◆  市川自然博物館だより  ◆

10・11月号

特集 赤とんぼたちの個性

市立市川自然博物館  1992年10月1日発行

特集記事 街かど自然探訪 市川のこん虫 むかしの市川 行徳野鳥観察舎だより 観察ノート



特集記事



特集 赤とんぼたちの個性

捕らえ、観察し、放す〜〜キャッチ&リリースのすすめ

  『赤とんぼ』−−日本人の心に響き、風景までも連想させるこの名前は、体が赤くなるトンボの総称です。例えば、アカトンボ属というグループには、日本で21種類ものトンボが含まれています。それらは、模様も大きさも、生態も異なるトンボたちです。捕らえ、観察し、放す−−飛んでいる時には見えなかった彼らの個性は、手にとって初めて見えてきます。今回は、市内で見られる『赤とんぼ』の特徴を図解しました。

種名と生態 顔と胸の
前面の模様
胸の側面
の模様
翅の模様 腹の先端の形
(♂側面 ♀底面)
ナツアカネ

初夏ころから黄褐色の個体が目につく。秋になると顔まで赤く染まる。中型・市内に多い。
ナツアカネ(sz221.gif、約5KB)
アキアカネ

梅雨に出現。夏は高地に移動し、秋に戻ってくる。腹が赤化する。中型・市内で普通。
アキアカネ(sz222.gif、約5KB)
ノシメトンボ

夏〜秋、林縁の枝先などで見ることが多い。全体が暗赤色に染まる。大型・市内で普通。
ノシメトンボ(sz223.gif、約5KB)
コノシメトンボ

ノシメトンボと似た環境にすむが、秋、全身が鮮やかな赤に染まる。中型・市内では稀。
コノシメトンボ(sz224.gif、約5KB)
マイコアカネ

夏〜秋、湿地と周辺の林に生息。顔が緑青色、腹が鮮赤色で美しい。小型・市内では稀。
マイコアカネ(sz225.gif、約5KB)
マユタテアカネ

夏〜秋、湿地と周辺の林に生息。翅端に褐色の帯が出る個体もいる。小型・市内で極稀。
マユタテアカネ(sz226.gif、約5KB)
ヒメアカネ

夏〜秋、湿地と周辺の林に生息。マユタテアカネに似る。鮮赤色になる小型・市内で極稀。
ヒメアカネ(sz227.gif、約5KB)
ミヤマアカネ

低山帯〜山麓部に生息し、市内では偶発的に観察される。翅の帯が特徴中型・市内で極稀。
ミヤマアカネ(sz228.gif、約5KB)
ウスバキトンボ

上記8種と別属で赤化もしないが、農地や河原でよく群舞している。大型・市内に多い。
ウスバキトンボ(sz229.gif、約5KB)

参考文献:浜田 康・井上 清 『日本産トンボ大図鑑』(講談社)

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街かど自然探訪



カット(sz22a.gif、約5KB)

加藤新田・湾岸道路の帰化植物 

  加藤新田をはじめ高浜町・千鳥町・塩浜1〜3丁目の一帯は、自然豊かな干潟を埋め立ててつくった造成地で、多くの工場が連なる工業地帯です。そこを貫く湾岸道路は首都圏の産業を支える物流上の大動脈で、連日、たくさんのトラックやトレーラーが行き来しています。
  昔から、人や物資の流通経路は、海外からの生物の進入経路として知られていました。古くは線路や港が主要経路でしたが、今日、特に植物の進入経路として道路の果たす役割は大きくなっているようです。湾岸道路沿いでも、マンテマ、ウラジロチチコグサ、ハナヤエムグラ等の進入が近年になって発見されました。

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市川のこん虫




ミズカマキリ

カット(sz22b.gif、約2KB)   ミズカマキリは、分類上はカマキリと縁遠く、また、鎌のように大きな前足や、三角形の顔もしていないので、ちょっと見た限りでは「水中にすむカマキリ」という名はピンときません。しかし、飼育しているミズカマキリに餌を与えた時の振る舞いは、カマキリの動きそのものです。
  小さなおたまじゃくしを捕らえ、その体液を吸っているそばから、左右の前足を巧みに、しかも素早く振り回して右に1匹、左に1匹と捕らえるのです。この時、細長い前足は水の抵抗など感じないかのように、鎌のごとくに動かされます。
  市内でのミズカマキリの生息状況は、よくわかっていません。しかし、プール開き前のプールで、ミズカマキリやその他の水生昆虫が観察されるといわれています。

