市立市川自然博物館 2002年6月1日発行

 特集記事  街かど自然探訪  レッドデータブック掲載種紹介
 くすのきのあるバス通りから  むかしの市川  わたしの観察ノート





特 集  江戸川放水路



自然のある場所U『江戸川放水路』

   江戸川放水路は、都県境を流れ下った江戸川が行徳・浦安方面に向きを変える地点から、真っ直ぐ東京湾へ向けて掘った人工の水路です。
  のちに改称され正式名称は江戸川になりましたが、一時的に水を流すだけの放水路であることは、現在なお変わりありません。
  そこには、干潟を中心とする自然の水辺が残っています。

    

三 番 瀬 の 入 江

   江戸川放水路の上流側、江戸川の本川から分かれたすぐの所に、行徳可動堰があります(併設されている行徳橋のほうがよく知られているかもしれません)。 
  この堰は開閉式で、江戸川の水量が著しく増加した時にだけ開かれ、増水分をすみやかに東京湾へと放水します。逆に言うと普段は堰が閉まっているため、江戸川の水は江戸川放水路には入りません。
  つまり、普段、江戸川放水路内に存在する水は、すべて東京湾側から入ってくる海の水ということになります。
 江戸川放水路は、一見すると江戸川という大きな川の一部に見えます。ですが実際には、江戸川ではなく東京湾と結びついた存在です。江戸川放水路の沖はいわゆる三番瀬ですから、江戸川放水路は三番瀬の入江というわけです。
 満潮になると三番瀬から海水が入り込み、干潮になると水は逆に動きます。そして潮の満干には、生き物の移動も伴います。江戸川放水路と三番瀬は、生物の面でも密接に関連しています。

 行徳可動堰付近の水の動き
 左図は、江戸川が2つに分かれる付近の航空写真。
流れの方向が図の下から上方向であることに注意

 

右図は、同じ写真を線画であらわしたもの。

 

 


多 様 な 環 境

  江戸川放水路の環境を横断的に見てみると、明るく開けた堤防、やや湿っていてヨシやセイタカアワダチソウなどが群生する河川敷、引き潮の時にだけ現れる干潟、いつも海水がある浅瀬……と分類することができます。
 決して広いとは言えない江戸川放水路内で見られる環境の多様さは、そのままそこで暮らす生物の多様さにつながっています。
 野鳥を例にとると、ヒバリは堤防を中心に生活し、オオヨシキリは河川敷のアシ原で巣を作ります。
 シギやチドリ類は干潟にしか降りることはなく、カモや大型のカイツブリ類は水面に浮かんで暮らしています。
 また、昆虫は陸側に生息し、カニや貝は当然のことながら水側で暮らしています。
 異なる4つの環境が隣接して存在しているため、江戸川放水路には、その面積規模以上に多種多様な生物が集中しているのです。

引き潮で干潟が見える 満ち潮の時


泥  干  潟

   江戸川放水路の多様な環境のなかでも東京湾岸一帯を考えた場合、特に重要なのが泥干潟です。
 干潟には大きく砂の干潟と泥の干潟があり、潮干狩りなどでおなじみなのは前者の砂干潟で、泥干潟の方は、ひざまでもぐってしまうような柔らかな泥が堆積していて、人が入ることもあまりありません。
 三番瀬一帯で言うと、船橋海浜公園沖が砂干潟にあたり、江戸川放水路が泥干潟にあたります。
 そして、埋め立てによって壊滅的な状況にある東京湾の干潟の中でも、特に泥干潟は近年までその価値が正しく認識されませんでした。
 「千葉県レッドデータブック」(千葉県環境部自然保護課編、2000年)に挙げられた保護を要する貝類のリストには、オキシジミ、ハナグモリ、ソトオリガイの二枚貝と、カワグチツボ、エドガワミズゴマツボの巻き貝の名前があります。
 いずれも江戸川放水路では普通の貝ですが、泥干潟で暮らすために東京湾全体では極めて少なく、特に二枚貝の3種については千葉県では江戸川放水路と小櫃川河口だけが生息地とされています。

