◆  市川自然博物館だより  ◆

1998年4・5月号

特集「いちかわの蛾」 1

身近な毒のある蛾

市立市川自然博物館 1998年7月1日発行

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特集記事



いちかわの蛾 1 身近な毒のある蛾

  蛾−昆虫の中で蝶と同じ鱗翅目に属している蛾は、蝶の何倍もの種類が知られていますが、見た目の翅の色や不快な印象が強いことなどから蝶に比べて地味な存在です。今年度の特集では、市内に生息している蛾の中からとくに話題性のある蛾を選んで、特徴や生態などを紹介していきます。第1回は、「身近な毒のある蛾」です。

蛾の中で毒があるのは少数派

  世界中には約11万4千種の蛾が、日本には、約75科5千種余りの蛾がいます。
 
  市川市にはこのうちの約11%にあたる564 種の蛾が今まで記録されています。
 
  「蛾」というとその姿を見たり想像したりしただけで「きたない」「不快だ」あるいは「毒がある」というように思ってしまう人がいますが、毒があるとされているのは一部の少数の種に過ぎません。
 
  さらに、毒を持つとされる蛾でも毒を持っている時期は限られています。カレハガ科が幼虫とサナギの時期に、ドクガ科が卵から成虫(メスのみ)まですべての時期に、残りの科が幼虫の時期に毒を持ちます。これらの科に含まれている一部の種以外の蛾については、毒はまったくありません。
 
毒を持つ蛾の科名と時期および代表的な種類
毒を持つ蛾の科名毒を持つ時期代表的な毒を持つ種類
マダラガ科幼虫タケノホソクロバ など
イラガ科幼虫イラガ、クロシタアオイラガ など
カレハガ科幼虫、サナギマツカレハ、タケカレハ など
ドクガ科卵、幼虫、サナギ、成虫ドクガ、チャドクガ など
ヒドリガ科幼虫ヤネホソバ、ツマキホソバ など

毒のある蛾の症状には3型ある

  蛾の毒成分については、「たん白質説」「多糖類説」「ヒスタミン説」といった諸説があります。
 
  つまり、現在のところ確実な成分については解明されていないのですが、毒毛に触れた時及びその後の症状は、3型に分けられ、科によって決まっています。
 
 1.かゆみ型(ドクガ科)
・幼虫に触れると、ヒリヒリとし、激しいかゆみやかぶれ、発疹などが起きる。
・幼虫の毒毛は、抜け落ちやすいため、幼虫に触れなくても食草の周辺や幼虫が脱皮した脱皮殻にも毒毛がついていて被害にあう。
 2.激痛型(イラガ、ヒトリガ科)
・幼虫に触れると電気にでも打たれたようにピリピリと激しい痛みがある。しかし、この痛みは数時間で消える。
・かゆみ型と異なり幼虫に触れなければ被害にあわない。
 3.中間型(マダラガ、カレハガ科)
・幼虫に触れると最初に激しい痛みがあり、後にかゆみや発疹が起きる。
・激痛型と同じく幼虫に触れなければ被害にあわない。

身近にいる毒のある蛾

  3型ある毒のある蛾の中には、私たちの身近にいて被害を及ぼす種類があり、ここでその種類を紹介します。
 
  サザンカやツバキといったツバキ科植物の庭木にときどき、頭が黄褐色で体が暗褐色の毛虫が集団で葉を食べているのを見かけることがあります。この毛虫が図1に示した、かゆみ型の毒を持つ「チャドクガ」です。
 
  チャドクガは、近似種であるドクガが成虫も幼虫も年1回発生するのと異なり、夏と秋の年2回成虫も幼虫も発生します。
 
  チャドクガの幼虫の毒毛は、後に述べる2種と異なり非常に抜け落ちやすく、幼虫に触れなくても発生している食草の周辺に落ちている毒毛により同じように被害にあいます。
 

図1:チャドクガの成虫、幼虫の特徴
カット(sz551.gif、約3KB)

幼虫
頭の色:黄褐色
体の色:暗褐色
大きさ:25.0mm(終令幼虫)

カット(sz552.gif、約3KB)

成虫
翅の色:オスは茶褐色か濃褐色
     メスは黄褐色
大きさ:オス24.0〜26.0mm
     メス27.0〜35.0mm



図2:イラガの幼虫
カット(sz553.gif、約3KB)

頭:普通、体の中に隠れていて見えない
体の色:黄褐色に褐色紋
大きさ:24.0mm(終令幼虫)



