれいに透き通った水中をボラの幼魚があちこちで群れ、さざ波が立っていました。
         金子謙一(自然博物館)
 
気象のようす

 極端に寒い日や暖かい日、雨の日、強風の日と天気の変化が目まぐるしい春で、満開の桜はあっという間に散りました。

 

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