 

 

ト ビ ハ ゼ

   トビハゼは、干潟の上で生活する変わった習性の魚です。
 有明海などでは普通に見られますが東京湾では少なく、かつては江戸川放水路と行徳鳥獣保護区(野鳥観察舎の前の干潟)、谷津干潟だけで生息が知られていました(近年は新生息地も複数見つかっています)。
 また、日本のトビハゼは、熱帯地方を中心に分布するトビハゼ類としては例外的に温帯地方に分布し、なかでも江戸川放水路は国内および世界の北限生息地のひとつとして知られています。
 そのため江戸川放水路では、かつてトビハゼに配慮した河川工事が行われたこともあり(通称・トビハゼ護岸)、江戸川放水路のシンボル的な生物として位置づけられています。


シ ギ ・ チ ド リ 類

   1年のうちに熱帯と温帯・亜寒帯を往復するシギやチドリといった渡り鳥にとって、干潟は羽を休め餌を取る場として重要な役割を担っています。
 東京湾奥部では三番瀬や谷津干潟が主要な飛来地として知られていますが、江戸川放水路もまた同様の機能を果しています。
 干潟が狭く、さまざまな構造物がある関係でダイシャクシギやホウロクシギといった大型のシギはめったに来ませんが、チュウシャクシギやオオソリハシシギ、キョウジョシギ、キアシシギ、ハマシギといった中〜小型のシギ類、あるいはメダイチドリなどのチドリ類は少なくありません。
 干潟の重要性は、そこで暮らす生き物だけでなく、こういう一時的に利用する生物の存在からも知ることができます。

  

 

塩 生 植 物

    海水の影響を受ける干潟や砂浜は、多くの植物にとっては住みにくい過酷な環境です。
 しかし、塩分のある環境でも生き抜く術を身につけた植物もあり、干潟などではそういった(逆に言うと他の場所では見ることのできない)植物が生育しています。 
 ウラギクは、おもに干潟だけで見られる野菊の仲間です。
 埋め立て地で一時的に大発生することはありますが、安定した自生地は少なく、「改定版レッドデータブック」(環境庁編、2000年)にも絶滅危惧種として挙げられています。
 江戸川放水路では百株以上もある群落がアシ原の中に成立していましたが、数年前の河川敷の火災で打撃を受け、現在、群落は再生の途上にあります。
 この他、ハマヒルガオ、ハマエンドウ、シオクグ、コウボウシバ、ツルナ、ハチジョウナ、アイアシ、トウオオバコ、ウシオハナツメクサなどの塩生植物が生育しています。

 



ハマヒルガオの群落
後方の橋は湾岸道路

 


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街かど自然探訪



             アライ              
      
新井・新井緑道

  
  
新井緑道は、新井と広尾の境を流れる新井川の上につくられた歩道です。
 通り過ぎるだけだと5分位で抜けられる短い道ですが、4月には桜の花が咲き、5月はアジサイの花、10月はイチョウの黄葉などを見ながら散策が楽しめます。
 ベンチに座って、10分位じっとしていると周辺からヒヨドリやオナガなどの野鳥も寄ってきて間近で観察することもできます。
 チョットした緑地ですが足を止めて見ると季節をおって楽しめます。






 

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レッドデータブック掲載種紹介

 



カンエンガヤツリ 

 分 類: 種子植物 カヤツリグサ科
  ランク: 絶滅危惧 U類

  江戸時代の本草学者・岩崎灌園(かんえん)にちなむ名前の本種は、いわゆるカヤツリグサの仲間ですが生育する場所は限られ、県内では利根川・江戸川流域が自生地として知られています。
 市内で見られるものは、江戸川の河川敷で行われているヒヌマイトトンボの生息地創出事業で上流から運んできた土から発芽したものです。
 本来の自生とは言えませんが、同じ水系でもあり、いちおう市内のものとして扱っています。