  激痛型の毒を持っている蛾として身近なのはイラガです。
 
  秋の9月〜10月頃に公園や民家のサクラやカキなどの木の葉の裏側で図2のような肉角(別名:肉質突起)という毒刺(毒毛に相当するもの)が生えている背中に褐色の模様がある毛虫を見つけることができます。
 
  ただし、幼虫の背中に生えている肉角そのものは簡単に抜け落ちることがないため、幼虫に触れなければ被害にあいませんし、激しい痛みも数時間で消えてしまいます。
 
図3:タケノホソクロバの幼虫
カット(sz554.gif、約3KB)

頭の色:黄褐色
体の色:橙褐色
大きさ:18.0mm(終令幼虫)



  中間型の毒を持つ蛾として身近なのは図3の「タケノホソクロバ」です。
 
  タケノホソクロバは、庭や公園などのササやタケの葉を食べ、5〜7月と8〜9月の年2回発生します。
 
  タケノホソクロバの幼虫は、時に大発生して生えているササやタケが全滅することもあり、このような時に被害にあうことがあります。
 
  タケノホソクロバは、中間型のため、幼虫に触れた時に激しい痛みがあり、後にかゆみが起こりますが、幼虫に触れなければ被害はありません。

毒のある蛾の駆除、毒毛に触れたら

  毒のある蛾を駆除するには、集団でいるために多くの個体を一度に退治できることから幼虫の時の駆除が最適です。
 
  毒毛の大きさは、身近な毒のある蛾の場合、毒毛1本がわずか0.05〜0.2 oという非常に微小な長さの種類が大部分のため人の目では見ることができません。
 
  このため、毒毛や肉角に触れた部分をこすった場合にはこれらがより深く皮膚に食い込みさらに症状が悪くなるため、毒毛や肉角に触れた時は、その部分をこすらずにセロテープを貼り付けて毒毛を取るか流水で毒毛を洗い流して下さい。
 
  もし、かゆみや発疹などがひどい場合は、医師に見てもらう必要があります。
 
  私たち人間にとって厄介な毒のある蛾ですが、一方では他の小動物のエサの一部として利用されていると言われていることを考えると、駆除することを考えるよりもその毒のある蛾をよく知ることの方が大切です。

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街かど自然探訪



東菅野・三角橋付近 真間川の流れ

カット(sz555.gif、約14KB)
  東菅野と宮久保の境を流れる水路は、派川大柏川と呼ばれていますが、もともとは真間川の上流のひとつでした。
 
  明治の頃までの流れは、現在の三角橋付近から西に向かい、国分川と合流し、江戸川に流れ込むのがメインのルートでした。
 
  ところが大正時代に行われた耕地整理の時に、東京湾に直接向かうように新たに水路が整備され、三角橋付近から南東へ向かう流れに変わりました。つまり、この橋付近の真間川の流れは、本来の流れの方向とは逆なのです。

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レッドデータブック掲載種紹介



ノウルシ  分類:種子植物 トウダイグサ科
ランク:絶滅危惧2

カット(sz556.gif、約3KB)   河川敷の湿地などに群生する植物で、市内では国府台3丁目、坂川の旧河口付近にだけ生育しています。早春の3月、坂川の土手を黄色に染め上げる光景は見事なもので、まさに春到来!といった感じです。
 
  もともと、市内ではここだけで見られました。土砂投棄の影響で一時群落が小さくなったことがありましたが、近年は回復傾向にあります。ここは、江戸川全体を見ても、唯一の自生地と思われます。

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むかしの市川



ヘビとカエル

カット(sz557.gif、約10KB)   昭和20年代の後半頃までは、現在の本北方から北側は田んぼでおおわれていました。そこには、魚、ドジョウ、カエル(トウキョウダルマガエル)などがたくさんいました。
 
  6、7月頃になると、この田んぼによくヤマカガシがいました。このヤマカガシは、田んぼに出てくると、近くにいるカエルをねらうのです。ところがカエルも注意しているので、近くにくると水の中に飛び込み、泥にもぐりこんでしまいます。しかし、気がつくのがおそく、近づいて正面からにらまれると、なぜか動けなくなり、ヤマカガシの餌食になってしまうものもいました。この頃は、こんな光景もよく見ることがありました。

(元博物館指導員 鎗田安之 記)


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わたしの観察ノート No.37



自然観察園より
柏井雑木林より
国府台より
江戸川より
じゅんさい池公園より
堀之内貝塚公園より
小塚山市民の森より
◎関東地方には何度も春の雪が降りました。(1/8-9、1/12、1/15、2/10、2/15、3/1 、3/5)

 

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