◆  市川自然博物館だより  ◆

10・11月号

配慮したい市内の野生生物 (4)

脊椎動物

市立市川自然博物館 1997年10月1日発行

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特集記事



配慮したい市内の野生生物 (4)   脊椎動物

 脊椎動物(哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類)は、食物連鎖のなかで上位に位置することが多い生物群です。地域の自然環境が悪化し、生態系が単純化すると、早い段階で姿を消してしまいます。今回は、脊椎動物(前号で取り上げた鳥類を除く)について、現状や問題点を探っていきます。

配慮を要する哺乳類

 哺乳類は、一般に体の大きなものが多く、生活にも広い空間を必要とします。そのため都市化による自然環境の減少や生態系の単純化は致命的で、他の生物に先駆けて姿を消してしまいます(タヌキのように都市化に適応して増加している種類もある)。現在、市内に生息している哺乳類は次表のとおりです。このなかでは、ノウサギについて、今後、特に配慮が望まれます。都市化の影響による絶滅が心配されるからです。
 ノウサギは、市内では今も3ヵ所で生息が確認されています。大町自然観察園一帯、柏井雑木林一帯、大柏川調節池(北方遊水池)一帯です。かつては市北部で幅広く見られま

市内に生息する哺乳類

中型の種類
ノウサギ(ウサギ目ウサギ科)
マスクラット(齧歯目ネズミ科)帰化
タヌキ(食肉目イヌ科)
イタチ(食肉目イタチ科)
ハクビシン(食肉目ジャコウネコ科)帰化
小型の種類
ジネズミ(食虫目トガリネズミ科)
ヒミズ*(食虫目モグラ科)
アズマモグラ(食虫目モグラ科)
アブラコウモリ(翼手目ヒナコウモリ科)
ハタネズミ*(齧歯目ネズミ科)
カヤネズミ(齧歯目ネズミ科)
アカネズミ(齧歯目ネズミ科)
ドブネズミ(齧歯目ネズミ科)帰化
クマネズミ(齧歯目ネズミ科)帰化
ハツカネズミ*(齧歯目ネズミ科)帰化

(*は、確実な記録はないが生息が推測される種類)

したが、今ではこれらの場所は貴重な生息地になってしまいました。いずれも林や草原がまとまった面積で残っている市内でも有数の場所です。しかし、この3ヵ所においても状況は厳しいものがあります。それは、繁殖の問題です。
 ノウサギのように夜行性で警戒心が強い動物は、観察すること自体が容易ではありません。生息の確認といっても、食痕(草や木をかじった痕)や糞、足跡などによる場合がほとんどです。繁殖が確認されることは滅多にありません。しかし、ノウサギがその地で存続し続けるためには、世代交代は不可欠です。繁殖がきちんと行われていなければ真の生息地とは言えないのです。
 3ヵ所のうち、現在、繁殖が確認されているのは大町自然観察園一帯だけです(平成8年4月に畑の整地作業中に4頭の仔が保護された)。世代交代も含めて考えると、ノウサギの確実な生息地は市内に1ヵ所しかないというわけです。
 ノウサギは、巣を作りません。仔は、直接地面に産み落とされます。そんな無防備な仔にとって、林や草原は天敵からの隠れ家と豊富な餌を供給してくれる大切な環境です。しかし、市内ではまとまった面積の林や草原は少なくなりました。また、野生化した犬や猫が増加し、ノウサギの仔の脅威になっているとも思われます。現状のままでは、ノウサギが、かつて市内に生息していたキツネやニホンリスと同じ運命を辿るのは時間の問題と思われます。

