◆  市川自然博物館だより  ◆

2・3月号

特集:冬に楽しむ干潟の生物

市立市川自然博物館  1993年2月1日発行

特集記事 街かど自然探訪 市川のこん虫 むかしの市川 行徳野鳥観察舎だより 観察ノート



特集記事



特集・冬に楽しむ干潟の生物−プラ水槽を使ったかんたん飼育

江戸川放水路のイソギンチャク・ウミウシ・ワレカラなど

水槽をはうミドリアマモウミウシ(sz240.gif、約43KB)
  本やTVで世界中の自然が見られるようになった現在でも、身近なところにいながら見過ごされている生き物が数多くいます。江戸川放水路にも、そんな見知らぬ生き物がくらしています。それは、ほんの小さな生き物です。ここでは、それらを観察するための、ちょっとした工夫を紹介しましょう。

水槽をはうミドリアマモウミウシ→


水槽のセット

  水槽には、割れないプラスチック水槽を用います。周辺機器には、エアポンプとそれに接続して使用する簡易式底面濾過装置を用います。濾過装置は、水槽の大きさにあったものを選びます。いずれもペットショップなどで手に入ります。それらをセットした水槽に水槽用の砂利や川砂を敷けば完了です。水は、生物といっしょに江戸川放水路で汲んできます。人工海水でも構いません。水槽には、まわりに塩分が飛散しないようにビニールで被いをします。

水槽の様子(sz241.gif、約9KB)


採 集

  狙って採集するのは容易ではありません。そこで、カキ殻や海藻の塊を採集します。たいてい、何かが潜んでいます。また、イソギンチャクなどは現場で見つけて掘ることもできます。採集は2〜3月の潮が昼間引いている日に行います。釣り道具店などで潮を見表を入手して、引き潮の時刻を調べると、といいでしょう。

ふだんの管理

  室内の涼しい場所で観察します。1〜2週間でほとんど死んでしまうので、餌は不用です。もし長く生きるようなら、水分の蒸発で塩分濃度が上がるので、汲み置きの真水を足して、水位を保ちます。

水槽で見られる生き物(sz242.gif、約7KB)

こんな生物が……

ワレカラの一種(甲殻類・端脚目)
  エビやカニの親類で、海藻の塊のなかに海藻そっくりの姿で潜んでいます。注意して探してみてください。ワレカラは海藻の上を尺取り虫のように慎重に歩き、魚などの外敵の目をあざむきます。時々、子を保護する育房がふくらんだ雌が見られます。

ミドリアマモウミウシ(腹足類・裸鰓目)
  海藻のハネモに潜む鮮やかな緑色のウミウシです。水槽では活発に這い回り、渦巻状の卵塊をあちこちに産みつけます。

アカエラミノウミウシ(腹足類・裸鰓目)
  美しいピンク色のウミウシです。小さなイソギンチャクなどを食べ、その毒の刺胞を背のひらひら(鰓)に仕込んで、魚などから身を守る武器にします。

ユウレイボヤ(尾索類・ホヤ目)
  食用にするマボヤと同じホヤ目です。夜間ぼんやり発光する透明な体をもち、カキ殻からいつのまにか伸びて、長さ10cmにもなることがあります。

タテジマイソギンチャク (花虫類・イソギンチャク目)
  カキ殻などについていたものが、いつのまにか水槽のあちこちで触手をひらひらさせるようになります。イソギンチャクは、結構歩くのです。水槽でもわりに長生きし、つまんで与えた魚肉片を触手を縮めて飲み込む姿は可愛いものです。


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街かど自然探訪



カット(sz243.gif、約5KB)

河原・タコノアシとは?

  河川敷は、サクラソウやタチスミレなど、ほかの環境では見られない植物が多く生育するところです。しかし、ほぼ完璧に護岸工事が施された江戸川では、一部を除き、かつての植物群落を見ることはできません。
  タコノアシは、実のついた花序の枝ぶりが、海にすむタコを逆さに見た姿を連想させる植物です。湿地に多く生育し、江戸川でも上流から点々と姿を見ることができます。しかし、1か所に生育する数は少なく、河原の江戸川沿いの湿地(行徳可動堰直上)でも、十株程しか見られません。護岸工事で姿を消したものの、上流から種子が流れてきて復活したのでしょう。

