◆  市川自然博物館だより  ◆

2・3月号

「都市と生物」 第6回

ヒキガエル

市立市川自然博物館  1996年4月1日発行

特集記事 街かど自然探訪 行徳野鳥観察舎だより ちょっと、いい所 観察ノート

 



特集記事



「都市と生物」第6回 ヒキガエル

 うららかな春の日にひょっこり姿を現したヒキガエルが、いつもの池で卵を産み、いつもの植木鉢に居場所を定める−−庭に住み着いたヒキガエルとのつかず離れずのつきあいは、結構、長く続くものです。
 ヒキガエルは、古くからの住宅地などでは必ず見られる、ごく身近なカエルです。田んぼの減少とともに多くのカエルが姿を消していくなか、都市とヒキガエルの関係を考えます。

◎都市と生物−−−−−−−−−−−−−

 今年度の博物館だよりでは、「都市と生物」と題して、野生生物と都市環境との関係を特集してきました。現在の市川市の環境を広く「都市」と位置づけ、いくつかの生物について、市内での生息状況などから都市との関係を探りました。
 取り上げた中で、もっとも都市に適応していたのはカラス(ハシブトガラス、ハシボソガラス)でした。生ゴミを食べ、ハンガーや針金で巣を作るなど、その暮らしぶりは都市環境の特徴をうまく利用していました。最近ふえているホンドタヌキにも、カラスと似たような点がありました。
 一方、スズメバチ(キイロスズメバチ、コガタスズメバチ)は、都市の中の自然的な部分(公園や住宅地)に目をつけ、餌や営巣場所の選択の幅を広くすることで都市に適応していました。セイタカアワダチソウは、都市の不安定さゆえに生じる空き地に繁栄の場を求めていました。また、アユは、決して都市環境を好んでいるわけではなく、江戸川の環境が、たまたまアユにとって都合よく残っていただけでした。
 都市と生物の関係は、一様なものではありません。ヒキガエルにしても、市内で普通に見られるからといって、単純に都市が好きとは言い切れない面があります。

<<シリーズで取り上げた生物の都市好き度>>
都市が好きカラス(ハシブトガラス、ハシボソガラス)
都市を好きになりつつあるホンドタヌキ
都市でもやっていけそうスズメバチ(キイロスズメバチ、コガタスズメバチ)
都市になりかけの場所が好きセイタカアワダチソウ
たまたま都市に残っただけアユ

◎ヒキガエルは、都会好き?−−−−−−

 カエルは、水辺を代表する生物のひとつです。どの種類のカエルでも、卵を産み、オタマジャクシが育つためには水が必要です。でも、成体のカエルの場合、生活場所はさまざまです。水のそばで暮らす種類もいれば、水から離れて暮らす種類もいます。
 市内に生息する6種類のカエルでも、たとえばウシガエル(食用ガエル)は、池や水路などおもに水中で暮らします。ニホンアカガエルとトウキョウダルマガエルは水中ではないものの、田んぼで多く見られます。これらは、水から離れずに暮らす種類です。指の間の発達した水かきが、その暮らしぶりを示しています。
 ニホンアマガエルとシュレーゲルアオガエルは、指先が吸盤になっています。この2種類は草や木に登るのが得意で、生活も水辺の草や低木の上で営みます。田んぼのそばの柿の木に登ったら、柿と一緒にニホンアマガエルが取れたという話もあり、実際、同じ田んぼでもニホンアカガエルとトウキョウダルマガエルが地上付近で見つかるのに対し、この2種類は葉上で見つかります。水辺の林では樹上にも多く、木の上から鳴き声が降り注ぐこともあります。
 ヒキガエル(市内のものは亜種・アズマヒキガエル)は、本来は雑木林の地面で暮らしています。吸盤や水かきがなく、ただ歩くだけが取り柄ですが、この6種類の中ではもっとも乾燥に強いカエルです。湿ってさえいれば、特に水がなくても困りません。そしてこのことが、都市化に対して有利に働きました。

都市化とカエルの関係(sz421.gif、約5KB)

 市川のような低地の地域の場合、都市化とは環境の乾燥化を意味します。都市化は田んぼを埋め、アシ原を埋めます。田んぼがなければ、ニホンアカガエルとトウキョウダルマガエルの生存は困難です。ニホンアマガエルやシュレーゲルアオガエルにしても、群生するセイタカアワダチソウや駐車場の隅の草むらではやっていけません。
 そんな中、乾燥に強いヒキガエルは、雑木林が宅地に替わっても、そのまま、庭の隅のジメジメした場所に生活の場を見つけて生き残ることができます。ヒキガエルは元々ひと所にとどまる性質が強いカエルです。適度に湿った庭があれば、そこに住み着き、ミミズやダンゴムシを食べて生き抜くことができるのです。

◎ヒキガエルが暮らせるまち−−−−−−

都市でのヒキガエルの暮らし(sz422.gif、約23KB)


