◆  市川自然博物館だより  ◆

8・9月号

特集 図解・トビハゼの礼儀作法

市立市川自然博物館  1992年8月1日発行

特集記事 街かど自然探訪 市川のこん虫 むかしの市川 行徳野鳥観察舎だより 観察ノート



特集記事



特集 『図解・トビハゼの礼儀作法』


  「可愛い」「ユーモラス」「ユニーク」.... 多くの人が、こんな形容詞をつけて、トビハゼのことを語ります。野外で見るトビハゼの行動やしぐさは、リズミカルで、変化に富んでいます。
  巣をつくったりダンスをする魚は、いろいろ知られています。しかし、水に潜ったり、水槽で飼育することなしに、まるで鳥を見るようにして行動を観察できる魚といえば、なんといってもトビハゼなのです。

1.歩行とジャンプ

胸びれ・腹びれ・尾で、腕立て伏せのように体を支え、胸びれで前進する。ジャンプは、おもに尾の力による。
歩行とジャンプ(sz211.gif、約2KB)
2.泳ぎと水面ジャンプ

ふだんは犬かきのように泳ぐが、潜水で速く泳ぐこともある。満潮時に人が近づくと、水面を跳ねて逃げる。
泳ぎと水面ジャンプ(sz212.gif、約2KB)
3.はりつき

飼育下では水槽のガラスに垂直にはりつくが、野外では稀。斜めの護岸などには、ごく普通に、はりつく。
はりつき(sz213.gif、約2KB)
4.泥シャワー

体表から出る排泄物(アンモニアなど)を洗い流したり、乾いた皮膚をしめらせるためと思われる。
泥シャワー(sz214.gif、約2KB)
5.えらぶたの膨らませ

泥を口からはいた後や、歩行中など、いろいろな場面でえらぶたを膨らませるが、その目的はよくわからない。
えらぶたの膨らませ(sz215.gif、約1KB)
6.採餌

獲物に飛びつき、もぐもぐするしぐさは頻繁にあるが、獲物が何かは、まず見えない。ヨコエビが多いという。
採餌(sz216.gif、約2KB)
7.巣穴ほり

口で巣穴を掘り、掘った泥を塊にして吐き出す。雄が掘るとされているが、雌がまったく掘らないかは疑問。
巣穴ほり(sz217.gif、約2KB)
8.求愛ジャンプ
(跳躍誇示) 


繁殖期だけの行動。干潟上で真上にジャンプする。オスが周囲のメスに自分の存在をアピールするらしい。
求愛ジャンプ(sz218.gif、約2KB)
9.体側誇示

背びれを立て、体の側面を見せあう求愛ダンス。しかし、自分の巣穴の周囲に侵入した他のオスやカニと出会った場合も、似たような行動をとる。この場合は、明らかに攻撃的にふるまう。
体側誇示(sz219.gif、約2KB)
10.誘導と追随

体側誇示のあと、雄は自分の巣穴へ雌を誘導し、雌は追随する。雌雄の入巣後、雌は巣穴の中で産卵する。
誘導と追随(sz21a.gif、約2KB)

参考文献
 道津善衛・的場実;有明海に跳ねる−ムツゴロウとトビハゼの行動,アニマVol.53,(1977),pp.15 〜23.
 田村修;陸に上がった魚の謎,アニマVol.53,(1977),pp.24 〜28.

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街かど自然探訪



カット(sz21b.gif、約14KB)

柏井町・市民キャンプ場周辺の雑木林

  柏井町から、となりの船橋市藤原町にかけて広がる大きな林は、雑木林です。雑木林は、かつて、人々の生活に身近な存在でした。落ち葉や小枝を集めて燃料や肥料にし、昆虫や野鳥のすみかとしても、また、風景としても、かつての市川になじんだ風景でした。
  市街化が進むにつれ、市内の林はずいぶん姿を消しました。しかし、斜面林が多い中で、平地の林がまとまって残っているのはうれしいことです。手入れの行き届いた(行き届きすぎ?)林内は、特に春先は明るく見通しも良く、散策してみたいという好奇心をかきたててくれます。それが、本来の雑木林の姿かもしれません。

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市川のこん虫




ヒヌマイトトンボ

カット(sz21c.gif、約4KB)   汽水域だけに生息する日本特産種・ヒヌマイトトンボの生息地が、市内の江戸川下流部にあります。
  そこは、高さ2mを超すヨシが生い茂る、うっそうとした環境です。足元は柔らかな泥地で、場所によっては、ひざ上までもぐってしまいます。この、近づくことさえ困難な『自然の要塞』が、ヒヌマイトトンボを守っています。
  体長3cmほどのヒヌマイトトンボの飛翔は弱々しく、ヨシが風を遮っていなかったら、たちまち吹き飛ばされてしまいます。幼虫や、その羽化を見たのは、ヨシ原の奥にある浅い水路です。流れや波の影響のない、静かな水路です。最盛期には、たくさんのヒヌマイトトンボが、林立するヨシの根元や水面を、フワフワと、楽しげに飛び回るのです。

