◆  市川自然博物館だより  ◆

6・7月号

配慮したい市内の野生生物 (2)

トンボ

市立市川自然博物館  1997年6月1日発行

 特集記事  街かど自然探訪  行徳野鳥観察舎だより  むかしの市川  観察ノート

 



特集記事



配慮したい市内の野生生物 (2)   トンボ

 本年度は、今後さまざまな面で配慮が望まれる市内の野生生物について特集しています。第2回はトンボです。トンボは、飛翔力があるため市内各所でその姿を見ることができます。しかし、世代を繰り返すのに適した環境は少なくなっています。トンボについて、市内での現状と問題点を報告します。

谷津のトンボ

 谷津は、市北部の細い谷に見られる自然環境です。豊かな湧き水、湿地、斜面林が合わさって、ひとつの環境を形づくっています。
 ヒガシカワトンボは、市内では谷津だけで見ることができます。現在、生息しているのは大町公園の自然観察園です。ここでは、清らかな湧き水の流れで幼虫時代を送り、羽化後は斜面林や湿地の草むらで生活しています。谷津を構成する基本的な環境が、ヒガシカワトンボの生活を支えているわけです。
 オニヤンマも、谷津で暮らすトンボです。市北部を中心に幅広くその姿が見られますが、幼虫には湧き水の流れが必要ですし、成虫にも採餌や交尾の場として斜面林が必要です。飛翔力があるので悠然と大空を飛ぶ成虫の姿は比較的多く見られますが、幼虫の生息適地はそれほど多くありません。
 ヒガシカワトンボやオニヤンマには、谷津の環境が不可欠です。

林のトンボ

 トンボは、確かに水辺の昆虫ですが、水辺で過ごすばかりではありません。種類によっては、羽化後は林に移って生活します。
 ヤンマ類の中には、林の中で生活し、木々に囲まれた水辺で産卵するものがあります。最近市内で記録されたなかでは、ヤブヤンマ、クロスジギンヤンマ、カトリヤンマ、マルタンヤンマといった種類がそうです。また、ヤンマ類のほかに小型のアカトンボ類(マイコアカネ、マユタテアカネ、コノシメトンボ、ヒメアカネ、リスアカネ)も、羽化後しばらくは水辺を離れ、林の中や縁で餌をとって暮らします。そのほか、イトトンボ類の一種ホソミオツネントンボは木の枝にとまって成虫で越冬し、オオアオイトトンボは水辺にせりだした木の幹や 枝に卵を産みつけます。
 これらのトンボにとっては、林も水辺と同じくらい大切です。トンボ=池といった固定概念ではなく、林の重要性も認識したいものです。

田んぼや休耕田のトンボ

 シオヤトンボは、湧き水が流れ込むような田んぼに生息します。ハグロトンボは、そういった田んぼの間を流れる小川で見られます。市北部の谷津やそれに続く田んぼで普通に見られた種類ですが、近年、激減しています。
 これは、田んぼがなくなったことが大きな原因です。同じく田んぼの代表的なトンボであったアキアカネやシオカラトンボは学校のプールなどにうまく生息の場を見いだしましたが、シオヤトンボやハグロトンボは、失われた田んぼに替わる環境を見つけることができなかったわけです。
 キイトトンボは、セリが茂るような休耕田を好みます。かつては自然観察園に多数生息していましたが、「自然保護」の名のもとに湿地の植物群落を遷移するにまかせて放置した結果、カサスゲやヨシが密生してしまい、ほとんど見られなくなりました。
 その後、ビニール貼りのプールを一部に設けて水草を栽培したところ、そこを起点に少しずつ数が回復してきましたが、キイトトンボにとっては、湿地を放置したことは保護にはつながりませんでした。

開けた池のトンボ

 都市化が進んでも、開けた池のような環境は残ります。昔からの池がそのまま残る場合もあれば、プールや調節池、公園の池などが開けた池の機能を担う場合もあります。
 開けた池には、さまざまな種類のトンボが飛来します。よく見かけるのはシオカラトンボやコフキトンボ、ギンヤンマなどですが、時には、ウチワヤンマ、オオヤマトンボ、ショウジョウトンボ、チョウトンボといった、市内ではちょっと珍しい種類も飛来します。
 もっとも、成虫が飛来することと、その池が繁殖に適していることとは別の話です。市内の開けた池の場合、水が汚かったり、岸辺がコンクリートで固められていたり、コイが放されていたり(ヤゴを食べてしまう!)と、幼虫時代を過ごすには不適な場所がほとんどです。つまり、飛来した成虫の供給源は他の地域にあるわけです。たまたま飛来した成虫を見て、「市川にも珍しい種類がいる!」と喜ぶのは考えものです。

目につきにくいイトトンボ類

 小さなイトトンボ類は、目につきにくく互いに似ていて区別もつかないので、あまり気がつかない存在です。おもに池や湿地に生息しますが、アジアイトトンボのように市内各所で普通に見られる種類があるかと思えば、モートンイトトンボ、ムスジイトトンボ、オオイトトンボのように断片的な観察記録しかないものもあります。
 イトトンボ類は、池と湿地に多く生息し ます。池は、水草(「金魚藻」や「水蓮」のような感じの水草:マツモ、ホザキノフサモ、ガガブタ等)のある池がよく、湿地はセリやイグサが茂るような開けた湿地です。しかし現在、水草のある池は市内にはなく(唯一、じゅん菜池公園の自然環境ゾーンで移植栽培している)、湿地も次々に 埋め立てられています。
 市内のイトトンボ類は、どこで繁殖し、羽化後どこで暮らしているのか、そんな基本的な生活史や生態すら知られないまま、生息環境とともに失われようとしています。

