2016年度 市立市川自然博物館だより10・11月号 通巻166号

市立市川自然博物館 2016年10月発行

     

 いきもの写真館  同じ場所を何度か訪れる
 花屋の花を観察する  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  展示室 飼育生物の話題
 わたしの観察ノート  

 


 

いきもの写真館

アマチャヅルの花

 アマチャヅル アマチャヅルはやや日陰に生育するツル植物です。小さな花は地味ですが拡大すると星形をしていて驚きます。

 

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同じ場所を何度か訪れる 田んぼの1年9月28日

 

【稲刈りが終わった田んぼ】

  今回は、9月のおわりに田んぼを訪れました。稲刈りは大半が終わり、稲の束が竹で組んだ干し場で天日干しされていました(「はざ掛け」などと呼ばれます)。田んぼは再び広々とした空間に戻りました。イネは刈られた後に再び青い葉を伸ばすので、湿った泥にイネの小さな株が規則正しく並んで見えます。一見すると、田植えをしたばかりの春の田んぼにそっくりです。
 

9月28日の田んぼ 泥地に小さなイネの株が規則正しく並ぶ。春の田んぼによく似ている。

 
  ただ春と違うのは、このあとは草取りや水の管理などの作業が行われないことです。そのため、泥の中の種子や根からたくさんの野草が伸びだします。10月の田んぼは、じつは野草が豊富な場所です。春はタネツケバナなど限られた種類が群落を形成しますが、秋は多様性に富んだ植物群落が広がります。田んぼという場所がどれほど自然豊かであるかは、秋にこそ実感できます。

   
【草に覆われた休耕地】 9月15日の休耕地のようす 一面草で覆われている 9月15日の田んぼにできた水たまり 農作業には困るが、生き物にはありがたい 9月15日のはざ掛けのようす スズメ対策のネットがかけてあった  

  毎回訪れている「親子ふれあい農園」にはイネが植えられていない場所もあります。田起こし・代掻きまでは同じですが、その後、水を張ったまま放置されます。草取りなども行われないので、当然ですが草に覆われます。田起こしから半年後、人が手をかけた場所は稲刈り後、また最初の泥の状態に戻り、放置した場所は植物で覆われています。秋の小さな野草にとっては、人が草取りをしてきた場所の方が生育するチャンスがあります。「放っておけば豊かな自然が形成される」という考え方が必ずしも正しくないことは近年広く認識されています。秋の田んぼの豊かな植物群落もまた、稲作を通じて人が手を加えることで生み出された自然と言う事ができます。

【田んぼの浅い水たまり】

  今年は、8月中旬以降、台風がつぎつぎ襲来し雨と風にみまわれました。「親子ふれあい農園」の稲も強風で倒れてしまい、大急ぎで稲刈りが行われたそうです。雨が続いた後の9月15日に訪れた時は、田んぼにはずいぶん水がたまっていました。秋の水たまりは農作業にとっては困りものですが、生き物にとってはその逆です。水たまりがあることでトンボ類の産卵が促されます。冬まで水が残ればニホンアカガエルの産卵場所にもなります。自然の湿地としての田んぼの一面は、秋の田んぼを見るとよくわかります。


 

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花屋の花を観察する センニチコウ

 センニチコウ

  センニチコウ(千日紅)は、花が長持ちするため花壇や鉢植え、切り花などでよく見かけます。名前の通り紅色のものが一般的ですが、今回は白色のセンニチコウを材料に用いました。

  センニチコウは、小さな花が多数集まってひとつの球形の花を構成しています。キク科のタンポポやマメ科のシロツメクサと同じです。球形の花をむしるとひとつずつの花が簡単にはずれ、断面を見ると小さな花の集まりであることがよくわかります(写真上左)。

  むしりとった個々の花は「押し麦」のような形をしています(写真上中)。ですが、それが花としてどういう構造なのかよくわかりません。実はこの「押し麦」の形は、2枚の苞(ほう)に包まれてできています(写真上右)。球状の花の集まりを花らしく見せているのは、この苞の部分にあたります。苞の色が、花の色なのです。

    「押し麦」の形から苞を取り除くと、やっと花の本体にたどりつきます(写真下左)。とは言っても、やはりわかりにくい形です。細長い萼(がく)に生えた毛で全体が包まれています。毛の生えた萼を取り除くと、ようやく花の本質に出会えます。丸い子房(しぼう)と、筒状に伸びた雄しべ、筒の中にある雌しべです。

  結局、花は、種子のもとが収まった子房と花粉が収まった葯(やく:雄しべの本体)が葉状の器官(花びら、萼、苞)に包まれたものだということが、この花を見るとよくわかります。
   

センニチコウの小さな花が集まった全体の花の断面。 センニチコウのひとつずつの花 センニチコウの苞を左右に開いたもの。(下の2つ)
センニチコウの苞を取り除いた花。 センニチコウの丸い子房から伸びた筒状の雄しべ。

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街かど自然たんぽう

東菅野(ひがしすがの)
・秋に楽しむ花と実

 東菅野児童交通公園の南側の道を、キンモクセイの香りに誘われて歩いてみると、垣根ではオレンジ色の花がちょうど満開でした。垣根の先のフェンスでは、いろいろなつる植物が見られました。おなじみのヤブガラシはそろそろ花が終わり、ヘクソカズラはピカピカの丸い実がついていました。フェンスから屋根へと這い上がっている瑠璃色の丸い実は、アオツヅラフジです。まだ緑色の若い実も、たっぷりとついていました。小さいお豆が2個ずつ入ったタンキリマメの実は、これから赤く色づくのが楽しみです。

