平成28年度 市川自然博物館だより 12・1月号 通巻167号

市立市川自然博物館 2016年12月発行

     

 いきもの写真館  同じ場所を何度か訪れる
 花屋の花を観察する  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  展示室 飼育生物の話題
 わたしの観察ノート  

 


 

いきもの写真館
トビハゼの巣穴 調査でトビハゼの巣穴を何百と数えています。毎年。似た形はあったのですが、今年のはまさにハート形でした。  自然博物館所蔵写真

 

最初へ戻る


同じ場所を何度か訪れる 田んぼの1年 11月25日

 

【水が抜けない今年の田んぼ】

 今回は、秋の野草を楽しみに11月に田んぼを訪れました。一度見に行ったら水が多く花がなかったので、再度月末に訪れたのですが状況は同じでした。前日に雪が降って都心では観測史上初めてという11月の積雪がありました。ただその影響だけではなく、秋からずっと水が多い状態だったようです。水がない場所もぬかるんでいて、例年だと11月は運動靴で歩けるところが、今年は長靴が必要な状態でした。期待していた秋の野草はほとんどなく、その分、タネツケバナの青々とした株が一面に広がっていました。秋を飛ばして早春の状態に進んだかのようです。同じくスズメノカタビラの株もよく目につきました。
 

11月25日の田んぼ 水が広くたまり、秋の野草は見られない。円内はタネツケバナの新しい株。
 

【秋に咲く田んぼの野草】
  秋の田んぼで見られる野草は1年草が中心です。「1年草」というのは、種子が発芽して成長し、花が咲いて実を結ぶまでが1年未満と短く、結実後は枯れてしまいタネだけが残る植物のことです。このうち冬を越して生育する場合は「越年草」、生育期間が2年以上におよぶ場合は「2年草」と呼びます。これらに対し「多年草」は、結実後、外見的には枯れたようになっても植物体が死んだわけではなく、翌年以降、同じ株がまた開花・結実する植物を言います(中には、数年〜十数年の生育期間を経てたった1回だけ開花・結実して枯れてしまう1年草的な暮らしをするものもあります)。
  今年は秋の野草が見られませんでしたが、普通ならタマガヤツリ、スズメノトウガラシ、コナギ、キクモや水生シダのミズワラビなどが見られます(下写真)。キクモ以外はすべて1年草です。キクモも、田んぼでは根っこを取り除かれるので、結果的には毎年種子の発芽から始める1年草的な暮らしをしていると思われます。
  1年草の群落は、すぐに多年草の群落にとってかわられます。一度多年草が群落を形成すると、1年草はその陰になって成長が阻害されます。ですから、田んぼで行われる除草作業が1年草の維持に大きく寄与しています。田んぼの1年草の群落は、稲作が放棄されるとたちまち消滅する「はかない」植物群落でもあります。
 

タマガヤツリ(2015年) スズメノトウガラシ(2015年)
コナギ(2015年) キクモ、ミズワラビ(2011年)

 

最初へ戻る


花屋の花を観察する ブルースター

 ブルースターの花

  ブルースターは人気の園芸植物です。青い星形の花は、花瓶に活けるとおしゃれな感じが引き立ちます。ガガイモ科というあまりなじみのないグループに属し、花にもガガイモ科が持つ特徴が備わっています。観察対象としても興味深い花です。

  ブルースターの花を見ると、まず5枚の大きな花びらが目につきます。ガガイモ科などの合弁花類(花びらが一部でくっついて一体化しているグループ)では、花びらを「花冠(かかん)」とも呼びます。つぎに花の中心を見ると、雌しべを取り囲んでいる部品に気づきます。これを「副花冠(ふくかかん)と呼びます。大きな花冠を主とした場合の副という意味です。副花冠が発達していることはガガイモ科の特徴です。下の写真では図1が花の全体、図2が副花冠のアップです。副花冠は、スイセンの花でも発達しています。
 
  図3は花の断面です。雄しべと雌しべは全体で1本の柱のような形状をしています。「ずい柱」と呼び、ラン科でも知られる構造です。花粉もラン科同様、「花粉塊」と呼ぶ塊りにします。図4はつぼみの断面です。図3や図4のようにブルースターの花を断面で見ると、むしろ副花冠が主で、大きな花びらの部分が副にも見えてきます。
 
   

ブルースター図1 ブルースター図2 ブルースター図3 ブルースター図4

最初へ戻る

   


街かど自然たんぽう

東浜(ひがしはま)・広々とした海岸

 小晴日和の日に、東浜を訪れました。ふなばし三番瀬海浜公園の砂浜は、歩き進むと途中から市川市になります。広々とした海岸の風景です。前面の干潟では、シギやチドリの仲間が何かを探して、地面をつついたり歩き回っていました。赤いくちばしの数羽の鳥は、冬になると渡ってくるミヤコドリでした。鳥たちはゆっくりと近づいても飛び立ってしまいますが、すぐ反対(背中)側の同じぐらいの距離の場所に着地しました。

マンション群をバックに、ミヤコドリが飛ぶ風景。市川行徳は右手の方向、対岸の建物は浦安市。矢印の先に、ミヤコドリが8羽いる。  

 最初へ戻る


 

