◆  市川自然博物館だより  ◆

 2002年4・5月号(第79号)
自然のある場所 T

堀之内貝塚公園・小塚山市民の森

市立市川自然博物館 2002年4月1日発行

 特集記事  街かど自然探訪  レッドデータブック掲載種紹介
 くすのきのあるバス通りから  むかしの市川  わたしの観察ノート





特 集  堀之内貝塚公園・小塚山市民の森



自然のある場所T『堀之内貝塚公園・小塚山市民の森』

   堀之内貝塚公園と小塚山市民の森(以下、堀之内と小塚山)は、北国分地区に点在する林の中でも早くから整備され親しまれてきた公園です。セットで語られることの多い、いわば兄弟林ですが、その性格は実際の兄弟同様、かなり異なったものになっています。北国分地区での自然観察では外せない、見どころの多い林です。

    

兄   弟   林

   堀之内と小塚山を兄弟林と呼ぶのは、単に近くにあるからではありません。両者は、道免き谷津と呼ばれる大きな谷津の斜面林であるという点で血縁なのです。道免き谷津をぐるりと囲むようにあった斜面林が宅地開発などで失われ、分断されて残ったいくつかの林のうちの、ひとつが堀之内であり、また小塚山なのです。
 ただし、両者の林は谷の右岸と左岸に向かい合って位置することから、環境的には同じではありません。特に、小塚山がどちらかというと北向き斜面、堀之内が南向き斜面であることは大きな違いと言えます。また、堀之内は国の史跡として保護され、小塚山は公園として位置づけられてきました。それ以前の土地の管理も同じではなかったでしょう。結果、2つの林は兄弟とは言っても、ずいぶん違った林になりました。
 都市化が進む中、谷をはさんで向き合うように兄弟の林が残り、異なった性格の林に成長したというのが、堀之内と小塚山の特徴なのです。

 国分の台地を中心とする一帯の航空写真。
 上方に堀之内貝塚公園と小塚山市民の森が見える。

 航空写真のうちの林の部分を線画であらわしたもの。
 台地の範囲を点線で示してある。


異 な る 環 境

  堀之内を歩くと、明るい印象を受けます。これは、草刈りが徹底されているために見通しがいいことと、落葉樹主体の林であるために、秋から冬、春にかけて陽光が入り込むことによっています。
 一方、小塚山は年間を通じて暗い印象を受けます。草刈りなどの管理がなされないために林内には低木やササ類、草などが茂り、また高木低木を問わず常緑樹が多いため光が遮られるからです。
 林を構成する樹木の種類や林の管理のしかたの違いが、環境の違いを生み出し、それは自然の様子の違いへとつながっています。


野  草  の  宝  庫

   堀之内と小塚山には、いわゆる絶滅危惧種の植物が生育しています。「改定版レッドデータブック」(環境庁編、2000年)にあげられた全国で絶滅の恐れがある野生植物のうち、2種類の植物が博物館の2000年の調査(「市川の自然の記録 第3号」自然博物館編、2001年)で確認されており、さらにもう1種類、生育の可能性が残されています。そしてまた、これらのうちの1種類については、市内ではここでしか生育が確認されていません。
 しかし、絶滅云々を別にしても植物の種類は多く、とくに野草は季節を通じて花を楽しむことができます。


 キツネノカミソリ
 
春の堀の内では、明るい林床に青々としたキツネノカミソリの葉が目立つ。
 このあと、葉は枯れ、夏に花茎だけを伸ばして開花する。

 

   堀之内には、見応えのする野草が多くあります。春はカントウタンポポとシロバナタンポポの群落が見事で、もちろん帰化種のセイヨウタンポポとアカミタンポポもあるので、堀之内の林だけで市内に自生する4種類すべてのタンポポが見られることになります。ホタルカズラという青い花を咲かせる野草は群落をつくり、白い花が穂状に咲くイヌザクラは市内随一の大きさです。キツネノカミソリは真夏にオレンジ色の花を咲かせる植物ですが、林内に大群落を形成します。草刈りが行なわれるようになった10年程前から株数を増やし始め、ついに見栄えのする大群落をつくるまでになりました。
 一方、小塚山は草よりも樹木、とくに低木の種類が多いのが特徴です。ガマズミやムラサキシキブなど市内に自生する低木種のほとんどを見ることができるほか、コゴメウツギやサワフタギなど、なかなか咲いている場面に出会えない低木の花を見ることもできます。草刈りなどの管理がなされないことが、造園的には雑木とされてしまうこれらの低木に成長の機会を与えているのです。



