◆  市川自然博物館だより  ◆

第63号 (1999年8・9月号)

特集「川かんさつ」 3

上流部

市立市川自然博物館 2000年1月10日発行

 特集記事  街かど自然探訪  レッドデータブック掲載種紹介
 くすのきレポート  むかしの市川  観察ノート





特 集  川のかんさつ  



川のかんさつ 3 上流部

  市内の水系は、大きく3つ(上流、中流、下流)に区分することができます。そのうち今回は、上流部についてご紹介します。
 
  上流部は「谷津」という言葉で代表される一帯です。台地を細かく刻むいくつもの谷が特徴で、その谷に湧き出す地下水が、川としての第一歩を記します。

図1 上流部の位置
 
  上流部の入口(枝谷の入口)を矢印で示した。
 
  また台地と低地の境界を示す目安を線で入れた(実際は台地と低地の境界には幅があり、必ずしも線で示すことはできない)。

上流部の位置

  市内の水系でいう上流部とは、台地に刻まれた細い谷の部分のことを言います。市川の地形は大きく北部の台地、南部の低地に区分されますが、南部の低地がほぼ一様であるのに対し、北部の台地は細かくみると、台地の平らな面と、そこに切れ込んでいる細い谷とに分かれています。そして、この細い谷の部分には湧き水が多くあって、そこが市内を流れる河川のスタート、つまり源流となっているのです。
 
  この細い谷は、市内の主要河川である大柏川、国分川の両岸にそれぞれ発達しています。その数は大柏川では左岸(上流から下流を見た時の左側)に4本、右岸に5本、国分川では左岸に4本、右岸に3本です。もっとも、これらの多くではすでに宅地開発が進んでいて、谷本来の地形は見えにくくなっています。斜面に沿って残る帯状の林を通して谷の輪郭を知ることはできますが、場所によってはその林でさえも分断されています。谷底を歩いてもただ整然と立ち並ぶ家々があるばかりで、そこが谷底であることさえ忘れてしまいそうです。
 
  ですが、水の動きは今も昔も変わりありません。台地に降った雨はこれらの細い谷に注ぎ込み、そこから谷底の流路を経て中流部の谷へと向かいます。ですから、宅地開発が進んだ地域でも、気をつけて見ると必ず谷底には川の流れが見られます。もちろん現在ではほとんどが暗渠になっていますが、それでも水にとっては谷は今でも谷のままなのです。

上流部の自然

  「谷津」という言葉で表される上流部の環境は、豊富な湧水、湿地、斜面林によって特徴づけられます。特に、湿地と林というまったく異質な環境が幅 100m前後という狭い谷の中に共存していることは、谷津に生息する生物の多様性を高める上で重要な要素となっています。
 
  例えば大町公園の自然観察園では、市内の野生植物の1/3以上の種が確認されています。これは、湿地の植物と林の植物の両方が自然観察園内に生育していることによっています。また、フクロウやカケスといった樹林性の野鳥と、カワセミやコサギといった水辺の野鳥とが同時に見られるのも、湿地と林が狭い範囲に入り組むようにしてあるからです。こういう湿地と林のコンパクトなまとまりは、中〜下流部では見られない特徴です。
 
  上流部にある豊富な湧き水は、ある種の生物にとって必要不可欠な環境となっています。たとえばサワガニは、かつて「清水がに」と呼ばれたように、市内では湧水地の周辺でのみ見ることができます。夏の自然観察園で大発生するオニヤンマも、産卵や幼虫の生活には湧水の流れが必要です。そのほか淡水性藻類のカワモヅク類、魚類のスナヤツメやホトケドジョウ、二枚貝のマシジミや巻き貝のカワニナなども同様で、湧き水がある上流部でしか暮らすことができません。
 
  一般に、川の源流というと雪解け水の光景が、上流というとイワナが住むような渓谷が思い起こされます。市内で見られる上流部はこういった場所とは趣を異にしていますが、水系全体で見た場合には、やはり上流部には上流部ならではの自然が形作られています。

図2 上流部の環境と生物

 

