◆  市川自然博物館だより  ◆

第65号 (1999年12月・2000年1月号)

特集「川かんさつ」 5

下流部

市立市川自然博物館 2000年3月10日発行

 特集記事  街かど自然探訪  レッドデータブック掲載種紹介
 くすのきのあるバス通りから  むかしの市川  観察ノート





特 集  川のかんさつ  



川のかんさつ 5 下流部

  今回は、市内の水系のうち下流部について紹介します。下流部は、厳密に言うと上流部〜中流部の水系とは連続していない、むしろ沿岸部と言った方がいい一帯です。都市化の進行が著しく、本来の自然環境が残されている場所はほとんどありません。しかし、一部に残る場所から本来の姿を思い浮かべることは可能です。

図1 中流部の位置

図1 下流部の位置と上・中流部との関係
 市川砂洲以南の平坦な一帯が下流部である。

流部の位置

  市内の水系でいう下流部とは、市の中央を、ほぼ東西に横断する市川砂洲より南側の部分を言います。この部分は便宜的に「下流部」としていますが、本シリーズの第1回に記したように、実際には北側の水系とは別の、独立した水系になっています。というのは、北側から上流〜中流と流れ下ってきた川(国分川、大柏川)は、自然状態では市川砂洲によってせき止められて江戸川へと向かい、砂洲の南側には行かないからです。いまでこそ、真間川の流路が市川砂洲を突っ切って東京湾まで続いていますが、これは人工的に造られた放水路なので、水系本来の姿を考える上では除外します。
 
  市川砂洲より南側の一帯、つまりここで言う「下流部」とは、上流・中流側よりも東京湾とのつながりが強い一帯です。おそらく自然状態では、江戸川の河口デルタに由来する標高の低い土地に、水路やアシ原が広がっていたのでしょう。それらは東京湾の広大な干潟へとつながり、環境的にも潮の満干の影響を強く受けていたと考えられます。
 
  ここで、市内の水系を整理するとこうなります。上流部〜中流部〜江戸川という水系と、下流部〜東京湾(干潟・浅瀬)という水系です。普通はこの2つがひと続きのものとしてあるわけですが、市川の場合、市川砂洲があるために南北の連続性が断たれているのです。ですから、このシリーズでは市川砂洲以南を「下流部」としていますが、その意味合いには注意が必要です。

下流部の自然

  下流部では、これまで上流部、中流部になかった要素として海が登場します。つまり、上流部では斜面林と湿地が狭い範囲に共存する「谷津」が環境の特徴でした。中流部では、斜面林のもつ意味合いが薄くなり、湿地の空間的な広がりに特徴が見い出されました。それが下流部になると、斜面林という要素がなくなり、海という新しい要素が現れるのです。
 
  かつての東京湾岸一帯は、おびただしい数の野鳥で代表される、自然豊かな一帯でした。そして、その自然を支えた環境としては、もっぱら干潟が例に出されます。「かつて東京湾の沿岸には広大な干潟が広がっていて……」といった様にです。しかし、湾岸一帯の自然を支えていたのは、干潟だけではありません。干潟の海側には浅瀬があり、陸側には湿地がありました。このことが、多様な環境を生み、多くの生物を育んでいました。
 
  例えば、長距離を移動する渡り鳥のシギやチドリは干潟で栄養を補給し、潮が満ちると背後の湿地に移動します。オオバンやタマシギのように子育てをする鳥は、干潟ではなく湿地の水辺を利用します。越冬に訪れるスズガモにとっては、浅瀬が何より重要です。多様な環境の中から、鳥たちが自分たちの生活にふさわしい場所を選んでいたわけです。
 
  干潟に面した広大な湿地が、下流部の自然の特徴です。ですが、その姿は市内ではもはや見ることはできません。東京湾の干潟が大部分埋め立てられたことはよく知られていますが、市川では、背後の湿地も同じく埋め立てられました。そしてそこに町ができ、大勢の人が住むようになったのです。

図2 下流部の環境(概念図)

 

