◆  市川自然博物館だより  ◆

4・5月号

「都市と生物」 第1回

カラス

市立市川自然博物館  1995年4月1日発行

特集記事 街かど自然探訪 行徳野鳥観察舎だより ちょっと、いい所 観察ノート

 



特集記事



「都市と生物」第1回 カラス

 都市は、私たち人間が機能と効率を優先して、人工的に作り上げた空間です。都市化によって多くの自然環境が失われたため、安心して生きていけるすみかや、食べ物となる動植物を充分に得ることができず、数多くの生物が都市から姿を消しました。一方で、都市で生活し、その勢力を拡げている生物もいます。特集「都市と生物」シリーズでは、都市とそこで生きる生物との関わりについて紹介していきます。
 第1回は、都市で最近増加しているといわれるカラスについてです。

都市にくらすカラスは2種類

 都市で普通に見られるカラスには、ハシブトガラスとハシボソガラスの2種類がいます。ハシブトガラスは、もともと南方の森林に起源があると考えられている種類で、嘴が太く、カァーと澄んだ声で鳴きます。ハシボソガラスは、北方の草原などの開けたところが起源で、嘴はやや細く、グァーとしわがれた声で鳴く特徴があります。
 現在、市川には、どちらのカラスもいて、暮らしぶりもあまり違わないようですが、どちらかというとハシブトガラスの方が多く見られます。そして、市川よりも都市化の進んだ都心の銀座や新宿などでは、ハシブトガラスしかいないといわれています。ハシブトガラスの方が、より都市に適応していると考えられています。

鉄塔に営巣

 カラスは、2月下旬から繁殖期に入ります。都市のカラスはどんな所で子育てするのでしょうか。都心や市街地で、カラスの営巣場所をさがしてみると、面白いことに送電線の鉄塔やビル屋上の広告塔、野球場の照明塔などの人工物の高所に数多くみつかります。市川市内では、市街地で送電線の鉄塔に営巣する例が多く見られ、ひと番いの縄張り(半径 500mほど)の中で、隣接した鉄塔に一時期に2個も3個もの巣がつくられる例もありました。実際の繁殖に使用するのは、このうちの1個だけです。他の巣は、擬巣といって、人や猛禽類などの天敵から、本物の巣を分かりにくくする役割があると考えられ、カラスの用心深さには驚かされます。
 カラスは元来、人やネコなどが容易に近づけない樹高20mもあるような高木や、大きな緑地に程近い樹木などに営巣します。都市では、天敵となる猛禽類もほとんどいない一方、営巣に適した自然条件が少ないために鉄塔などを利用しているのでしょうか。理由はどうであれ、人間の作りだした都市施設に営巣する大胆で柔軟な適応力を持っていることだけは確かなようです。

鉄筋づくりの頑丈な巣

 自然博物館では都市の鉄塔などに営巣したカラスの巣を数多く展示・収蔵していますが、それらには、木の枝とともに針金や針金製のハンガー、合成樹脂の紐やテープなどの人工物が巣材としてたくさん使われています。市川市南八幡の送電線鉄塔につくられた巣は、20本もの針金ハンガーが積み重ねられ、太い針金も巧みに巻きつけてありました。卵を産みつける産座には、枯れ草やコケなどの柔らかい材料が用いられていて、新聞や雑誌などの切れ端やポリエチレンのテープ、ガラス繊維の断熱材なども多量に入っていました。
 こうした材料は、主にゴミとして捨てられたものをカラスが収集してきたもののようです。多数のハンガーは、捨てられたもの以外に、マンションの物干し場や、ベランダにぶら下げられているものを失敬するらしく、洗濯ばさみがくっついたハンガーも巣材になっていました。  都市のカラスが好んで営巣する送電線の鉄塔では、葉が繁る高木に比べて巣が強い風を直接受けるため、巣材が飛ばされたり、バラバラに壊れないような頑丈な巣が必要になります。針金ハンガーは三角形に太い針金が組まれていて大変頑強です。これを、針金を利用してうまくからめると、巣は滅多なことでは壊れません。鉄塔には木の枝が多い巣もつくられますが、ハンガーを多数使った巣に比べて、枝が折れたりゆるんだりして、壊れやすいようです。
 また、ハンガーや針金を利用した巣はとても重く、木の枝で作られた巣が2kg前後であるのに対して、針金入りのものは5kgほどもあります。重い巣は、強風でも飛ばされにくいと考えられます。
 鉄塔に営巣するカラスがこうした利点を理解して、頑丈で重い巣を作るためにわざわざ針金やハンガーを収集しているとすれば、その知恵と行動の柔軟性に感心するばかりです。

田園地帯のカラスと都会のカラス(sz371.gif、約22KB)


豊かな食生活

 カラスは雑食性で、植物質でも動物質でも、食べることができるものはなんでも食べます。都心の銀座では、飲食店街の残飯に早朝 200羽ものカラスが集まることが確認されています。都市のカラスにとっては、人間が出した残飯や生ゴミなどの餌が重要な食物なのです。残飯の種類や量、ゴミ処理の方法などでカラスのそれらに対する依存度は変化しますが、自然界で餌を探すより、都会で毎日多量に出されるゴミを利用するほうが、カラスの食生活は安定し、繁栄に繋がっているようです。
 動物の死体もカラスにとっては御馳走です。車に轢かれたイヌやネコの死体は、たちどころに見つけて食べてしまいます。カラスは、ゴミや動物の死体を食べることで、生態系の中の分解者の役割を果たしていることになります。
 子育ての時期になると、さらに多くの餌が必要になり、カラスも大変です。残飯やたまに出会う動物の死体だけでは、子育てを安心してできません。カラスの子育ての時期は、ちょうどヒヨドリやキジバト、スズメ、ツバメ、ドバトといった都市に暮らす他の鳥たちの子育てや巣立ちの時期です。親ガラスは縄張り内を毎日パトロールし、スズメやヒヨドリの卵や雛を狙います。巣立ちを待ち構えていて、巣からフラフラと飛び出したスズメの幼鳥をすばやく捕まえた例も目撃されています。こうして、まるで猛禽のように他の生物を捕まえて食べるカラスは、都市では天敵もなく、生物同士の「食う食われる」の関係の中で頂点に立っているといって良いでしょう。雑食性であるカラスは、幅広い食性を持つことで、都市生態系の中で頂点に立ち、繁栄することができていると考えられます。