市内ののヒキガエルの分布(sz423.gif、約4KB)  都市化の中でもどうにかこうにか生活の場を見つけたヒキガエルですが、彼らの前途は決して明るいものではありません。それは、最近のまちづくりが結果的にヒキガエルを拒絶する方向で進んでいるからです。
 ヒキガエルが都市で存続し続けるには、生活の場としての庭や公園以外に、もうひとつ重要なポイントがあります。産卵の場です。ヒキガエルは、早春、決まった池に雌雄が集まって一気に卵を産む「蛙合戦」で知られ、産卵そのものは庭のちょっとした池でもできるのですが、最近は、池に集まるための経路が絶たれてしまうことがよくあります。生け垣や板塀が、隙間ひとつないコンクリート塀に替わってしまうのです。それは、歩くだけが取り柄のヒキガエルにとっては大問題です。行く手を阻まれたヒキガエルが、池のない庭で、仕方なく土の上に卵を産んだこともあります。その上、輪禍が追い打ちをかけます。
 ヒキガエルは、野外では長くて10年くらいの命といわれています。繁殖できなくなって、すぐにヒキガエルがいなくなるわけではありません。でも、気がついた時には全然見なくなったなんてこともあり得ます。
 千葉県のカエルに詳しい長谷川雅美さん(千葉県立中央博物館)は、「都市に適応できるカエルはいないと思います。その中でヒキガエルとは、結果的にうまく共存してきました。塀の構造ひとつで、カエルが1種類、身近から姿を消すかどうかが大きく左右されます」とおっしゃっています。

 野生生物のことにまで配慮したまちづくりを、これからはできるでしょうか? 

 


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街かど自然探訪



末広・ハンガー入りのカラスの巣

カット「東沖公園見取り図」(sz424.gif、約3KB)  ハンガー入りの美しい?カラスの巣を見つけました。場所は、末広1丁目の東沖公園。樹高8mほどのクスノキの先端近くに掛かっています。
 カラスの巣は、樹木の多い市の中北部ばかりでなく、行徳地区でも結構見ることができます。相之川の了善寺付近では高い木の上にある巣が見られ、時に送電鉄塔で見つかることもあります。東沖公園の巣は低い位置にあり、材料のハンガーをはっきりと見ることができます。

 


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行徳野鳥観察舎だより



オオイヌノフグリ

カット(sz425.gif、約2KB)  ひさびさの「暖冬でない冬」。急激な気温上昇でびっくりした日はあるにせよ、いつまでも寒い。花が遅い。芽吹きも遅い。「鳥が少ない」……これは単なるグチです。
 それでも立春をすぎると、枯草の間からはっとするほど鮮やかな草花の色が目につくようになる。ホトケノザ、ヒメオドリコソウ、セイヨウタンポポ、オオイヌノフグリ、ナズナ、ハコベ。帰化植物が多いのは少々残念だけれど、ひとつひとつ見つける楽しみは格別だ。ボール紙と割り箸で名札を作って道ばたの花のところに立てた。ありふれた「雑草」ばかりだが、かがみこんでていねいに見てくださる方もある。陽光を満たした小さな杯のようなオオイヌノフグリ。青空を映している。

(文と絵:行徳野鳥観察舎 蓮尾純子 )

 

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ちょっと、いい所




ヤマハンノキを見に、北国分の緑地へ

カット(sz426.gif、約17KB)  『いちかわ植物記』(市川ジャーナル社)にヤマハンノキのことが紹介されています。山地帯や丘陵帯には普通に分布するが千葉県のような平地には少ないこと、北総台地でも何箇所か記録があるものの林の体裁をなすところはほとんどないらしいことが書かれています。
 いま、市内でヤマハンノキが見られるのは、小塚山市民の森、北国分第4緑地柏井雑木林、大町自然観察園などです。いずれも数本生えている程度ですが、北国分地区の2か所は観察しやすいところです。円い葉っぱを手がかりに探してみてはいかがでしょう。

【小塚山市民の森、北国分第4緑地への交通】
 最寄り駅は、北総線・北国分駅です。駅の周辺にいくつかの緑地や公園があるので、歩いて緑地めぐりをしてみるとおもしろいと思います。

 

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わたしの観察ノート NO.24



◆大町自然観察園より−−−−−−−−
金子謙一(自然博物館)
※翌日にも1卵塊見つかりましたが、その後は寒くなったせいか音なしで多数が見られるようになったのは、2月に入ってからでした。
阿部則雄さん(船橋市在住)
※トンボは、たいてい卵か幼虫で冬を越します。ホソミオツネントンボは成虫越冬する珍しいトンボですが、枯れ枝そっくりに化けているので、向こうが動かなければ、ほんの50cmの距離であっても発見は困難です。
金子謙一

◆こざと公園より−−−−−−−−−−

◆南大野より−−−−−−−−−−−−
以上 高畑道由さん(南大野在住)
※チョウゲンボウは、毎冬、南大野あたりに姿を現します。

◆小塚山市民の森より−−−−−−−−
西畑文子さん(北国分在住)


◆堀之内貝塚公園より−−−−−−−−

◆じゅん菜池公園より−−−−−−−−

◆江戸川より−−−−−−−−−−−−
  
以上 根本貴久さん(菅野在住)

◆原木より−−−−−−−−−−−−−
田中利彦さん(船橋市在住)

◎クリスマス寒波をはじめ、幾度も寒波が来て雪も積もった、寒い冬でした。


 

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