平成28年度 市川自然博物館だより  2・3月号 通巻168号

市立市川自然博物館 2017年 2月発行

     

 いきもの写真館  同じ場所を何度か訪れる
 花屋の花を観察する  街かど自然探訪
 くすのきのあるバス通りから  展示室 飼育生物の話題
 わたしの観察ノート  

 


 

いきもの写真館
ナナフシの孵化 飼育ケースで孵化しました。脱皮の時と同じように脚をそろえて出てきますが卵の中での姿勢が想像つきません。  自然博物館所蔵写真

 

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同じ場所を何度か訪れる 田んぼの1年  1月24日

 

【すでに花盛りのタネツケバナ】

 今回は、冷たい北風が吹く厳しい冷え込みの日に田んぼを訪れました。空は晴れ、青空が広がっていました。田んぼは、稲刈り後に伸び直した稲穂が白く立ち枯れし、一見すると冬景色そのものでしたが、近づいてみると別の表情がありました。枯れた稲株の間には青々とした植物があちこちに茂っていました。スズメノカタビラという野草で、株によっては花を咲かせていました。さらに注意して見ると、色は黒っぽいものの葉を輪状に広げた株が多くあり、茎が立って白い花を咲かせていました。タネツケバナでした。霜が降りて萎れたり枯れた葉があるものの、花はしっかりと咲き実もできていました。さらにはタガラシの葉も輪状に広がり、中から茎が伸びはじめようとしていました。
 スズメノカタビラもタネツケバナもタガラシも、秋にタネから発芽して成長し、春に花を咲かせた後、タネをこぼして枯れてしまう植物です。ただ春と言っても田んぼの場合は、3月には田起こしがはじまります。そうすると、それまで生えていた植物は砕かれたり土にすき込まれたりします。ですから、田起こし前に開花・結実を経てタネをこぼす必要があります。昨年の秋にはタネツケバナはすでに株になっていました。年明けに開花しているのは、3月の田起こしに合わせたペースなのです。
 

冬の田んぼ タネツケバナ タガラシ
スズメノカタビラ

 

【タネツケバナとアキアカネ】
  タネツケバナの1年を整理すると、田起こし前にタネがこぼれ、そのタネは秋の稲刈りごろまで休眠します。稲刈りが終わったころに発芽し、秋から冬にかけて成長し、早春に花を咲かせて実を結びます。田んぼに水が張られ頻繁に草取りされる春〜秋はタネの状態で泥の中に潜み、農作業が無い時期を成長期にあてているのです。農作業の時期にタネで休眠する植物だけが、田んぼで生きていくことができるわけです。
  一方、これと正反対の暮らしをしている生物もいます。トンボのアキアカネです。アキアカネは秋に産卵し、その卵は田んぼの泥の中で春まで休眠します。そして、代掻きの時に田んぼに水が張られるといっせいに孵化し、水中で餌を食べながら成長します。田んぼの水が抜かれるようになる夏前にはイネの茎で羽化し、飛び立ちます。夏の間は田んぼから離れて生活し、秋、戻ってきて再び産卵します。こちらは、田んぼに水が無い時期は卵の状態で泥の中に潜み、田んぼに水が張られる時期を成長期にあてています。タネツケバナとは、成長期と休眠期が季節的にほぼ反対の関係にあります。
  田んぼは、人の手が入る時期と入らない時期の二つにはっきり分かれます。人の手が入る時期は概ね水が張られ、イネ以外の植物は排除されます。一方、人の手が入らない時期は水が抜かれて湿った泥の場所となり、植物は自由に生えることができます。除草の有無に合わせた生活サイクルを持つのがタネツケバナ、水の有無に合わせた生活サイクルを持つのがアキアカネというわけです。
  ただ、田んぼのうち、あぜと水路は田んぼ本体とはまったく異なる場所になっています。あぜには多年草が多くはえます。水路には、つねに水を必要とする魚類などがいます。あぜの多年草は農作業による除草から退避していると見ることができます。水路の魚は、たとえば田んぼで孵化するドジョウの幼魚などは明らかに水を抜かれた田んぼから退避した存在です。あぜと水路も有効に機能しています。
 

あぜのようす 訪れた日、すでにギシギシの葉が青々と茂り、ハルジオンのロゼットも目立った。 水路のようす 冬でも水が枯れない水路には、さまざまな生きものがひそんでいる。

 

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花屋の花を観察する 最終回のまとめ

 素敵な花に、いつも感謝しています。お花屋さん、ありがとうございます。

  花屋さんで売っている花は、ほとんどが品種改良されています。その結果、多くの場合、花の特徴が強調されています。野草よりも、花の特徴が大きくはっきりしています。ポイントを定めて観察すると、ただ外観をながめるのとは違った姿が見えてきます。


  【花の基本のつくりがわかりやすいアルストロメリア】

アルストロメリア 外花被(がく)と内花被(花弁) アルストロメリア 雄しべの一部と雌しべ アルストロメリア 子房と胚珠

  【いろいろな花の観察ポイント】

アリウム 球形の花序 アンスリウム 赤い大きな苞 ブルースター 中央の副花冠
ピンクッション 突き出た雌しべ ポインセチア 目立つ腺体 デンファレ ずい柱

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街かど自然たんぽう

東国分(ひがしこくぶん)・国分川調節池緑地

 国分川と春木川に挟まれた東国分中学校の周辺では、洪水軽減のための広大な調節池が整備中です。ふだんは水を貯めずに、広場や散策などいろいろな利用をする計画です。浅い水が溜まったゾーンは、コサギやアオサギなどが、水の中をかき混ぜて歩き回りながら餌を探すのに水深がちょうど良いようです。浮かんで泳ぐカモの仲間には少し浅すぎるようで、姿は見えませんでした。枯草の原にはムクドリやタシギがいました。散策路沿いでは、何十羽ものスズメの群れが、人の行き来に合わせて、草むらとフェンスの間を飛びかっていました。