 

 

ツ ミ と ア オ ゲ ラ



  アオゲラ
 
最近は、アカゲラのほうがよく見られる。
撮影・根本貴久さん(1995年1月28日、堀之内貝塚公園)
   小塚山では、タカの1種であるツミがほぼ毎年観察されています。子育てを目的に飛来するもので、「市川市鳥類目録1986年〜1991年」(自然博物館編、1993年)には、成功こそしなかったものの巣作りならびに求愛行動があったことが記録されています。
    また、アオゲラという大きいキツツキも連続して飛来した記録があり、「続・市川まちかど博物館」(いちかわ・まち研究会編、1999年)には、市内への定着の期待を込めた一報が記されています。
   前出の博物館の2000年の調査ではいわゆる珍しい種類は記録されませんでしたが、小塚山と堀之内の2つの林においては、メジロやシジュウカラ、コゲラなど、市内の林で見られるおもだった種類について観察することができました。


    野鳥にとって、堀之内と小塚山は特に越冬地および渡りの中継地として重要であるようです。  前出の鳥類目録の記録からは、ツグミやシロハラ、ジョウビタキ、アオジ、シメなどが海を越えて、また、モズやウグイス、カケスなども周辺の山地などから移動して来て冬を越していることがうかがえます。カッコウやホトトギス、ムシクイ類、サメビタキ類、キビタキやオオルリなどは、春秋の渡りの時期にだけ記録されていて、この2つの林が渡りの中継地もしくは通り道として機能していることが読み取れます。
  堀之内と小塚山に動物園のフライングゲージのような機能を期待することは無理があります。行けばいつでも野鳥がたくさんいるわけではありません。でも、人知れず多くの野鳥が利用しています。


林が点在する意義

   北国分地区には、堀之内、小塚山以外にも北国分第1〜第4緑地や民有地の林など、小さな林がいくつか残っています。周辺にはじゅん菜池緑地や国府台地区の林もあり、全体として中〜小規模の林が点在している状態にあります。そして、これらの言わば島状に残る林は、ひとまとまりの大きな林には及ばないものの、いくつかの植物の最後の砦であったり鳥類の道しるべだったり、また木とともに生きる昆虫の生活の場であったりして、地域の自然を支える役割を担っています。
  近年、市内で急増しているタヌキも、島状に残る林を上手に利用しています。つまり、基本的なすみかに林を使い、食料は周辺の住宅地で自力で探したり、人から給餌を受けたりしているのです。数 年前には堀之内でタヌキの親子も確認されました。林が点在する環境が、タヌキに向いていたのです。

 


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街かど自然探訪



             アイ ノ カワ              
       
相之川・旧江戸川沿いの散策

  
  
欠真間排水機場から今井橋の下までの800m位のまっすぐな道は、車止めがしてあり、散策を楽しめるポイントです。
 下流に向かって歩いていると、潮の香がただよい海が近いことを感じることができます。
 下流寄りの堤防は、低くなっていて、子どもでも川をのぞくことができます。
 アシ原や干潟が広がり、セッカなどの野鳥のさえずりが聞こえたり、ヤマトオサガニやチゴガニ、ボラや小魚などいろいろないきものが観察できます。 








 

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レッドデータブック掲載種紹介

 



エ ド ハ ゼ 

 分 類: 魚類 ハゼ科
  ランク: 絶滅危惧TB類

  「江戸」の名を持つ小型のハゼです。海の水と川の水が混じる、いわゆる汽水の干潟に生息しますが、環境の変化には強くないといわれています。
  市内では江戸川放水路での生息情報があるものの情報量は多くはありません。東京湾奥一帯では葛西臨海公園での記録が比較的多いようです。
  汽水の干潟は、ハゼ類の宝庫です。エドハゼに限らず、干潟が減ればハゼ類も姿を消します。当然のことです。





