◆  市川自然博物館だより  ◆

第57号 (1998年8・9月号)

特集「いちかわの蛾」 3

昼間活動する蛾

昼間活動する蛾の中でも、目にする機会の多いオオスカシバ。
翅は鱗粉がなく透明で、動きも素早いのでハチに間違われることもあります。

市立市川自然博物館 1998年12月15日発行

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特 集 タイトル




いちかわの蛾 3 昼間活動する蛾

  蛾と蝶の区別をどの点でするかは、よく話題になります。蛾は夜間活動し、蝶は昼間活動する、というのが日常的にはよく使われている点です。しかし、生物の分類というのは本来、そういった習性に基づくものではないので、分類上は蛾に属していても、昼間活動するという場合も出てきます。今回は、そのような蛾を紹介します。

市内でよく見られる種類

  昼間活動する蛾のうちで市内で記録されているのは、6科(マダラガ科、スカシバガ科、ホソハマキモドキガ科、シャクガ科、ヒトリガ科、スズメガ科)に属する14種です。その大半は市街地にも生息していて、中でも次の3種は、成虫の姿を見かけることがよくあります。
 

1.ホタルガ(マダラガ科 図1)

  名前に「ホタル」がついているように、赤い頭と黒い体(胴体、翅)をしています。黒い翅には白い帯が入っていて、飛んでいる時に、よく目立ちます。
 
  飛び方はヒラヒラした感じで、その姿は蝶を思わせます。昼間活動する蛾ですが、夕方から夜間にかけても活動し、街燈などに飛んでくることもあります。
 
  発生は年2回、つまり越冬して成虫になるものと、その成虫が産んだ卵からその年のうちに成虫になるものとがあります。前者が5月上旬〜6月中旬、後者が7月下旬〜9月中旬に発生します。幼虫の食樹はサカキ、ヒサカキで、成虫、幼虫ともくさい臭いを出します。
 
  市内では、マダラガ科に属し昼間活動する種類が、ほかにも5種類記録されています。ホタルガによく似ていて、後ろ翅が白いシロシタホタルガ、毎年秋1回だけ成虫が出現するミノウスバ、連載第1回の「身近な毒のある蛾」で紹介したタケノホソクロバなどです。
 
ホタルガ(sz571.gif、約12KB)

  図1:ホタルガ
 
 

2.オオスカシバ(スズメガ科 図2)

  花の蜜を吸っている光景を、よく見かけます。特に公園などに植えられている低木のアベリアで見かけることが多く、「透かし翅」の名前の通り透明な翅を高速で羽ばたかせながら、飛んだままストロー状の口を伸ばして蜜を吸っています。その時の姿はハチに似ていて、勘違いされることも多いようです。
 
  翅は、羽化したばかりの時は他の蛾と同じように鱗粉で覆われています。その後、体が固まって初めて飛ぶ時に、翅を震わせて鱗粉を落としてしまいます。
 
  発生は年2回で、5月中旬と、7月下旬〜9月下旬に発生します。幼虫はイモムシで、クチナシにつきます。全身が黄緑色で、体の後ろにある角のような突起が目立ちます。
 
オオスカシバ(sz572.gif、約8KB)

  図2:オオスカシバ
 
 

3.ホシホウジャク(スズメガ科 図3)

  全体の形はオオスカシバに似ていますが、こちらは羽化後も鱗粉を振るい落とすことがなく、そのため翅には鱗粉による色と模様が見られます。前翅は褐色を帯びた黒紫色、後翅は褐色の地に黄色の帯模様があります。また、褐色の胴体にも黄色の斑紋があります。
 
  発生は年3回〜4回もあり、5月中旬から11月上旬にかけて出現します。幼虫は、市内でも普通に見られるつる植物のヘクソカズラを食べます。
 
  なお、ホウジャクとは「蜂雀」で、ハチに似ているスズメガという意味です。市内では他に、ヒメクロホウジャクとホシヒメホウジャクの記録があります。
 
ホシホウジャク(sz573.gif、約9KB)

