2016年度 市立市川自然博物館だより 8・9月号 通巻165号

市立市川自然博物館 2016年8月発行

     

 いきもの写真館  同じ場所を何度か訪れる
 花屋の花を観察する  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  展示室 飼育生物の話題
 わたしの観察ノート  

 


 

いきもの写真館

アマチャヅルの花

 アマチャヅル アマチャヅルはやや日陰に生育するツル植物です。小さな花は地味ですが拡大すると星形をしていて驚きます。

 

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同じ場所を何度か訪れる 田んぼの1年7月26日

 

【うっそうとした緑】

  7月のおわりに訪れた田んぼでは、緑の量に圧倒されました。それまで見えていた田んぼの地面(水面)は見えず、長く伸びたイネの葉が空間を被っていました。イネの成長は最大に達し、ここからは開花・結実の段階へと移っていきます。すでに花の穂が伸び始め、一部では白い雄しべが見えました。これから稲刈りまでは、防鳥網が大切な籾(モミ)を守ってくれます。
 
【水が抜かれた田んぼ】

  田んぼには水が無く、ウキクサ類が泥の上にペタっと張りついていました。田んぼに水面が広がる期間は長くありません。4月に水が張られ、7月には無くなります。わずか3か月の水面です。しかし、この3か月は重要です。水があるわずかな期間に水の中で成長したり、産卵する生き物がいるのです。たとえばトンボのやごは、この3か月を利用してトンボになります。カエルは、この期間をおたまじゃくしの時代にあてています。ドジョウは、この期間に田んぼで産卵します。浅く静かな田んぼは稚魚の成長に好適です。
 
  水が無い田んぼでは、水辺を探すシオカラトンボが行き来していました。田んぼの中ではオモダカが咲いていました。3月の田起こし以降、発芽・成長が抑えられていた野草は、水が抜かれる夏以降、急速に数・種類を増やしていきます。

7月26日の田んぼ しっかりとした株に葉がうっそうと茂り、花も咲き始めた田んぼの写真 イネが開花するころの水が抜かれてぬかるんだ泥地になっている田んぼの写真

【6月の田んぼと生きもの】

  田んぼに生き物が多いのは6月です。程よく育ったイネが、田んぼの水面とあぜの地面と組み合わさって、水と緑の空間を形成します。
 
  6月30日に訪れた時は、アキアカネが続々と羽化していました。秋に産卵されたアキアカネの卵は、湿った田んぼの泥に混じって冬を越します。田起こしと代掻きの時は、卵なので大きな影響は受けません。そして田植えで水が張られると、卵からかえってヤゴになります。アキアカネのやごは成長が早いので、田んぼの水が抜かれる前までに羽化にたどり着きます(間に合わない場合もあります)。6月30日の時は、ちょうど田んぼで肥料播きが行われていました。イネの葉を?き分けて進む人の足元から、まだ翅が白っぽいアキアカネがつぎつぎに舞い上がりました。また、イネの葉っぱばかりに見えるところでも、目を凝らすと小さなイトトンボ(アジアイトトンボ)が見つかりました。
 
  野鳥のカルガモにとっては、田んぼは子育ての場です。田んぼに近いアシ原などに巣を作り、生まれたヒナを連れて田んぼにやってきます。田んぼはヒナが餌を食べるのにちょうど良い環境です。6月の時にはヒナは見られませんでしたが、年によっては繁殖に成功し、ヒナを連れたカルガモ家族に出会うこともありそうです。

アキアカネ アジアイトトンボ カルガモ  

6月30日の田んぼ イネの葉が旺盛に伸び始めている田んぼの写真 人間より低い生き物の目線で見た田んぼの写真

 

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花屋の花を観察する ゴデチア

 ゴデチアの花

  花は、植物にとっては実をならしてタネを作るためのステップです。実になる場所を「子房(しぼう)」と呼び、雌しべの根元に位置しています。植物にとってはもっとも重要な部品なので、一般には萼(がく)や花弁(かべん)に包まれて外からは見えないようになっています。しかし、なかには子房が花の外に位置して丸見えのものもあります。

  ゴデチアはそういう植物のひとつです。「月見草」や「宵待草」の仲間でアカバナ科に属します。アカバナ科の特徴である4枚の花弁が目立ちます。このゴデチアの花を横から見ると、長い柄の先に咲いているように見えます。この「長い柄」が子房です(図中矢印)。子房の位置が花の「下側」になるので、こういう場合を「子房下位」、花の中に子房がある場合を「子房上位」と呼びます。

  子房下位の植物の代表がウリ科の植物です。ツルレイシ(ゴーヤー)を育てていると、どうしても雌花が気になります。ウリ科は雄花と雌花が別々なので、雌花が咲かなければ実の収穫ができないからです。雌花は、花の下に小さなゴーヤーがあるかどうかで見分けます。つまり、子房下位ということです。  

    
ゴデチアの花 4枚の花弁、8つの葯、先が割れた雌しべ。

ゴデチアの子房

ゴデチアの子房の断面。若い種子が並ぶ。


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街かど自然たんぽう

東大和田(ひがしおおわだ)
・セミのぬけがらがいっぱい

  住宅地にある下沼公園に行きました。小さな池の周りに樹木が植えられていて、地面には、セミが抜け出したと思われる穴がたくさんありました。まわりの木々の枝には、セミのぬけがらがあちらこちらにくっついています。にぎやかな町中で、夜、人知れずセミが静かに羽化していることを考えると、わくわくします。

