◆  市川自然博物館だより  ◆

2・3月号

やさしい分類学 6

鳥 類

市立市川自然博物館  1994年2月1日発行

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特集記事



やさしい分類学 第6回 鳥類

2本の脚は、鳥類の分類上の特徴

  鳥類は、私たちに身近な動物です。野鳥をはじめ、ペットや動物園で見ることができる外国の鳥まで、さまざまな種類が身近にあります。鳥類の分類というと、そうした鳥の姿の美しさや多様性ばかりに目を奪われがちですが、分類を知るうえでは、ふだん見落としがちな鳥の脚趾の形態が参考になります。

鳥類は爬虫類から進化

  鳥類は、化石として残っている種がとても少なく、その進化系統ははっきりしていませんが、発生過程や骨格構造などの比較により、爬虫類から進化したものと考えられています。鳥類と爬虫類とを区別する特徴は、鳥類が高度に「飛ぶ」ことへ適応(特殊化)したことにより、
  1. 体は羽毛におおわれる
  2. 前肢は翼となる
  3. 後肢の2脚で立ち、趾(あしゆび) は前向きに3本、後向きに1本
  4. 体温が高く、恒温である
などがあげられます。

 脊椎動物(顎口上綱)と鳥類の分類
   <大きな分類には、さまざまな見解があるので、これは一例とお考えください> 

       ┌─軟骨魚綱
       ├─硬骨魚綱
 脊椎動物──┼─両生綱   ┌─古鳥亜綱 (化石)・・・始祖鳥
(顎口上綱) ├─爬虫綱  │
       ├─鳥綱───┤       ┌─有歯口蓋上目 (化石)
       └─哺乳綱   └─新鳥亜綱 ─┤
                      └─新口蓋上目 (全ての現生鳥類)

 

分類学的には変化の少ない動物群

  およそ 9,000種の鳥類は化石鳥を含めて古鳥亜綱(始祖鳥)と新鳥亜綱に分けられ、後者はさらに歯のあるなしによって、白亜紀の有歯口蓋上目とその他の新口蓋上目とに分けられています。
  つまり、現生する鳥類はすべて新口蓋上目に属していて、白亜紀以降に(地質年代的に)短時間で爆発的な分化が進んだことになります。
  また、爬虫類が7亜綱に、哺乳類が4亜綱に分化していることと比べ、鳥類は骨格や筋肉の基本構造や、形態、生理面で変化の少ない動物群であるといえます。

三前趾足(sz301.gif、約3KB)

脚趾の外部形態に注目する

  脊椎動物の分類は、骨格や筋肉系などの解剖学的な内部形態や外部形態をもとにされてきました。近年は遺伝子や染色体の分析による分類も試みられています。
  鳥類も主として、内部形態の特徴をもとに、分類されていますが、脚(後肢)の形態などの外部形態の特徴も分類の参考になります。
  鳥類の脚の趾は、4本で、趾の配列は前3本、後1本の三前趾足(さんぜんしそく) が基本的な形です。

水鳥の脚趾には蹼がある

  水鳥では蹼(みずかき) が発達していて、カモ目、ミズナギドリ目、ペンギン目、アビ目、フラミンゴ目などでは、前3本の趾に蹼がある蹼足(ぼくそく)になっています。後趾は短くなり、ミズナギドリ目では(つめ) だけになっています。
  ペリカン目は、ネッタイチョウ、グンカンドリ、カツオドリ、ペリカン、ウ、ヘビウという明らかに異なる6群を集めた多型的な目ですが、4趾に蹼が張る全蹼足を持つ、という特徴でまとめられたグループです。このうちグンカンドリでは、蹼の切れ込みが深くなった欠全蹼足になっていて、第4趾は外方と前方の両方に動くようになっています。
  コウノトリ目のような水辺でくらす鳥では、蹼が縮小して、趾の根元のみに小さな蹼がある、半蹼足になっています。
  チドリ目では、習性や生活場所で趾型に変化がみられます。沿岸や干潟にくらすシギ、チドリ類は、半蹼足になっていて、チドリ類では、ふつう後趾が欠けていて3趾です。飛翔性海鳥のカモメ、アジサシ類や潜水性海鳥のウミスズメ類は蹼足になっています。このうちアジサシ類では、やや蹼が少なくなり、シロアジサシでは、蹼の切れ込みが深くなった欠蹼足になっています。
  カイツブリ目では、蹼のかわりに各趾に偏平な縁板がついた、弁足(べんそく) になっています。

水鳥の脚趾(sz302.gif、約3KB)

