◆  市川自然博物館だより  ◆

6・7月号

やさしい分類学 2

エビ・カニ・ヤドカリ類

アーミーナイフのような額角を持つテナガエビ

市立市川自然博物館  1993年6月1日発行

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特集記事



やさしい分類学 第2回 エビ・カニ・ヤドカリ類

頭付きのエビを食べる時に注目してほしいのは額角

  エビ・カニ・ヤドカリ類は、川や海岸に生息する一部の種類をのぞくと、ふだんは目にする機会が少ない動物です。むしろ食卓で見ることの方が多いくらいです。ですから、野生生物として、それらの正しい種名や、類似種との区別点などに思いを巡らせることも少ないようです。ここでは、外見上の着目すべきポイントを紹介します。

大型甲殻類と小型甲殻類

  エビ・カニ類は節足動物という動物の大きなグループの中の甲殻類というグループに属します。甲殻類は約5万種で、大きさや生息環境、生活様式が多様で、形態も変化に富んでいます。
  甲殻類は大きく5つ(かつては8つ)に分けられ、このうちエビ・カニ類が属するエビ亜綱(軟甲亜綱)は大型甲殻類(高等甲殻類)と称され、それ以外の便宜的に小型甲殻類(下等甲殻類)としてまとめられるグループと区別して扱われます。

エビ・カニ・ヤドカリ類の関係

  ごくおおざっぱに言うと、エビ類の尾と頭を合わせるように半分に折り畳んだのがカニ類で、エビ類の後半分の殻をむいて、くるりと巻いて巻き貝に収めたのがヤドカリ類です。
  ですから、これらは互いに近縁で、エビ亜綱(軟甲亜綱)の中の十脚目としてまとめられています。しかし、十脚目の中の分類にはいくつかの方法があり、必ずしもエビ・カニ・ヤドカリ類がそれぞれひとまとまりになるわけではありません。

 節足動物の分類
   <分類学は日々進歩しており、ここに示す分類体系は概要としてご覧ください。> 

     │       │
     │       │            ┌─カシラエビ亜綱(頭エビ亜綱)
     │       ├─カブトガニ綱(剣尾綱)│  カシラエビ類
     │       │  カブトガニ類    │
     ├─鋏角亜門──┤            ├─ムカデエビ亜綱
     │       └─クモ綱        │  ムカデエビ
     │          クモ類など     │
     │                    ├─ミジンコ亜綱(鰓脚亜綱)
     │                    │  ミジンコ類など
節足動物─┼─大顎亜門────甲殻綱────────┤
     │                    ─アゴアシ亜綱(貝虫亜綱・橈脚亜綱
     │       ┌─ヤスデ綱(倍脚綱)          髭エビ亜綱・鰓尾亜綱
     │       │  ヤスデ類              蔓脚亜綱 )
     │       │              フジツボ類など
     └─触角亜門──┼─ムカデ綱(唇脚綱)  
             │  ムカデ・ゲジ類   └─エビ亜綱(軟甲亜綱)
             │               エビ・カニ・ヤドカリ・シャコ・
             └─昆虫綱           オキアミ・ワレカラ・ヨコエビ・
                甲虫類など        ダンゴムシ類など


エビ類の着目点(sz261.gif、約3KB)

エビ類は、2番目の甲と額角に着目する

  イセエビ類やザリガニ類は、全体の姿が特徴的なので一目でそれとわかります。イセエビ類は太く立派な触角を持ち、ザリガニ類は左右に大きなはさみを持っています。
  他のエビ類の場合は、まず腹部に6枚ある甲のうち、前から2枚目の形に注目します。ここが、他に比べ目立って幅広いのがコエビ類で、同じなのがクルマエビ類です。このどちらに属するのかは、図鑑を引くときの大きな手がかりになります。
  次に、頭部から伸びる額角に注目します。額角の長さや伸びる方向、額角の上縁と下縁にある歯の位置と数などは重要です。額角の特徴は、どの図鑑においても、種類を見分けるポイントとして細かく解説されています。

→参考図 <代表的なエビ類の特徴> (約28KB)


カニ類は、甲の全体に着目する

  カニ類は、種類によって、全体の大きさや形、色などが特徴的なので、図鑑の絵と実物を合わせていくだけで、かなり種類を知ることができます。しかし、その一方で、近縁種を区別する時のポイントがあれこれあって、似た外観のものの判別には手こずります。甲の全体の形や、甲の縁にある歯や溝、眼の間の部分(額)の長さや歯の有無、眼柄の長さ、甲やはさみに粒や刻み模様があるかなどが、ポイントになります。

→参考図 <身近なカニ類の特徴> (約8KB)


ヤドカリ類は、とりあえず左右のはさみを

  ヤドカリ類には、ヤドカリ上科とホンヤドカリ上科という大きな2つのグループがあります。はさみ脚の大きさが左右同じか、左が大きいのがヤドカリ上科で、右が大きいのがホンヤドカリ上科なので、まず、この点に着目します。なお、ヤドカリ類の中には、一般の印象とは異なり貝を背負っていないものもあり、カニ缶で知られるタラバガニは、実はホンヤドカリ上科に属するヤドカリの一種です。

→参考図 <ヤドカリ類の特徴> (約8KB)


図鑑を見る場合に...