ぬけがらを調べたらアブラゼミでした  

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くすのきのあるバス通りから 第108 我が家の夏の庭

  9月8日11時頃、真間川の八幡橋のそばでカワセミのような鳥を見ました。上から見ていて、きれいな青い金属のような色の胴体が印象的な小さな鳥が、二羽連れだって冨貴島小の方へ飛んでいきました。しばらくすると一羽戻ってきました。14日2時頃、慈眼橋のそばで一羽飛んでいきました。枝にとまっている姿ならカワセミとわかりますが、どうでしょう。小さなボラが100匹位の群れになってあちこちで泳いでいます。大きな水紋は大きな黒いコイでした。ちぎれたカナダモが上流から流れてきます。カメもいたる所にいます。土のある護岸にはベンケイガニが棲み家の穴のそばにいます。浅間橋の北方側にいつもアオサギがいます。大和橋の近くにもアオサギが時々います。雨の後は土色に濁っていますが、普段は緑色がかった水の色です。引き潮の時、浅間橋の八幡側では音を立てて水が流れます。歩道わきに見慣れないヒルガオが咲いています。マメアサガオだそうです。

( M.M.) 

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展示室 飼育生物の話題

バッタの産卵床

 
  博物館ではバッタ類を120cm幅の大型水槽で飼育展示しています。入手できたバッタをそのつど入れるため種類はいろいろで、トノサマバッタ、クルマバッタモドキ、ショウリョウバッタ、オンブバッタ、コバネイナゴ、ツチイナゴなど、いつも何種類かは見られるようしています。クビキリギスを越冬させたこともあります。

  水槽には、小粒の赤玉土を入れたプラ容器も入れてあります。これが「バッタの産卵床」です。秋にはトノサマバッタやショウリョウバッタなどが産卵します。腹を土に差し込んで卵塊を産みつけ(写真:産卵するトノサマバッタ)ますが、土の上や水槽の床面に産んでしまうこともあります。

  プラ容器は、秋が深まってバッタたちが死んでしまってもそのままにしておきます。冬、水槽は展示としては「お休み」になりますがそれは照明を入れないだけで、そのまま展示室に据え置きます。

  4月ごろ、水槽内には小さなバッタが姿を現します。あわてて餌の青草を入れて展示を再開します。小さなバッタを育て上げて産卵させる「累代飼育」までは取り組んでいませんが、バッタの成長を見ていただける展示になっています。
 

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わたしの観察ノート 


                                      

◆長田谷津より

  •  長田谷津内を散策中、バラ園の周りでニイニイゼミが鳴いているのを確認しました(6月26日)。
          K.H.さん
  •  地面を歩いていたセミの幼虫が、踏まれたら可哀そうと博物館に届きました(7月9日)。事務所の布クロスの壁にとまらせたら夕方のうちに羽化しました。
  •  湿地の草刈りをして休憩していたら、子ダヌキがひょこりと現われました(7月10日)。草むらから園路の下に入り、姿を消しました。
  •  園路の擬木杭にシャチホコガの幼虫が止まっていました(7月14日)。一見しただけでは落ち葉と見分けがつきませんでした。
  •  カブトムシがいっぱいいるクヌギの樹液にルリタテハが来ていました(8月7日)。カナブンもいました。
  •  今年はハッカがよく茂っています(8月24日)。ほかの夏草に負けずに大きな株になり、紫色の花を咲かせ始めました。

◆動物園内より

  •  園内で捕れたイモムシを育てていました(8月12日)。ヤママユにしては小さいし繭の形もおかしいと思っていたら、オオミズアオが羽化しました。
  •  ザリガニが入れてある大型のバットの蓋に、朝、アズマヒキガエルがちょこんと乗っていました(8月14日)。夜行性なのでこれから休もうという感じでした。
          以上 金子謙一(自然博物館)

◆大柏川周辺より

  •  柏井町3丁目、大柏川、浜道周辺、この場所は、ここ数年、クマゼミの鳴き声が確認できる場所です。今年も、確認できました(8月6日)。この他の場所(奉免町周辺)でも鳴いているのを確認しました。
          K.H.さん

◆市川より

  •  6月初めにう化したスズムシが次々と成虫になって、鳴き始めました(8月2日)。頼りなかった鳴き声が日に日にしっかりしてきて暑さを少しやわらげてくれるようです。

◆真間山より

  •  遅い梅雨明けの上、その後もはっきりしない天気が続きましたが、一気に真夏の日射しとなり、南側斜面林でもツクツクボウシが鳴き始めました(8月5日)。
          以上 M.T.さん

◆中山より

  •  エノキの葉っぱに立派なタマムシが止まっていました(7月5日)。住宅地でも木が多いところでは見つかるもんですね。

◆江戸川放水路より

  •  河川敷にある公園の水たまりに、おびただしい数のクロベンケイガニがいました(7月20日)。何も知らずに行くと、かなり驚く数でした。
          以上 金子謙一(自然博物館)
         
気象のようす

 高湿度の日が続き7月28日にやっと梅雨明けしてからは、幾日も猛暑日となり、市川上空を通過した台風もありました。

 

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