地上や樹上の鳥の多様な脚趾

  地上でくらすグループは、脚趾が頑丈で後趾が長くなる傾向があります。
  ダチョウ目は特殊で、後趾(第1趾)が欠け、3本の趾には頑丈なつめを持ちます。そのうちダチョウは第3、4趾の2趾のみになっています。
  樹上で生活する鳥のグループのうち、ブッポウソウ目は、5亜目からなる多型的な目ですが、どの種類も脚は小さくて枝に止まるだけの機能しかなく、前の3趾が基部で合着した合趾足(ごうしそく) という特徴で、まとめられています。
  オウム目やフクロウ目、カッコウ目では、第2、第3趾が前方、第1、第4趾が後方に向く対趾足(たいしそく) になっていて、獲物や枝を確実につかめます。特にフクロウ目では、第4趾が外側方にも動き、多彩な働きをします。
  熱帯地方にくらす羽の美しいキヌバネドリ目は、原始的な形質を多く残していて、第1、第2趾が後方に向く、極めて特殊な形の変対趾足になっています。
  キツツキ目も対趾足ですが、キツツキ類では、第4趾が外側方を向く外対趾足になっていて、樹幹をのぼる際に側方運動を助けたり、垂直にとまれます。
  アマツバメ目のアマツバメ類は、飛翔生活に高度に適応し、ほとんど地上に降りることもありません。このため、飛行の際の抵抗が少なくなるように、脚は極めて小さくなっています。曲がったつめをもちいて、営巣する崖や洞内の垂直な壁に引っかかるようにとまるため、後趾は前方に動き、4趾が全て前方に向く皆前趾足(かいぜんしそく) になっています。

  今回紹介した脚趾の特徴は、目を分類する決め手とはなりませんが、どんな目に属するかを知るには参考になります。一度、鳥の脚趾にご注目あれ。

陸鳥の脚趾(sz303.gif、約4KB)


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街かど自然探訪



坂川河口付近地図(sz304.gif、約5KB)

国府台・江戸川の貴重な植物群落

  里見公園の下、江戸川と坂川の合流部一帯は、ほぼ完璧に護岸整備が行われた江戸川にあって、最後まで手が着けられずにきたところです。
  そこには、河川敷の湿潤な環境が残されていて、各地で姿を消した貴重な植物が今なお生育しています。絶滅危惧種のフジバカマ、危急種のエキサイゼリ(最近は確認されていない)やノカラマツをはじめ、ノウルシ、サクラタデ、ジロボウエンゴサク、カントウタンポポなどが、細々と、でも、しぶとく暮らしています。

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行徳野鳥観察舎だより



オオタカは王様?

カット(sz305.gif、約4KB)   茶色のゴイサギが2羽飛んだ、と思った瞬間、前の1羽が急に体勢をくずして丸浜川に落ちた。後ろを飛ぶ1羽が身をひるがえす。尾が長い!尾にはくっきりと横縞が入っている。なんとオオタカが若いゴイサギを襲ったところだった。
  かろうじて難を逃れたゴイサギは、泳いで岸に上がったらしい。獲物をとりそこねたオオタカは、堤防に並ぶカモメを追い散らし、対岸で休んでいたサギの一群を攻撃した。ゴイサギばかりか、大柄なアオサギまであわてて舞い上がっている。しかし行きずりの襲撃はうまく行くはずもなく、オオタカはそのまま新浜鴨場の方へ姿を消した。
  自分と同大の獲物を襲うとは、王鷹、と呼びたくなってしまった。

(文と絵:行徳野鳥観察舎 蓮尾純子 )


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いちかわの野生生物




ミソサザイ( Troglodytes troglodytes )

カット(sz306.gif、約10KB)   朝晩、霜が降りるようになり、寒さが一段と厳しくなると、ミソサザイが大町の自然観察園に冬を過ごしにやって来ます。
  ミソサザイは、全長が10.5cmほどしかない、たいへん小さな鳥で、体は丸く、尾は短く、日頃みなれたスズメに比べると、ふたまわりもみまわりも小さく見えます。
  元来、夏は山地のよく繁った湿った森で繁殖し、冬も山麓の渓流沿いのやぶや、がけ地などで過ごす、いわば山間渓流の鳥で、市川のように市街化の進んだ地域では大変珍しいのですが、観察園は好みに合うのか毎年2〜3羽が冬を過ごしています。
  観察園では、暗い林の下生えや倒木、枯れ枝が積まれたがけ下の日陰などになわばりをつくり、せわしなく動きまわりながら餌の昆虫を捕まえてくらしています。短い尾をたてて、チョッ、チョッ、チョッとやや鋭い大声で地鳴きをするさまは、とても愛らしいものです。寒さがわずかにゆるんだ早春、また山地へと旅立っていきます

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むかしの市川




タチスミレのこと

カット(sz307.gif、約3KB)   昭和30年代の後半だったと思います。国府台3丁目地先の江戸川河川敷のヨシ原の中に、白くて、やや紫を帯びた花をつけた細々とした草を見つけました。はじめは、マメ科のつる草かと思いましたが、よく見ると、ヨシなど他の草によりかかって高さ40cm位に立ち上がり、花の形はスミレのようでした。持ち帰って調べたところ、タチスミレとわかりました。
  しかし、その時は、あまり気にもとめずにすぎてしまいました。   市川自然博物館に勤務するようになってこのタチスミレのことを思い出し、現地を探してみましたが、環境も当時とはだいぶ変わり、その姿を見つけることはできませんでした。
  実は、このタチスミレは、全国的にきわめて分布が限られていて、平凡社刊の「日本の野生植物」によれば、『関東地方に稀に産し、朝鮮、中国、アムールに分布する』とあります。千葉県植物誌には市川の他、手賀沼畔、我孫子が記されていますが、ここでも、おそらく姿を消してしまっているものと思われます。
(博物館指導員 大野景徳 記)  

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わたしの観察ノート No.12



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