◆  市川自然博物館だより  ◆

12・1月号

市立市川自然博物館  1992年12月1日発行

特集記事 街かど自然探訪 市川のこん虫 むかしの市川 行徳野鳥観察舎だより 観察ノート

 

報告 フクロウの巣箱

巣箱から顔を見せるフクロウのひな



特集記事



報告 フクロウの巣箱

箱をかける

  自然博物館に隣接する観察園では、フクロウの鳴き声やペリット等の生活の痕跡が頻繁に観察され、何度か姿も目撃されていました。餌となるアカネズミも観察園や周辺の林には、数多く生息しています。しかし、以前営巣していた農家の大樹でも近年営巣や繁殖が確認されていません。
  こうした状況をふまえて、条件さえ整えば、観察園にフクロウが定着するのではないかと考え、巣に適した樹洞がない観察園に巣箱の設置を計画しました。
 フクロウの巣箱は、直径60cm程の空洞丸太を利用したものや、一辺30cmほどのベニヤ板製の箱などで、成功の報告がされています。自然博物館では、清掃工場で集めてもらった大型のスピーカーボックスを改造して、巣箱を作りました。
  巣箱は、1990年12月と91年2月に観察園の東側と西側の斜面林にそれぞれ1か所づつ、樹高15m、直径40〜50cmのシラカシとイヌシデに地上から5m程の高さに取り付けました。

1991年−フクロウの来訪

  91年4月6日、西斜面の巣箱にフクロウが入っているのを初めて観察しました。5月17日までに巣箱内とは別にもう1羽が観察園にいることも確認しました。しかし、繁殖しませんでした。巣箱の設置が、3月頃から始まるフクロウの繁殖期には遅かったようです。巣箱を降ろしてみたところ、卵やひな、糞などの痕跡はありませんでした。

1992年−ひなが巣立った

  91年にはフクロウが来訪せず、そのまま放置してあった東斜面の巣箱で、今年(1992年)はフクロウが繁殖に成功し、2羽のひなが巣立ちしました。

餌のなぞ

  巣箱でのフクロウの繁殖が成功したのは、営巣する樹洞のかわりが見つかったばかりでなく、大切な条件である餌の確保が、この地域でどうにかできたからだと考えられます。しかし、餌の条件に恵まれた地域では、フクロウは4〜5羽のヒナを育て上げる例があり、それに比べると観察園は、かなり厳しい条件といえるでしょう。
  今回はペリット等の回収をしなかったので、観察園で育った2羽に、何がどれくらい与えられていたのか、わかっていません。一般には、アカネズミ等の野ネズミが餌の中心とされていますが、餌が不足するとキジバトなどの鳥類やカエル、トカゲなども餌にすると報告されています。もしそうであるとすると、餌の狩場は意外に広範囲にわたっているかもしれません。
  今後、観察園と周辺の地域で、フクロウがどんな餌を採っているのかを知ることが大きな課題です。それによってフクロウと観察園のかかわり、観察園とその周辺の都市化との関係もより分かるようになるでしょう。
参考文献
浅見ベートベン;古木の洞に育つ, アニマNo.215(1990),pp.19-23
アニマ編集部;鳥の巣づくりを手伝う,アニマNo.175(1987),pp.46-48
阿部學;食料をめぐるフクロウの生態,野鳥No.498(1988),pp.14-17
大塚利昭;ベニヤ板で巣箱をつくってみた,野鳥No.498(1988),pp.20-21
宮崎学;フクロウ,平凡社(1989)

 
1992年の主な観察記録
月日 時刻  観察内容
2/28   東斜面の巣箱付近のスギ林でフクロウの声と姿を確認。
3/11 8:50 巣箱の入口の穴は大きく削り取られていて、フクロウが中でじっとしているのを初確認。もしかしたら抱卵中?
4/24 7:00 巣にひな2、親鳥1を確認! ひなは、まだ全身灰色で、1羽は風切羽の一部が茶色になっているようだ。
5/04 7:30 巣から顔をみせるひな1。写真を撮影。
5/08 7:30 巣にひなの姿が確認できなかった。巣立ちしているのか?
9:00 巣のある林内で、警戒の声を出す成鳥1を目撃。
5/09 7:30 林内で、巣立った幼鳥1を発見。全身灰白色で風切羽と尾羽は、大人の羽が見られる。じっとサワラの枝にとまっている姿は、体長30cm位に見えた。ハエが幼鳥の顔にたかってうるさそうであった。
5/16 7:00 シラカシの枝によりそってとまっている幼鳥2を目撃。
5/20 7:30 雄の「ホーホー、ホロツク、ホー」という一声と、雌の頻繁な警戒声が離れた場所から聞こえた。
5/21 7:00 成鳥1、幼鳥1。幼鳥(たぶん弟?)の風切羽は、ほぼ完全だが、尾羽はまだ短く、子は綿毛で覆われている。
7:30 幼鳥が、枝から枝へ数メートル飛ぶ。
5/25 7:00 成鳥、幼鳥とも確認できない。
5/29 18:15 市川市営霊園わきの自然観察園せせらぎゾーンの道で、成鳥1羽目撃。

 最初へ戻る




街かど自然探訪



カット(sz231.gif、約2KB)

上妙典・海岸植物オカヒジキ

  江戸川放水路の左右両岸に、上妙典という地名があります。このうち集落は右岸(行徳側)にあり、左岸(田尻側)は飛び地の耕地だったと思われます。この2つの上妙典のうち、左岸の江戸川放水路内に、海岸植物オカヒジキの生育地があります。
  オカヒジキは、海岸の砂浜に普通にはえる高さ30cmほどのアカザ科の草です。干潟とヨシ原が多い放水路ですが、湾岸道路下などに小さな砂浜があり、そこに生育しています。若葉をゆでると、おいしくて、色も美しいとされています。興味のある方は、放水路で採るのではなく、どうかスーパーでお買い求め下さい。