 

 

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くすのきのあるバス通りから



No.27 今回観察は…

『アオスジアゲハの幼虫が!』

 
  
バス通りのクスノキでアオスジアゲハが産卵しているような素振りを車中(信号待ち)より見てからおよそ2週間後、なーんと幼虫を見つけちゃいました。気にかけるようになって以来、何年越しでしょう。結構、下のほうの枝で、産んだところからあまり動いていないようです。かじった葉もないようでしたが、日が経っているので、葉自体も育って新しい葉に移ったばかりだったのでしょうかね。

       (M .M .さん)

 

 

 


 

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むかしの市川


  このコーナーでは、博物館が1986年に行ったアンケート調査の結果から、むかしの市内の様子を紹介しています。(原則として回答の原文のまま)

  • 昭和40年頃まで、家並はバス通りに沿って並び、その後ろは、直ぐタンボとなっていた。タンボの中には水路が沢山あり、フナやハゼがよく釣れた。こどもたちは江戸川で水遊びをし、葛西まで江戸川を泳いで渡った。海岸近くはカヤ場( ヨシズの材料) 、干潟ではハマグリ、アサリ、カレイ、シャコなどが沢山とれた。 (新井) 
  • 周辺は一帯の田甫で南通りは田甫の用水堀りで今の1/3ほどの道路で有り「サンハイツ」の所に水門が有って水が必要の時に南方面、新田方面、と水を流して田甫に入れた。家の中より江戸川の土手の上に白帆が見えた。(新田)
  • 田甫の用水路でどじょうがよくとれた。真間川では川の中へ入ってなまず、うなぎ、淡貝などがよくとれた。(宮久保) 

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わたしの観察ノート No.57


◆大町公園より

  • コブシの花が咲きだしました(3/8)。イヌシデやヤナギ類の芽もほころんでいました。

  • ミヤマホオジロを見ました(3/8)。カシラダカの群れに混じっていました。

     宮橋美弥子(自然博物館)

  • スナヤツメが集団産卵をしていました(4/8)。6匹だけでしたが無事、繁殖が行われているのはうれしいことです。

  • オオコオイムシが背中に卵をびっしりとつけていました(4/28)。 卵が孵るまで背負っています。

     金子謙一(自然博物館)

  • ベニシジミを見ました(4/17)。 サナギからでたばかりの個体でした。

     清野元之(自然博物館)

◆柏井町周辺より

  • ヒキガエルの卵塊がありました(4/21)。野球場脇の汚れた水たまりに産んでいました。キャンプ場の池に水が無かったからでしょう。
     
    宮橋美弥子

  • ミズキの花が咲いていました(4/21)。 斜面林はフジの紫の花とミズキの白い花が混じりとてもきれいでした。

    金子謙一 

里見公園より
  • カワセミを見ました(3/16)。 奥の池にいてお互いに鳴きあっていました。

  • ツバメを初認しました(3/17)。
  • アオジのさえずりを聞きました(4/6)。
  • センダイムシクイのさえずりを聞きました(4/20)。 

 

堀之内貝塚公園より
  • フクロウが2羽並んでシラカシにとまっていました(4/6)。
小塚山公園周辺より
  • モズがコジュケイの声まねをしていました(3/17)。
  • コジュケイの鳴き声を久し振りに聞きました(3/30)。
真間山弘法寺周辺より
  • マヒワの群れを見ました(3/10)。 

  • ツミの鳴き声を聞きました(4/20)。
国府台江戸川周辺より
  • アカエリヒレアシシギを見ました(4/7)。 

    以上 根本貴久さん(菅野在住)
江戸川放水路周辺より
  • ユリカモメを見ました(4/20)。 顔が黒い個体が目立つようになりました。

    金子謙一

  春の進行は、2週間ほど早まりながらも、順調に推移しています。


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