人間を利用するカラス

 都市はカラスにとって住みやすい場所です。残飯などの餌が豊富にあって、安定した食生活を保てます。鉄塔やビルなどの人工環境での巣作りや、針金やハンガーなどの手頃な廃物を利用することで、安全な住環境も得ることができます。最近は、人々はカラスを含めた野鳥に優しく、わざわざ餌を与えてくれることもあります。このように、カラスは人間生活にとても密着し、上手に人間を利用して生きているといえます。
 市川市内にお住まいで、都市のカラスを研究された都市鳥研究会代表の唐沢孝一さんは、その著書の中でこうした都市のカラスを「同じカラスでありながら、繁華街で生ゴミをあさる時には警戒心がつよく、公園では大人をも恐れなくなってきた。安全であれば大胆にふる舞い、危険を感ずれば細心の注意をおこたらない。そんなフレキシブルな適応力こそカラスの魅力であり、都会で生き抜くすべでもあろう。」と述べていらっしゃいます。たくましい都市のカラスは、豊かな消費文明を営む人間を、恐ろしい相手と言うよりは、ありがたい援助者のように思っているのではないでしょうか。私達の生活様式が変化しない限り、カラスも繁栄を続けることでしょう。

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街かど自然探訪


カット(sz372.gif、約3KB)
島尻・川、川、川.....

 島尻で、川の堤防に上がってみます。目の前は旧江戸川です。「旧」とはいうものの、これが本来の江戸川です。右手には大きな水門があって、新中川が合流しています。
 新中川は昭和38年に開削された人工の水路です。左手には妙見島があり、その手前の東京側にも小さな水門があります。新川の入口です。新川は、小名木川を経て隅田川までつながっていて、江戸時代は行徳の塩を江戸に運ぶ重要な輸送路でした。
 川にも、いろいろあるものです。

 


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行徳野鳥観察舎だより



春から初夏へ

カット(sz373.gif、約2KB)  南風が吹き抜ける。雨上がりで春風特有のほこりっぽさもなく、いかにもさわやかだ。咲き残りの山桜の花びらが吹雪のように舞って、みるみるうちに葉桜に変わってしまった。
 あたりは目にしみるような新緑で、いつの間にこんなにきれいに芽が伸びたのかとびっくりするほど。ノイバラやスイカズラのつぼみも目につくようになった。池ではヒキガエルのおたまじゃくしがうようよと泳ぎ、渡去の近いアオジが美しい声でさえずっている。
 冬じゅう毎日のおなじみだったセグロカモメたちはもうすぐ姿を消す。餌の小魚をもらいにくるサギたちの目先 (目と嘴の間の皮膚の露出部) が鮮やかな婚姻色になった。
 春から初夏へ。一気に季節がかわる。

(文と絵:行徳野鳥観察舎 蓮尾純子 )

 

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ちょっと、いい所




カエルウォッチングに最適 自然観察園

カット(sz374.gif、約12KB)  自然の宝庫として知られる自然観察園は、カエル・ウォッチングの場としても最適です。ここには市内で見られるカエル6種類がすべていて、特に4〜5月は、それらの存在を確認しやすい季節です。
 この時期、水中にはニホンアカガエル、ヒキガエル、ウシガエルのおたまじゃくしが、無数にいます。一帯にはクルルルコロロロというシュレーゲルアオガエルの声が響き、また、時たまクワックワックワッというニホンアマガエルの声も聞こえます。そして、もう1種類のトウキョウダルマガエルだけは、数が少なく、めったに見ることができません。

【自然観察園への交通】
 JR本八幡駅、市川大野駅より「動植物園」行きバスで終点下車、徒歩すぐ。または、北総線・大町駅下車、徒歩すぐ。

 

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わたしの観察ノート No.19



◆大町自然観察園より−−−−−−−−
                   (2/4、5) :北本六良さん (南大野在住)
                   (2/24)  :根本貴久さん (菅野在住)
                   (3/ 2)  :須藤 治 (自然博物館)  
※当館発行の『市川市鳥類目録1986年〜1991年』では、市内でのカヤクグリの観察記録はありませんでした。
宮橋美弥子 (自然博物館)  
須藤 治 
金子謙一 (自然博物館) 
阿部則雄さん (船橋市在住) 

◆市川北高校付近より−−−−−−−−
北本六良さん 

◆柏井小学校付近より−−−−−−−−
◆南大野より−−−−−−−−−−−−
以上 高畑道由さん(南大野在住) 

◆堀之内貝塚公園より−−−−−−−−
以上 金子謙一 

◆じゅん菜池公園より−−−−−−−−
根本貴久さん 

◆里見公園付近より−−−−−−−−−
◆坂川河口より−−−−−−−−−−−
以上 金子謙一 

◆国府台より−−−−−−−−−−−−
秋元久枝さん (国府台在住) 

◆国分より−−−−−−−−−−−−−
手塚 茜さん (国分在住) 

◆八幡より−−−−−−−−−−−−−
城和善蔵さん (八幡在住) 

 

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