 最初へ戻る




市川のこん虫




スズメバチ

カット(sz232.gif、約12KB)   恐ろしさばかりが強調されるスズメバチですが、その生活は大胆かつ繊細で、魅力にあふれています。
  無事に冬を越した雌(女王)1匹から始まるその年の新生活は、女王が次々に産む雌(働きバチ)の精力的な活動で拡大し、やがて数千匹の大家族が形成されます。そして夏の終わりに雄、続いて女王になる未来をもつ数十匹の雌が誕生し、秋、若き女王たちが巣を離れると、数千匹の大家族の役割は、突然、終わってしまいます。
  1匹の女王は、数十匹の若い女王を残すために数千匹の働きバチを産み、働きバチは夏の風雨に耐える巣を、最高の技術で建築したのです。その巣の強度と快適さは、空き家になった巣をちゃっかり利用したスズメが証明していて、その巣は、博物館の軒下に現在もぶら下がっています。
(参考文献:『日本蜂類生態図鑑』 岩田久二雄 著 講談社)

 最初へ戻る




むかしの市川




砂とり船

カット(sz233.gif、約2KB)   私が子どもの頃は、江戸川の水はとてもきれいで、川底にもゴミやヘドロは見えませんでした。利根川の上流から運ばれてきた小石は、しだいに粒が小さくなり、市川あたりでは、細かい砂となって川底につもります。この川砂を採取することを職業としている人達がありました。
  江戸川にかかる京成電車の鉄橋のあたりから市川橋あたりにかけて、いつも砂とり船が川砂をとっていました。川の中ほどに伝馬船(てんません)という和船を止め舟ばたに立って長い竹竿の先に鋤簾(じょれん)という道具をつけて川砂をかきとるのです。
  引き上げた川砂は、船の中に台形につみ上げられます。砂からしぼれる水が船底にたまるので、手こぎのポンプで排水していました。砂がいっぱいになると船を川岸に止め、こんどは”ぱい助”という竹で編んだ薄いザルのようなものに砂を盛り、天びん棒の両端になわでさげ、船からかつぎ上げるのです。アリが物を運んでいるような、気の遠くなるような重労働です。このようにして集められた川砂は、天日乾燥されて、荷馬車やトラックで出荷されていました。
(博物館指導員 大野景徳 記)  

 最初へ戻る




行徳野鳥観察舎だより



ウグイスがいっぱい

カット(sz234.gif、約2KB)   チャッ、チャッチャッ、と舌打ちのような声がする。竹やぶの中で1羽、もっと奥でもう1羽、アシのしげみからも1羽。ウグイスだ。このあたりでは冬鳥で、ここ数日来急に数がふえ、外に出ると必ず声が聞かれる。
  ウグイスはちょっとしたやぶさえあれば市街地にもいるが、姿を見る機会はあまりない。いわゆるウグイス色とはほど遠い灰褐色の地味な小鳥で、せわしく枝移りしたり、体ごと尾をぱっぱっと横にふる動作は特徴的だ。しげみの中で舌打ちしたような声がしたら、立ち止まってじっとしていると、ウグイスの方から人間をのぞきに出てくることがある。
  晩秋。渡来したてであたりにあふれかえっているウグイスも、冬の到来とともに餌をもとめて分散してゆくことだろう。

(文と絵:行徳野鳥観察舎 蓮尾純子 )

 最初へ戻る




わたしの観察ノート No.5



☆今年の珍しい話題

1.サンゴタツ
  江戸川放水路沖で6月7日に投網に掛かったタツノオトシゴの一種を、妙典在住の田島光雄さんが博物館に届けてくださいました。今夏の企画展で飼育展示中、同じ水槽の何者かに食べられてしまったため標本は残っていませんが、生時に撮影した写真から判断すると、サンゴタツという種類のようです。サンゴタツは、函館以南、本州西部まで分布し、内湾のアマモ帯に多く生息します。

2.クマゼミ
  西南日本に多い日本最大のせみ・クマゼミは、近年、都内で頻繁に観察されるようになったみたいですが、博物館にも、市内での観察報告が昨年から届けられています。

1992年の観察報告
・8月14日 行徳駅前の東根公園(89年以降、毎年の確認)   
行徳駅前在住 八角美智枝さん 
・8月24日 北国分町の竹やぶで   
北国分町在住 松江佳子さん 
・8月30日、9月2日 大町自然観察園   
船橋市在住 阿部則雄さん 

3.オオアオイトトンボ
  国府台在住の秋元久枝さんから、「いままで見たことのないトンボか、カゲロウを見ました」というお便りをいただきました。そこに書かれていた特徴や外観から、それはオオアオイトトンボであることがわかりました。
  オオアオイトトンボは、緑色の金属光沢が美しいトンボで、湿地や池と雑木林が組み合わさった環境に生息します。船橋市には、斜面林の小道を上がっていくと、足元から沸き立つようにオオアオイトトンボが飛び上がる場所が残っていますが、市川市内では、大町自然観察園でも、それほど多くは見られません。

4.キイトトンボとアカタテハ
  菅野在住の山崎剛介さんから、7月下旬キイトトンボ、10月25日アカタテハを、いずれも菅野で観察したという報告をいただきました。キイトトンボは、名前のとおり全身が黄色の鮮やかなイトトンボで、水田や湿地で普通に見られますが、市内ではそういう環境の減少とともに、目にすることが少なくなりました。アカタテハも、最近は、ずいぶん見る機会が減ったような気がします。

 最初へ戻る


博物館たよりIndexへ戻る