◆  市川自然博物館だより  ◆

8・9月号

やさしい分類学 3

トンボ類

市立市川自然博物館  1993年8月1日発行

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特集記事



やさしい分類学 第3回 トンボ類

トンボの眼鏡は伊達じゃない

  トンボの名前というとオニヤンマ、ギンヤンマ、シオカラトンボ……これらは有名ですが、あとは「赤とんぼ」とか「やんま」「糸とんぼ」とか、いくつかの種をまとめて総称で呼んでいることが多いようです。トンボ類については研究者も多く、図鑑もたくさんあります。そこで、図鑑を手にする前に知ってほしいポイントを紹介します。

原始的な昆虫のグループ

  昆虫類は、知られているだけで90万、実際には500 万以上の種があるといわれ節足動物のなかで、桁はずれに大きな群をなしています。
  それらの大半は、翅をもち翅を背中に重ね合わせることができる種類(新翅群)ですが、トンボ類は翅を閉じることはできても、重ね合わせができない原始的な特徴を持ち、昆虫のなかでは少数派です(旧翅群)。トンボ類は、翅を持たないトビムシ類などに次いで原始的なグループとされています。

生きている化石・ムカシトンボ

  トンボ類は、大きく均翅亜目と不均翅亜目に分けられています。しかし、1889年に新種とされた日本特産種に基づいて後に第3のグループ・ムカシトンボ亜目が設けられました。それは、均翅亜目と不均翅亜目の中間的特徴をもち、中世代に栄えた古代トンボの一群であることが知られています。
  ムカシトンボ亜目は、日本特産のムカシトンボとヒマラヤ特産のヒマラヤムカシトンボのたった2種類だけが、世界でいまなお現存しています。

 節足動物の分類
   <分類学は日々進歩しており、ここに示す分類体系は概要としてご覧ください。> 


     │       │
     │       │
     │       ├─カブトガニ綱(剣尾綱)
     │       │  カブトガニ類    ┌─無翅昆虫亜綱
     ├─鋏角亜門──┤            │  トビムシ類、シミ類など
     │       └─クモ綱        │
     │          クモ類など     ┣━有翅昆虫亜綱
     │                    ┃  ┃
節足動物━╋─大顎亜門────甲殻綱        ┃  ┃
                         ┃  ┣━旧翅群
            ┌─ヤスデ綱(倍脚綱)    │  カゲロウ類、トンボ類
            │  ヤスデ類        │
            │              └─新翅群
     ┗━触角亜門━━╋─ムカデ綱(唇脚綱)       残りの昆虫すべて
               ムカデ・ゲジ類   ┃
             ┃            ┃
             ┗━昆虫綱━━━━━━━━┛

 

翅と複眼に着目する

  トンボ類は、均翅亜目(前翅と後翅がほぼ同形同大)と不均翅亜目(後翅が明らかに幅広い)とに大別され、均翅亜目にはイトトンボ類やカワトンボ類、不均翅亜目にはいわゆるトンボ型の姿をした種類(ヤンマ類など)が属しています。
  身近に多い種類を分類すると、均翅亜目のうちイトトンボ科は、後ろにとがった不等辺台形の四角室と2本の結節前横脈が特徴で、それがカワトンボ科では、長方形の細長い四角室、多数の結節前横脈となります。
  不均翅亜目では、左右の複眼が離れるサナエトンボ科、一点で接するオニヤンマ科、広く接するヤンマ科とトンボ科に分けられます。ヤンマ科は前翅と後翅の三角室の向きが同じで、トンボ科は異なります。

→参考図 <トンボ類の着目点> (約34KB)


胸の模様は実用的

  野外でのトンボ観察で実用的なのは、胸の模様による区別です。特にトンボ科に属するもの(アカトンボやシオカラトンボのなかま)は、草や木の枝、路上などにとまってじっとしていることが多いので、双眼鏡で胸の模様をじっくり観察することができます。
  トンボ類の胸には基本的に、肩縫線・第1側縫線・第2側縫線という3本の線があります。この3本の線上の黒条の有無や太さ、切れ方などで見分けていくわけです。

→参考図 <アカトンボ類の胸の模様> (約15KB)


腹端は分類上重要なポイント

  雌雄がハート形に連結する交尾の姿は、トンボ類の大きな特徴です。この連結の時、雄は腹端の付属器で雌の頭や前胸を挟みます。
  どのトンボでも連結の方法はほぼ同じですが、連結のための付属器の形が種類ごとに独特です。それが、分類に役立ちます。特にイトトンボ類などでは、羽化してすぐの個体と十分に成熟した個体とでは、別種と思うほどに体色が異なっています。そんな時は、図鑑の単なる絵合わせでは歯が立ちません。

→参考図 <イトトンボ類の腹端> (約10KB)


図鑑を見る場合に...