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むかしの市川




オオムラサキ

カット(sz22c.gif、約4KB)   中学生の時(昭和15年頃) 、夏休みの自由研究に昆虫採集をしたことがあります。捕虫網を持ち、国府台や里見公園に出かけ、ゴマダラチョウやコミスジなどを追いかけているうちに、美しい大形の蝶が、高い木の梢を旋回しているのを見つけました。オオムラサキです。
  高いところばかり飛んでいて、なかなか下には降りてきません。いろいろ考えた末、厚いボール紙を、てのひら大に切って下から投げ上げてみました。命中すれば落ちてくると思ったのです。ところが、実に奇妙なことが起ったのです。オオムラサキは飛んできたボール紙を追いかけ、しかも落下するボール紙を追うように舞い降りてくるではありませんか。私は、まんまと捕虫網の中にオオムラサキを捕らえることができました。
  オオムラサキの雄は、なわばりを持ち、ほかの蝶が近寄ると追いはらう性質があることを知ったのは後のことでした。オオムラサキは、タテハチョウ科で、1957年に日本の国蝶に選ばれました。今では、ほとんど見かけなくなりましたが、私が中学生の頃には、里見公園周辺にかなりいたのです。
(博物館指導員 大野景徳 記)  

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行徳野鳥観察舎だより



夏の終わりに

カット(sz22d.gif、約1KB)   8月末から9月初めにかけての10日あまりの時期は、夏と秋の交代がはっきりと目につく。夏鳥のコアジサシがさっと姿を消し、冬鳥のコガモが8月30日にもう渡ってきた。ツバメの大半は渡去し、カモが日増しに増えている。9月6日から気温が一挙に下がり、虫の大合唱がひときわみごとになった。
  日照り続きの今夏。保護区内の池のいくつかはからからに乾き、無惨なひび割れを見せている。わずかに水が残る深みには、渡ってきたばかりのコガモが群れる。こういう時に心配なのがボツリヌス中毒。酸欠が続いた泥中で増殖した菌の毒素に水鳥がやられる。9月6日、急性中毒のカルガモとオオバンが同じ池で拾われた。雨よ降れ!ヒキガエルやマスクラットと一緒に雨乞いをしたい気分。

(文と絵:行徳野鳥観察舎 蓮尾純子 )

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わたしの観察ノート No.4


1.今年のセミの鳴き声について
  前号の続報です。アブラゼミについて寄せられた情報を以下に整理しました。

八幡
7/14(初鳴)大町(糠信政衛さん)
7/19(初鳴)国府台(秋元久枝さん)
7/20(初鳴)北国分(松江佳子さん)
7/26 若宮(金田武士さん)
8/9(初鳴)行徳駅前(八角美智子さん)
8/12(初鳴)新浜(坂本馨さん)
8/12 (鈴木和子さん)

また、
「アブラゼミの初鳴きが、例年より遅い」(糠信政衛さん)
「セミの声が少ないようです」(松江佳子さん)
「8月12日、初めて鳴きました。1匹だけのようです。故郷・富山にくらべ、ここではセミの声がきこえなくて驚いています」(坂本馨さん)
という声も寄せられました。

  博物館周辺では、7月22日に初鳴きが聞かれ、その後、アブラゼミはずっと低調だったのですが、8月5日に暑くなったときに盛んに鳴き、8月8日以降、やっと、いつもの夏らしく、アブラゼミとミンミンゼミが盛んに鳴くようになりました。
  感覚的には、気温が低かった前半は低調で、その分、お盆前後から、残暑の厳しかった後半にかけて、取り戻した感じでした。

2.特報・再生干潟にトビハゼのこどもが戻ってきた!
  新聞等で報道されたので皆さん御存知かと思いますが、昨年(1991年)、江戸川放水路で、護岸工事に合わせて、トビハゼが生息しやすい干潟を再生する試みがなされました。その再生干潟に、今年6月、保護飼育していたトビハゼ 100匹を放流し、7月にはそれらが巣穴をつくるまでになりました。
  そして、9月10日、再生干潟に今年生まれの幼魚が出現したのです。トビハゼは、5〜7月に孵化したのち、しばらく浮遊生活を送ります。その後、小さなトビハゼの姿となって干潟に戻ってくるのです。
  再生干潟には、現在、数千匹の幼魚が生息していると推定されます。中には、この干潟でなく、行徳橋付近の生息地で生まれたものもいるでしょう。再生干潟の周辺部ではほとんど見られないので、よほど再生干潟が気に入ったみたいです。たくさんのトビハゼが、無事、冬を越し、来年は、再生干潟の全域で求愛ダンスや巣穴が見られればいいなと思います。

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