江戸川のトンボ

ヒヌマイトトンボとナゴヤサナエ(sz501.gif、約13KB)  市川のトンボについて語る時、江戸川のトンボを忘れることはできません。江戸川というと鳥や魚にばかり目が向きますが、江戸川のような大きな川には、池や湿地では見られない独特な種類のトンボが生息しています。
 絶滅危惧種のヒヌマイトトンボは、市内の江戸川河川敷のごく限られた場所に生息しています。大きな川の河口部、海水の影響があるような場所のヨシ原だけに生息していて、河川改修や開発の影響で全国的に少なくなっています。
 市内の生息場所は、高さ2mにもおよぶヨシが密生する水辺です。人が踏み跡をつけるだけでも、そこから外敵の鳥やトンボ(大型種)が侵入してしまうため、観察のための園路などは設けられていません。ただ鬱蒼としたヨシ原があるだけで、内部のゴミ拾いも行っていません。それは、そうやって密生したヨシ原を維持することが、このトンボの保護につながるからです。
 ヒヌマイトトンボはごく小さなトンボで一生をこの小さなヨシ原で送っています。周囲の河川敷がグラウンドなどに整備される中、ポツンと残ったヨシ原で、かろうじて世代を繰り返しています。
 ナゴヤサナエは、あまり知られていない変わった生態のトンボです。江戸川の上流の方に生息場所があり、そこで産まれた幼虫が江戸川の水の中を泳いで(流れて?)市川まで下ってきて、市内の江戸川の岸辺で羽化します。市内で見られるのは、幼虫が水から出て羽化する光景だけです。羽化した成虫は、羽化後1時間もたたないうちに大空高く飛び去ってしまいます。
 ナゴヤサナエは、江戸川・利根川流域の広い範囲を生活に利用しています。それは、ヒヌマイトトンボが小さなヨシ原だけで一生を送るのとは対照的です。しかし、江戸川上流のどこで成虫が成熟し、どこで産卵しているのか、そういう詳しいことはよくわかっていません。ただ、利根川・江戸川という川がナゴヤサナエにとって重要であることは確かです。

 


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街かど自然探訪



中山・新緑に映える祖師堂

カット(sz503.gif、約13KB)
 保存大改修をほぼ終えた、法華経寺の祖師堂が姿を見せています。この大改修で、なじみ深かった入母屋造銅板葺の屋根は幕末大修理以前の比翼入母屋造こけら葺に戻されました。
 今度の屋根は、褐色できめ細かな質感をもち、背景の緑と見事なコントラストを描き出しています。効果抜群の緑、構成しているのはクスノキ、スダジイ、ケヤキなどです。なかでもクスノキとスダジイの樹形と色合いは、褐色の屋根とよく合うようです。

 


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行徳野鳥観察舎だより



気分さわやかな白い鳥

カット(sz504.gif、約3KB)
 白い鳥が、保護区の水の上をひらひらと飛んでいます。あれっ、空中の一点でとまった、と思うと、いきなり垂直に水に飛び込みました。小さい魚をねらっているのです。コアジサシ。ニューギニア 方面から渡ってくる夏鳥で、黒いベレー にサングラス、黄色い嘴にオレンジ色の足というキュートな姿。涼しげなダイビ ングや軽快な飛び方は見ているだけでも 気分がさわやかになります。
 海岸の砂浜や河原で繁殖しますが、最近は希少種となりました。ここ数年来、東京湾では幕張メッセの臨時駐車場が最大の繁殖場になっています。カラスの被害で育つヒナはとても少ないそうですけど。
 4月なかばに渡来して、8月末から9月には飛去。日本での短い滞在期間の子育てがうまくいくよう、祈っています。

(文と絵:行徳野鳥観察舎 蓮尾純子 )

 

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むかしの市川



クヌギの根元

カット(sz502.gif、約15KB)
 昭和40年から、私は国府台小学校に勤務していました。この学校の校庭の中央に大きなクヌギの木がありました(現在もあります)。
 7月宿直だった翌朝6時過ぎに起きて校庭を見ていると、一人の子どもが入って来ました。その子はクヌギの木の根元を掘り始め、そのうち何かを見つけたらしく大事そうに手の中に入れて帰っていきました。そこで私もそのあとを掘ってみましたが、何もいませんでした。子どもに聞くと、「根元にカブトムシやクワガタがいるんだよ。」ということでした。
 次の宿直の時、早く起き掘ってみるとコクワガタがでてきました。そこで斜面にもクヌギのあるのを思い出して行ってみると、籔の中の木まで通路ができて、根元は掘られた跡がありました。ここにもいたのでしょう。住宅地の多くなったこの地も、まだカブトムシやクワガタが住める環境なのだな、と思うのでした。

(博物館指導員 鎗田安之 記)

 

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観察ノート



◆動物園内より....
宮橋美弥子(自然博物館)

◆自然観察園より....
金子謙一(自然博物館)

◆大野より....
高畑道由さん(南大野在住)

◆北方遊水池より....
◆冨貴島小学校付近より....
以上 石井信義さん(菅野在住)

◆国府台より....
◆江戸川より....
以上 秋元久枝さん(国府台在住)
    ※ツバメに混じっていたのは、イワツバメと思われます。
◆じゅん菜池より....
◆小塚山市民の森より....
◆菅野より....
  
以上 根本貴久さん(菅野在住)

◆原木より....
  
田中利彦さん(船橋市在住)

◎晴れの日と雨の日、暖かい日と肌寒い日が交互に来る順調な春でした。
 桜は4月1週には満開になりました。

 

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