下流部の事例紹介

行徳鳥獣保護区

  湾岸地帯が埋め立てられた時に一部を埋め残し、水辺を造成したところです。かつては小さな干潟と乾いた草原が広がっていましたが、近年、陸地に淡水の導入が図られ、池や田んぼなど多様な湿地が生み出されました(写真は淡水導入初期のもの)。ちょうど、下流部の自然のミニチュア版といった感じです。保護区ですが、観察会に参加すれば中を歩くことができます。

江戸川放水路

  ややまとまった干潟が残っている、市内では唯一の場所です。干潟の自然の豊かさに触れることができ、その先に広がっている三番瀬の浅瀬との連続性も保たれています。ですが、あくまでも河川の堤防の内側に形成された干潟なので、背後に続く湿地やアシ原を見ることはできません。
 
  下流部の自然の一部が、切り取られて残っている場所と言えます。

行徳橋付近のアシ原

  ヒヌマイトトンボの生息地になっている場所です。ヨシが密生し、内部にまで川の水が入り込んでいます。下流部本来のアシ原の姿を思わせるものがありますが、規模的にはかなり小さいアシ原です。
 
  人が入り込めないようなヨシの密生状態がヒヌマイトトンボの生活を支えています。人が中に入ることは、望ましくありません。

 

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街かど自然探訪


カット(sz636.gif)北方町(ぼっけまち)4丁目 自然の復元

  大柏川沿い、農協のビルの北側では、現在、面積約16ヘクタールにおよぶ治水用の調節池の工事が進められています。この池では治水機能の保持を前提に自然復元が図られる計画になっていて、成功すれば市内最大の内陸湿地が出現することになります。工事区域の隣接地では市民ボランティアによる自然復元の実験的な試みがなされていて、「北方ミニ自然園」と名付けられた自然学習の場が整備されています。

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レッドデータブック掲載種紹介


カット(sz647.gif)

セイタカシギ  分類:鳥類 セイタカシギ科
ランク:絶滅危惧 IB類

  長い脚と長いくちばしが特徴の水鳥で、東京湾奥部が国内の主要な繁殖地・越冬地となっています。市内では、新浜鴨場と、隣接する行徳鳥獣保護区が繁殖地として、江戸川放水路が越冬地として知られていますが、近年は江戸川放水路での越冬は非常に少なくなってしまいました。
 
  1988年以降、ほぼ毎年繁殖に成功している行徳鳥獣保護区では、市民の方々のボランティア作業が、巣作りに適した環境づくりに大いに貢献しています。

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くすのきあるバス通りから



No.10今回の観察は…

カット(sz648.gif)『冬の小鳥たち』

  「冬のバス通りは生き物が少ないようです。見られるのはスズメ、カラス、ハトなどですが、路地一本入るとメジロが多く見られます。たいてい2羽(つがい?)で来ます。庭先のツバキの花に来たり、木にミカンを輪切りにして刺しておくときれいに食べていきます。ところが、ヒヨドリが来るとすぐ、飛んでいってしまいます……」──メジロは、市内では意外に身近で見られる野鳥です。

(情報提供:M .M .さん) 

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むかしの市川

カットsz619.gif (5653 バイト)


 

  このコーナーでは、博物館が1986年に行ったアンケート調査の結果から、むかしの市内の様子を紹介しています(原則として回答の原文のまま掲載)。

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わたしの観察ノート No.47



◆大町公園より

大和田小学校のみなさん   

金子謙一(自然博物館)   

◆冨貴島小学校付近より

鳥居雪子さん(八幡在住)   

◆稲越大柏川調節池より

安藤ゆきのさん(新田在住)   

◆須和田より

落合永二さん(須和田在住)   

◆小塚山市民森のより

根本貴久さん(菅野在住)   

◆堀之内貝塚公園より

村岡敏夫さん(東京都在住)   

◆真間山より

     根本貴久さん   

◆江戸川より

     根本貴久さん   

◎異例の暑さだった9月から、10月、11月と暖かい秋が続きました。

 

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