ぬけがらを調べたらアブラゼミでした  

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くすのきのあるバス通りから 第107 我が家の夏の庭

  今年庭に咲いたユリは、ご近所から「例年より少し黄色い。しっかりしている。匂いが強い」と言われました。「カサブランカですか?」とよく聞かれますが、おまけで貰った名前も書いていない球根を植えたままにしています。年々花数が増えて、アゲハたちにも評判が良いようです。大きな黒いアゲハがたびたび蜜を吸いに来ます。真っ黒で大きな羽のと、赤と白の模様が入ったもの、前羽が光の加減かグレーか透けているかのように見える黒のアゲハです。市川でも数年前から見られるようになったナガサキアゲハのようです。「尻尾がなくて黒く大きなアゲハ」と聞いていました。今まで飛んでいるのを見かけても確信が持てませんでしたが、今年はガラス越しに毎日のように見ています。夜クーラーを切って網戸にすると暗い庭からユリの強い香りが入ってきます。香りで誰を誘っているのでしょう。クチナシと重なった時期は濃厚な香りの夜でした。
  我が家の塀の外側で、キセルガイを見つけました。今年になって庭で殻を見つけ「珍しいな」と思っていました。自然博の方に聞くと「大町のような自然の森や林にはいますが、住宅地は…、腐葉土についてきたのでは?」とのこと。思い当ります。野菜用に元肥と野菜用の土と腐葉土を買って庭に撒きました。雨上がりに塀の外のキセルガイはいなくなっていました。乾燥した道路より、木や落ち葉がある庭に戻ったかもしれません。小さい貝だけれど「意図しない生物、自然の撹乱」をしてしまいました。

( M.M.) 

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展示室 飼育生物の話題

カブトムシの人工蛹室

 
  カブトムシの幼虫は、土の中で「泥団子」のような固まりを作り、その中に細長いカプセル形のへやを作って蛹(さなぎ)になります。蛹になるための部屋を「蛹室(ようしつ)」と呼び、内側の壁は固められてツルツルしています。一般的なカブトムシの飼い方では「蛹の時期は大変デリケートなので、成虫が出てくるまでそっとしておきましょう」と述べられていますが、当館では蛹室をわざと壊して蛹を「人工蛹室(じんこうようしつ)」に移して展示しています。

  人工蛹室は、園芸用の吸水スポンジで作ります。スポンジといっても砂を固めたようなものなので容易に削ることができ、卵型の部屋を作ってそこに蛹を置きます。蛹になる前の準備段階である「前蛹(ぜんよう)」からでも大丈夫です。スポンジを湿らせた状態にしておけば、ほぼ問題なく成虫になります。上の写真は、左から「前蛹」「なったばかりの白い蛹」「時間が経った茶色い蛹」が並んでいます。

  さまざまな生きものの中でも「蛹」という仕組みは特殊です。この段階を観察しないのはもったいないことです。蛹が動くことや色が濃くなっていくことなど、人工蛹室を使えば家庭でも間近に見ることができます。
 

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わたしの観察ノート 


                                

◆長田谷津より

  •  朝の、静かな観察園は鳥の声が響いていました(5月1日)。キビタキのきれいな歌声のほか、ムシクイ類も何種類かさえずっていました。
  •  エゴノキがちょうど満開になりました(5月14日)。観察園では大きなエゴノキはだいぶ枯れてしまいましたが、新しい株が花をたくさん咲かせるようになりました。
  •  小学生と一緒に観察している時に、モクズガニを見つけました(6月1日)。ちょうど海からやってくる生きもののお話をしたばかりでした。

◆大町より

  •  民家の庭に、シュロの木いっぱいに這わせたテイカカズラがあります。ちょうど満開で、道からもクリーム色の花がよく見えました(5月14日)。
  •  市営霊園の土手は、あちこちブタナの花で黄色に染まっていました(5月22日)。市営霊園に限らず、霊園という環境とブタナは相性がいいようです。馬込霊園でも群生しているところに出会ったことがあります。霊園の草刈りの頻度や刈り方、樹木の有無などが関係しているようです。

◆大柏川第一調節池緑地より

  •  建物に、ツバメの巣がたくさんありました(6月14日)。巣立った子ツバメが飛び交い、巣では2回目の子育ても始まっていました。

◆じゅん菜池緑地より

  •  スダジイの若葉が芽吹き、あわせて花も咲いていました(5月11日)。風が強く道に小さな花がいっぱい落ちていました。
  •  大きな池の周りではコシアキトンボがたくさん見られました(6月11日)。水草を保全している場所では、ショウジョウトンボやオオシオカラトンボも見られました。
  •  斜面沿いに生えている木は傾いているものが多くあります。傾いた木の根元はちょうど雨があたらないので、ありじごくの巣が目立ちました(6月11日)。

◆中山より

  •  小学校の池にはいろいろな水草が植えてあります。ギンヤンマのメスが来ていて、水草に丁寧に卵を産み付けていました(5月31日)

◆江戸川放水路より

  •  トビハゼのようすを見に行きました(6月3日)。いいお天気だったせいもあり、ものすごくたくさん見られました。ヤマトオサガニやチゴガニもたくさんいました。
  •  バーベナの仲間のアレチハナガサが紫色の花をいくつも咲かせていました(6月18日)。帰化植物で、市内ではよく見かけます。
          以上 金子謙一(自然博物館)
         
気象のようす

 5月中旬からは安定した日が続きました。梅雨入りは6月5日でしたが、まとまった雨があまり降りませんでした。

 

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