配慮を要する爬虫類

 市内に生息する爬虫類は、カメ類ではクサガメとミシシッピアカミミガメ(いわゆるミドリガメで人が放したもの)、トカゲ類ではヤモリ、トカゲ、カナヘビ、ヘビ類では確実なものとしてアオダイショウ、シマヘビ、ヤマカガシ、シロマダラ、可能性があるものとしてジムグリ、ヒバカリ、マムシがあります。
 このグループは、博物館における情報収集が進んでいない分野なので、なかなか市内の全体的な状況はわかりません。ただ、池や湿地、林といった自然環境がなければ世代を繰り返せないという点は多くの種類に共通していると思われます。
 なお、自然観察園には「マムシ注意!」の看板が多く立っていますが、博物館にはマムシの採集記録も目撃記録もありません。もし市内でマムシが生息している場所があるとすれば、むしろそこは豊かな生態系が残る場所として配慮が望まれるくらいです。

配慮を要する両生類

 両生類は大きくカエル類とイモリ・サンショウウオ類に分かれますが、市内で見られるのはカエル類だけで、アズマヒキガエル、ニホンアマガエル、ニホンアカガエル、トウキョウダルマガエル、ウシガエル、シュレーゲルアオガエルの6種類が生息しています。かつてはイモリも生息していましたが、すでに姿を消してしまいました。
 市内のカエルのうちで、今後、配慮が望まれるのは田んぼに生息する3種類−−ニホンアカガエル、トウキョウダルマガエル、シュレーゲルアオガエル−−です。
 トウキョウダルマガエルは、ほぼ一生を田んぼで送ると言われるほど田んぼの環境を好むカエルです。市内ではもう滅多に見られなくなりました。ニホンアカガエルは、冬でも水がたまっているような湧き水に近い田んぼを産卵場とします。バブル経済期以降、市内では田んぼがどんどん埋め立てられ、市内の産卵場は減少の一途をたどっています。シュレーゲルアオガエルも、田んぼの畦などの窪みに泡に包まれた卵を産みます。やはり、産卵適地が年々減ってきているようです。
 深すぎない池であり、乾きすぎない陸である田んぼは、水と陸の接点に暮らすカエルにとっては大切な環境です。

配慮を要する魚類

 市内の魚類については、その生息環境を3つに区分して考える必要があります。    このうち、内陸の水系(湧水、小川、田んぼ・池)は、都市化の影響を直接的に受けた場所です。埋め立て、水辺のコンクリート化、暗渠化、水質の悪化などにより、つぎつぎに魚が姿を消しました。メダカ、タナゴ類(ヤリタナゴ、ゼニタナゴ)など内陸の水系で一生を送る魚はもとより、ナマズなどの江戸川から入ってくる魚、アユなどの東京湾から入ってくる魚も見られなくなりました。今では、モツゴ、タモロコ、ドジョウ、トウヨシノボリなど限られた種類が見られるにすぎません。
 内陸の水系に生息する魚で、今後、特に配慮が望まれるのはスナヤツメとホトケドジョウです。いずれも湧水が豊富で、自然のままの形状をとどめた池や小川に生息します。市内では、大町自然観察園とその水系だけで見ることができます。
 江戸川(市川は下流域に相当)で見られる魚にはいくつかのタイプがあります。コイなどのように日常的な生活の場としている魚、江戸川の中・上流域や利根川から一時的に入ってくる魚、東京湾から一時的に入ってくる魚、海と川の回遊コースとして通過する魚などです。このうち、日常的な生活の場としている魚と回遊コースとしている魚については、市内の江戸川がその生活に確実に組み込まれているという点で配慮が必要となります。
 なかでも回遊コースとしている魚については、特に配慮が望まれます。代表的なのはアユ、ウナギですが、そのほかサクラマスなどもコースとして利用していると言われています。
 江戸川は、東京湾と利根川という自然豊かな海と川をつなぐ唯一のコースです。回遊する魚の多くは市内を通過するだけですが、市内の江戸川を通ることなしには回遊は成立しません。その意味では、回遊コースにあたる他の多くの地域と同様、市川にもその回遊を保証する責務があるといえます。特に市内には、江戸川で実質的に唯一とも言える水門が存在し、時にその操作によって回遊が阻害されることがあります。回遊という習性をもつ魚に対する配慮が望まれます。
 東京湾の市川沿岸域に生息する魚にも、いくつかのタイプがあります。一生を沿岸域で送る魚、一時期を沿岸域で送る魚、一時的に入ってくる魚などです。
 東京湾の市川沿岸域の場合、市内が国内生息の北限地にあたるトビハゼのように種として配慮が望まれるものもありますが、むしろ干潟・浅瀬の環境そのものに対する配慮が必要です。それは、東京湾内、特に湾奥部にはほとんど干潟や浅瀬が残っていないからです。塩浜沖の浅瀬、江戸川放水路や行徳鳥獣保護区の干潟には、その場所に独自の生態系が息づき、同時にそこは、湾全体の生態系の一部としても機能しています。他では置き換えられない環境です。