  甲殻類の図鑑はあまり多くありません。しかし、甲殻類という分野のマイナーさと、図鑑を作るのに要する労力を考えると、あまり贅沢もいえないでしょう。その中で、とりあえず一般の方々が、いくつかの形態的な特徴に基づいて甲殻類を見分ける場合に役立つ図鑑として、『原色 甲殻類検索図鑑』(武田正倫著 北隆館)があります。この図鑑の検索表は、甲殻類の形態を学ぶのに適しています。
  また、食用種や、ワレカラ類・ミジンコ類などが載っているのも魅力です。また、甲殻類という分類群の全体像については『動物たちの地球 68〜70』(朝日新聞社)に細かく解説されています。

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街かど自然探訪



カット(sz265.gif、約12KB)

北方・子の神社の斜面林

  市内の地形を特徴づける、北の台地と南の低地、この境界部である台地の縁には昔から斜面林が発達していました。現在も数は少なくなったものの、市内各地で斜面林が見られ、子の神社の斜面林もそうしたひとつで、市内に4つある緑地保全地区のひとつに指定されています。
  ケヤキ、スダジイ、タブノキ、アカガシなどの大木があり、季節に応じて草木が花を咲かせます。宅地開発が進んだ一帯なので、ポツンポツンと残っている、こういう林が貴重に感じられます。

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行徳野鳥観察舎だより



夏羽・冬羽

カット(sz266.gif、約3KB)   ユリカモメたちがきれいな夏羽になった。ずきんをすっぽりかぶったような黒い頭で、目のまわりだけダッコちゃん人形のように白い。鮮やかな紅色だった足とくちばしも暗紅色になった。結婚をひかえてのおしゃれだが、人間がおしろいや口紅をぬるのとは彩りが逆なのがおもしろい。黄色だったダイサギのくちばしも黒く変わり、背中にはレースのようなみの毛が美しくのびている。
  繁殖期を前に衣替えをする鳥たちのなかでも、ダイゼンの変化はめざましい。冬羽は地味な灰褐色で、干潟の泥に似た作業衣姿だが、4月末から5月にかけて顔から腹が漆黒、背は純白地に黒い斑紋という正装をまとう。「えっ、これ同じ種類なんですか?」驚いてもらうのがこの季節の私の楽しみのひとつ。

(文と絵:行徳野鳥観察舎 蓮尾純子 )

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いちかわの野生生物




カワセミ( Alcedo atthis )

カット(sz267.gif、約9KB)   小川や池などの水辺にすむカワセミは、全体的に金属光沢のある緑色、背から尾にかけてはコバルト色で、胸から腹にかけては橙色という美しい姿が印象的な鳥です。
  まっすぐで大きな嘴、大きな頭、短い尾といった体は、水中にダイビングし、魚を捕らえるために適した体型といえます。
  繁殖のための巣は、土の崖に径6〜9cm深さ50〜100cm の横穴を掘ってつくるという特殊なもので、近年、その生活場所は大変限られてきています。市川市内では、大町自然観察園内で繁殖しているほか、行徳野鳥保護区内に掘られた池と土手で繁殖した例があります。また、中国分のじゅん菜池緑地や国府台の江戸川土手、北方町の大柏川流域、柏井町の青少年の森周辺の水辺などでも観察されています。
  こうした地域では、水質汚染に強いモツゴなどの餌になる小魚がまだ多いことや、水辺近くにカワセミが営巣できそうな土の崖があり、繁殖の可能性も残されています。

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むかしの市川




光る虫発見!

カット(sz268.gif、約3KB)   昭和24年、市川一中の教師をしていた頃の宿直の夜でした。日頃、生物クラブで活躍している3年生のT君が「先生、ホタル以外に光る虫はいませんよね、僕光る虫を発見したんです」と、小さな虫を持ってやってきました。見ると、長さ 1.2cmほど、黒くて細い虫です。電燈を消してみると、なるほど、青白く、ホタルのように光るのです。里見公園近くの木の葉の上にいたというのです。
  「ホタルの幼虫なら水の中にいるはずだ、木の葉の上にいるということは、ホタルではない、これは新しい発見だ」ということになり、翌日、その虫を持って生物クラブの生徒数人と、国立科学博物館に昆虫学者・新村太郎先生を訪ねました。先生は、その虫を見るなり、「ああこれはクロマドボタルの幼虫ですよ、河口湖あたりへ行くと見られますよ……」
  T君をはじめ生物クラブ一同は、いっぺんに気がぬけてしまいました。しかし国府台にクロマドボタルがいた、クロマドボタルの生態を知ることができた、はじめて昆虫学者と接することができたことなどに、大きな感動を得たのでした。
(博物館指導員 大野景徳 記)  

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わたしの観察ノート No.8



◆大町自然観察園より
◆ ????より
◆南大野より
◆奉免町より
◆柏井雑木林より
◆堀之内貝塚公園より
◆国府台2丁目より
◆里見公園付近より
◆坂川河口より
◆じゅん菜池公園より
◆県道市川松戸線付近より
◆菅野より
◆江戸川放水路より

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