◆  市川自然博物館だより  ◆

4・5月号

やさしい分類学 1

貝 類

ソトオリガイを襲って食べるアカニシ(巻き貝)

市立市川自然博物館  1993年4月1日発行

特集記事 街かど自然探訪 行徳野鳥観察舎だより いちかわの野生生物 むかしの市川 観察ノート



特集記事



やさしい分類学 第1回 貝 類

色や模様ばかりに気を取られてはいけない貝の分類

  海で見つけた色とりどりの貝殻を箱の中にしまっておく−−この博物学の原点ともいえる経験を持つ人は多いと思います。それなのに、貝の図鑑を手元に置くようになる人は、植物や鳥にくらべて多くありません。貝は、いざ見分けようとすると、どれもこれも似ていて区別がつきにくい動物です。貝を見分けるポイントを紹介します。

貝には、巻き貝と二枚貝がある

  貝は、硬く頑丈な殻を背負った柔らかな体の動物です。螺旋形の殻をもつ巻き貝と、2枚の殻が左右に対になっている二枚貝とに分かれます。
  このうち、二枚貝は特殊化が進んだグループで、二枚貝だけで二枚貝綱というひとつの大きなまとまりをつくっています。一方、巻き貝も腹足綱というグループをつくっていますが、腹足綱の中にはウミウシ類やアメフラシ類のように貝殻を持たないものも含まれています。

軟体動物を代表する貝、一部は陸上へ

  貝は、軟体動物という動物の大きなグループに属します。軟体動物は5万〜10万種類が属する多様なグループで、海中で、もっとも繁栄しています。その中で一般によく知られているのは、貝とイカ・タコ類です。イソギンチャク類やクラゲ類は、体が柔らかくても軟体動物には属しません。軟体動物のうちで、陸上への進出に成功したのはわずかで、それが、カタツムリ類などの一部の巻き貝です。これらは鰓の代わりに肺を持っています。

 軟体動物の分類

                         ┌─単板綱
             ┌─無板綱        │   ネオピリナ類
             │   カセミミズ類など │
     ┌─双神経亜門─┤           ├─腹足綱
     │       │           │  巻き貝、ウミウシ類など
      │       └─多板綱        │
軟体動物─┤           ヒザラガイ類    ├─掘足綱
     │                   │  ツノガイ類
     │                   │
     │                   ├─二枚貝綱
     └─貝殻亜門──────────────┤  二枚貝
                         │
                         └─頭足綱
                            イカ・タコなど


 

二枚貝の殻の着目点(sz251.gif、約6KB)

二枚貝は、殻の内側に着目する

  魚屋さんの店先で、シジミとアサリとハマグリを見分けることは簡単です。大きさや色や模様の特徴が、なんとなくわかっているからです。しかし、図鑑で二枚貝のページを繰っていくと、アサリを見つけることさえ困難なことがわかります。似た外見の種類が次々に出てきます。
  二枚貝を見分けるポイントは、外見よりも殻の内側にあります。それは、2枚の殻をつなぐ蝶番(ちょうつがい)の部分と、殻の内側にある模様(筋肉が付いていたた痕)です。このうち蝶番の部分では、特に噛み合わせの歯と、殻どうしをつなぐ膜状の靱帯(じんたい)に注意します。殻の内側の模様では、貝柱が付いていた丸い痕と、殻の外周に沿ってある線の湾入に注意します。

→参考図 <主な二枚貝> (約26KB)


巻き貝は口の形と殻の螺旋に着目する

  巻き貝を見分ける重要なポイントのひとつは、殻の口です。口の形が、円形か、楕円形に近いか、もし楕円形なら上下に長いか、左右に長いか、などに注意します。切れ込みの有無なども重要です。また、口のまわり、唇にあたる部分の厚さや、反り返っているか、ねじれているかなども見ます。
  もうひとつのポイントは、螺旋の巻き方です。さらに、螺旋に巻いた殻のふくらみや、殻の表面の凸凹も見分けるポイントなります。

→参考図 <主な巻き貝> (約15KB)


カタツムリの場合

  一般にカタツムリと呼ばれるマイマイ類は、陸上に進出した巻き貝としては、もっともよく知られています。見分けるポイントは水中の巻き貝と大差ありませんが、地域的な変異がとても多く、図鑑を前にして唸ってしまうことが、たびたびあります。市川近辺で見る場合は、口の形や、ひっくり返した時の螺旋の中心〜臍(へそ)にあたる部分〜に着目します。殻の模様も手がかりになります。また、陸産の巻き貝としては、縦に長いキセルガイ類などもあります。

→参考図 <カタツムリ類> (約13KB)


図鑑を見る場合に...