 

 

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くすのきのあるバス通りから



No.24 今回の観察は…

『キジバトの巣』

 
  
2月に図書館ボランティアで小学校に行った時、渡り廊下に折りたたみ椅子があって張り紙がしてありました。「キジバトが巣づくりしています。しずかにしてね」。
 見上げると、横に延びたパイプに木の枝が少々と、そのうえに一羽の鳩が座っていました。もう少し木を増やした方がいいと思いましたが、その後、いつ見ても相変わらずです。

       (M .M .さん)

 

 

 


 

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むかしの市川


  このコーナーでは、博物館が1986年に行ったアンケート調査の結果から、むかしの市内の様子を紹介しています。(原則として回答の原文のまま)

  • 昭和11年頃。・六所神社を東に入る道、真間川寄りの列は家が少く殆どがねぎや大根の畠だった。・真間川では、水辺に足場を作り毎日大根洗いをしている農家の人がいた。サメの皮で泥をおとし−藤のくずでみがき−カメノコだわしで仕上げ−手拭いでていねいにふき上げ10本ずつまとめて出荷していた。 (須和田)

  • 市川学園の側の堺川近くでつくしがたくさんとれ、ざりがにとりもした。おみなえしが咲いていた。冨貴島小のそばの堺川では、泳ぐことができた。(八幡)

  • 家はカヤぶき屋根で周りは水田だけで北方は中山、東方は海神まで良く見えた。真間川にかかる三戸前橋の上流ではフナ、コイが、下流ではエビ、イナ、等がたくさん取れた。 (原木) 

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わたしの観察ノート No.57


◆大町公園より

  • アオカワモズクが生育をはじめました(1/15)。 淡水性の藻類で昨年はじめて確認したのは3月になってからでした。

  • ハンノキがすでに咲いていて、花粉を飛ばしていました(1/15)。 例年は、2月の開花なので早まっています。

  • フキノトウが咲いていました(2/2)。 やはり例年より早いようです。

    金子謙一(自然博物館)

  • アカガエルが産卵しました(1/21)。 前夜からの雨で産卵したのでしょう。

     阿部則雄(動植物園)

  • ヒキガエルが産卵しました(2/28)。 2月の産卵は、博物館では初めての記録です。

     宮橋美弥子(自然博物館)

  • ウグイスがさえずりの練習をしていました(2/28)。 ホオジロは高らかに縄張り宣言をしています。

     小川 晃(自然博物館)

◆柏井町周辺より

  • ウラギンシジミがヒイラギモクセイの葉の裏に越冬していました(1/11)。
     
     小川 晃

  • ニワトコの冬芽が割れて新しい葉とつぼみが顔を出していました(2/10)。 季節の進行は早いです。

    金子謙一 

里見公園より
  • アカゲラを見ました(2/2)。大きな音を立ててムクノキをつついていました。

  • ヤマガラがさえずっていました(2/2)。
堀之内貝塚公園より
  • マヒワを見ました(2/24)。 サワラの種をさかんに食べていました。
じゅんさい池公園周辺より
  • オオジュリンを見ました(1/1)。国分3丁目の遊水池のアシ原で茎を破って餌をとっていました。

手児奈霊堂周辺より
  • イカルを見ました(1/3)。ケヤキにとまり良い声でさえずっていました。

  • カワセミが池に飛び込みザリガニを捕らえていました(1/13)。 

  • 真間山弘法寺で春はじめてウグイスのさえずりを聞きました(2/23)。 
国府台3丁目の江戸川周辺より
  • アリスイを見ました(1/5)。

  • カンムリカイツブリを見ました(2/16)。 

    以上 根本貴久さん(菅野在住)
江戸川放水路周辺より
  • ノスリを見ました(2/15)。右岸の湾岸道路付近をゆっくりと飛んでいました。

    金子謙一

  ◎ 1、2月ともに暖冬のためか、例年よりも季節が早く進行しています。


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