くすのきのあるバス通りから 第109 歩いて見つけた


 葛飾八幡の付近を歩いていると、パキパキと何かを踏みました。あたりを見ると伸び放題の木の辺りにたくさんのドングリがあり、道路に転がってきたものでした。葉はトベラぐらいの大きさでピカピカしていて、枝が茂っていてどのような樹皮かわかりません。自然博の方に聞くと「ウバメガシです。庭木として植えたのでは」とのこと。

 境内のアスファルトの道路の上の黄色い粉は何だろうと思い、上を見上げるとヒマラヤスギがあり、雄花を掃いた後、花粉だけ残ったものでした。

 住宅地を歩くと皇帝ダリアが咲いていました。八幡、東菅野あたりのお屋敷は更地、分譲、今風の新築住宅に変わったところもありますが、崩れそうな木造住宅もあります。菅野児童公園の近くの藪のようになったお宅の庭で、ウグイスの地鳴きを聞きました。

 



ウバメガシのどんぐり


  (M.M.)

 

 最初へ戻る

 


展示室 飼育生物の話題

オオカマキリの卵塊

 
 飼育展示の長所のひとつに、野外ではまず出会えない場面を見ることができる点があります。以前に紹介したカブトムシの蛹もそうですし、飼育ケースの中で餌のハエを食べるニホンアマガエル、メスのおなかに抱えられたアメリカザリガニの子ども、バッタやナナフシの脱皮などもそうです。オオカマキリの産卵シーンも野外では出会えない場面のひとつです。

 今年は9月28日に産卵シーンがありました。展示室の方から「いま産んでるんじゃない?」という声が聞こえるので行ってみると、飼育ケースのふたに真っ白な卵塊ができあがりつつある最中でした。わたしたちがふだん目にするオオカマキリの卵塊は、シュークリームの皮みたいなパサパサした質感です。ですが産むときはフワフワの泡の状態で卵塊を作ります。「作る」という表現は違和感があるかもしれませんが、実際、やわらかな泡を絞り出しながらオオカマキリの卵塊特有の形を、体を上下左右に動かすことで作っていきます。その様子はケーキ職人さんの腕さばきのようです。飼育展示ならではの光景ですが、欠点は、それを見てほしい子どもたちが来ている時に産卵するとは限らない点といえるでしょう。
 

最初へ戻る

 


 

わたしの観察ノート 


                                      

◆長田谷津より

  •  ハシカグサは小さな植物で、ハコベの花くらいの小さな白い花を咲かせます。最近は他の植物に覆われて見えにくくなっていましたが、梅雨前に草刈りをした園路沿いの一部では群生して目立っていました(9月4日)。
  •  自然体験学習の活動で、小学生がザリガニの穴から大きな個体を引っ張り出しました(9月14日)。お腹には卵が山ほどついていました。
  •  園路のすぐわきにあるエゴノキの実付きがよく、ヤマガラが実を取りにせっせと通っていました(9月28日)。双眼鏡なしでもよく見えました。
  •  暖かく晴れた日、園路の擬木にハラビロカマキリが何匹か上がっていました(10月18日)。体色が灰色のものもいました。

◆大町より

  •  畝(うね)を立てて落花生を作った小規模な農園に、カラスが群がっていました(10月13日)。畝を崩して生の落花生をむしり取っていました。あたりには割られた落花生の殻が散乱していました。
          以上 金子謙一(自然博物館)

◆動物園内より

  •  博物館の建物の前にタヌキの糞がありました(9月13日)。たくさんのドングリに混じって、赤いものが見えました。よく見るとザリガニの殻でした。ザリガニ釣り場のザリガニを狙っていたようです。
             宮橋美弥子(自然博物館)

◆真間山より

  •  南側斜面林の民家の植え込みで、体長7センチメートルぐらいのアズマヒキガエルを見ました(9月3日)。猛暑の中でもたくましく生きているんですね。
          M.T.さん

◆坂川旧河口より

  •  新しく掘られた池のほとりでタコノアシが咲いていました(9月6日)。江戸川河川敷の土をひっくり返すと、タコノアシや何種類かのカヤツリグサなどが目覚めて群生します。
  •  堤防のサイクリング路の縁や斜面に、セイバンモロコシが一面に生えていました(10月6日)。最近はススキでもオギでもなくて、似た葉っぱのセイバンモロコシがよく見られます。

◆中山より

  •  10月下旬というのに、イチジクの枝でキボシカミキリを見つけました(10月26日)。博物館の飼育では冬を越したことがあります。耐寒性が強そうです。
          以上 金子謙一
   

◆江戸川放水路より

  •  ダイサギ3羽が間隔をあけて、水の中に立っていました(10月5日)。人が側を通ると飛び立ちますが、またすぐに戻ってきていました。
             宮橋美弥子
         
気象のようす

 酷暑は収まっても暑い日が続きました。秋雨前線などの影響で日照時間が少なく、西日本では記録更新の少なさでした。10月半ばにやっと秋らしくなりました。

 

 最初へ戻る

博物館たよりIndexへ戻る