上流部の事例紹介

湿地の上に、園路やあずまやが整備されている。

自然観察園(長田谷津)

  かつて長田谷津(ながたやつ)と称された細長い谷津で、その最奥部が大町公園の自然観察園として保存されています。上流部の環境をそのまま保存した場所としては市内唯一で、地形、景観、生物のいずれについても上流部の典型的な様子を観察することができます。
 
  一帯は総合公園として整備されていて、訪れやすい場所になっています。

谷津の谷底に造られた大野調節池

大野調節池付近

  大野町2丁目と松戸市との市境に延びる谷津です。ちょうど梨風苑(住宅団地)の奥にあたる一帯で、一部が大野調節池にあてられています。斜面林に囲まれた細長い谷の景観という点では市内屈指の場所ですが、谷底はかなり埋まっていて、谷津本来の多様な自然はだいぶ損なわれています。
 
  散策のための施設はなく、あまり訪れやすい場所とは言えません。

数年前の様子。右側に堀之内貝塚、左奥に小塚山市民の森が見える。

道免き谷津

  堀之内2丁目から北国分2丁目へと延びる谷津で、右岸側の斜面林の一部が小塚山市民の森、左岸側の一部が堀之内貝塚公園として残されています。谷底は奥部は住宅地となり、出口の方は盛土され、全体として谷津本来の環境は失われています。現在、外環道路の関係で谷底の発掘調査が行われていて、その結果、縄文時代からの時間的な流れの中で谷津の変遷がとらえられるようになるかもしれません。

 

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街かど自然探訪


カット(sz636.gif)奉免町(ほうめまち) 目立たない段丘

  大柏川沿いの「市川東高入口」バス停から東へ歩いてゆくと、市営住宅前の道が一段高いのがわかります。その先には高さが10mを越える崖が見えています。
 
  台地と低地は崖が境ですが、ここのように川の周辺より数mだけ高い平坦面が、台地の周縁から数百m張り出すようにある場所もあります。これは、大昔の大柏川がつくった段丘です。地面は低地の土ではなく、台地の土と同じで表土の下には関東ローム層があります。

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レッドデータブック掲載種紹介


 

コアジサシ  分類:鳥類 カモメ科
ランク:絶滅危惧 II類

カット(sz637.gif)   子育てのために日本に渡ってくる渡り鳥です。熱帯地方で冬を越し、4〜6月頃渡ってきます。砂浜や中洲などの荒れ地に巣を作るのが本来ですが、東京湾岸ではもっぱら埋め立て地を利用しています。といっても利用できるのは開発が始まるまでの期間だけですから、結果的には、新しい適地を求めての放浪生活を強いられてしまいます。
 
  市内では、数年前まで妙典地区の区画整理区域で子育てをしていました。

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くすのきレポート



No.8今回の観察は…

カット(sz638.gif)『クスノキにくっついて...』

  街路樹の小さなクスノキにも、そこに付着して暮らしている生き物が見られます。コケや地衣類、シダ植物(ノキシノブ)などです。これらは幹の北側ばかりで見られるのですが、「春になって雨が降るようになったら、その理由がわかった」そうです。日当たりが悪い北側の方が、総じて樹皮の乾きも悪いのです。
 
  ささいな話ですが、そこで生きる生物にとっては一大事なのでしょう。

(情報提供:M .M .さん) 

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むかしの市川

カットsz619.gif (5653 バイト)


 

  このコーナーでは、博物館が1986年に行ったアンケート調査の結果から、むかしの市内の様子を紹介しています(原則として回答の原文のまま掲載)。

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わたしの観察ノート No.45



◆自然観察園より

清野元之(自然博物館)   

金子謙一(自然博物館)   

◆柏井雑木林より

金子謙一   

◆里見公園あたりより

秋元久枝さん(国府台在住)   

◆曽谷〜八幡あたりより

水垣麻理子さん(八幡在住)   

◆鬼高より

松丸さん   

◆行徳橋付近より

金子謙一   

◎6月中旬に梅雨入りし、7月下旬に明けました。ちゃんと雨が降りました。

 

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