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むかしの市川




イナの大群

  水泳やハゼ釣りに興じた江戸川も、秋になると、次第に足も遠のき、川辺で遊ぶこともなくなります。そんなある日、イナの大群がやって来たという情報が、子供から子供へと伝わってきました。
  イナというのは、ボラになる前の名称です。ボラは出世魚で、18cm以内のものをオボコ、18cmから30cm以内のものをイナ、30cm以上のものをボラとよんでいます。イナは、秋になると海に下るためなのか、群れをつくって泳ぎます。
  私も早速、釣場へかけつけました。すでに十数人の大供、子供が、川の中へ立ち込んで竿をのばしています。何人かの人が20cmから30cmのイナを釣り上げていました。様子を見ると、イナは川の流れにのって、川の表層を群泳しているようで、その群れの中へ餌を流し込むことが必要です。そのために川の中に立ち込んで釣っていることがわかりました。
  釣上げている人は、どれも立派な長竿で、餌も最良のイトメです。私の短いのべ竿では、とてもとどきません。餌の良否も関係しているようで、ミミズ餌をつけた私の浮木(うき)は、最後までぴくりともしませんでした。小学校2年生の頃(昭和9年頃)の体験です。
(博物館指導員 大野景徳 記)  

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行徳野鳥観察舎だより



カット(sz21d.gif、約7KB)

青 潮

  暑い日盛り、夕風が吹いてほっとするひとときも熱帯夜で帳消し。こんな夏のさなかの涼しい雨天はありがたい。
  ところが雨・気温の低下・北風の条件がそろうと東京湾の奥部では必ず青潮が出る。海底の深みにたまった無酸素水が湧昇する現象で、広い範囲にわたって魚や貝の大量死が起こる。
  6月9日、はやばやと発生した青潮のため、保護区や江戸川放水路では多数の魚が死んだ。コノシロをはじめ1m近いアカエイ、スズキ、ウナギまで。サギやカワウは弱った魚の大盤振舞いで大宴会さながらだったが、干潟一面に散乱する魚の死体は悲惨そのもの。酸素をもとめ干潟から伸び上がったまま死んだマテガイの群れはもっと哀れな光景だった。

(文と絵:行徳野鳥観察舎 蓮尾純子 )

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わたしの観察ノート No.4


☆セミの異変!?

  気づかれた方も、ずいぶんいらっしゃると思いますが、今年(1992年)はセミの様子が変です。
例年の鳴き声のパターンは、だいたい次のようです。
  1. 7月初めころは、ニイニイゼミの声がよく聞かれる。
  2. 梅雨が明けると、アブラゼミ・ミンミンゼミ・ヒグラシが本格的に鳴きだす。
  3. このころには、ニイニイゼミの声は、ほとんど聞こえない。
  4. お盆を過ぎたころから、ツクツクホウシが本格的に鳴きはじめる。
今年、特に変だったのは次のような点です。
  1. 初鳴きが全体に遅い
  2. アブラゼミ・ミンミンゼミがいつになっても、本格的に鳴きださない
     市内各所で普通に見られ数も多いアブラゼミや、市内の林で普通なミンミンゼミの声が、あまり聞かれないような気がします。

  3. いつまでもニイニイゼミの声がする
     梅雨明けごろには聞こえなくなるニイニイゼミの声が、梅雨明け後もよく聞かれます。アブラゼミなどの声が少ない分、かき消されずにいるのでしょうか。

『いちかわの自然調査』に寄せられた、みなさんの記録から...

アブラゼミ7/14(初鳴き)大町糠信政衛さん
7/19(初鳴き)国府台3丁目秋元久枝さん
7/26若宮2丁目金田武士さん
ミンミンゼミ7/21大野町3丁目作田修二さん
7/29(初鳴き)国府台3丁目秋元久枝さん
ヒグラシ7/19国分4丁目本田和子さん
7/23(初鳴き)国府台3丁目秋元久枝さん

◎今年、アブラゼミが少ないのは、去年や今年の気候に原因があるのかもしれません。でも、何年か前にもこんなことがあったような気もします。また、今年少ないということは、産卵数も少ないと考えられるわけで、何年か先に同じような年があるかもしれません。あるいは、単に遅れているだけで、8月になったら急に鳴きだすかもしれません。
 今年のセミの鳴き声の状況について、みなさまは、どのように感じられましたか?

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