◆  市川自然博物館だより  ◆

第64号 (1999年10・11月号)

特集「川かんさつ」 4

中流部

市立市川自然博物館 2000年2月10日発行

 特集記事  街かど自然探訪  レッドデータブック掲載種紹介
 くすのきのあるバス通りから  むかしの市川  観察ノート





特 集  川のかんさつ  



川のかんさつ 4 中流部

  前回の上流部に続き、今回は中流部を紹介します。中流部は大きな谷にあたる部分で、市内の主要河川である国分川と大柏川が流れています。かつては谷底一面に水田が広がり、無数の用水路が縦横に巡らされていましたが、近年は、盛土や宅地開発、水路の暗渠化などにより、環境が大きく変貌してきました。

図1 中流部の位置

図1 中流部の位置
 
  中流部に相当する2つの谷を斜線で示した。台地と低地の境の目安を線で示した。ギザギザ線は現在の河道。

中流部の位置

  市内の水系でいう中流部とは、上流部からの流れが合流する大きな谷の部分のことを言います。市内には2つあって、そこを流れる川の名(国分川、大柏川)にちなんで「国分谷」「大柏谷」と称されています。それぞれ松戸市、鎌ヶ谷市に端を発する長い谷で、その各所で上流部からの谷を合わせています。一般に上流、中流というと一本の線で考えがちですが、実際には中流部の各所から何本もの上流部の谷が枝分かれしています。この関係は一本の樹木にたとえられていて、中流部の大きな谷を「幹谷(みきだに)」、そこから枝分かれする何本もの小さな谷を「枝谷(えだだに)」と称します。
 
  中流部の谷は、幅が広いことが特徴です。数百mから場所によっては1kmにも及んでいて、一見するだけでは谷とは思えないような広がりを持っています。成り立ちが古く、今からおよそ数万年前の氷河期に形成された谷に起源があると考えられます。その時代にできた深く広い谷がその後の海進(今から数千年前の縄文時代)によって埋められ、現在に至っています。V字形の大きな谷の底の部分が埋まっているので、現在のような広くて平らな谷底になったわけです。
 
  今でこそ1本の線として描かれる国分川、大柏川の流路は、かつては広い谷底を自在に変化して流れる幾筋もの流れでした。線というよりも、谷底全体が水の通り道だったわけです。その谷底が後に一面の水田となり、近年では宅地などとしても利用されるようになりました。

中流部の自然

  広い谷幅をもつ中流部の環境は、上流部の「谷津」とは違った特徴を有しています。すなわち、谷津においては湿地と斜面林という異質な環境が狭い範囲に共存していることが大きな特徴でしたが、中流部の場合、湿地がもつ空間的な広がりにこそ特徴があります。谷津に比べると、斜面林が持つ意味合いは大きくないのです。入り組んだ環境の谷津に対して広々とした中流部というわけです。
 
  例えば、大柏川沿いに現在整備が進められている調節池(北方遊水池)について行われた調査をまとめた資料(「生きている水辺−北方遊水池の調査と研究II−」市川緑の市民フォーラム編、1994年)によると、この一帯ではコチドリ、タゲリ、タシギ、タヒバリ、セッカ、オオヨシキリといった野鳥が、比較的多く観察されています。これらは、いずれも広々とした環境を好む野鳥で、市内では中流部から下流部にかけて見られます。
 
  また、大柏川・国分川沿いの水田では、いまでもギンヤンマやシオカラトンボを見ることができます。これらのトンボも、広々とした水面を好む種類です。
 
  空間的な広がりと同時に、広い谷底に多様な水辺が存在していることも重要です。前述の鳥類も、コチドリは裸地、タゲリやタシギは水田、セッカやオオヨシキリはアシ原と、生息する場所の環境は様々です。多様な水辺は、魚類や水生昆虫、植物などにとっても重要です。ですから、谷底の湿地が一面のアシ原になったり、まして盛土されたりすれば生物の種類は激減します。その意味では、中流部本来の自然は少なくなったと言えるかもしれません。

図2 中流部の環境と生物

 