  鳥や植物に比べると、貝類の図鑑は、あまり多く出版されていません。しかも、これ1冊あればOKというお薦めの図鑑も、残念ながらありません。多くの図鑑は殻の形や色、模様が中心で、ここで紹介した二枚貝の蝶番や筋痕、巻き貝の口の形や螺旋の巻き方などについて、図で細かく説明されていません。しかし、それらについては、たいてい文章で解説されています。ですから、図や写真ばかりに目を向けるのではなく、頑張って解説文を読むようにすることが大切です。

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街かど自然探訪



地盤沈下のしくみ(sz255.gif、約11KB)

香取・地下に埋もれた数万年前の谷
(源心寺)

  源心寺の墓地では、なかば埋もれてしまった奇妙な墓石が見られます。これらは、かつて、この一帯で多発した工業用地下水の汲み上げによる地盤沈下によって地面とともに沈下し、埋め戻しの時もそのまま直されなかった墓石です。
  源心寺付近は、一帯でも特に激しく地盤が沈下しました。それは、この地下に大昔の谷が走っているからです。谷のくぼんでいるぶん、他の場所よりも軟弱な土が厚いのです。この谷には、今から2〜3万年も昔に川が流れていました。

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行徳野鳥観察舎だより



ツリスガラ

カット(sz256.gif、約3KB)   「ツリスガラがさえずってたよ」3月8日のこと。アシ原に踏み込んだが会えずじまい。
  ツリスガラは、スズメの半分くらいの小柄な鳥。かつては九州地方にしかいなかったが、徐々に東へひろがり、大阪あたりではふつうに越冬するようなった。数年前に浦安で初認されて以来、保護区内でも毎年北池のアシ原で標識調査時に観察や捕獲の記録がある。関東でも冬鳥として定着してきたらしい。
  来所されたドイツの方の話では、ヨーロッパでもツリスガラの繁殖地がイタリアあたりからひろがってドイツにまで達したとのこと。「家の近くで4年前に初めて繁殖したのを僕が発見したんだ」洋の東西を問わぬ分布拡大は、なんともふしぎな現象だ。

(文と絵:行徳野鳥観察舎 蓮尾純子 )

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いちかわの野生生物




ホンドイタチ( Mustela sibirica itatsi )

カット(sz257.gif、約6KB)   ホンドイタチは市川に棲む唯一の肉食獣です。特に水辺を好み、近くに水田や湿地のある林や、川の周辺の草地などで暮らしています。最近では、大町自然観察園で親子のイタチがたびたび観察されているほか、田園風景の残る、柏井、奉免、北方町、北国分町などや江戸川の河川敷などで目撃されています。
  野ネズミ類が主な餌ですが、カエルやザリガニ、小魚、昆虫なども食べるようです。主に夜間行動し、とても用心深く、たいへん敏捷なため、足跡や糞等の生活の痕跡以外はなかなか観察できません。足跡はイヌやネコに比べずっと小さくて、前肢、後肢とも5本の指がはっきりしているのが特徴です。足跡をたどっていくと時折、石の上などの目立つところに糞を見つけることができます。黒くて、太さ 0.5〜0.8 cm長さ3〜5cmで螺旋状にねじれ、たいてい一方の先がとがっています。大変に臭いが強く、行動の範囲を示すマーキングの効果があるようです。

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むかしの市川




メソッコ

カット(sz258.gif、約14KB)   昔は、江戸川にメソッコがたくさんいました。メソッコとはウナギの幼魚のことです。メソッコにも成魚に近い小指ぐらいの太さのものから、爪楊枝をすこし太くした程度のものまで、すべてメソッコとよんでいました。かば焼きにするような太いウナギは、子供には釣れません釣れるのは、皆メソッコです。
  日本のウナギの産卵場所は、まだよくわかっていませんが、北緯30度以南の太平洋だと言われています。
  中学生の頃でした。魚釣りをしようと江戸川の岸に立って川面を見おろすと、50cm位の幅で帯状に長く水の色が変わっているのです。何事かとよく見ると、それは、太さ3mm位、長さ6〜7cm位の小さなメソッコが、何千、何万と帯状に集団を作って、川をさかのぼっているのです。東京湾からのぼってきたウナギの幼魚なのです。からだをくねらせながら、ただひたすらに上流に向かって泳いでいる姿に、はるか南の太平洋から、よくぞやってきたものだと、しばし我を忘れて見入ってしまいました。
(博物館指導員 大野景徳 記)  

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わたしの観察ノート No.7



◆大町自然観察園より
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◆ウグイスのさえずり記録です

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