  トンボ類の図鑑としては『日本産トンボ幼虫・成虫検索図説』(石田昇三、石田勝義、小島圭三、杉村光俊著、東海大学出版会)が、一般の方が使う卓上用として便利です。豊富なカラー生態写真は美しく、独自の検索表もけっこう実用的で楽しめます(少々高価ですが…)。
  野外用としては『ジュニア図鑑19 トンボ』(石田昇三著 保育社)がお勧めです。これはこども用の図鑑ですが、おもだった種類の区別点が簡潔に図示されていて、大きさも手頃で持ち歩きに便利です。

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街かど自然探訪



カット(sz274.gif、約5KB)

北国分・小塚山のササクサ

  真夏の8月、雑木林は昆虫類の天下です。花を咲かせる植物は多くありません。しかし、9月も半ば過ぎになると、色とりどりの花が雑木林の秋を飾りたてるようになります。
  ササクサは、全国的には関東以西の林に普通なイネ科の植物です。葉は名前のとおり笹そっくりで、花は穂 状に伸び、緑色です。紫や白、黄色の花をつける野菊などにくらべると、その印象は地味で、実際、目立ちません。しかしササクサは、国分方面の雑木林の秋には欠かせない種類のひとつなのです。

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行徳野鳥観察舎だより



ツバメの白い巣

カット(sz275.gif、約3KB)   「誰かが巣をこわしちゃった。」あわててとびこんできた小学生たち。大切にかかえたタオルの中には、小さなツバメのヒナが4羽。
  巣があったのはマンションの駐車場のライトの上で、はしごがあれば手が届くらしい。こうした場合は手芸用の粘土で作りなおしてやるのが一番。粘土製の白い巣をツバメが何年も利用した例もある。ヒナの1羽は死んでしまったが、他の3羽は元気。主人ははしごと粘土を用意して子どもたちと一緒に出動し、浅いおわん型の巣を作ってヒナを戻してやった。親鳥がすぐ見にきたそうだ。
  9日後、買い物のついでに寄ってみると、まっ白な巣のふちから乗り出すようにして3羽のヒナが餌をねだり、親たちは餌運びに大わらわだった。巣立ちの日も近い。

(文と絵:行徳野鳥観察舎 蓮尾純子 )

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いちかわの野生生物




カヤネズミ( Micromys minutus )

カット(sz276.gif、約9KB)   カヤネズミは、頭胴長が6〜7cm、尾長7〜8cmで体重は7〜8gという、世界で最小のネズミです。
  ヨシやススキ、オギなどの大型イネ科草本が群落をつくる湿地や草地、河川敷や休耕田などにすみます。市川市内では、大町自然観察園での生息が確認されています。
  ネズミ類の多くが地中や地表に巣をつくり生活しているのに対し、カヤネズミは、群落内の草の茎の途中に、葉を巧みに編んで、直径10cmほどの球形の巣をつくり、子育てや、休息に利用しています。餌は、バッタなどの昆虫やイネ科植物の種子などで、草の茎や葉の上を身軽に移動して、1日に体重の3分の1ほどの量を食べます。
  体重が軽いことや、しなやかで長い尾の先端部を茎や葉にからませて体を支えるこことができるなど、 "空中" での生活への適応のひとつと思われます。天敵であるイタチやへビ類から身を守るためには、とても有効な生活様式といえるでしょう。

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むかしの市川




怪鳥が飛びこんできた!

カット(sz277.gif、約1KB)   30年位前のことです。私の家は、当時市川3丁目で、市川橋と京成鉄橋との間にありました。家のすぐ裏は江戸川堤防で、堤防の裾には西風を防ぐ目的で大きなタブノキがあり、夜になるとホッホッとフクロウ類の鳴き声が聞こえてきます。
  当時はクーラーなどというものは、一般的ではなく、暑い夏の夜は部屋の戸は開け放して、蚊帳を釣って寝ました。この日も、夜になっても暑いので例によって戸を開け放し、まだ寝る時間でもないので、蚊帳の中に入って本を読んでいました。
  すると、突然異様な音で大きな怪鳥が飛び込んできました。びっくりぎょうてんです。子ども達も、皆起き上がって恐怖におののいています。するとこの怪鳥は、神棚の上にとまったのです。みると、体長30cm程のフクロウ類です。飛びこんできた時は、翼をひろげていたのですごく大きく見え驚きましたが、やや安心しました。とっさに昆虫網で捕らえようとしましたが、また暗闇の中へ消えていきました。図鑑で調べたら、どうもアオバズクのようでした。
(博物館指導員 大野景徳 記)  

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わたしの観察ノート No.9



◆大町自然観察園より
◆大野町2丁目より
◆柏井雑木林より
◆北方遊水池付近より
◆里見公園より
◆江戸川より
◆下総国分寺より
◆江戸川放水路より
◆????より

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