中流部の事例紹介

大柏川沿いの水田

  大野町4丁目の大柏川沿いには、いまなお一部に水田が残り、ほかにも部分的にアシ原や湿地などが残っていて、全体として広々とした景観が保たれています。中流部がもつ空間的な広がりを体験することができる貴重な一帯です。しかし、十年ほど前までは数十羽単位で飛来したタゲリがついに1羽しか確認できなくなるなど、ここでさえも環境の変化は確実に進んでいます。

派川大柏川一帯

  東菅野4、5丁目と宮久保3、5丁目の境を流れる派川大柏川は、かつての大柏川の流路が残されたものです。付近にはアシ原などの湿地帯が残り、小さな水路も多く、中流部の谷底の本来的な景観が残されています。しかし、そのことは逆に言えば訪れにくい場所であるということでもあり、荒涼とした景観がバス通りの賑やかさとは対照的です。

稲越暫定調整池

  国分谷の一角に設けられた調整池です。かつては一面のアシ原でセッカやオオヨシキリなどアシ原を好む鳥しか見られませんでしたが、最近、まとまった広さの水面が出現してカモ類やサギ類が多くなりました。また、それらを狙う猛禽類が出現するようにもなり、本来の自然が失われた中流部にも、まだまだ復元力が保たれていることがわかります。

 

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街かど自然探訪


カット(sz636.gif)堀之内(ほりのうち) キジも住む新しい街

  堀之内はかつての北国分町が町名変更して生まれた町です。3丁目では北総線北国分駅を中心に、以前一面の畑だった所にマンションや大型商店が整然と立ち並ぶピカピカの町が造られつつあります。
 
  この町の住民は、もっと賑やかな場所から引っ越してきた方々がほとんどのようです。そんな新住民を驚ろかすのは、道路を横切る子連れのキジ、マンションの前から飛び立つヒバリのさえずり、駅前の電柱に留まるフクロウの姿です。

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レッドデータブック掲載種紹介


カット(sz647.gif)

フジバカマ  分類:種子植物 キク科
ランク:絶滅危惧 II類

  1mほどの高さになる草で、河原の土手に群生します。9月下旬に咲かせる薄紫色の花の美しさから「秋の七草」のひとつに数えられていますが、市内では江戸川の河川敷付近にごくわずかに自生しているだけです。草刈りにあったりセイタカアワダチソウなどと競合したりで、群落もなかなか大きくなりません。
 
  花色の濃い園芸品種が市販されていますが、もちろん野生種の代わりになるものではありません。

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くすのきあるバス通りから

*コーナー名変更しました。



No.9今回の観察は…

カット(sz648.gif)『キジバトの子育て』

  「道の際にある藤棚で、キジバトが子育てをしました。スズメやツバメと違い、親鳥が来ても鳴き声をたてないので、ヒナがかなり大きくなってから気づきました。給餌の回数が少ないにもかかわらずヒナはどんどん大きくなり、ある日巣立ちをしました。巣立ってみて、もう1羽ヒナがいるのが判り驚きました。ひっそりと暮らしていたので、通りすがりの人は気づかなかっただろうと思います」

(情報提供:M .M .さん) 

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むかしの市川

カットsz619.gif (5653 バイト)


 

  このコーナーでは、博物館が1986年に行ったアンケート調査の結果から、むかしの市内の様子を紹介しています(原則として回答の原文のまま掲載)。

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わたしの観察ノート No.46



◆自然観察園より

金子謙一(自然博物館)   

◆柏井雑木林より

金子謙一   

◆大柏川調節池付近より

     石井信義さん(菅野在住)   

◆堀之内貝塚公園より

根本貴久さん(菅野在住)   

◆小塚山市民森のより

     根本貴久さん   

◆じゅんさい池公園より

     根本貴久さん   

◆里見池公園より

     根本貴久さん   

◆坂川旧河口より

金子謙一   

◆二俣より

     田中利彦さん(船橋市在住)   

◎7月下旬の梅雨明け後、晴れた日が続く暑い夏となりました。

 

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