右端の建物が市立東国分中学校。広々とした自然復元ゾーンの水辺はサギが歩ける程の深さ。立ち入りが禁止されているので、鳥がのんびりしている。  

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くすのきのあるバス通りから 第110 小学校の思い出


 八幡の住宅街で門の外にソテツが植えられているのを見ました。小さい木なので葉の中心がのぞけました。毛におおわれた物の中に赤い2センチメートルから3センチメートルの丸い実がいくつもありました。日の出学園の小学校の校庭にソテツの植え込みがあり、「幹に釘を刺すといい」と言われたことが思い出されました。牧野新日本植物図鑑にも「蘇鉄の字から、鉄を与えると元気をとりもどすといわれている」と都市伝説の一種か…。

 小学校の一年から電車通学をし始め、東京の下町と違いオナガが「ギィェー」と鳴くは、松は見上げる高さでたくさんあるし、京成菅野駅から通学路の片側は大きな竹林でした。「あそこにある古井戸からお化けが出るから走らないといけない」と幼稚園から通っている同級生に言われ、本気で信じていました。

 

  (M.M.)

 

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展示室 飼育生物の話題

 

ウーパールーパーの繁殖 幼生

 人からプライベートでいただいたウーパールーパーを繁殖させています。海外の自生地では絶滅が心配されるウーパールーパー(メキシコサラマンダー)も、日本では「かつて流行ったペット」です。いまでも案外多くの家で飼われています。ウーパールーパーはイモリやサンショウウオと同じ、尾のある両生類

です。卵から幼生(おたまじゃくし)が生まれます。幼生は小さくてかわいいので、多くのお客さんに人気があります(上写真)。

 ふつうの両生類は、エラ呼吸の幼生が変態して肺呼吸の成体になります。ただウーパールーパーの場合は「幼形成熟」といって、変態せず幼生のまま繁殖します。この現象は、生き物好きのお客さんにはとても興味深いようです。レアな上陸タイプの成体(右写真)も人気です。

上陸タイプ


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わたしの観察ノート 


                                      

◆長田谷津より

  •  6月に草を刈った園路沿いではカントウヨメナが例年になく花を咲かせました(11月5日)。人が歩いたことで土壌が撹乱されたことが要因と思われます。
  •  ハンノキ林で、枝から枝へカラスウリのツルが飾りのように横に伸びていました(11月9日)。小学生に教えてあげると、赤い実がきれい、と喜んでいました。
  •  展示用に、発根したドングリを拾いました(11月23日)。大きなコナラの木の下にはいっぱいあって、苔むした軟らかい土にしっかりと根を伸ばしていました。
  •  クモに詳しい人と歩きました(12月3日)。低木の葉の裏に隠れていた小さなクモは、ギンメッキゴミグモという名前だと教えてもらいました。
  •  霜柱が立つ冷え込んだ朝、自然観察園の水路からは真っ白い湯気が立ちあがって、あたりが真っ白になりました(12月21日)。陽が射して空気が温められると、湯気は消えていきました。規模は小さいけれど川霧です。正確には蒸気霧と呼ぶそうです。

◆動物園内より

  •  開園前の冷え込んだ朝(12月16日)。動物園内の人工の水路のそばから飛び立ったのは、2羽のアトリでした。

◆大洲より

  •  市川南ビオトープの草刈りをしました(11月16日)。水位を下げたので水中のアメリカザリガニの姿がよく見えました。
          以上 金子謙一(自然博物館)

◆原木より

  •  真間川の岸からノスリが1羽飛び立ち、3羽のハシブトガラスにしつこく追われながら、高く低く飛びまわっていました(1月2日)。
          T.T.さん

◆ふれあい農園より

  •  タシギが3羽いました(11月25日)。稲刈りの終わった田んぼに隠れていました。人が畦を歩いている時はじっとしていましたが、田んぼの中を近づくと飛び立ちました。

◆東浜より

  •  オオバン数羽の群れが、干潟に降りていました(11月25日)。近づくと慌てて、走るように助走して飛び上がり、数メートル離れた水辺に着水しました。
          以上 宮橋美弥子(自然博物館)
   

◆江戸川より

  •  市川橋のたもとの護岸にはオオバンが10羽ほどいました(11月16日)。水ぎわからあまり離れず、テトラポッドの上に乗ったりしていました。
  •  水面にカイツブリの仲間が浮かんでいました(11月16日)。顔の色彩からハジロカイツブリとわかりました。2羽いて、時々水中に潜っていました。
          以上 金子謙一
         
気象のようす

 雨がやや多めの、暖かく秋らしい毎日でした。11月24日に雪が降り、博物館周辺はうっすら積りました。12月22日は強い南風が吹き、気温が上昇しました。糸魚川市で大規模な火災が発生しました。

 

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