  図3:ホシホウジャク
 

身近な植物を食べる

  市内で見られる昼間活動する蛾は、前述の3種に限らず、大半が市街地に生息しています。幼虫が餌とする植物も身近に生育しているものが多く、次のようなものがあります。
 
【身近な野草】
 ヘクソカズラ ホシホウジャク
ヒメクロホウジャク
ホシヒメホウジャク
 アカネ、アケビ ヒメクロホウジャク
 ツルウメモドキ トンボエダシャク
ヒロオビトンボエダシャク
 ツメクサ、スギナ
 スイバ、ギシギシ
 タンポポ類
カノコガ
【庭木、公園などの植栽木】
 ヒサカキ ホタルガ
 クチナシ オオスカシバ
 ウメ、モモ
 サクラなど
ウメエダシャク
ウメスカシクロバ
コスカシバ
【園芸植物】
 ショウブ、セキショウ ツマキホソハマキモドキ
【生け垣など】
 マサキ ミノウスバ

 

都市の緑化と昼間活動する蛾

  どんな生物でもそうですが、餌のあるなしは、その生物の生息を左右する重要な要素です。蛾の場合でいうと、幼虫の餌となる植物、成虫の餌となる蜜や樹液、このようなものがあるかどうかで、その種類が生息できるかどうかが決まります。
 
  市内で見られる昼間活動する蛾は、幼虫の餌が庭や公園に植えられている植物であったり、ちょっとした緑地でも生育できる野草であるため、市街地であっても生息条件が整っています。成虫についても、餌となる蜜を持つ花は庭や公園に盛んに植えられますし、樹液もさまざまな植栽木から得ることが可能です。
 
  都市の緑化は、人間にとっての住みやすさを追求したものです。従って、そういう観点からすると、これら昼間活動する蛾は害虫ということになります。事実、蛾の図鑑にはオオスカシバの「食草」としてクチナシがあげられ、園芸の図鑑ではクチナシの「害虫」としてオオスカシバがあげられています。本来、両者の立場は相いれないものなのかもしれません。しかし、昼間活動する蛾はそんな中でもしぶとく生き抜いているのです。
 
  前回、雑木林とともに姿を消しつつある蛾として、ヤママユガの仲間を紹介しました。これらの幼虫はクヌギ、コナラなどのブナ科の樹木を餌とし、雑木林の減少とともに市内から姿を消しつつあります。庭や公園の植物を餌として都市でしぶとく生き抜く蛾、餌とともに林という環境も必要とする蛾、これらは非常に対照的な存在です。

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街かど自然探訪



日之出 公園と街路のイチョウ

カット(sz574.gif、約10KB)
  南浜公園には、公園のシンボルツリーとでもいうように、1株だけ独立して植えられているイチョウがあります。幹はそれほど太くないですが、枝をのびのび張り出し葉がこんもり繁っています。
 
  バス通り沿いにもイチョウが植えられています。街路樹は強く剪定されてしまうので、こちらは幹の上の方に細くて短い枝があるだけで、葉もまばらです。
 
  同じ種類の木でも、植えられる場所や管理の仕方によって、随分違うものです。

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レッドデータブック掲載種紹介



チュウサギ  分類:鳥類 サギ科
ランク:希少

カット(sz575.gif、約3KB)   白鷺の名で総称されるサギのうちの1種です。渡り鳥で、日本には繁殖のために渡ってきます。高度成長期以前には、白鷺の中でももっとも普通にみることができました。しかし、その後は激減し、今ではコサギやダイサギに比べて数が少なく、なかなか見ることができません。
 
  水生昆虫を、おもな餌としています。そのため魚やザリガニを主食とするコサギ、ダイサギよりも、水田の減少や乾田化の影響を強く受けたと言われています。

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くすのきレポート



No.2今回の観察は…

『5月7日、アオスジアゲハが今年はじめて飛んできました。』

カット(sz576.gif、約6KB)   クスノキと言えば、防虫剤である樟脳の原料として知られています。根や幹、葉を蒸留して得られる樟脳は成分が濃縮されていて強烈ですが、生の葉を揉んでもそのにおいは感じられます。
 
  「タデ食う虫も好きずき」同様、このクスノキを食べる昆虫がいます。アオスジアゲハの幼虫です。ただ、街路樹で幼虫が見られることは稀で、むしろ産卵のために飛来する成虫がよく目につきます。

(情報提供:M .M .さん)


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わたしの観察ノート No.39



自然観察園より
柏井雑木林より
北方遊水池付近より
江戸川より
じゅん菜池より
堀之内貝塚より
国府台より
東国分より
◎日照不足の5月でした。梅雨は、6月2日からはじまりました。

 

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