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市川のこん虫




シオヤトンボ

カット(sz244.gif、約3KB)   ヤンマ類の夏、アカネ類の秋というように、トンボというと夏や秋の印象があります。しかし、たとえば1992年の大町自然観察園の場合、はじめてトンボの成虫が確認されたのは4/15のシオヤトンボで、その後、4/23にアオモンイトトンボ、4/27にシオカラトンボが確認され、成虫越冬のホソミオツネントンボも4/20に目撃されました。
  トンボの出現は4月からはじまっています。そしてシオヤトンボは、春のトンボの代表です。シオカラトンボに似た姿ですが、側面の模様や太く短い腹などが違います。水田や湿地に生息し、陽光が降り注ぐ春の田んぼの道ばたによくとまっています。
  しかし博物館が知る限りでは、最近の市内での確認は自然観察園だけです。他にも生息場所はあるでしょうが、水田の減少が、この春を告げる小さなトンボに大きな打撃になっているようです。

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むかしの市川




ハゲ山

カット(sz245.gif、約1KB)   昭和10年頃のことです。真間小学校の東側の道を北に向かって少し行くと、台地の崖を切り崩して、赤土が露出した小山がありました。草木が生えていないので子供達は、ハゲ山とよんでいました。
  小規模ながら西部劇に出てくるような景観をバックに映画のロケーションなども行われました。凸凹のあるハゲ山の地形は、子供達にとって、兵隊ごっこ、 チャンバラごっこなどの動的な遊びをするのに格好な場所でした。わざわざ遠くから遊びにくる集団もあったりして、なかなかの人気でした。
  しかし、いつでも遊べるわけではなく、よく馬力(ばりき)とよぶ荷馬車が やってきて、切り崩した土を積み出していました。
  この頃は、まだ、真間から菅野・須和田にかけて、池や湿地が点在し、ところによっては、ヨシ原となっているところもあり、このような湿地を埋め立てるために、ハゲ山の土が運ばれていたのでした。そのうちハゲ山で遊ぶのは危険だからということで、学校の先生から禁止されて、大変残念に思ったものでした。
(博物館指導員 大野景徳 記)  

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行徳野鳥観察舎だより



オオコノハズク

カット(sz246.gif、約2KB)   みみずく、といえばふつうはこの種類を指す。ちょうど両手にすっぽりサイズ、2頭身半のむっくりした実にかわいい鳥だ。老木のうろなどに巣を作り、人里にざらにいる種類だったそうだが、夜鳥なのでまず見られない。
  野外で見かけることはほとんどないのに、なぜか毎年保護される種類のひとつ。年明け早々に来所した一羽は、左の足先が淡黄色の部分白化個体で、衝突したらしく左目の瞳孔が開いたままになっている。
  気が強く、最初は手でも出そうものならすぐくるっと仰向けになって鋭い爪でつかみかかった。馴れたのか、攻撃はやめたが、隙あらば逃げだそうと身構えぱちぱちと嘴を鳴らして威嚇する。生きたぬいぐるみのようなみみずく君は私のごひいき鳥、空に帰してやりたいなぁ。

(文と絵:行徳野鳥観察舎 蓮尾純子 )

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わたしの観察ノート No.6



☆☆☆ニホンアカガエルの早い産卵の理由は?☆☆☆

  ニホンアカガエルは、田んぼに多く生息するカエルです。千葉県でも郊外の水田地帯では普通に見られますが、市内では田んぼとともに姿を消しつつあります。そのニホンアカガエルの大町自然観察園での産卵が、例年の2月中よりも早まって、2年連続して1月中に行われました。

◎大町自然観察園でのニホンアカガエル卵塊の初確認日
1990年(平成2年)2月17日
1991年(平成3年)2月11日
1992年(平成4年)1月21日
1993年(平成5年)1月26日


  これは、どういうことなのでしょう? 地球温暖化の影響? その原因のひとつに降雨があげられるかもしれません。つまり、今年の産卵の場合、それは冷たい雨が降る晩のことでした。通例は、暖かい糠雨が降る2月の晩というのがおきまりです。
  しかし、自然観察園の産卵場に張った氷は、この1月の冷たい雨でも融けていました。表面の氷さえ融ければ、自然観察園の産卵場に流れ込む水は湧水で、1月も2月も水温に大差ありませんから、早めに卵を産んでも、その後のおたまじゃくしの成長には関係ないはずです。つまり、産卵場の氷が融けるような手ごろな雨が2年つづけて1月中に降ったための早い産卵というわけです。
  まだまだデータ不足で、はっきりしたことは言えませんが、降雨と湧水と産卵の関係は、早春の楽しみなテーマになりそうです。

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