 


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街かど自然探訪



原木・イワツバメの拠点

イワツバメとツバメ(sz521.gif、約5KB)
 原木は航空貨物の流通の拠点で、TACT(航空貨物ターミナル)を中心に各社の倉庫が軒を連ねています。ここでイワツバメの集団営巣地(コロニー)が見つかったのは1983年のことです。
 イワツバメは、山がちの地方に多い鳥です。千葉県内での繁殖は数少なく、当時は柏市、銚子市と原木しかありませんでした。市内ではツバメに混じって時々イワツバメが見られます。原木から、さらに分布が広がるのでしょうか?

 


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行徳野鳥観察舎だより



エクリプスのかも

 この時期のカモは、見分けがむずかしいものの代名詞。寒くなるころには雄のカモはびかびかの繁殖羽に衣がえするので、図鑑を見て種類を調べるのも楽ですが、今はどれも保護色の雌の姿をしています。美しい繁殖羽が隠されているという意味で、この羽色は「エクリプス:蝕羽」と呼ばれています。
コガモ雄の姿(sz522.gif、約4KB)  エクリプスのカモは、雌を見る時と同じ要領で種類を見わけます。体の大きさ足や嘴の色、全体の色あい、頭の形などはたいせつな手がかり。はばたいた時などに翼のもようが見えれば確実な決め手になります。
 「まず、きれいな雄だけ見てくださいね」
 はじめから雌やエクリプスのカモの種類を見分けるのは少々無理。雄の種類をおぼえたころには、雌も自然にわかるようになります。なにげなく楽しむのがコツでしょう。

(文:行徳野鳥観察舎 蓮尾純子 )

 

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むかしの市川



ザリガニ

カット(sz523.gif、約7KB)  昭和37、38年に新田4丁目(宮田小学校第二校舎のすぐ南側)に住んでいました。当時このあたりは排水が悪く、年に1、2回は床下浸水があり、家の前の道路は川のような状態になり、靴を脱いで素足で家まで帰ったことが何回かありました。
 この家の裏は、大家さんの作っている50坪ほどの畑がありました。雨の降った後のある日、畑の端に10cm位のものが動いていました。何だろうと近づいて見るとアメリカザリガニでした。なぜこんなところにいるのだろう。誰かが逃がしたのかな、と思い手を出すと、スルスルとさがり、後ろの方の穴の中に逃げ込みました。
 ア、こんなところに自分の巣穴をつくっていたのか、でも餌などはどうしているのだろう、と思いながら、気をつけて見ていると、雨の時やその後に時々表に出ているのに出会いました。

(博物館指導員 鎗田安之 記)

 

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わたしの観察ノート No.34



◆動物園付近より
◆自然観察園より
以上 須藤 治(自然博物館) 

◆柏井雑木林より
柏井研究講座にて 

◆国府台3丁目より
秋元久枝さん(国府台在住) 

◆堀之内貝塚公園より
◆小塚山市民の森より
以上 根本貴久さん(菅野在住) 

◆大洲より
作田修二さん(大洲在勤) 

◆原木より
田中利彦さん(船橋市在住) 

◎6月に2度も台風が上陸しました。6月20日の台風は市内にも雨と風をもたらしました。
 しかし、台風以外は梅雨なのにほとんど雨が降りませんでした。

 

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